フリーランスが地方企業の案件を獲得するには?メリットや注意点・案件獲得方法を解説

リモートワークの普及に伴い、場所にとらわれないはたらき方が可能になった今、地方企業の案件に注目するフリーランスが増えています。しかし、案件の探し方や自身のスキルの活かし方に悩む人も多いのではないでしょうか。
本記事では、フリーランスが地方企業の案件を獲得する際に役立つ方法やメリット、注意点を整理して紹介します。地方移住という選択肢のメリット・注意点も紹介するので、地方企業の案件に興味がある人はぜひ参考にしてみてください。
地方企業の案件がフリーランスから注目されている背景

近年、フリーランスの間で地方企業の案件への関心が高まっています。
HiProの「副業・フリーランス人材白書2025」の調査では、7割以上のフリーランスが地方企業の案件に「興味がある」と回答しています。

なぜ今、多くのフリーランスが地方に目を向けているのでしょうか。その背景には、社会構造の変化と企業が抱える課題が深く関わっています。
リモートワークが普及して都市部からでも地方案件に携わりやすくなっているため
地方案件が注目される要因の一つは、リモートワークの急速な普及です。
総務省の「令和6年版 情報通信白書」によると、2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、テレワークを導入する企業は大幅に増加しました。現在では約半数の企業が導入しています。

この変化により、フリーランスは都市部に住みながら、地方企業のプロジェクトに参画することが容易になりました。
かつては物理的な距離が大きな壁となっていましたが、現在ではオンライン会議やチャットツールを活用することで、場所にとらわれず比較的円滑なコミュニケーションがしやすくなっています。
自身のライフスタイルを変えることなく、故郷や思い入れのある地域の活性化に貢献できる新しいはたらき方を実現しやすくなっています。
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地方企業の労働力不足が顕著になっているため
もう一つの背景として、地方企業が抱える労働力不足が挙げられます。
HiProの調査によれば、地方の大企業の70%以上、地方の中小企業でも60%以上が労働力不足を実感しています。

多くの地方企業は、労働力不足を感じており、その解決策として外部の専門家であるフリーランスに期待を寄せています。これはフリーランスにとっては、自らの専門性を発揮し、企業の成長に寄与できる機会となり得ます。
フリーランスとして地方案件を獲得するメリット
地方企業の案件には、都市部の案件とは異なる独自の魅力とメリットが存在します。スキルの活かし方、社会貢献、そして自己成長の観点から、地方案件に挑戦する価値は大きいといえるでしょう。
ここでは、フリーランスが地方案件を獲得することで得られる具体的な3つのメリットを解説します。
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本業で培ったスキルやノウハウを提供できる
本業で活用しているスキルやノウハウが、企業によっては革新的な解決策となることがあります。たとえば、最新のデジタルマーケティング手法やデータに基づいた経営戦略の立案、業務効率化ツールの導入支援などの専門知識を求めている企業は少なくありません。
自分のスキルが企業の課題解決に結びつき、事業成長の一助となることは、大きなやりがいにつながるでしょう。
クライアントのビジネスに深く入り込み、伴走者として成果を出す経験は、フリーランスとしての実績をより強固なものにしてくれるでしょう。
都市部に住みながら思い入れのある地方に貢献できる
リモートワークの普及により、地方移住をしなくても、生まれ故郷や好きな地域に関わる道が広がっています。たとえば、普段はリモートで業務を進め、週末だけ故郷に帰ってプロジェクトの会議に参加するなど、柔軟なはたらき方も可能です。
自身のスキルを活かして思い入れのある土地の活性化に関わることは、金銭的な報酬にとどまらないやりがいや満足感につながることがあります。
キャリア形成と地域貢献を両立できる点は、地方案件ならではの魅力の一つといえるでしょう。
都市部の案件では得られにくい新たな知識を習得できる
地方には、都市部ではなかなか経験できないユニークなビジネスチャンスが数多く存在します。
たとえば、農業や漁業などの一次産業とITを組み合わせたプロジェクトや、伝統工芸品を海外市場に展開するための越境ECサイト構築などが挙げられます。地方には、その土地ならではの課題解決に携わる機会が多数眠っているのが現状です。
こうした案件を通じて、これまで触れることのなかった業界知識やビジネスモデルを学べ、フリーランスとしてのスキルセットを大きく広げることが可能です。
自身の市場価値を高める上で、地方案件は貴重な経験となるでしょう。
フリーランスとして地方案件を獲得する際の注意点
地方案件には多くのメリットがある一方で、事前に理解しておくべき注意点も存在します。
ここでは、地方案件を探す際に心に留めておきたい3つのポイントを解説します。
都市部に比べて募集している案件数が少ない
地方は都市部に比べて企業数そのものが少ないため、募集される案件の総数も限られます。特に、ニッチな専門分野や最先端技術を扱う案件に出会うのは、難しいかもしれません。
そのため、都市部と同じ感覚で案件を探すと、選択肢の少なさに戸惑う可能性があります。複数のマッチングサービスやエージェントに登録したり、直接営業をかけたりと、多角的なアプローチで案件を探す姿勢が求められます。
希望の案件に巡り合うためには、根気強く情報収集を続けることが大切です。
対面での業務がある場合は交通費や時間的コストがかかる
リモートで完結する案件が増えているとはいえ、プロジェクトの重要な局面やミーティングなど、対面でのコミュニケーションを求められるケースも少なくありません。
クライアントが地方にある場合、移動にかかる交通費や時間は大きな負担となる可能性があります。契約前に、打ち合わせの頻度や交通費の負担について確認しておくことが望ましいです。
交通費が自己負担となる場合は、案件を受けるかどうかの判断材料の一つとして慎重に検討する必要があるでしょう。
報酬の予算に制約があるケースもある
企業の規模や事業のフェーズによっては、報酬の予算に一定の制約がある場合があります。特に地域の中小企業や成長途中の企業では、都市部の大手企業とは異なる条件で案件が提示されることも少なくありません。そのため、スキルに見合った報酬を希望しても、交渉に時間を要するケースがあります。
ただし、案件の価値は必ずしも報酬額だけで判断できるものではありません。以下のように、金銭面を超えた魅力を持つ案件も多く存在します。
- 裁量権が大きく、自由に提案できる
- 長期的なパートナーとして関係を築ける
- 地域社会に貢献できる実感を得やすい
報酬額はもちろん大切ですが、業務内容ややりがい、将来のキャリアへのつながりなど、幅広い視点から案件を評価し獲得する案件を選ぶと良いでしょう。
フリーランスが地方で案件を獲得する方法
地方案件の魅力と注意点を理解した上で、次に重要になるのが具体的な案件獲得の方法です。都市部とは異なるアプローチが有効な場合も多く、複数のチャネルを組み合わせて活用することが成功につながる一因となります。
ここでは、実践的で効果の高い4つの方法を紹介します。
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リモート・地方案件に強い副業マッチングサービスに登録する
近年、地方創生の流れを受けて、地方企業の案件を専門的に扱うマッチングサービスやフリーランスエージェントも一定数存在します。こうしたサービスは、地方企業が抱える課題やニーズを深く理解しており、あなたのスキルに合った案件に出会える可能性が高いでしょう。
また、リモート案件に特化したプラットフォームも、居住地に関わらず地方案件を探す上で有効です。エージェントの場合、専門のコンサルタントが介在することで、報酬や契約条件の交渉を代行してくれる場合もあり、安心して案件探しを進められるでしょう。
まずは複数のサービスに登録し、どのような案件があるのか情報収集から始めることをおすすめします。
クラウドソーシングで地元の小規模案件から実績を積む
クラウドソーシングサイトは、全国各地から案件が募集されており、地方の小規模な案件を見つけやすいプラットフォームです。いきなり大型案件に挑戦するのが不安な場合は、まず単発の小さなプロジェクトから始めてみるのが良いでしょう。
地元の飲食店のWebサイト更新や、商店街のイベントチラシ作成など、地域に密着した案件を通じて実績を積めます。こうした小さな成功体験を積み重ねることで、ポートフォリオが充実し、クライアントからの信頼も得やすくなります。
ポートフォリオをまとめて地元企業に直接営業をする
もしアピールできる明確な実績があるなら、興味のある地方企業に直接アプローチする「直接営業」も有効な手段です。地方企業の中には、ノウハウがなかったり、潜在的なニーズに気づいていなかったりするケースも少なくありません。提案をすることで、新たなビジネスチャンスにつながる可能性があります。
そのためには、自身のスキルや実績、貢献できることを分かりやすくまとめたポートフォリオの準備が不可欠です。
企業のWebサイトを分析して改善点を提案したり、SNS運用の課題を指摘したりと、具体的な提案を添えて連絡することで、担当者の目に留まりやすくなるでしょう。
インキュベーション施設など複数企業が集まる場所で人脈を築く
地方都市には、スタートアップ企業やフリーランスが集まるインキュベーション施設、コワーキングスペースが存在します。こうした場所に積極的に足を運び、地域の起業家やビジネスパーソンとのネットワークを築くことも、案件獲得につながる重要な活動です。
イベントや勉強会に参加して情報交換をしたり、自身の専門性をアピールしたりすることで、思わぬところから仕事の相談が舞い込むことがあります。
オンラインでのつながりも重要ですが、地域に根ざした活動をする上では、顔の見える関係づくりが信頼につながります。地域コミュニティの一員として積極的に関わることで、新たな機会を引き寄せる可能性が高まるでしょう。
最初は都市部で経験を積み、その後地方移住をすることも選択肢の一つ
フリーランスとして活動するうえで、「まずは都市部でフリーランスとしての基盤を固め、その後に地方へ移住する」というキャリアパスも挙げられます。
都市部で多様な案件をこなし、専門スキルと実績を十分に高めておくことで、地方に移住した際に自身の市場価値を最大限にアピールすることが可能です。
また、都市部のクライアントとの関係を維持したまま移住すれば、収入の基盤を確保しながら、新たな地方のクライアント開拓に挑戦できます。経済的な不安を軽減することにもつながるでしょう。
フリーランスとして地方移住をするメリット・注意点
地方移住は、フリーランスにとってはたらき方や暮らし方を大きく変える転機となります。都市部にはない魅力的なメリットがある一方で、環境の変化に伴う課題も存在します。
ここでは、移住を決断する前に知っておきたいメリットと注意点を整理して解説します。
フリーランスとして地方移住をするメリット
地方移住のメリットは、生活コストを抑えられる点です。
特に家賃は都市部に比べて安い場合が多く、固定費を削減できるため、長期的な視点でキャリアを考えたり、新たなスキル習得に自己投資したりする経済的な余裕を生みやすくなります。
地域のコミュニティに深く関わることで、新たな人脈やビジネスチャンスが生まれることも少なくありません。
フリーランスとして地方移住をする際の注意点
一方で、地方移住には慎重な準備が必要です。
まず、収入面の不安が挙げられます。安定した収入を得るために、移住前にリモートで継続できる案件を確保しておいたり、十分な貯蓄を用意しておいたりすることが賢明です。
また、交通の便やインターネット環境も事前に確認すべき重要なポイントです。場所によっては、都市部へのアクセスが悪かったり、高速な通信回線が整備されていなかったりする場合があります。さらに、地域独自の文化や人間関係に馴染む努力も必要です。
移住フェアに参加したり、短期間の「お試し移住」を経験したりすることで、現地の情報を十分に収集しておくと安心です。
地方移住ならではの案件獲得方法
地方に拠点を移すと、その土地ならではのユニークな案件獲得のチャンスが生まれます。地域の一員として深く関わることで、都市部で生活している頃には見えなかったニーズや課題を発見する可能性が高まります。
ここでは、移住したフリーランスだからこそ実践できる、地域に根ざした3つの案件獲得方法を紹介します。
自治体の広報・観光プロモーションを活用する
多くの自治体は、地域の魅力を発信し、移住者や観光客を呼び込むための広報活動に力を入れています。しかし、職員だけでは専門的なノウハウが不足していることも少なくありません。
移住者目線で地域の魅力を伝えるWebコンテンツを作成したり、SNSを活用したプロモーション戦略を提案したりと、自治体のプロジェクトに参画できる可能性があるでしょう。
自治体のWebサイトで公募情報をチェックしたり、直接担当課に企画を持ち込んだりすることで、地域貢献と自身のビジネスを両立させることが可能です。
商工会議所や地域の産業団体と連携する
商工会議所や地域産業団体は、地元企業や生産者を支援し、地域産業の発展を担う重要な組織です。これらの団体が主催するセミナーや交流会に参加し、会員の課題やニーズに耳を傾けることで、新たな案件につながる可能性があります。
たとえば、商工会議所と連携して中小企業向けのIT活用セミナーで講師を務めるといった取り組みが考えられます。ただし、案件化には地域ごとの事情やニーズを丁寧に把握することが重要です。
地方案件を獲得したいフリーランスによくある質問
地方でのキャリアを検討するフリーランスが抱きやすい疑問について、Q&A形式で解説します。
Q1.地方での人脈が無くても案件は獲得できる?
人脈がなくても案件獲得は可能です。もちろん人脈があるに越したことはありませんが、ゼロからのスタートでも問題ありません。
本記事で紹介したように、地方案件に特化したマッチングサービスやクラウドソーシングを活用すれば、オンラインで最初の接点を作れます。そこで実績を積み、信頼を得ることで、徐々に地域内での紹介や口コミにつなげることも可能です。
移住した場合は、商工会議所やコワーキングスペースなどのコミュニティに積極的に参加することで、効率的に人脈を広げることが可能です。
Q2.地元企業から信頼を得るために重要なポイントは?
専門性に加え、地域の文化や慣習を尊重する姿勢が重要です。高いスキルを持っていることは大前提ですが、それだけで信頼されるわけではありません。地方では、ビジネスライクな関係性以上に、人としてのつながりが重視される傾向があります。
地域のイベントに顔を出したり、地元のキーパーソンと積極的にコミュニケーションを取ったりと、地域コミュニティの一員になろうとする姿勢が大切です。
また、企業の課題に対して真摯に耳を傾け、同じ目線で伴走するパートナーとしてのスタンスを示すことが、長期的な信頼関係の構築につながります。
適切な知識を身につけ、地方ではたらくフリーランスとしてキャリアを築こう
本記事では、フリーランスが地方企業の案件を獲得するための具体的な方法、メリットや注意点、そして地方移住という選択肢について多角的に解説しました。
地方には、都市部とは異なる新しいキャリアの可能性が広がっています。単に仕事を得るだけでなく、地域社会に貢献してより豊かなライフスタイルを実現することも可能です。
まずは地方案件に特化したマッチングサイトを覗いてみるなど、小さな一歩から行動を起こしてみましょう。
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