マーケティング戦略とは?重要性や企業の成功事例をご紹介
売上成長を促す考え方として、「マーケティング戦略」が現代の主流となりました。目まぐるしく変わる顧客ニーズをすばやくキャッチアップできるとあり、顧客獲得の「質」と「量」の効率的な向上を図れる手法だからです。企業からユーザーへの一方的なコミュニケーションだけで成り立っていた従来の販促活動は、もはや時代の遺産となりつつあります。 当コラムは、マーケティング戦略の必要性にはじまり、実践編として具体的なフローと、マーケティング戦略による販促事例をご紹介します。存在を知るだけに留まらず、施策の一環として組み込むきっかけとなり、市場競争を生き残る糧としていただければ幸いです。 _ マーケティング戦略とは? マーケティングとは、より購買意欲を高めたり、実際に購買してもらうための、いわば売れる仕組みづくりのこと。そして「マーケティング戦略」とは、このマーケティングの考え方を売上戦略として組み込み、売上成長を図ることを指します。 具体的には、「誰に対して」「どのような価値を」「どのように提供するか」の3軸を決定することを、マーケティング戦略として呼ぶケースがほとんどです。 経営戦略との違い どちらも広い意味では「企業成長」という共通項を持ちますが、戦略の対象に違いが現れます。 マーケティング戦略…対象は顧客。どのようにモノを購買してもらうかを考える。 経営戦略…対象は自組織。リソース(ヒト・モノ・カネ・情報)を最適分配し、自社の成長を促す。 さらにいえば、経営戦略の中にマーケティング戦略があり、売上を成長させることによって経営戦略のPDCAを潤滑に回せるようになるのです。 マーケティング戦略が重要とされる背景 平たくいえば、あらゆる正・負の情報を手に入れることがたやすくなり、顧客に製品・サービスを選ぶ優位性が生まれたからといえます。 従来であれば、製品・サービスに対するPR手法はほぼマスメディアに限定されており、情報発信は限りなく一方通行に近しい状態でした。つまり、いいものをつくり、いい情報をPRすれば、顧客の購買意欲が上がる仕組みが自然とできていたのです。 しかし、インターネットが広く浸透し、顧客は必要の有無にかかわらず大量の情報を受け取れる立場となりました。それだけでなく、現代ではさまざまな技術の発展により、コストや品質で、製品に明確な差別化を図ることも難しくなっています。 マーケティング戦略が必要とされる理由は、顧客が真に求める情報を、真に求める手段で提供するための手段を導く考え方であり、コスト・品質での差別化が難しい今、顧客に対して自社製品の魅力を最短ルートで伝えるための手段でもあるからなのです。 マーケティング戦略で得られるメリット 大きく分けて、対社内と対社外、2つの側面にメリットが生まれます。 対社内…効率的な収益増加 <メリット一例> 限られた社内リソースで売り上げを増加できる 認知拡大による問い合わせの増加 マーケティング戦略には、いわゆる「営業のムダ打ち」を減らす側面があります。従来は、企業から一方的な営業をかける手法が主流でしたが、マーケティング戦略を駆使することで、より熱度の高い顧客を狙い、効率的にアプローチできるようになります。 対社外…多様化するユーザーニーズに対応できる <メリット一例> 変化しやすいユーザビリティへ柔軟に対応 (間接的に)顧客の好感度上昇 顧客の真に求めるニーズを適切に把握することができる分、製品・サービスのブラッシュアップ、ひいては売上成長のPDCAサイクルを早く回せるようになります。また、顧客が望む最適な手法で情報が届くことにより、「煩わしい」「求めていない」といった、営業に対するマイナスイメージを減らす側面もあります。 具体的なフローを6ステップで解説 概要をご理解いただいたところで、いよいよマーケティング戦略の実践編に移ります。 まずは基本的なマーケティング戦略のフローと、次項でステップごとに活用されるフレームワークの種類をご紹介します。 1:自社商品・サービスの環境分析 自社が置かれている環境から、自社の強みと弱みを洗い出すフェーズです。はじめての場合は、フレームワークを活用すると堅実に分析を進めることができます(セグメンテーションと呼ばれる)。 とはいえ、フレームワークはともすると「机上の空論」にもなりがちです。フレームワークで土台を作った後は、市場調査やアンケートなどを実施し、顧客の生の声をヒアリングすることで、より根拠を持った分析が可能となります。 2:市場・ターゲットの選定 自社商品・サービスが置かれている環境を明確にしたところで、実際に売り出す市場や、どのようなターゲットなら購入・活用の期待値が高いかを検討します(ターゲティングと呼ばれる)。 こちらもフレームワークの活用が効果的ですが、当フェーズの分析を誤ると、その後の実行フェーズに大きな影響を及ぼすため、慣れないうちは専門のマーケターの力を借りる方が賢明です。 3:立ち位置とゴールの明確化・競合との差別化 どの市場で売り込むかを決めたら、次は同じ市場に立つ競合他社との差別ポイントを洗い出します(ポジショニングと呼ばれる)。 当然ながら、万人の顧客に愛される製品・サービスの実現が難しいことは自明です。しかし、競合他社にない独自性やウィークポイントを見出すことで、顧客の購入導線を増やすための手がかりにできるのです。 4:ユーザーに提供できる価値を検討 自社製品・サービスが顧客にどのようなメリット・ベネフィットをもたらすかを検討するフェーズです(バリュープロポジションと呼ばれる)。たとえば、広告やコマーシャルのPRで謳われる宣伝文句は、当フェーズで見出したメリット・ベネフィットがそのまま起用されるパターンもあります。顧客に対して「何を伝えるか」を司るフェーズということです。 当フェーズで、直前に決めた「差別化ポイント」が役立ちます。他社にない独自性を見いだし、その独自性が顧客のニーズと合致すれば、ヒット商品となる可能性を大いに引き上げます。 5:顧客に届けるまでの手段を決定 ここまでで、「誰に」「どのような価値を」提供するかまでが確定しました。最後は「どのように」提供するか、いわゆる流通手法や価格、プロモーションなどを検討するフェーズです。製品視点だけでなく、顧客視点で受け取れるメリットも加味し検討します。 6:実行、分析、改善 戦略を実行し、課題を見つけて改善に移すフェーズです。 課題と改善点を見つけるカギとしては、「KPI」の設定が重要です。KPIとは、最終的に到達すべき数値目標に達するうえで必要な、プロセスごとの目標数値です。プロセスごとに目標を置くことで、どのプロセスに問題があったのかが明確となります。 フレームワークの種類 3C分析 「Customer(顧客ニーズや購買行動、市場規模、市場の成長性など)」、「Competitor(各競合他社の市場シェア、代替品の可能性など)」「Company(自社の資本力や市場シェア、サービス・製品の特徴など)」の3つから、自社の立ち位置を洗いだす手法です。先項のフローにおける、「ステップ1」に該当します。 PEST分析 「Politics(法律や規制の動向など)」、「Economics(賃金や物価、金利、家計消費の動向など)、Society(口動態や流行、宗教など)」、「Technology(技術革新やインフラの整備状況など)」の頭文字を取った略称です。自社の今後のビジネス展開におけるチャンスや脅威を、発見・把握する際に効果を発揮する手法で、先項のフローにおける「ステップ1」に該当します。 5フォース分析 3つの内的要因(競争企業間の敵対関係、供給企業の競争力、買い手の交渉力)と2つの外的要因(代替品・代替サービスの脅威、新規参入業者の脅威)から、自社の競争力やライバル企業の脅威、参入後の収益性などを検討できる分析手法です。先項のフローにおける、「ステップ1」に該当します。 SWOT分析 SWOTは、Strengths(強み)、Weakness(弱み)、Opportunities(機会)、Threats(脅威)の頭文字を取った略称で、外部環境と内部環境、それぞれの角度から複合的に自社製品・サービスの立ち位置を俯瞰して把握する手法です。先項のフローにおける、「ステップ1」に該当します。 STP分析 「Segmentation(細分化された市場)」、Targeting(目標の市場)、Positioning(自社の立ち位置)の頭文字を取った略称です。成長が望める市場や自社の立ち位置を把握できる手法であり、先項のフローにおける、「ステップ1〜3」に該当します。 バリューチェーン分析 バリューチェーン分析は、製品やサービスが顧客に渡る間に、どのプロセスにおいて価値が生まれるかを分析できるマーケティング分析手法です。先項のフローにおける、「ステップ4」に該当します。 マーケティングミックス(4P) Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の頭文字を指し、製品視点から自社製品・サービスの優位性や独自性を分析する手法です。先項のフローにおける、「ステップ4〜5」に該当します。 マーケティング戦略の実践例 以下は、とある商品の特性を例に、マーケティング戦略の実践例としてご紹介します。 乳酸菌飲料の事例 ■誰に対して? 手頃に、腸内環境を整えて健康になりたいと意識しはじめた消費者 ■どのような価値を? 整腸作用による便通の改善 免疫力の向上 コレステロールの低下 ■どのように提供するか? 効能に見合う、やや高めのコスト設定(「良品質」のブランディング効果) その分、無料サンプルで手にする機会を増やす(トライアルからリピーターの獲得) コンビニやスーパーで当たり前のように見かけるようになった乳酸菌飲料。菌活ブームの影響もあり、乳酸菌の効能に着目している人に向けて、腸内環境を整える効能を高めた製品を提供。「毎日の身体の調子を、飲んで底上げすることができる」ことをベネフィットとし、健康志向のターゲットを獲得することに成功しました。 ハンバーガーショップの事例 ■誰に対して? 一度は食べたことがあるものの、しばらく足が遠のいている消費者 ■どのような価値を? 生産過程から提供までにおける、安全性の担保 来店によって得られる顧客体験(わくわくする、面白いなど) ■どのように提供するか? 生産情報の開示(顧客に対する、安全性の担保と証明) 店舗と位置情報サービスとの連携(来店による顧客体験と購買誘導) 「安い」を売りにしていたハンバーガーショップですが、プラスアルファで、低価格でも安心して食べられる食品であることの訴求や、単に食べて帰るのではなく「来店がたのしい」と思える顧客体験の導線づくりやプロモーションを行い、業績を回復することに成功しました。 パーソナルジムの事例 ■誰に対して? 体力づくりではなく、身体を本気で絞りたい、と願う人 ■どのような価値を? 短期間で理想の体型づくりを実現 ■どのように提供するか? 高額の料金設定と返金保証(「必ず成功させる」という信頼を創出) 実際のビフォーアフター事例と、端的なキャッチコピーによるプロモーション 当事例の成功要因としては、「どのように提供するか」のフェーズがもっとも功を奏したといえます。当時まだパーソナルジムの普及度が低かったことを狙い目に、芸能人を起用し短期間で圧倒的な成果を残せることを大衆に訴求。結果として、唯一無二の立ち位置を獲得しました。 まとめ 従来、「一方通行のコミュニケーション」が国内で通用していたのは、ひとえに、サービサー側の技術力や品質が評価されていたからといえます。これらは今後、市場競争で視野に入る海外でも十分通用するものであり、国内企業における大きなアドバンテージだと考えます。 マーケティング戦略は、こうしたアドバンテージを「然るべき人に知って貰う」ための有用な手法です。いいものを生み出しても知って貰えなければ、サービサーだけでなく、ユーザーにも機会損失ととらえると、サービサーにとってマーケティング戦略を知らないことは、あまりにもったいないといえるのではないでしょうか。 まだまだ、国内でマーケティング戦略をうまく活用できている企業は少数派です。周りと差をつける第一歩として、ぜひ今から戦略を組み込む習慣をつけていただければ幸いです。