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【税理士監修】フリーランスの消費税とは?納税方法や計算方法をわかりやすく解説

フリーランスの消費税のイメージ画像

本記事では、フリーランスが押さえておきたい消費税の基礎知識や、納税義務が発生する条件、計算方法、申告・納税手続きの流れについてわかりやすく整理します。

また、インボイス制度が実務や収益にどのような影響を与えるのか、クライアント対応の工夫や将来を見据えた取り組み方についても解説します。

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フリーランスが消費税を納める必要があるのはどんなとき?

フリーランスとして活動しているすべての方が、消費税を納める必要があるわけではありません。消費税の納税義務がある事業者は「課税事業者」、納税義務が免除される事業者は「免税事業者」と呼ばれます。自身がどちらに該当するかを正しく理解することが、消費税対応の第一歩です。

納税義務が生じる主なケースは、以下の4つです。それぞれ開設します。

  • 2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合
  • 1年前の1月1日~6月30日までの課税売上高や給与等の合計が1,000万円を超えている場合
  • 「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となった場合
  • 適格請求書発行事業者として登録した場合

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2年前(基準期間)の課税売上高が1,000万円を超えている場合

消費税の納税義務を判定するうえで基本となるのが「基準期間」の売上高です。個人事業主の場合、基準期間とは、判定したい年の2年前の1月1日から12月31日までを指します。この期間の課税売上高が1,000万円を超えると、当該年は課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が生じます。

たとえば、2024年の納税義務を判定する場合、基準期間は2022年です。2022年の課税売上高が1,000万円を超えていれば、2024年は課税事業者となります。開業して2年未満のフリーランスの場合、基準期間の売り上げは存在しないため、この条件だけで課税事業者になることはありません。長年事業を続けているフリーランスにとっては、毎年確認すべき重要な指標です。この条件に該当した場合、「消費税課税事業者届出書(基準期間用)」を税務署へ提出する必要があります。

出典:① 消費税課税事業者届出書 (国税庁)消費税のしくみ(国税庁)

1年前の1月1日~6月30日までの課税売上高や給与等の合計が1,000万円を超えている場合

基準期間の課税売上高が1,000万円以下でも、課税事業者になる例外的なケースがあります。それが「特定期間」による判定です。個人事業主における特定期間とは、前年の1月1日から6月30日までの半年間を指します。

この特定期間における「課税売上高」と「給与等支払額」が、両方とも1,000万円を超えた場合に課税事業者となります。このルールは、売り上げが急増した事業者が2年間も免税事業者のままでいることを防ぐためのものです。

ただし、従業員を雇用せず一人で活動している多くのフリーランスにとっては、「給与等支払額が1,000万円を超える」という条件を満たすことは稀です。そのため、この規定が適用される場面は限定的ですが、事業が拡大し、スタッフや家族に給与を支払うようになった際には注意が必要です。

出典:特定期間の判定(国税庁)

「消費税課税事業者選択届出書」を提出して課税事業者となった場合

売上規模にかかわらず、自身の意思で課税事業者になることも可能です。その際に提出するのが「消費税課税事業者選択届出書」です。この手続きは、主に多額の設備投資(高価な機材の購入など)があり、支払った消費税の還付を受けたい場合や、インボイス制度導入以前に大企業との取引で信用度を高める目的などで利用されてきました。

この届出書は、課税事業者になりたい年の前年までに提出する必要があります。課税事業者になりたい年が創業年の場合には、その創業年に提出すれば課税事業者になることが可能です。

一度この選択をすると、原則として2年間は免税事業者に戻れません。これは事業にとって大きな決断となるため、提出は慎重に検討しなければなりません。

出典:D1-4 消費税課税事業者選択届出手続(国税庁)No.6501 納税義務の免除(国税庁)

適格請求書発行事業者として登録した場合

現代のフリーランスにとって、影響の大きい条件がインボイス制度への対応です。2023年10月1日から始まったインボイス制度において、「適格請求書発行事業者」(インボイス発行事業者)として税務署に登録した場合、その登録日をもって課税事業者となります。この場合、基準期間や特定期間の売上高が1,000万円以下であっても、消費税の申告・納税義務が発生します。

この登録は、事務手続き以上に、フリーランスの事業運営に影響を与える可能性があります。免税事業者のままでいる場合は「消費税の納税コストを抑える」メリットがある一方、インボイスを発行できず取引先からの発注が減るリスクも考えられます。

今後の取引関係や事業計画を踏まえた検討が必要です。

出典:インボイス制度について(国税庁)

フリーランスの消費税の計算方法|押さえておくべき基礎知識を解説

課税事業者となったフリーランスが次に検討すべき重要なポイントのひとつは、納税額の計算方法の選択です。

消費税の計算方法には、大きく分けて「一般課税(本則課税)」「簡易課税制度」「2割特例」の3つがあります。

どの方法を選ぶかによって、最終的な納税額や事務負担が変わる可能性があるため、それぞれの特徴を理解し、自身の事業規模や経費状況に合った方法を検討することが大切です。

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一般課税(本則課税)の計算方法

一般課税は、消費税計算の原則的な方法であり、「本則課税」とも呼ばれます。計算方法は非常にシンプルで、事業活動において「預かった消費税」から「支払った消費税」を差し引いて納税額を算出します。

計算式は以下の通りです。

消費税納付額=(課税売上高×税率)−(課税仕入高×税率)

この方式の最大のメリットは、必要経費が売り上げを上回る、あるいは高額な設備投資などで「支払った消費税」が「預かった消費税」を上回った場合に、その差額が還付される点です。

たとえば、高価な撮影機材やPCを購入した年度などは、この方式が有利になる可能性があります。一方で、すべての必要経費について消費税額を正確に集計・管理する必要があるため、経理事務の負担が大きくなるというデメリットがあります。

なお、消費税の還付額が高額になる場合は、税務署から高額な資産の請求書やその元帳が求められる可能性がある点に注意が必要です。

出典:No.6351 納付税額の計算のしかた(国税庁)

簡易課税制度の計算方法

簡易課税制度は、基準期間の課税売上高が5,000万円以下の事業者が選択できる、計算を簡略化するための特例制度です。この制度では、実際に支払った消費税額を計算する代わりに、売り上げにかかる消費税額に業種ごとに定められた「みなし仕入率」を掛けて、支払った消費税額を概算します。

計算式は以下の通りです。

消費税納付額=(課税売上高×税率)−(課税売上高×税率×みなし仕入率)

「みなし仕入率」は事業内容によって異なり、たとえばフリーランスに多いサービス業は50%(第5種事業)、卸売業は90%(第1種事業)と定められています。この制度のメリットは、必要経費の消費税を個別に集計する必要がなく、事務負担が大幅に軽減されることです。

しかし、実際の経費率がみなし仕入率より高い場合は、一般課税よりも納税額が多くなる可能性があります。また、この制度を利用するには、適用を受けたい課税期間の開始日の前日までに「消費税簡易課税制度選択届出書」の提出が必要で、一度選択すると原則2年間は変更できないという制約があります。

出典:No.6505 簡易課税制度(国税庁)

2割特例の計算方法

2割特例は、インボイス制度の導入を機に、免税事業者から課税事業者になったフリーランスの負担を軽減するために設けられた、期間限定の特例措置です。この特例は、2023年10月1日から2026年9月30日までの日の属する課税期間において適用可能です。

計算式は以下の通りです。

消費税納付額=(課税売上高×税率)×20%

この方法は、売り上げにかかる消費税額の2割を納税額とするものです。サービス業(みなし仕入率50%)やその他の事業(同60%)など、多くのフリーランスにとって、簡易課税制度を選択するよりも納税額が少なくなる可能性が高い制度です。

事前の届出が不要で、確定申告時に適用を選択できる手軽さがメリットです。また、適用期間内であれば、毎年一般課税や簡易課税と比較して有利な方法を選択できます。ただし、あくまで時限的な措置であるため、特例が終了する2026年10月以降の納税戦略も視野に入れておく必要があります。

出典:2割特例(インボイス発行事業者となる小規模事業者に対する負担軽減措置)の概要(国税庁)

フリーランスの消費税の申告・納税の流れ

消費税の納税義務者となった場合、定められた手順に従って申告と納税を行う必要があります。所得税の確定申告とは異なる手続きや期限が設定されているため、一連の流れを正確に把握しておくことが重要です。ここでは、5つのステップに分けて具体的に解説します。

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1.納税義務の有無を確認する

最初のステップは、そもそもその年に納税義務があるのかを再確認することです。前述の「フリーランスが消費税を納める必要があるのはどんなとき?」のセクションで解説した4つの条件(基準期間の売上、特定期間の売上と給与、課税事業者選択、インボイス登録)に照らし合わせ、ご自身が課税事業者であるかを明確にします。この確認がすべての手続きの出発点となります。

2.消費税の計算方法を決定する

納税義務があることを確認したら、次にどの計算方法で納税額を算出するかを決定します。「一般課税」「簡易課税」「2割特例」の3つの選択肢の中から、自身の事業規模や経費構造、事務負担などを総合的に勘案し選択します。簡易課税制度を選択する場合は、事前の届出が必要な点に注意しましょう。

3.消費税額を算出する

計算方法を決定したら、その方式に従って具体的な納税額を計算します。会計ソフトを利用している場合、日々の取引を正しく入力していれば、消費税額は自動的に集計されることがほとんどです。手計算で行う場合は、1年間の課税売上と課税仕入れ(一般課税の場合)を正確に集計し、選択した計算式に当てはめて算出します。この段階で、計算ミスがないように慎重に作業を進める必要があります。

4.申告書を作成・提出する

納税額が確定したら、消費税の確定申告書を作成します。申告には「消費税及び地方消費税の申告書(第一表・第二表)」に加え、計算の根拠を示す付表などが必要になります。これらの書類は国税庁のウェブサイトからダウンロードできるほか、会計ソフトを使えば自動で作成することも可能です。

もし中間消費税を払っている場合は、支払いをした旨も忘れず記載しましょう。

作成した申告書は、納税地の所轄税務署に提出します。提出方法は、e-Tax(電子申告)、郵送、税務署窓口への持参のいずれかを選択できます。個人事業主の申告期限は、課税期間の翌年3月31日です。所得税の申告期限(3月15日)とは異なるため、混同しないように注意が必要です。

出典:【消費税及び地方消費税の申告等】

5.消費税を納税する

申告書の提出とあわせて、算出した消費税額を納付します。納付期限も申告期限と同じく、翌年の3月31日です。納付方法には、金融機関や税務署の窓口での現金納付のほか、振替納税、ダイレクト納付、クレジットカード納付、スマホアプリ納付など、様々な選択肢があります。

万が一、申告や納税が期限に遅れてしまうと、ペナルティとして附帯税が課されます。

期限内に申告しなかった場合は無申告加算税、申告額が本来より少なかった場合は過少申告加算税が課されます。

さらに、意図的な隠蔽や仮装があったと判断されると、より税率の高い「重加算税」が適用されます。加えて、納付が遅れた日数に応じて、利息に相当する「延滞税」も発生します。

これらのペナルティは大きな負担となるため、期限の遵守が重要です。

出典:主な国税の納期限(法定納期限)及び振替日(国税庁)第2条関係 定義(国税庁)

課税事業者から免税事業者に戻るときに必要な手続き

事業環境の変化により、課税事業者から免税事業者に戻りたいと考えるケースもあります。たとえば、売上が減少し1,000万円を下回ったり、インボイス発行の必要性がなくなったりした場合です。しかし、自動的に免税事業者に戻るわけではなく、適切な手続きを踏む必要があります。その手続きは、「なぜ課税事業者になったのか」という理由によって異なります。

一度課税事業者になると、特定の条件を満たさない限り、すぐに免税事業者に戻れない可能性がある点に注意が必要です。このルールを理解せずにいると、意図せず課税事業者のままでいることになりかねません。

具体的には、以下の3つのケースに応じた届出書を提出する必要があります。

課税事業者になった理由

提出する届出書

主な注意点・ルール

基準期間の課税売上高が1,000万円超

消費税の納税義務者でなくなった旨の届出書

・事由が生じたら速やかに提出・特定期間の判定には注意が必要

自ら課税事業者を選択

消費税課税事業者選択不適用届出書

・原則2年間の継続適用義務あり
・免税事業者に戻ろうとする課税期間の初日の前日までに提出

インボイス制度登録

適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める旨の届出書

・戻りたい課税期間の15日前までに提出
・ケースにより2年縛りの適用あり

出典:D1-12 消費税の納税義務者でなくなった旨の届出手続(国税庁)D1-70 適格請求書発行事業者の登録の取消しを求める手続(国税庁)

海外取引があるフリーランスの消費税の扱い

グローバル化が進む現代において、海外のクライアントと直接取引を行うフリーランスもいます。デザイン制作、コンサルティング、IT開発などのサービスを海外企業に提供する場合、日本の消費税をどのように扱えばよいのかは重要な論点です。

このような取引の多くは「輸出免税」の対象となる可能性があり、消費税は課されない場合があります。

これは、消費税が日本の「国内で消費されるもの」に課税するという原則に基づいているためです。海外で消費されるサービス(役務の提供)には、日本の消費税を課さないという考え方です。具体的には、「非居住者に対する役務の提供」が輸出免税の対象となります。

この制度はフリーランスにとって2つの大きなメリットをもたらします。

まず、海外クライアントに対して消費税を請求する必要がありません。また、もしあなたが課税事業者である場合、その海外向けの仕事のために国内で支払った必要経費にかかる消費税は、確定申告を通じて還付を受けられる可能性があります。

ただし、輸出免税の適用を受けるためには、その取引が確かに海外の非居住者向けに行われたことを証明する書類を保存しておく義務があります。税務調査などで提示を求められた際に、証拠がなければ免税が認められない可能性があります。

保存すべき書類としては、以下のようなものが挙げられます。

  • 契約書:海外クライアントとの間で交わした業務委託契約書など
  • 請求書:クライアントに発行した請求書の控え
  • 納品物や成果物:提供したサービスの内容がわかるもの
  • メールなどの通信記録:取引の経緯がわかるもの

これらの書類を整理し、7年間保存することが求められます。海外との取引は、国内取引とは異なる税務上のルールが適用されることを理解し、適切な記録管理を徹底することが不可欠です。

出典:No.6567 非居住者に対する役務の提供(国税庁)No.5930 帳簿書類等の保存期間(国税庁)

インボイス制度とは?消費税に与える影響とフリーランスが対応すべきポイント

2023年10月1日に開始されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)は、フリーランスの消費税に関する環境を根本的に変えました。この制度は請求書の書式変更にとどまらず、事業戦略やクライアントとの関係、収益構造に影響を与える制度と考えられます。その本質を理解し、戦略的に対応することが、今後の事業継続の鍵を握ります。

出典: インボイス制度について(国税庁)

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インボイス制度の概要

インボイス制度の核心は、消費税の「仕入税額控除」の仕組みにあります。事業者が納める消費税は、売り上げで預かった消費税から、仕入や必要経費で支払った消費税を差し引いて計算されます。この差し引く行為が「仕入税額控除」です。

インボイス制度導入後は、この仕入税額控除を適用するために、原則として「適格請求書(インボイス)」の保存が必要になりました。そして、この適格請求書を発行できるのは、税務署に登録した「適格請求書発行事業者」だけです。つまり、インボイス制度とは、仕入税額控除のルールを厳格化するための仕組みといえます。

インボイス制度が消費税に与える影響

この制度がフリーランスに与える最大の影響は、取引先(買い手)の税負担を通じて現れます。もしフリーランスが免税事業者のままで、適格請求書発行事業者として登録していない場合、そのフリーランスは適格請求書を発行できません。

その結果、取引先であるクライアント(課税事業者)は、そのフリーランスに支払った報酬にかかる消費税相当額を、自社が納める消費税額から控除できなくなります。これは、実質的にクライアントの納税額が増加することを意味します。

たとえば、クライアントが免税事業者のフリーランスに11万円(本体価格10万円+消費税相当額1万円)の報酬を支払ったとします。制度導入前は、クライアントはこの1万円を仕入税額控除できましたが、導入後は原則として控除できなくなります。

つまり、クライアントにとっては、同じ11万円の支払いでも、実質的なコストが1万円増加するのと同じ効果をもたらすのです。

フリーランスがインボイス制度に対応すべきポイント

この状況を踏まえ、フリーランスは大きく分けて2つの選択肢から、対応方法を選択する必要があります。

選択肢

メリット

デメリット

適格請求書発行事業者として登録する

課税事業者であるクライアントとの取引を維持しやすくなります。適格請求書を発行できるため、クライアントは安心して仕入税額控除を行えます。

売上が1,000万円以下であっても課税事業者となり、消費税の申告・納税義務が発生します。これにより、手取り収入が減少し、経理事務の負担も増加します。

免税事業者のままでいる

新たに消費税を納める必要はなく、事務負担も増えません。売上が1,000万円以下のままであれば、納税義務は発生しません。

課税事業者のクライアントから、取引の継続を敬遠されたり、値引き交渉をされたりするリスクがあります。

どちらを選択すべきかは、自身の事業内容やクライアントの属性によって異なります。「クライアントのほとんどが一般消費者や免税事業者である」「提供しているサービスが唯一無二で、代替が難しい」といった場合は、免税事業者のままでいる選択も十分に考えられます。一方で、主要な取引先が課税事業者である場合は、登録を検討する状況が多いでしょう。この選択は「税務」だけでなく、「経営」の観点からも考え、自身の事業の将来像を踏まえて判断することが望ましいでしょう

フリーランスが知っておくべきインボイス制度に関する今後の動向

インボイス制度への対応は、一度決めれば終わりというわけではありません。制度には経過措置が設けられており、その内容は時間とともに変化していきます。特に免税事業者との取引に関するルールは段階的に厳しくなるため、数年先を見越した長期的な事業計画が重要です。現状は制度移行の「猶予期間」にあたり、この期間の対応次第で、フリーランスの将来に影響を与える可能性があります。

2026年10月1日|免税事業者からの仕入れに関する仕入税額控除が50%に縮小

現在、インボイス制度には、免税事業者と取引する課税事業者の負担を緩和するための経過措置が設けられています。

2026年9月30日までは、クライアントは免税事業者であるフリーランスに支払った報酬についても、消費税相当額の80%を仕入税額控除として計上できます。これにより、クライアントの税負担増は本来の額の20%に抑えられています。

しかし、2026年10月1日からは、この控除割合が50%に縮小される予定です。つまり、クライアントが免税事業者と取引する場合の経済的な負担が、現在よりも大きくなることを意味します。免税事業者のままでいるフリーランスにとっては、クライアントからの価格交渉や取引条件の見直しを求められる可能性が、今よりも高まると考えられます。

出典:免税事業者等からの課税仕入れに係る経過措置(国税庁)

2029年10月1日以降|免税事業者からの仕入れに関する仕入税額控除ができなくなる

経過措置の最終段階は2029年10月1日です。この日以降、免税事業者からの仕入れについては、仕入税額控除が一切できなくなります(控除割合0%)。

課税事業者であるクライアントにとっては、免税事業者との取引が税務上最も不利な状態になることを意味します。フリーランスが免税事業者のままでいる場合、クライアントは報酬に含まれる消費税相当額を全額負担することになります。

フリーランスの消費税に関するよくある質問

ここでは、フリーランスが消費税に関して抱きがちな具体的な疑問について、Q&A形式で解説します。

Q1.課税事業者にいつ切り替えるべき?

「いつ」という画一的な答えはなく、「自身の事業にとって、登録するメリットがデメリットを上回ったとき」が切り替えるべきタイミングです。その判断を下すために、以下の点を総合的に評価しましょう。

  1. クライアントの属性:主要なクライアントが課税事業者で、適格請求書の発行を強く求めているか。
  2. 取引への影響:実際に取引の打ち切りの可能性があったり、厳しい価格交渉を受けたりしているか。
  3. 事業の将来性:今後、課税事業者をメインターゲットに事業を拡大していく計画があるか。
  4. 設備投資の計画:高額な機材購入などを予定しており、消費税の還付を受けたいか。

これらの問いに対して「はい」と答える項目が多いほど、課税事業者への切り替えを前向きに検討すべき状況にあると言えます。

Q2.クライアントからインボイスを求められたらどうする?

クライアントから「インボイスを発行できないなら、消費税分10%を値引きしてほしい」と一方的に要求されたとしても、安易に受け入れる必要はありません。

独占禁止法や下請法では、優越的な地位を利用した一方的な価格決定は問題となる可能性があるためです。

一方的な要求を飲むのではなく、双方が納得できる着地点を探る協力的な姿勢を見せることで、建設的な話し合いに導けます。

消費税への対応は早めに準備しよう

本記事では、フリーランスを取り巻く消費税の計算方法からインボイス制度という新たな経営環境への対応策まで多角的に解説しました。

消費税への対応は、避けては通れない道です。しかし、単なる負担と捉えるのではなく、自身の事業を見つめ直し、より洗練されたビジネスパーソンへと成長する好機と捉えることもできます。早めに準備をし、適切に消費税の対応をしましょう。

(監修日:2025年8月8日)

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山本 聡一郎氏

山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士

山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。

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