【税理士監修】フリーランスの経費の完全ガイド|使える経費はいくらまで?節税と確定申告について解説

フリーランスとしてはたらく上で、避けて通れないのが「経費」の管理です。ただし、「どの支出が正当に経費と認められるのか」「計上の上限やリスクはどこにあるのか」といった懸念を抱くフリーランスも少なくありません。
本記事では、フリーランスが知っておくべき経費の基本から、具体的な経費の例、確定申告における注意点まで、わかりやすく解説します。
フリーランスの経費とは?節税メリットと基本ルール

フリーランスとしてはたらく上で、経費を理解することは非常に重要です。経費を正しく計上することで、節税につながり、手元に残るお金を増やせます。ここでは、フリーランスの経費の基本について解説します。
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フリーランスの「経費」とは?なぜ計上が重要なのか徹底解説
フリーランスにおける「経費」とは、事業を行う上で必要な費用のことです。所得税法上では「必要経費」と呼ばれます。
たとえば、エンジニアが業務用のPCを購入した場合、その購入費用は適切な処理をすれば経費として計上可能です。経費を計上することで、所得を減らし、結果的に所得税や住民税などの税金を抑えることが可能です。会社員の場合、経理担当が経費を管理してくれますが、フリーランスは自分で経費を管理する必要があります。適切な経費計上の知識は、フリーランスにとって重要と言えるでしょう。
経費計上のメリットとは?税負担の仕組み
経費を計上するメリットは、節税効果があることです。日本の税制度では、「収入-経費」で算出された所得金額をもとに課税所得を算出し、税金を計算します。つまり、必要経費として認められる支出を正しく計上するほど、所得が減り、結果として税負担も軽減されます。
また、日本は累進課税制度を使用しているため、所得が高いほど段階的に高い税率が適用されます。そのため、経費を適正に計上して所得金額を減らすことは、節税においても重要です。
「事業との関連性」が経費の判断基準
経費として認められるかどうかの判断基準は、その支出が「事業の遂行上必要であるかどうか」です。たとえば、プライベートでの飲食代や個人的な趣味の費用は、経費として認められません。しかし、事業に必要な書籍の購入費用や、クライアントとの打ち合わせにかかった飲食代などは、経費として計上できます。税務調査が入った際、「なぜこの経費が事業に必要なのか」を説明できるように、領収書を保管し、メモを残しておくことが大切です。人に説明できないような経費は、避けることが望ましいでしょう。
フリーランスが経費にできるもの・できないもの具体例
フリーランスには、必要経費として計上できるものと、できないものが存在します。適切に申告するためには、具体的にどのようなものが必要経費として認められるのかを把握することが大切です。
ここからは、必要経費として認められるのと認められないものを紹介します。
必要経費として認められる経費の勘定科目別一覧
フリーランスが経費として計上できるものは多岐にわたります。ここでは、主な勘定科目別に、どのようなものが経費として認められるのかを具体的にご紹介します。経費として認められるためには、「事業との関連性」が重要です。プライベートな支出と明確に区別できるように、日頃から記録を付けておきましょう。
勘定科目 | 内容 | 具体例 | 備考 |
旅費交通費 | 事業に必要な移動にかかる費用 | 電車代、バス代、タクシー代、飛行機代、宿泊費、高速道路料金、ガソリン代、駐車場代 | プライベートの旅行・移動に要した費用は、含まれません。 |
通信費 | 事業に必要な通信にかかる費用 | インターネット回線利用料、プロバイダ料金、携帯電話料金、切手代、はがき代 | プライベートと兼用している場合は、家事按分が必要です。 |
水道光熱費 | 事務所や自宅兼事務所で使用する水道光熱費 | 電気代、ガス代、水道代 | 自宅兼事務所の場合は、家事按分が必要です。 |
地代家賃 | 事務所や自宅兼事務所の家賃 | 事務所の賃料、駐車場代、更新料 | 自宅兼事務所の場合は、家事按分が必要です。 |
消耗品費 | 使用期間が1年未満または取得価額が10万円未満の消耗品 | 文房具、事務用品、コピー用紙、インクカートリッジ、洗剤、トイレットペーパー | 10万円以上のものは、減価償却の対象となります。(後述) |
新聞図書費 | 事業に必要な書籍や雑誌の購入費用 | 専門書、業界誌、新聞購読料 | マンガや小説など、娯楽目的のものは経費になりません。 |
研修費 | 事業に必要な知識やスキルを習得するための費用 | セミナー参加費、研修受講料、オンライン講座受講料 | 業務と直接関係のない趣味の講座などは経費になりません。 |
接待交際費 | 事業に関係する人との接待や贈答にかかる費用 | 取引先との飲食代、贈答品代、お祝い金、お香典 | 領収書に相手先の情報や目的を記載しておきましょう。 |
広告宣伝費 | 事業を宣伝するための費用 | ホームページ作成費用、広告掲載料、チラシ作成費用、名刺作成費用 | 広告内容が事業目的だと分かるよう、資料などを残しておきましょう。 |
会議費 | 事業に関する会議や打ち合わせにかかる費用 | 会議室利用料、お茶代、弁当代 | 社内会議の場合は、会議の内容を記録しておきましょう。 |
修繕費 | 事業で使用する固定資産の修理・修繕にかかる費用 | パソコンの修理代、事務所の修繕費用 | 資産価値を高めるための改良工事は、資本的支出となり、減価償却の対象となります。 |
損害保険料 | 事業に関する保険料 | 火災保険料、自動車保険料、賠償責任保険料 | 生命保険料は、一定額まで生命保険料控除として所得控除の対象となります。 |
租税公課 | 事業に関する税金 | 固定資産税、事業税、自動車税、印紙税 | 所得税や住民税は経費になりません。 |
福利厚生費 | 従業員のための福利厚生にかかる費用 | 従業員の慰安旅行費用、従業員の健康診断費用 | 従業員のための福利厚生のみ必要経費として計上可能です。フリーランス本人のためのものは、原則として経費になりません。 |
給与賃金 | 従業員に支払う給与 | 給与、賞与、アルバイト代 | 源泉徴収を行う必要があります。 |
外注費 | 業務を外部に委託した場合の費用 | Webデザイナーへの依頼料、ライターへの依頼料 | 源泉徴収が必要な場合があります。 |
支払手数料 | 業務上で発生する手数料 | 振込手数料、決済手数料、クラウドソーシング利用料 | - |
減価償却費 | 10万円以上の固定資産の購入費用を、耐用年数に応じて分割して計上する費用(※) | パソコン、自動車、コピー機 | 減価償却については、後ほど詳しく解説します。 |
必要経費として認められない支出の代表例
経費として認められるのは、あくまで「事業遂行に必要な支出」です。以下のものは、原則として経費として認められません。誤って計上しないように注意しましょう。
- 個人的な趣味や娯楽のための支出:個人的な旅行、趣味の道具、娯楽雑誌など
- 家族の生活費:食費、家賃、光熱費(家事按分を超える部分)、家族旅行
- 税金:所得税、住民税
- 国民健康保険料、国民年金保険料:社会保険料控除の対象
- 罰金、過料:交通違反の罰金など
- 個人的な借入金の返済
ただし、上記に該当するものでも、事業との関連性を明確に説明できる場合は、経費として認められる可能性があります。判断に迷う場合は、税務署や税理士など詳しい人に相談することをおすすめします。
飲食代、スーツ代、書籍代、セミナー参加など判断に迷う経費の境界線は?
経費として計上できるかどうか判断に迷うケースについて、具体的な例を挙げて解説します。ポイントは「事業との関連性」と「客観的な説明ができるかどうか」です。
飲食代
- 取引先との飲食:接待交際費として経費になります。領収書に相手先の会社名・氏名、目的、人数などを記載しておきましょう。
- 一人での飲食:原則として経費になりませんが、移動中の食事など、業務遂行上やむを得ない場合は認められる可能性があります。
- 従業員との飲食:従業員を雇用している場合は、福利厚生費として経費になる場合があります。
スーツ代
- 仕事で着用するスーツ:原則として経費になりませんが、特定の職種(例:弁護士、講師)で業務上必須である場合は、衣装代として認められる可能性があります。
- 普段着としても着用できるスーツ:経費として認められません。
書籍
- 業務に必要な専門書:新聞図書費として経費になります。
- 自己啓発本、小説:原則として経費になりません。ただし、業務に関連する内容であれば、経費として認められる可能性があります。
セミナー参加費
- 業務に必要な知識・スキルを習得するためのセミナー:研修費として経費になります。
- 業務と関係のないセミナー:経費として認められません。
判断に迷う場合は、税理士に相談するのが確実です。また、税務署の個別相談を利用するのも良いでしょう。日頃から領収書やレシートを保管し、支出の内容を記録しておくことが大切です。
フリーランスの経費「いくらまで」OK?
フリーランスとして活動する上で、経費は節税に繋がる重要な要素です。ここでは、経費の上限や経費率の考え方について解説します。
経費に上限はある?経費率の考え方
結論から言うと、経費に明確な上限はありません。事業に必要な支出であれば、金額に関わらず経費として計上できます。たとえば、エンジニアが業務に必要なPC用のキーボードを購入した場合、その購入費用は経費として計上可能です。
また、支出が「事業の遂行上、合理的であるかどうか」が判断基準となるため、用途や目的を明確に記録しておきましょう。経費率とは、売り上げに対する経費の割合を示すものです。高い経費率であっても、それだけで問題視されることはありませんが、不自然な内容や妥当性に欠ける支出が含まれている場合には、税務調査において説明を求められるケースがあります。
たとえば、以下のような場合が挙げられます。
- 接待交際費が多すぎる
- 事業関連性が説明できない経費が計上されている
- 仕入額や原価率が例年に比べ、極端に差異がある
重要なのは、経費として計上するすべての支出について、事業との関連性を明確に説明できるようにしておくことです。領収書を保管し、必要に応じて「なぜこの経費が事業に必要だったか」を説明できるよう準備しておきましょう。特に、接待交際費などは、相手の氏名や商談内容をメモに残しておくと、税務調査時にもスムーズです。また、経費の集計は確定申告の直前にまとめて行うのではなく、日々の業務の中でこまめに記録しておくことが、正確な申告と節税につながります。
自宅兼事務所の家賃などを経費にする「家事按分」の計算方法と注意点
自宅を事務所として使用している場合、家賃や光熱費などを経費として計上できる「家事按分」といった方法があります。家事按分とは、家事(プライベート)と事業の両方で使用している費用を、事業で使用している割合に応じて経費として計上する方法です。
たとえば、100㎡の自宅のうち40㎡を仕事場所として利用している場合、家賃の40%を経費として計上できる可能性があります。家賃が20万円であれば、20万円×40%=8万円が経費となります。
家事按分の計算方法には、明確な基準はありません。一般的には、以下のいずれかの方法が用いられます。
- 使用面積按分:事業に使用している面積の割合で計算する方法
- 使用時間按分:事業に使用している時間の割合で計算する方法
- その他合理的な方法:業務内容や状況に応じて、より適切な方法で計算する方法
いずれの方法でも、合理的な説明ができるように根拠を残しておくことが重要です。たとえば、使用面積按分の場合、間取り図に事業で使用しているスペースを明示したり、写真を残しておいたりすると良いでしょう。
また、家事按分で経費を計上できるのは、実際に支払った金額が上限となります。以下、家事按分をする際の注意点をまとめました。
注意点
- 按分比率の妥当性:税務署から指摘を受けたときに合理的な説明ができるよう、客観的な根拠に基づいた按分比率を設定しましょう。
- 記録の保存:家賃、光熱費などの領収書や、按分計算の根拠となる資料は、確定申告後も一定期間保存する必要があります。
家事按分は、適切に行えば節税効果の高い方法ですが、不適切な計算や根拠のない計上は税務調査で指摘を受ける可能性があります。不安な場合は、税理士に相談することをおすすめします。
減価償却とは?パソコン・スマホ・車などの購入費用と関連経費の計上ルール
使用期間が1年以上で、かつ取得価額が10万円以上の固定資産を購入した場合、その購入費用は「減価償却」によって、複数年にわたって経費として計上します。
減価償却とは、固定資産の価値が時間経過とともに減少していく考え方に基づき、その減少分を各年度の経費として計上する会計処理です。固定資産の購入費用を一度に全額経費として計上するのではなく、耐用年数(資産の種類ごとに法律で定められた使用可能期間)に応じて分割して計上します。
減価償却の計算方法
減価償却の計算方法には、主に以下の2種類があります。
- 定額法:毎年同じ金額を計上する方法
- 定率法:初期に多く、徐々に少なくなる金額を計上する方法
原則として、個人事業主は定額法を選択します。定率法を選択したい場合は、税務署に届け出が必要です。
減価償却の対象となる資産
- 建物
- 機械装置
- 船舶
- 車両運搬具
- 工具
- 器具備品(パソコン、スマホなど)
減価償却の注意点
- 耐用年数:資産の種類によって耐用年数が異なります。国税庁のウェブサイトなどで確認しましょう。
- 少額減価償却資産の特例:青色申告をしている場合、取得価額が30万円未満の減価償却資産については、合計300万円までを購入した年に一括で経費計上できる「少額減価償却資産の特例」を利用できます(2025年5月時点情報)。
資産 | 耐用年数 |
パソコン | 4年(サーバー用として使用する場合は5年) |
普通自動車(一般用) | 6年 |
コピー機 | 5年 |
減価償却は、計算が複雑になるため、会計ソフトを利用したり、税理士に相談したりすることをおすすめします。
フリーランスの経費管理と確定申告
フリーランスとして活動するなら、適切な経費管理と確定申告への理解が欠かせません。とくに、領収書・レシートの保存期間や保存方法、収入額控除は誤解が生じやすい項目です。
ここからは、領収書・レシートの正しい保存期間・方法と紛失時の対処法や、フリーランスの経費処理と仕入税額控除の注意点を解説します。
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領収書・レシートの正しい保存期間・方法と紛失時の対処法
フリーランスにとって、領収書やレシートは経費を証明するための重要な証拠書類です。これらを適切に管理することは、確定申告において必要不可欠であり、節税にも繋がります。ここでは、領収書・レシートの正しい保存期間・方法と、紛失時の対処法について解説します。
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領収書・レシートの保存期間
領収書・レシートの保存期間は、原則として確定申告の期限日の翌日から7年間(または5年間)です。インボイス(適格請求書)を領収書として利用する場合は、7年間の保存が義務付けられています。これらの書類は、税務調査が入った際に提示を求められる可能性があるため、しっかり保管しておきましょう。
領収書・レシートの保存方法
領収書・レシートは、以下の方法で保存することをおすすめします。
- 月別・勘定科目別に整理する
領収書・レシートを月ごとに分け、さらに勘定科目(例:交通費、通信費、消耗品費など)別に分類することで、確定申告の際に集計作業がスムーズになります。 - ファイルやバインダーに保管する
領収書・レシートを紛失や劣化から守るために、ファイルやバインダーに保管しましょう。100円ショップなどで購入できる領収書ファイルなどを活用すると便利です。 - スキャンしてデータ化する
領収書・レシートをスキャンしてデータ化しておくと、紛失のリスクを減らせます。また、会計ソフトと連携することで、経費処理を効率化することも可能です。
領収書・レシートを紛失した場合の対処法
領収書・レシートを紛失してしまった場合は、以下の方法で対応を試みましょう。
- クレジットカード明細や銀行口座の取引明細を確認する
クレジットカードや銀行振込で支払った場合は、これらの明細が領収書の代わりになることがあります。ただ、本来は領収書の代替とは認められにくいため、あくまで補完的な資料であることを忘れないようにしましょう。 - お店に再発行を依頼する
可能であれば、お店に領収書の再発行を依頼してみましょう。ただし、再発行に応じてくれるかどうかはお店の判断によります。 - 出金伝票を作成する
どうしても領収書が手に入らない場合は、出金伝票を作成して、支払った内容を記録しておきましょう。出金伝票には、日付、金額、用途、支払先などを記載します出金伝票はやむを得ず領収書が取得できなかった場合の対応として活用できますが、頻繁に使うと経費として認められにくくなる場合があります。できる限り、正式な領収書の取得を心がけましょう。
領収書やレシートを紛失した場合でも、諦めずにできる限りの対応をすることが大切です。税務署に問い合わせて、どのような書類で経費を証明できるか確認するのも有効な手段です。
フリーランスの経費処理と仕入税額控除の変更点・注意点
フリーランスの経費処理は、確定申告において重要なプロセスです。特に、消費税の仕入税額控除は、納税額に大きく影響するため、正確な理解が必要です。ここでは、フリーランスの経費処理と仕入税額控除の変更点・注意点について解説します。
仕入税額控除とは
仕入税額控除とは、消費税の納税額を計算する際に、売り上げにかかる消費税額から、仕入れや経費にかかった消費税額を差し引ける制度です。この制度を利用することで、消費税の納税額を減らせます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)の導入
2023年10月1日から、インボイス制度(適格請求書等保存方式)が導入されました。この制度は、仕入税額控除の適用を受けるために、適格請求書(インボイス)の保存を義務付けるものです。
インボイスとは、適格請求書発行事業者として登録を受けた事業者が発行できる請求書です。従来の請求書に加えて、登録番号、適用税率、消費税額などが記載されています。
なお、仕入税額控除を受けるには、「消費税の課税事業者」である必要があります。免税事業者は消費税を納めていないため、仕入税額控除の対象外です。
経費処理の注意点
経費処理を行う際には、以下の点に注意しましょう。
- 事業に関係のない支出は経費にしない
プライベートな支出は、経費として計上することはできません。 - 領収書・レシートは必ず保管する
経費を証明するために、領収書・レシートは必ず保管しましょう。 - 家事按分を適切に行う
自宅兼事務所の場合など、プライベートと事業の両方で使用する費用は、家事按分を行い、事業で使用した割合のみを経費として計上します。 - 会計ソフトを活用する
会計ソフトを活用することで、経費処理を効率化し、正確な帳簿を作成できます。
インボイス制度は、フリーランスの経費処理に大きな影響を与える制度です。制度の内容を正しく理解し、適切な対応を行うようにしましょう。
フリーランスが経費で失敗しないための重要ポイント
フリーランスが必要経費の計上で失敗しないためには、不正計上とみなされる行為や、適切な証拠書類の準備が欠かせません。
ここからは、フリーランスが必要経費で失敗しないためのポイントを解説します。
「節税」と「脱税」の違いは?不正計上とみなされるNG行為とペナルティ
フリーランスにとって、経費を計上することは節税に繋がる重要な手段です。しかし、その線引きを誤ると「脱税」とみなされ、ペナルティを課せられる可能性があります。「節税」と「脱税」は、どちらも税負担を軽減する点では同じですが、その手段と結果は大きく異なります。
節税は、税法で認められた範囲内で、合法的に税負担を軽減する行為です。たとえば、事業に必要な経費を適切に計上したり、控除制度を活用したりすることが挙げられます。一方、脱税は、意図的に収入を隠したり、架空の経費を計上したりするなど、不正な手段で税金を逃れる行為です。
具体的にどのような行為がNGとなるのでしょうか?
NG行為の例 | 詳細 |
架空の経費計上 | 実際には存在しない経費を計上する。 |
私的な支出の経費計上 | プライベートな支出を事業の経費として計上する。 |
収入の隠蔽・過少申告 | 売り上げの一部を除外する、売上金額を少なく申告する。 |
二重帳簿 | 同じ経費を二度計上する。 |
これらの行為は、税務署の調査で発覚する可能性が高く、発覚した場合には、追徴課税や加算税などのペナルティが課せられます。さらに、悪質な場合には刑事罰が科せられることもあります。
経費の計上は、あくまで事業に必要な支出のみに限定し、領収書などの証拠書類をしっかり保管しておくことが重要です。判断に迷う場合は、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。
フリーランスが日頃から実践すべき経費管理と証拠書類の準備
正確な経費計上は、適正な節税を行う上で不可欠です。そのためには、日頃から適切な経費管理を徹底し、証拠書類を準備しておくことが重要になります。以下に、フリーランスが実践すべき経費管理のポイントをご紹介します。
事業用の口座とプライベート用の口座を分ける
事業に関するお金の流れを明確にするために、事業用の銀行口座を開設し、プライベートの口座と分けて管理しましょう。
経費が発生したら、必ず領収書やレシートを受け取る
領収書やレシートは、経費を証明するための重要な証拠書類です。紛失しないように保管しておきましょう。
領収書やレシートに日付、金額、支払先、用途をメモする
領収書やレシートだけでは、何の目的で使用したのかが分からない場合があります。必ず用途をメモしておきましょう。
会計ソフトやアプリを活用する
経費の入力や管理を効率化するために、会計ソフトやアプリを活用しましょう。自動で仕訳を行ってくれる機能などもあり、経費管理の負担を軽減できます。
定期的に経費の集計を行う
月に一度など、定期的に経費を集計し、収支状況を把握しましょう。無駄な支出がないか確認することで、改善に繋げられます。
証拠書類は整理して保管する
領収書やレシート、請求書などの証拠書類は、種類別、月別など、分かりやすく整理して保管しましょう。確定申告の際にスムーズに準備できます。
これらのポイントを実践することで、経費管理が簡素化され、確定申告の準備もスムーズに進められます。
経費の使いすぎは要注意?事業成長と節税の適切なバランスとは
経費を計上することで節税効果が得られるのは事実ですが、経費を使いすぎることは必ずしも良いとは限りません。なぜなら、経費はあくまで事業に必要な支出であり、無駄な経費は事業の利益を圧迫するからです。
たとえば、節税のために必要のないものを購入したり、高額な接待を繰り返したりすることは、逆効果になりかねません。節税効果は得られても、手元に残るお金は減ってしまい、事業の成長を妨げる可能性があります。
重要なのは、事業の成長と節税の適切なバランスを見つけることです。そのためには、以下の点を意識しましょう。
- 経費は本当に事業に必要なものかを見極める
経費を計上する前に、それが本当に事業に必要な支出なのかを自問自答しましょう。 - 費用対効果を意識する
経費をかけることで、どれだけの効果が得られるのかを考えましょう。 - 無駄な経費を削減する
定期的に経費を見直し、無駄な支出を削減しましょう。 - 将来への投資も忘れずに
節税だけでなく、将来の事業成長のために必要な投資も行いましょう。
経費は、事業を成長させるための手段の一つです。賢く活用することで、節税効果を得ながら、事業の成長を後押しできます。経費の使いすぎには注意し、常に費用対効果を意識することが大切です。
フリーランスの経費に関するよくある質問
フリーランスとして活動するうえで、必要経費について悩みを抱える人は多いです。ここからは、フリーランスによくある必要経費に関する質問に回答します。
Q1.フリーランス1年目で売り上げが少ない場合でも、経費は計上すべきですか?
売り上げが少ない場合でも、経費はしっかり計上しましょう。経費を計上することで、所得を圧縮し、所得税や住民税を抑える効果があります。特にフリーランス1年目は、事業を立ち上げるための初期費用がかさむことも多いはずです。これらの費用をしっかりと経費として計上することで、税負担を軽減できます。
青色申告の場合には、損益通算の規定を適用してもなお、控除しきれない損失がある場合には、その損失額を翌年以後の3年間繰り越すこともできます。
売り上げが少ないからといって経費計上をためらう必要はありません。正当な経費は、しっかりと計上することが節税の第一歩です。
Q2.クレジットカード明細や銀行振込の記録は領収書の代わりになりますか?
クレジットカード明細や銀行振込の記録は、領収書の代わりになる場合があります。領収書を紛失してしまった場合や、そもそも領収書が発行されない支払い(クレジットカードの利用や銀行振込など)の場合、これらの記録が経費を証明する証拠となります。
ただし、クレジットカード明細や銀行振込の記録だけでは、具体的な内訳がわからないことも珍しくありません。たとえば、飲食代の場合、誰とどのような目的で食事をしたのかなどを記録しておくと、税務調査の際に説明しやすくなります。
また、クレジットカード明細や銀行の記録だけでは「証拠力が弱い」とみなされる可能性もあります。可能であれば、レシートや領収書を保管し、補助的な証拠としてクレジットカード明細や銀行振込の記録を活用するのがおすすめです。事業用のクレジットカードで経費を支払うと確定申告が楽になります。
Q3.「税金が戻ってくる」は誤解?
「税金が戻ってくる」との表現は、必ずしも正確ではありません。経費を計上することで税金が安くなるのは、所得が減ることで課税対象となる金額が少なくなるためです。つまり、すでに払い過ぎた税金が還付されるよりも、納めるべき税金が減額されるイメージです。
たとえば、源泉徴収されている場合や、予定納税を行っている場合には、確定申告によって払い過ぎた税金が還付されることがあります。しかし、これはあくまで結果として税金が戻ってくるだけであり、経費を計上すること自体が「税金を取り戻す」行為ではありません。
Q4.経費が多すぎるとどんなリスクがありますか?
経費を過剰に計上すると、税務調査の対象になるリスクが高まるため注意が必要です。税務署は、不自然に経費が多い場合や、事業との関連性が低い経費が計上されている場合に、調査を行うことがあります。税務調査の結果、経費として認められないものが発見された場合、追徴課税や加算税が課される可能性があるでしょう。
また、経費を増やしすぎて利益が少なくなると、状況によっては事業用融資や住宅ローン・マイカーローンなど金融機関からの融資を受けにくくなる可能性も考えられます。金融機関は、企業の収益性や安定性を重視しており、利益が少ない企業への融資は慎重になる傾向があるためです。
経費は、正当な範囲内で計上し、事業の成長に必要な投資と賢い節税のバランスを保つことが重要です。
まとめ:フリーランスが経費を制して賢く節税し、事業を成長させよう
本記事では、フリーランスとして活動する上で避けては通れない「経費」について、その基本から具体的な計上方法、注意点までを網羅的に解説しました。経費を正しく理解し、賢く活用することは、節税に繋がり、結果として事業の成長を加速させる重要な要素となります。
フリーランスにとって、経費は単なる支出の記録ではありません。事業を運営するための投資であり、未来への可能性を広げるための戦略的なツールでもあります。日々の経費管理を徹底することで、より安定した事業運営を目指しましょう。
(監修日:2025年6月11日)
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山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士
山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。
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