フレームワークTAG
コホート分析とは?注目される背景や活用のメリット、使えるツールを紹介
ユーザー行動を追跡・分析する手法として、マーケティング領域でよく利用されるのが「コホート分析」です。コホート分析という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのように分析を進めるのか、どのような目的に合った分析手法なのか分からないという方も多いでしょう。 本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説します。コホート分析によってマーケティング活動の最適化を図りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。 コホート分析とは コホート分析とは何か、ここでは以下3つのポイントで解説します。 コホート分析の概要 コホート分析で重要な3つの効果 コホート分析が特に有効なビジネス 順番に見ていきましょう。 コホート分析の概要 「コホート」とは、同時期に生まれたり似たような経験をしたりすることで、同じような思考や行動の傾向がある集団を指す言葉です。マーケティングにおけるコホート分析では、分析対象となるユーザーを属性や条件によってグループ分けし、その後の行動を追跡・分析します。 各グループの行動を追うことで、マーケティング活動の最適化につながるヒントが得られるため、有効な分析手法として利用されています。特にWebマーケティングにおいては、Webサイトにアクセスした時期や時間、流入元のプラットフォームなどで細かく分けられるため、ユーザーグループごとの定着率やリピート率などを正確に算出することが可能です。 ベースとなる顧客行動データは、WebサイトやSNS、メールなどから収集したものが用いられます。近年ではツールの発展によって収集できるユーザーデータの種類が増えており、コホート分析の利用価値はますます高まっています。 コホート分析で重要な3つの効果 コホート分析は統計学の分析方法の一つとして用いられてきました。統計学でのコホート分析は、主に以下3つの効果によって人々の思考・行動が影響を受けると考えられています。 年齢効果:加齢やライフステージの移行に伴うもの 時代効果:過ごした時代の社会環境によるもの コホート(世代)効果:生まれ育った時期・環境によるもの 10代と40代、昭和生まれと令和生まれなど、人々が持つ思考・行動の習慣は年齢や過ごした時代、環境によって左右される部分が少なくありません。共通項を持つグループの特徴をつかむことで、行動・意識などからくる消費行動の調査に用いられてきました。 マーケティング手法としてコホート分析を用いる際は、「特定の期間にサービス登録を完了した」「同一週にアプリをダウンロードした」というように共通項を見出してグループ分けし、分析する場合もあります。自社ビジネスの最適化につながるよう、適切なグルーピングをすることが重要です。 コホート分析が特に有効なビジネス コホート分析が活用できる代表的なビジネスとしては、以下のようなものが挙げられます。 ECサイトの運用 サブスクリプションサービス Webサイトの運用 SNSの運用 共通する特徴は、顧客との接点が継続的にあることです。ECサイトであればリピート購入、サブスクリプションサービスであれば購読の継続など、顧客に長く利用してもらうことがビジネスの成長に欠かせません。そのため、コホート分析によってユーザー行動を追跡・分析し、リピート購買や購読の継続につながるようマーケティング活動を最適化します。 ユーザー行動の傾向を把握できていれば、変化を予測したうえでの対策が可能です。例えば、月額利用料無料キャンペーン時に登録したユーザーをグルーピングしておき、無料期間の終了とともにサブスクリプションサービスを解約されないよう、キャンペーンの案内やクーポンの付与などで継続を促すといった施策が考えられます。 コホート分析が注目される背景 コホート分析が近年注目される背景としては、以下の3点が挙げられます。 サブスクリプションサービスの浸透 オンラインショッピングの拡大 SNSやWebサイトの活用拡大 順番に見ていきましょう。 サブスクリプションサービスの浸透 いまやサブスクリプションサービスは誰もが使うものとなり、動画配信サービスやレンタルサービスなどさまざまな種類が登場しています。しかし、なかには事業の継続が難しく、サービスを終了するものもあります。 サブスクリプションサービスの事業を継続するには、いかに顧客をつなぎとめるかが重要です。そこで役立つのが、コホート分析による顧客行動の把握です。顧客離れの要因を特定し、適切なタイミングで的確なアプローチを行うことで、顧客満足度を維持し、継続契約につなげます。 そのためには、顧客を特徴ごとにグルーピングし、それぞれのグループに対して適切なアプローチを検討していく必要があります。購読開始後のどのタイミングでフォローするのが良いか、解約率が高いのはどのような特徴を持つ顧客グループなのかなどを分析することで、各顧客グループに適したアプローチの検討が可能になるでしょう。 また、一部の顧客グループにポジティブな変化が生じた場合は、その要因を特定し、その他のグループにも展開するといった活用も可能です。 オンラインショッピングの拡大 オンラインショッピングの拡大も、コホート分析が注目されている背景の一つと考えられます。 オンラインショッピングの事業を成功させるには、顧客のリピーター化が重要です。リピーターを増やすためには、コホート分析を通じて顧客の購買行動の傾向を把握し、マーケティング施策に落とし込むのが効果的です。具体的な手法としては、顧客グループごとにおすすめの商品をメールで案内したり、カート内に入ったまま購入されていない商品について、適切なタイミングでリマインドしたりといった方法が考えられます。 リピーターを育成してロイヤルカスタマーを創出できれば、売上の安定だけでなく口コミなどの効果も期待できるでしょう。オンラインショッピング事業に取り組むなら、顧客理解を深めるうえでコホート分析は大いに役立つはずです。 SNSやWebサイトの活用拡大 SNSやWebサイトがビジネスに広く活用されるようになったのも、コホート分析が注目されている一つの要因です。SNSやWebサイトの活用においては顧客との継続的な接点の確保が重要であり、顧客をグルーピングしたうえで行動傾向を把握するコホート分析が役立ちます。 例えば、SNS上でフォローした時期やフォロー期間によってユーザーをグルーピングすれば、商品の購入やサービスの契約につながりやすいタイミングを把握できます。適切なタイミングでプッシュすることで、マーケティング施策の効果を高められるでしょう。 コホート分析を行う3つのメリット コホート分析を行う主なメリットは、以下の通りです。 ユーザー維持率の向上につなげられる 売上予測の精度が上がる マーケティング施策の効果検証ができる コホート分析は現状の維持・改善に役立つだけでなく、今後のビジネスに役立つ基礎データの収集にも活用できます。それぞれのメリットについて見ていきましょう。 ユーザー維持率の向上につなげられる ユーザーの維持率を高めたい場合は、コホート分析でユーザー離れの要因やタイミングを特定することで維持率向上につながるヒントを得られます。サブスクリプションサービスの契約期間やSNSのフォロー期間、商品の定期購入期間などを顧客グループごとに把握することで、必要なアクションのタイミングがつかめるでしょう。 もっとも離脱が発生しやすいタイミングやその理由を把握できれば、別の顧客グループが同じ状況に陥る前に対策をとれます。例えば、サブスクリプションサービスの契約開始から3か月目に解約が多く発生している場合は、新しく購読を開始したグループに対して、3か月目の利用が終了する少し前にクーポンを配布するなど、予防的な対策が可能です。 売上予測の精度が上がる コホート分析で顧客グループごとの行動傾向を明らかにできれば、精度の高い売上予測が立てられるようになります。例えば、ECサイトであれば初回購入後のリピート購入について、購入率やタイミング、購入金額を予測できます。また、サブスクリプションサービスであれば初回購読からの継続期間について、精度の高い予測ができるでしょう。 収集したデータは、短期的な売上の予測はもちろん、類似のサービスを新たに立ち上げる場合などにも活用できます。事業計画の立案や必要なリソースの確保に役立つはずです。 マーケティング施策の効果検証ができる コホート分析は、マーケティング施策の効果検証にも活用できます。例えば、キャンペーンをきっかけに利用を開始したユーザーの購読継続率を検証したり、同じ属性を持つ複数のグループに対して異なるタイミングでクーポンを配布し、反応率の良いタイミングを見極めたりといった使い方ができます。 マーケティング施策は、初回の実施で計画通りの効果が出ることは多くありません。コホート分析によって効果を検証し、改善を繰り返すことで、徐々にマーケティング施策の効果を高めていくことが可能です。 コホート分析に使えるツール ここでは、コホート分析に使える代表的なツールとして、以下の2つをご紹介します。 Googleアナリティクス(GA4) エクセル Googleアナリティクス(GA4) Googleアナリティクスは、Googleが提供しているWebサイトのアクセス解析ツールです。Webサイトを訪れたユーザー数が把握できるだけでなく、得られたデータを活用してさまざまな分析ができます。 例えば、自社サイトを訪れたユーザーを年齢や地域、性別といったグループに分けたうえで、コンバージョン率やサイトの再訪問率を比較すれば顧客の詳細な分析が可能です。成果の出ている顧客グループを分析し、マーケティング活動に落とし込めば、顧客の獲得効率を高められるでしょう。 エクセル エクセルに顧客のデータを入力し、グループごとに分析することも可能です。例えば、サブスクリプションサービスの利用開始日と解約日を入力し、その差をエクセル関数で算出します。特定の条件で顧客をグループ分けし、解約までにかかった平均日数を比較すれば、顧客グループごとの特徴を把握できます。 専門的なツールが必要なく、簡単な関数だけで分析できるため、前述のGoogleアナリティクスなどに精通していない方でもコホート分析を活用できるでしょう。 まとめ 本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説しました。 Webマーケティングが一般化した現代において、顧客をグルーピングしたうえで追跡・分析するコホート分析は活用の機会が増えています。特に、ECサイトやサブスクリプションサービスなど顧客との継続的な接点が重要なビジネスにおいては、コホート分析に基づくマーケティング施策の最適化が大きな効果を発揮するはずです。まずはGoogleアナリティクスやエクセルなどの身近なツールを使い、コホート分析を取り入れてみてください。 マーケティング領域には今回解説したコホート分析をはじめ、さまざまなフレームワークが存在します。抱える課題によって適切に使い分けることで、課題の特定や施策の効果を高められるでしょう。一方、テクノロジーの発達によってマーケティング活動の領域は広がっていることから、難易度も高くなり、求められる知見やノウハウも時代の変化と共に多様化していることも事実です。 マーケティングの課題を解決するには、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティング領域の強化を目指しましょう。
RFM分析とは?メリットや使い方、課題・注意点をまとめて解説
マーケティング施策の効果を高めるには、顧客それぞれの購買傾向に合ったアプローチを行う必要があります。このとき役立つのが、最終購入日・購入頻度・合計購入金額で顧客を分類する「RFM分析」です。 本記事では、RFM分析の概要やメリット、使い方を解説します。RFM分析を施策に取り入れたいと考えている方、マーケティング施策にお悩みの方は、ぜひ参考にしてみてください。 RFM分析とは RFM分析とは3つの指標に基づいて顧客をグループ分けする分析手法で、R・F・Mはそれぞれ以下の指標の頭文字から取られています。 Recency:最終購入日 Frequency:購入頻度 Monetary:合計購入金額 Recencyはその顧客が直近でいつ購入したのかによってグループ分けを行い、最終購入日が近い顧客ほど高評価とします。Frequencyとは、これまでの購入回数です。リピート購入率が高い顧客は優良顧客であると評価します。Monetaryはこれまでの合計購入金額を指し、金額が高い顧客を高評価とします。 それぞれの指標におけるグループ分けの基準やグループ数は、商品の購入サイクルや価格帯などに応じて設定しましょう。RFM分析は、顧客ID・購入日・購入金額などを含んだ購入履歴データがあればExcelでも行えます。 RFM分析を行う3つのメリット RFM分析には、以下3つのメリットがあります。 ビジネスの現状や課題を把握できる 顧客へのアプローチを最適化できる 注力すべき顧客を絞り込める それぞれのメリットについて、以下で詳しく解説します。 ビジネスの現状や課題を把握できる 顧客を3つの指標でグループ分けをすることで、顧客の購買傾向や優良顧客の人数などビジネスの現状を可視化できます。例えば、R・F・Mのすべてが高評価である優良顧客は全体の何割を占めているのか可視化することで、これまでのマーケティング戦略の成果が見えてきます。 優良顧客の割合が高ければ一定の成果が出ていると判断できますが、逆に少数の優良顧客に依存しているという事実が明らかになれば、その他顧客の育成や休眠顧客の掘り起こしが優先課題になるでしょう。 このようにRFM分析を使えばビジネスの現状や課題が明らかになるため、適切なマーケティング戦略の検討に役立ちます。 顧客へのアプローチを最適化できる 顧客の購買傾向によって、最適なアプローチの方法は異なります。例えば、購入頻度や購入金額の高い優良顧客には特別優待や限定キャンペーンの案内など、他社への流出を防ぐための取り組みが必要です。 また、「購入頻度と合計購入金額は高いにもかかわらず、最終購入日から期間が空いている」という顧客グループは休眠顧客化していると考えられ、再び購入してもらうためのアプローチが必要だと判断できます。 同じアプローチをしても、顧客の状況によって成果は変わります。RFM分析で顧客をグループ分けすることで、それぞれのグループに対する最適なアプローチの方法を検討しやすくなるでしょう。 注力すべき顧客を絞り込める 企業の人員やコストには限りがあるため、マーケティング活動は効率化が求められます。その際に役立つのが、RFM分析による「注力すべき顧客の絞り込み」です。例えば、休眠顧客にアプローチする際には、合計購入金額や購入頻度が低い顧客よりも、かつて優良顧客だった顧客にアプローチするほうが効果を見込めると考えられます。 現時点での優良顧客に対して、継続利用してもらうための施策を実行することも重要です。優良顧客の割合が高いなら、休眠顧客の掘り起こしよりも優良顧客の満足度向上に注力するほうが高い成果を得られるケースもあります。 RFM分析のグループ分けによって注力すべき顧客グループを絞り込めば、限られたリソースでより高い成果を目指せます。 RFM分析の流れを5ステップで解説 RFM分析は最終購入日・購入頻度・合計購入金額を算出してグループ分けを行うのが基本的な手順です。マーケティング活動に活かす際には、以下のステップを参考にできます。 分析の目的を明確にする データを集計・整理・入力する データを分析する 課題を特定する 改善策を立案・実行する それぞれのステップで取り組む内容について、順番に解説します。 分析の目的を明確にする まず、RFM分析の目的を明確にしておきましょう。目的が不明確なまま分析を進めると、適切なデータを集められなかったり、分析のやり直しが必要になったりするため、効率的ではありません。 RFM分析の実施を検討しているなら「昨年より売上が減少した」「実施中のマーケティング施策の成果が上がらない」など、きっかけとなる課題があるはずです。自社が抱える課題から仮説を立て、その検証にRFM分析を活用するのがよいでしょう。 実際の分析に取り掛かる前に分析の目的を明らかにしておくことで、集めるべきデータやグループ分けの基準を適切に設定できます。 データを集計・整理・入力する 分析の目的を明確にしたら、必要なデータを集めてRFM分析の準備を整えます。 RFM分析では、顧客ID・購入日・購入金額などの情報が揃った購入履歴データが必要です。これらのデータを集計すれば、顧客ごとの最終購入日・購入回数・合計購入金額が分かります。また、購入商品や顧客の性別・年齢などのデータがあればより詳細な分析が可能になるため、目的に応じて必要なデータを揃えましょう。 分析の目的によっては「最終購入日が1年以内」「購入回数が一定以上」など、対象データの絞り込みが必要です。また、複数のシステムにデータが分散している場合は、集計できるようにデータを集約するところから始めます。 データを分析する 分析対象のデータが揃ったら、実際にRFM分析を進めます。エクセルや専用の分析ツールを用いて、顧客をグループ分けしていきましょう。 グループ分けの方法としては、以下のようにR・F・Mのそれぞれの値に応じてスコアを設定する方法があります。 スコア 最終購入日 購入回数 合計購入金額 5 1週間以内 20回以上 20万円以上 4 1か月以内 10回以上 10万円以上 3 3か月以内 5回以上 5万円以上 2 半年以内 2回以上 3万円以上 1 1年以内 1回のみ 3万円未満 _ 顧客ごとにR・F・Mそれぞれのスコアを合計して総合スコアを算出し、グルーピングしましょう。例えば、「総合スコア12以上」「総合スコア6〜11」「総合スコア5以下」というように顧客をグループ分けします。 _ 上記の基準とスコアは一例であるため、商品の購入サイクルや価格帯、分析対象データの期間などに応じて適切な値を設定しましょう。 課題を特定する 顧客のグルーピングを終えたら、その結果から自社が抱える課題を特定します。それぞれのグループの規模や推移を見ることで、以下の例のようにさまざまな課題が見えてきます。 優良顧客グループの人数が少ない、または減っている 優良顧客グループのなかで最終購入日から期間が空いている顧客が目立つ 休眠顧客が増えている 優良顧客グループの直近の購入金額が低下傾向にある 課題を正確に特定することで、現状改善に向けて必要な施策が明らかになります。課題の特定が不十分な状態では的外れな改善策を採用してしまう可能性があるため、十分な分析・検証を行いましょう。 改善策を立案・実行する 課題を特定したら、現状を改善するための施策を検討します。 例えば、優良顧客グループの規模が小さいなら、次いで総合スコアの高いグループを優良顧客に引き上げるための施策を準備します。リピート顧客が少ない場合は、二度目の購入に使えるクーポンの配布などが考えられるでしょう。 また、改善策を実行して終わりではなく、適切に効果検証を行うことも重要です。マーケティングの成果を高めるには、実行と効果検証によってPDCAサイクルを回していく必要があります。 RFM分析の課題・注意点 マーケティング戦略の策定に役立つRFM分析ですが、取り組む際には以下のポイントに注意が必要です。 商品の品目が考慮されない 集計の期間・時期に結果が左右される 順番に詳しく見ていきましょう。 商品の品目が考慮されない RFM分析は最終購入日・購入頻度・合計購入金額を分析する手法のため、顧客が買った商品の品目は考慮されません。そのため、「ライフステージの変化に合わせて提案する商品を変える」など、商品を軸としたマーケティングに活用するのは難しいという課題があります。 商品の品目を考慮した分析を行いたい場合は、RFM分析にアイテム(Item)の項目を加えたMRFI分析や、カテゴリ(Category)の項目を加えたRFMC分析がおすすめです。 集計の期間・時期に結果が左右される RFM分析は集計する期間や時期によって、得られる結果が変わります。例えば、購入頻度が低い商品や発売から期間が経っていない商品、季節によって販売数量が大きく異なる商品などは十分なデータが揃わず、有効な分析結果を得られない可能性があります。 また、集計データにセール期間が含まれている場合にも注意が必要です。「セール時期にだけ購入している顧客」のほうが「日常的に購入している顧客」よりもスコアが高く出るケースがあり、本当の優良顧客を見逃してしまう可能性があります。 まとめ 本記事では、RFM分析の概要やメリット、使い方を解説しました。RFM分析によって顧客をグルーピングすれば、それぞれのグループに最適なアプローチを行ったり、注力すべき顧客を絞り込んだりできるため、効率的なマーケティングが可能になります。 マーケティング領域には、今回解説したRFM分析をはじめ、さまざまなフレームワークが存在します。抱える課題によって適切に使い分けることで、課題の特定や施策の効果を高められるでしょう。一方、テクノロジーの発達によってマーケティング活動の領域は広がっていることから、難易度も高くなり、求められる知見やノウハウも時代の変化と共に多様化していることも事実です。 マーケティングの課題を解決するには、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティング領域の強化を目指しましょう。
リフレクションの意味とは?導入するメリットや注意点を解説
リフレクションとは、ビジネスの改善や効率化のために、自己の行動や思考を振り返ることです。 本記事では、リフレクションを導入するメリット・デメリットや、実践する際の注意点を詳しく解説します。記事の後半では、リフレクションのやり方や便利なフレームワーク・手法を紹介しているため、本記事を最後まで読むことで、実際に導入するイメージが明確になるでしょう。 リフレクションの意味とは? リフレクションは、「反映」「反射」「内省」という意味を持つ言葉です。ビジネスでは、日常業務から一時的に距離を置き、自分の行動や思考を振り返ることを指します。 リフレクションにより単に業務を遂行するだけではなく、自分の経験や考え方を認識して、人材の育成や業務改善につなげることが可能です。 似たような言葉に情報共有や報告、振り返りや反省、フィードバックがありますが、意味が多少異なります。 情報共有や報告との違い 業務終了後の情報共有や報告はデブリーフィングと呼ばれ、チーム全体への成果や課題に重点を置き、業務の方向性の確認や方針調整のために行われます。 一方でリフレクションは、個人が自分自身の行動や考え方を振り返り、仕事に対する意識や姿勢を見直すことです。 つまり、リフレクションは個人の成長のために行い、デブリーフィングはチームが成長するために行う点で異なります。 振り返りや反省との違い リフレクションには「振り返り」の意味も含まれていますが、単なる反省とは異なります。 反省は、自分の行動や言動を振り返り、再び同じ過ちを行わないように考えるプロセスです。自分の感情や自己評価の影響を受け、改善が必要な部分に焦点を当てる傾向があります。 一方のリフレクションは、自分の行動を客観的に振り返り、改善が必要な点だけでなく良かった点も含めて考察します。 フィードバックとの違い リフレクションは自分自身で、自分の行動や思考を振り返ることです。これに対してフィードバックは、他者から自分の行動や思考に対する評価や意見をもらいます。 つまり、リフレクションは自分視点であり、フィードバックは他者視点である点が異なります。 リフレクション教育を導入する3つのメリット リフレクションの考え方を人材育成に組み込んだものが、リフレクション教育です。ここでは、リフレクション教育を導入する具体的なメリットを紹介します。 リーダーシップをもった人材を育成しやすくなる リフレクション教育の導入は、社員のリーダーシップ能力の育成につながります。 リフレクションで自分の行動を客観的に振り返れば、周囲の状況がより明確に理解できるようになります。社員は自分自身だけでなく、チーム全体の改善点にも気付き、結果としてリーダーシップを発揮する能力を身につけられるでしょう。 従業員が成長しやすくなる 指示待ちの仕事スタイルでは、自ら考えて行動する機会が制限され、スキルやモチベーションの向上が期待できません。 リフレクション教育を取り入れると、社員の自主性を育むことができます。 リフレクションを通じて社員が自ら業務の改善点を見つけ出し、自己評価をして行動するようになると、仕事の効率化や質の向上を自発的に追求するようになります。自分の仕事に対して正当な評価を下せるため、モチベーションの向上にもつながり、結果的に社員の意識改革と成長が期待できます。 生産性の向上につながる 通常、他者からの指摘を受けてからの行動改善では、業務の質の向上に時間がかかることがあります。 しかし、リフレクションを通じて社員が自ら考えて改善策を導くことで、仕事の効率と業務の質を向上させることが可能です。各社員のスキルアップは、結果的に企業全体の生産性の向上にもつながるでしょう。 リフレクションを導入するときの3つの注意点 リフレクション教育を効果的に導入する際には、いくつかの注意点があります。 失敗のみに注目しない リフレクションは単なる反省ではなく、自分の行動を総合的に振り返る作業です。重要なのは、失敗だけでなく成功にも目を向けることです。失敗した点にばかりに焦点を当てると、反省に偏ってしまい、モチベーションの低下を招く恐れがあります。 小さな成功にも注目すると、前向きな振り返りが可能になり、モチベーションアップにつながります。 客観視する リフレクションを行う際は、客観性を保つことが重要です。 特に仕事の結果が思わしくなかった場合には、感情に流されて問題点を適切に分析しづらい可能性があります。その際にも、事実と感情を混同せずに客観的な視点で真実を受け入れる姿勢が重要です。 感情に流されずに問題を分析することで、より効果的な改善策を見つけ出せるでしょう。 目標を高く設定しすぎない 過度に高い目標を設定すると、現実とギャップが出てしまうことがあり、社員のモチベーション低下につながる恐れがあります。そのため、社員の経験や過去の実績、実力を考慮したうえで適切な目標を設け、段階的な成長をサポートすることが大切です。 リフレクションのやり方 ここからは、リフレクションの実践方法を紹介します。リフレクションは以下の4ステップで進めていくと効果的です。 その1:リフレクションする内容を決める リフレクションでは、多くの出来事を浅く考えるのではなく、1つの事例を深く掘り下げることが重要です。まずはリフレクションする対象を1つ決めることから始めていきましょう。 その2:内容を細かくしていく 次に、1つの事例を細かいプロセスに分けて考察していきます。 例えば、飲食店において料理の提供が遅れてしまった場合、「料理の提供が遅くなった」という事象全体を振り返るのでは不十分です。 「お客さまが○○を注文した」「Aさんが注文を受けた」「オーダー表を見てBさんが調理を開始した」など、その状況に至るまでの各事象を段階的に細かく分け、そのうえで「注文システム(伝達方法や注文の受け方)に問題はなかったのか」「料理の手順に何か改善点はなかったのか」など、それぞれのプロセスを振り返っていきます。 各プロセスを詳しく振り返ることで、失敗から改善点や学びを見つけ出せます。 その3:全体を振り返る 続いて、その事例に関連している人間関係や周囲の環境などについて考えていきます。この要素を十分に考慮することで、現実的な振り返りを実現することができます。 また、振り返りの多くはこの段階で終わってしまいますが、リフレクションを効果的に行うためには、次に「自分自身の行動を振り返る」ことが重要です。 その4:自分自身の行動を振り返る リフレクションでは、プロジェクトやチーム全体の評価だけでなく、個人の行動や思考に焦点を当てて考えます。自分自身の行動や思考を振り返り、成功した点と失敗した点を考え、特に改善が必要だった箇所を深く考察しましょう。 このとき、実際に行動したことよりもさらに良くするにはどうするべきか、ということも考えます。 リフレクション教育がしやすくなるフレームワークと手法 フレームワークを用いると、リフレクションのプロセスを整理できます。リフレクション教育を効果的に実施するためには、フレームワークと手法の理解が大切です。 ここでは、リフレクション教育がしやすくなるフレームワークと手法を6つ紹介します。 YWT法(やったこと・わかったこと・次にやること) YWT法は、個々の行動や経験を振り返る際に有効な手法です。 まず「Y(やったこと)」を振り返り、それからその経験を通じて「W(わかったこと)」を特定し、最後に「T(次にやること)」を考えます。これにより、個々の個性や潜在能力を引き出し、より自律的な人材育成につなげることが可能です。 YWT法はシンプルでありながら、自己の経験を深く掘り下げ、成長につなげられる手法です。 KDA法(続ける・やらない・始める) KDA法は、無駄なタスクの削減や業務効率化の実現に適した手法です。「Keep(今後も続けること)」「Discard(今後はやらないこと)」「Add(新たに始めること)」の3つの要素を用いて、業務や行動の振り返りを行います。 まずは継続すべき業務や行動を振り返り、次に効果がないと判断された行動や習慣を特定して、改善のためにやめるべき点を明確化します。最後に、新たに取り組むべきことや挑戦すべきことを整理する、という流れです。 KPT法(継続・問題・挑戦) KPT法は、「Keep(継続)」「Problem(問題)」「Try(挑戦)」を中心に振り返る手法です。 まず「Keep」で、継続すべき行動や習慣を特定します。次に「Problem」で業務の課題や問題点を明確にし、「Try」で課題や問題点に対する解決策、新たな試みを明確にします。 課題の早期発見や改善策の明確化ができ、チームでの振り返りにも適している手法です。 経験学習モデル 経験学習は、自身の経験をもとに学習する手法です。上司や指導者の指示に従う受動的なものではないため、ビジネススキルを自主的に向上させられます。結果的に、組織全体の発展にもつながるでしょう。 なお、経験学習は、以下4つのステップの繰り返しで成り立っています。 ● 経験:実際の経験に基づいて学び、新たな気付きを得ます。 ● 内省的観察:経験を客観的に振り返り、さまざまな視点から考察します。 ● 概念化:考察により得た気付きを一般的な言葉や抽象的な概念に整理し、ほかの場面に展開可能な形にします。 ● 実験:概念化された学びをほかの業務に応用し、効果や改善点を明確にします。 ダブルループ学習 ダブルループ学習は、行動の前提や枠組みを問い直す手法です。シングルループ学習が過去の経験から問題解決を図り、その過程で学びを得るのに対し、ダブルループ学習ではより根本的な改善策を探求します。 組織の競争力を高めるためには、シングルループ学習とダブルループ学習とを繰り返し行うことが重要です。 ジョハリの窓 ジョハリの窓は、自己認識と他者からの認識を、以下の4つのカテゴリーに分けて自己分析する手法です。これによって、自分自身が他人からどう見えているのかがわかります。 ●開放の窓: 自己認識と他者の視点が一致する状態を指します。自分の認識と他者の認識が一致している領域が大きいほど相手との信頼感が高まるため、コミュニケーションが円滑にとれていることになります。 ●盲点の窓: 他者は認識しているが、自分では気付いていない自分の一面です。他者からのフィードバックを受け入れて自己認識を高めれば、良好な関係を築けます。 ●秘密の窓: 自分だけが知っている自分の姿を指します。この領域が大きいと良好なコミュニケーションが行えていないことになるため、自己開示を進める必要があります。 ●未知の窓: 自分も他者も認識していない姿のことです。未知の可能性を秘めており、新たなチャレンジを通じて、潜在的な可能性を開花させられます。 ジョハリの窓を活用すると、自己理解の向上と人間関係の改善につながります。自分を理解し、他者からも認知されるためには、開放の窓を拡大することが大切です。開放の窓は、盲点の窓や秘密の窓にある自分の一面を理解することで広げられます。 まとめ リフレクションは、自分の行動や思考を振り返ることです。自己理解を深めることで、自律的な思考力と問題解決能力の向上につながります。業務報告や反省、フィードバックなど似ている言葉はありますが、失敗点だけではなく成功点にも焦点を当てることや、自分自身で深く考えるプロセスが異なります。 リフレクション教育を行うことで、社員の自主性やリーダーシップ能力が向上し、確実なスキルアップと組織全体の生産性の向上が期待できるでしょう。また、リフレクション教育を導入する際は、フレームワークや手法を用いると効率的かつ効果的です。
営業戦略の立て方と進め方の具体例、分析に役立つフレームワークを解説
企業の業績の向上には、中長期的な営業戦略が必要です。そして、効果的な営業戦略を立てるには、戦略の立て方を把握するだけでなく、適切な進め方で実践する必要があります。 当コラムでは、営業戦略の概要と営業戦術の違い、営業戦略の立て方、効果的な進め方を解説し、さらに営業戦略に役立つ分析方法やフレームワークも紹介します。 営業戦略とは 営業戦略の目的を踏まえ、営業戦略と営業戦術の違いを把握しましょう。 営業目標達成のための方針・計画 営業戦略とは、営業目標を達成するために必要とされる中長期的な方針、営業活動の計画を指します。 企業の売上の向上には、時間や人員など限られたリソースを最大限に活用しなければなりません。どのターゲットにどの製品を売るかなど、目標達成に向けた方針となるのが、営業戦略です。 営業戦術との違い 営業戦略とともに使われるケースの多い言葉として「営業戦術」があります。営業戦術とは、営業戦略の達成に向けておこなわれる具体的なアクションや施策のことです。営業戦略は売上目標達成のための計画、営業戦術は営業戦略達成のための施策という違いがあります。 たとえば「売上を前年比10%増やす」という目標は営業戦略です。その達成に向けて、シェア拡大のためにより具体的な施策を立てるのが営業戦術です。 このように、営業戦略と営業戦術は密接な関係にあります。 営業戦略の立て方 営業戦略の立案は、以下の手順でおこないましょう。 目標を設定する 先述の通り、営業戦略は営業目標を達成するための方針・計画です。そのため、まずは中長期的な目標を設定する必要があります。 目標は、具体的な数値を用いて設定することが大切です。たとえば「○か月後までに契約数を○件にする」「一年後には売上を前年対比○%にする」などのように、進捗を定量的に確認できると良いでしょう。 市場調査・競合の分析 営業戦略を立てる前は、商材の市場調査、競合他社の経営戦略の分析、さらに顧客の環境や動きなどの分析が必要です。市場や顧客の状況を調査・分析すると、どのような戦略をとると良いかが明確になります。 市場調査では、自社商材の市場が競争のないブルーオーシャンか、競合の多いレッドオーシャンかを確認しましょう。どちらに該当するかで、必要な施策が変わります。また、営業戦略の方針を定めるために、市場の動きも合わせて調査してください。 競合他社の分析では、自社商材と他社商材の価格や強み、他社がどのような戦略で顧客を獲得しているのか、シェア率などを分析します。ただし、自社商材の競合先を決めるのは、購入を検討する顧客です。そのため、顧客の購買行動も分析すると、営業戦略のシナリオが練りやすくなるでしょう。 営業活動の現状把握 営業活動の現状把握では、営業状況を数値化した定量的な分析と、顧客目線の定性的な分析をおこないます。 営業状況を数値化した定量的な分析とは、営業活動の仕事量を集計して工数などを数値化することです。たとえば、電話・訪問の回数や所要時間、1社や1日あたりにかける営業時間、営業コスト、売上額などを数値化します。 営業状況を数値化したら、分析に取りかかりましょう。分析結果から営業の強みや改善点を把握でき、営業の実力が明らかになります。 一方、顧客目線の定性的な分析は、顧客との会話内容や対応、クレームなどが対象です。顧客目線での意見収集に加え、営業がどのような商談をおこなっているかを把握・分析します。 営業活動における課題の明確化 市場の環境と営業状況の分析結果をもとに、営業課題を洗い出します。市場の環境とは、企業の力では解決できない社会情勢も含まれます。 ターゲットとなる顧客の増減に合わせて適した営業ができているか、顧客のニーズを満たしているか、営業プロセスが効率化できているかなど、多角的な視点で課題を洗い出してください。 コアコンピタンスの把握 コアコンピタンスとは、他社には真似できない、自社だけがもつ強み・特色という意味合いで使われる言葉です。営業戦略を練る際は、他社との差別化を図るべくコアコンピタンスにもとづいて立案します。 コアコンピタンスを把握することで自社の強みを活かす営業戦略が明確になり、市場で優位な状況を作れます。 営業戦略の進め方の具体例 次は、営業戦略の進め方について確認しましょう。 1.戦略を具体的な戦術に落とし込む 営業戦略を実現するために、具体的な戦術を立てます。中長期的な営業目標に合う、実行可能な戦術を決めましょう。 そのために、まずはどのようなことに注力するのか方向性を定めます。営業目標を達成する方法は一つではないので、たとえば「新規顧客獲得に重点を置くプランに変更する」「失注案件をもとに営業プロセスを改善する」など、どの方向に力を入れるかを定めていきましょう。 繰り返しになりますが、営業戦略と営業戦術は密接な関係にあります。戦術が不明確だと、準備が不十分な状態で営業戦略を進めることになるので注意しましょう。 2.KPIを設定する KPIとは「Key Performance Indicator」の略で、重要業績評価指標を意味します。目標の達成度を評価する指標であり、現在の営業状況を把握し、今後の予測を立てる際に用いられます。 営業目標の達成には複数の要素が絡むため、要素ごとにKPIを設定すると、全体の進捗状況の把握と管理が可能になります。KPIを設定する代表的な要素には、売上達成率、新規獲得顧客数、見込み顧客獲得数などがあります。 主要なKPIの設定後は、データを追うだけでなくKPIの進捗の可視化も必要です。KPIが可視化できたら、PDCAサイクルに沿って戦術の評価・改善をおこないましょう。設定したKPIと実際の数値にズレが生じたら、営業目標の修正や戦術の見直しが必要です。 3.見込み客を育成する 見込み客を獲得するために、自社製品の認知や興味付けをおこないます。自社製品について深く知らない見込み客は意外に多いため、その前提で念入りに対応策を練りましょう。同時に、見込み客のリストアップもおこなっておくのがおすすめです。 4.実際に売り込みをする ターゲットとなる見込み客に対してクロージングし、自社製品やサービスを実際に売り込みます。クロージングの成功には、見込み客のニーズや悩みの解消を意識した提案が必要です。 また、見込み客への売り込みだけでなく、顧客維持の施策も欠かせません。単なる顧客からリピーターになると、製品の感想・使用感をヒアリングできる対象になります。さらに、自社製品を再び購入してもらえる可能性も高まります。 5.効果を検証する 営業戦略は立てたら終わりではなく、効果検証と定期的な戦略の見直しが不可欠です。KPIの進捗確認と同時に、PDCAサイクルを回して効果検証をおこないましょう。 市場や競合他社の状況など、自社を取り巻く環境は流動的です。他社に後れを取れば自社の存続に影響が及ぶ可能性もあります。そのため、PDCAサイクルをこまめに回して問題を早期発見し、必要に応じて営業戦略・戦術を改善してください。 営業戦略に役立つ分析方法・フレームワーク 営業戦略を立てる際に有用な、代表的な分析方法・フレームワークを紹介します。 3C分析 3C分析とは、Customer(市場・顧客)、Competitor(競合相手)、Company(自社)の3つのCを分析し、事業計画やマーケティング戦略を導き出す方法です。 市場や顧客については、市場規模や市場の成長性、顧客ニーズなどを分析し、ターゲット層を明確にします。競合相手については、事業規模、製品やサービス、獲得シェア、強み、弱み、自社との違いなどを分析しましょう。自社については、売上や市場シェアなどの強みを分析し、その結果をもとに自社が打つべき施策や戦略を立案します。 3C分析をおこなえば、客観的な視点で自社の状況を分析し、顧客のニーズを把握したうえで、自社の強みを活かす営業戦略が考えやすくなります。 SWOT分析 SWOT分析とは、自社や自社製品の強み・弱みなどの内的要因、市場の動きや競合に関する機会・脅威などの外的要因を、プラス面とマイナス面に分けて分析する方法です。 SWOTとは「強み・弱み・機会・脅威」の英語から頭文字を取ったもので、以下の要素が該当します。 Strength(強み/内的要因):自社の知名度、価格、品質、ブランドとしての魅力 Weakness(弱み/内的要因):他社と比較した際の自社の弱点や欠点 Opportunity(機会/外的要因): 市場の拡大、競争優位、法律による制限緩和など Treat(脅威/外的要因):市場の縮小、競争激化、法律による制限強化など 4つの要素をかけ合わせて分析することで、確度の高い戦略立案が可能です。また、内的要因と外的要因に分けることで、事業のセーフラインとリスクラインが把握できるようになります。 4P分析 4P分析とは、Product(製品)、Price(価格)、Place(流通)、Promotion(プロモーション)の項目を他社と比較し、自社の強みと弱みを分析する方法です。各項目で分析する内容は次の通りです。 Product(製品):他社製品と比較して、ターゲット顧客のニーズに沿っているか、アフターサービスは充実しているか、デザインが優れているか Price(価格):適正な価格か、他社とどれほどの価格差があるか Place(流通):店舗の立地はターゲット層に合っているか、他社と店舗数の差があるか Promotion(プロモーション):市場に認知される販促方法か、ターゲット顧客の購買意欲を生むかどうか 4P分析によって企業目線で自社の強みと弱みが把握できるため、ターゲット層に届く施策を検討できるでしょう。 MECE MECE(ミーシー)とは、Mutually(相互)、Exclusive(重複しない)、Collectively(全体)、Exhaustive(漏れなく)の頭文字からなる言葉です。営業戦略を立てる際に、漏れや重複がなく、わかりやすい状態にする考え方を表します。 解決したい営業課題の規模が大きく、かつ複雑な要素が絡んでいる場合、その状態のまま解決策を練るのは困難です。MECEを活用すると、課題を細かく分解でき、最適な解決策を考えやすくなります。 また、営業戦略で新規顧客の開拓に取り組む際は、MECEで分解するとリソースを効率良く活用できます。 ランチェスター戦略 ランチェスター戦略とは、弱者と強者の視点から分析をおこなうことで、自社に適した戦略立案を可能にする方法です。 もとは戦争の戦略立案に用いられ「弱者の戦略」とも呼ばれていました。ビジネスにおいては、業界のシェア2位以下の企業が上位企業に迫る際の分析方法として用いられています。 ランチェスター戦略は、一騎打ちや接近戦を想定した「第一法則」と、広域戦の「第二法則」で構成されます。第一法則の戦闘力は「武器効率×兵力数」、第二法則は「武器効率×兵力数の二乗」で計算します。 シェア1位の企業になるには、開発力や資金力、人材などの経営資源が必要です。しかし、一騎打ちのような限られた市場であれば、質を高めていくことでトップシェアになれる可能性があります。 ランチェスター戦略は、特に中小企業に有効とされています。 パレートの法則 パレートの法則とは「80:20の法則」とも呼ばれ、経済統計から発見されました。全体の数値のうち、2割の要素が8割を生み出すとされる法則です。企業の利益の例として、「全体のうち2割のリピーターによって、売上の8割が作られている」といったものが挙げられます。 パレートの法則は、リソースの配分を効果的におこなうために活用できます。たとえば、売上貢献度が高い既存顧客の2割にリソースを集中し関係強化を図ることで、既存顧客のすべてにアプローチした場合と比較して、効率良く営業活動ができます。 ただし、残りの8割をないがしろにして良いというわけではありません。注意が必要です。 まとめ 企業の売上向上のために営業戦略を立てるには、市場や競合の調査、営業活動の現状把握、営業課題の明確化、コアコンピタンスの把握などが必要です。 営業戦略を立てたら、KPIの設定や見込み客の獲得、クロージング、効果検証をおこないます。ただ、営業戦略は一度立てたら終わりではないため、PDCAサイクルを回して、営業戦略の効果検証と定期的な戦略の見直しを繰り返してください。 さまざまな分析方法やフレームワークを活用し、自社の強みや弱み、顧客ニーズに合わせた営業戦略を立てましょう。
ペルソナ分析とは?分析方法や企業の活用事例を解説
企業のマーケティング活動を考えるなかで「ペルソナ分析」という言葉を耳にすることがあるでしょう。 当コラムではペルソナ分析を知りたいビジネスパーソンに向けて、ペルソナ分析の概要や実施する目的に始まり、メリットやデメリット、具体的な事例まで紹介します。 ペルソナ分析とは はじめに、ペルソナ分析の概要を理解しましょう。ペルソナの意味やターゲットとの違いを解説します。 そもそもペルソナとは?ターゲットとの違いは? 「ペルソナ」とは、商品やサービスの購入者となる顧客像を指します。ペルソナ分析とは、商品・サービスを購入する顧客像を具体的にイメージできるよう、詳細に作り出すマーケティングフレームワークのひとつです。 似たような言葉に「ターゲット」があります。ペルソナもターゲットを設定する点は同じです。しかしターゲットとペルソナは、顧客像をどこまで具体的にするかが異なります。 ターゲットが顧客像を特定の「集団」や「属性」程度でまとめたものであるのに対し、ペルソナ分析では、より顧客像を突き詰め、できるだけ人物像を1人に絞り込むところまで設定します。たとえば、ターゲットの顧客像は以下のような設定になります。 30代 男性 会社員 既婚 一方でペルソナの場合は、以下のようにさらに細かく具体的に顧客像を設定します。 山田 太郎 男性 35歳 30歳の妻 3歳と5歳の子どもが2人 年収700万 マンション暮らし 趣味はゴルフ 老後を意識し始め、資産形成に興味がある 両親は地方在住 友人は大学時代からの付き合いが数名 このように、ペルソナを分析する場合、絞り込んだ人物がどのような状況で、どのような趣味嗜好をもち、どのような価値観の持ち主か、といったところまで深く設定します。さまざまな要素が含まれることが、ターゲットとの根本的な違いです。 ペルソナ分析をする目的 ペルソナ分析をする目的は、具体的な顧客像を定め、より精度の高い顧客視点での商品やサービスの開発・販促を行うためです。 ペルソナ分析をすると具体的な顧客像がわかり、商品開発やマーケティング施策の課題の解決策や、響くキャッチフレーズが考えやすくなります。 たとえば、インターネット広告では精微なターゲティングの配信が可能なため、ペルソナ分析をして顧客像を明確にすることで、より効果的な広告を配信できます。 このように、ペルソナ分析をすると効果的な商品・サービス開発やマーケティング施策を実行できるでしょう。 ペルソナ分析のメリット ペルソナ分析のメリットの代表例としては、以下の3つがあります。 顧客視点で施策を考えられる プロモーションの精度を高められる 社内の共通認識、判断軸をもてる それぞれを解説します。 顧客視点で施策を考えられる ペルソナ分析をすると、顧客視点で具体的な施策を検討しやすくなります。なぜなら、ペルソナ分析で具体的な顧客像を設定するため、ニーズや購入の検討タイミングなど、顧客の考えや行動をイメージしやすくなるからです。 顧客の考えや行動をイメージできれば、ニーズを明確化し効果的な商品・サービスの開発がしやすくなります。このようにペルソナ分析をして顧客視点で施策を考えられると、より効果的な施策を練られるようになります。 プロモーション精度を高められる プロモーションの観点からも、ペルソナ分析は有効です。「プロモーション」とは、商品やサービスの認知度を上げて購入に繋げるための活動を指します。プロモーションを考える際には、顧客がどのような形で情報に接し、どのような形で興味をもち購買に至るのか把握する必要があります。 たとえば、40代男性をターゲットにしたケースを考えてみましょう。都心在住の会社員と設定した場合、通勤時に電車のつり革広告や駅中広告に接する機会が多いと考えられます。反対に郊外在住と設定した場合、車通勤の可能性が出てくるため、前述の広告に接する機会が少ないかもしれません。 以上のように、ペルソナ分析を行い顧客像が詳細になるほど、より効果的なプロモーションがしやすくなります。 社内の共通認識、判断軸をもてる ペルソナ分析をすると、社内で商品やサービスの顧客像に関する共通認識、判断軸をもちやすくなります。 「マーケティング」といっても、営業、販促担当、広報、製品開発、カスタマーセンターなど、多くの部門が関わっています。そのため大まかなターゲット設定のみで話を進めてしまうと、一人ひとりが思い描く顧客像にズレが発生しかねません。 ペルソナ分析をして自社の顧客像を明確化、共有化しておくことで、それぞれの判断のズレを抑えやくなります。プロジェクトに関わるすべての人が共通認識を持ち議論できれば、正しい判断がしやすくなり、意思決定も迅速にできるでしょう。 ステークホルダーが多くなるほど、自社の顧客像が分散されがちです。誤った方向に進みそうな場合でも、軌道修正できるようにペルソナ分析をおこない、首尾一貫したマーケティング活動を進めていきましょう。 ペルソナ分析のデメリット ペルソナ分析のデメリットとして代表的な例は、以下の2つがあります。 時間がかかる 誤ったペルソナ像になる可能性がある 時間がかかる ペルソナ分析は顧客像をよりリアルな形に近づけるためには、時間がかかります。 単純にターゲット設定と比べても設定すべき項目が多いうえに、精緻な像に近づけるためアンケートやインタビューといった調査をおこなうケースも少なくありません。さらに、コストと時間をかけてペルソナ設定を行っても、時間が経過してマーケット状況が変われば、再度ペルソナを設定する必要も出てきます。 ペルソナ分析は実施やその後の更新に手間と時間がかかることを認識しておく必要があります。 誤ったペルソナ像になる可能性がある 収集する情報の正確性が欠けていたり、データに基づくことなく想像や思い込みでペルソナを考えてしまったりすると、誤ったペルソナ像を作り上げてしまう可能性があります。 ペルソナ分析を誤ってしまうと、プロモーション活動に悪影響を及ぼす可能性があります。ペルソナ分析の結果に基づいてプロモーション活動をおこなう場合、ペルソナ分析により作った人物像が実態と乖離していると顧客に的外れなアプローチを行うことになり、コストの浪費につながりかねません。 このような事態に陥らないためには、適切な手法で分析し、情報に不足がないように努める必要があります。正しいプロモーション活動をするためにも、ペルソナ分析は丁寧に進める必要があります。 ペルソナ分析の方法 ペルソナ分析の方法を解説します。これから紹介するステップで進めると、正確な情報に基づいたペルソナ分析ができるでしょう。 STEP1 ある程度のターゲット層を決める 最初に、セグメント別に大枠のターゲット層を決めましょう。特定の商品を購入するのはどのような人物なのか、想像してみるのがおすすめです。 既存商品の購買情報をヒントにするとターゲットを想起しやすいため、社内でデータを収集しましょう。自社内のデータが乏しければ、総務省や経済産業省、その他研究機関、業界団体などが公表しているデータを入手することもおすすめです。 その後、ターゲットをさらに絞り込み具体化し、自社で開発した商品・サービスを購入しやすい顧客像のグループを複数作ります。初期の段階で顧客像を具体的に絞りすぎると、実態からかけ離れたペルソナを設定してしまう可能性があるので注意しましょう。 STEP2 アンケートを実施する ターゲット層を決めた後は、アンケートを実施します。アンケートの対象は、STEP1で作成したグループに分けて実施することが望ましいです。サービス・商品によって異なりますが、アンケートの代表的な項目は以下のとおりです。 名前 性別 職業 年齢 既婚、未婚 年収 趣味 よく使用するSNS 消費行動 よく使用するお店 よく見るメディア 上記はあくまでも一例にすぎません。自社の製品では、他にどのような項目があるとプロモーション活動がしやすいか検討してみましょう。アンケートの手法にはさまざまありますが、この段階のものであれば、単一選択型のようなシンプルなものを心がけましょう。複雑なアンケート形式にすると、回答率が低下する可能性もあるので注意してください。 STEP3 アンケート結果をグループ分けする アンケートにより明確になった情報から、共通項目があるグループに分けます。グループ分けをしたら、そのなかからインタビューをする対象者を決めましょう。グループごとにインタビューをする人物を決めますが、複数人選ぶようにしてください。 STEP4 インタビュー調査をする 次に、インタビュー調査を実施しましょう。インタビュー調査は、ペルソナ分析のなかでも非常に重要な段階です。これまでは、あくまでデータ上でしか顧客ニーズに触れていませんが、ここでは直接顧客の意見に向き合うことになります。 そのため、インタビュー調査の際には、何を聞くべきか十分に検討する必要があります。年齢や家族構成など基本情報から、趣味や仕事の役職など、さまざまな情報を聞けるように準備しましょう。 STEP5 ペルソナを決定する インタビュー調査の結果から、ペルソナを決定します。インタビューの設問項目に分けて整理していくと、ペルソナ設定がしやすくなります。 基本情報 仕事について 趣味について このように、分野別に考えていきます。ある程度具体的なペルソナが決定したら、ミスや漏れがないか念入りに確認しましょう。確認作業を怠らずに実施することで、より精度の高いペルソナを設定できます。 STEP6 商品購入までのストーリーを作る 設定したペルソナの顧客がどのように商品を購入するか、ストーリーを作りましょう。購入までのストーリーを作ると、マーケティング活動の進め方を検討しやすくなります。自社の製品を知り、興味を持ち、紆余曲折を経て購入に至ったプロセスを明確に記載してください。 ペルソナ分析をして購買までの具体的なストーリーを描くと、より効果の高い広告施策を検討できるようになります。 ペルソナ分析の具体的な事例を紹介 ここからは、ペルソナ分析の結果をマーケティング活動に活かしている企業の事例を紹介します。それぞれの事例から理解を深め、ペルソナ分析の具体的な活用イメージを掴みましょう。 飲料メーカーの事例/A社 A社の発泡酒は綿密なペルソナ分析が功を奏し、安定した売上の貢献につながった事例です。 具体的には、過去の定量的なデータ分析から、ペルソナを「30代後半以上の男性」にフォーカスし、消費者へライフスタイルや目標など内面に関するインタビュー調査を実施しました。質問の半分は製品とは直接関係ない質問だったそうですが、インタビューの記録はペルソナづくりの定性的な情報になりました。 共通項をまとめることで具体的なペルソナを設定でき、それを基に商品名やパッケージデザインなどの商品開発を進めた結果、ヒット商品誕生につながりました。 IT業界の事例/B社 B社は、部門やプロジェクトごとに個別のペルソナを設定していました。過去に制作されたペルソナを他の部署や他のプロジェクトでも参考にしようと試みましたが、メンバーからの共感が得られず再活用できないため、非効率な状態でした。 そこで、メンバーからの共感と業務の効率化を両立するため、部門間で共有できるようなペルソナを作成するプロジェクトを立ち上げます。 その結果、部門ごとにバラバラにペルソナを設定し活動していた従業員が連携し、ペルソナに響くような商品開発やサポート体制を考えるようになりました。 B社のように、ペルソナを設定することで従業員の業務に対する姿勢の改善につながるケースもあります。 ペルソナ分析の注意点・失敗例 ペルソナ分析をする際の注意点・失敗例は以下のとおりです。 注意点:目的を明確にする 注意点:担当者、関係者全員にイメージしやすいよう意識する 失敗例:ペルソナ分析の深掘りが甘い 失敗例:ペルソナを理想像にする 注意点や失敗例を理解すると、実際にペルソナ分析をする際に失敗するリスクを低減できます。ペルソナ分析をする前に一読しておきましょう。 目的を明確にする なぜペルソナ分析をするのか、目的を明確にしておきましょう。目的が不明瞭のままペルソナ分析をしても、有効的な活用は見込めません。 そのため、まずは「ペルソナ設定を活用して開発機能を決定する」「プロモーションも、この設定をもとに行う」など、ペルソナ分析の目的を明確にすることをおすすめします。 担当者、関係者全員がイメージしやすいよう意識する 担当者や関係者全員がイメージしやすいようにペルソナ分析をしましょう。ペルソナ分析の結果を関係部署に共有しても、その内容が不明瞭であれば適切な形で共通認識をもてない可能性があります。 関係者間でイメージしやすくなるよう、想像しやすい人物を設定しつつ、分かりやすい言葉を使用し表現することを意識してください。 ペルソナ分析の深堀りが甘い ペルソナ分析の失敗例に、深堀りが甘いケースが挙げられます。具体的な顧客像を作れていなければ、ペルソナ分析を活用した効果的なマーケティングはできません。年齢や性別などのセグメントだけではなく、生活スタイルや年収、役職など、より具体的な顧客像を作りましょう。 ペルソナを理想像にする ペルソナを自社にとって理想的な人物像にしてしまうと、マーケティング活動で失敗する可能性があります。 ペルソナを設定する際、どうしても自社にとって都合の良い、理想的な人物像に近づけてしまいがちです。そのようなことが原因で誤ったペルソナ分析を行った結果、マーケティング活動に支障をきたす恐れがあります。 可能な限り多くの、また正確な情報を収集し「リアルなペルソナ像」を設定することを心がけてください。 まとめ ペルソナ分析には時間がかかりますが、正しく実践することでより高い成果を期待できるマーケティング活動が行えます。 自社のマーケティング活動がうまくいっていない、効果的な販促活動をしたい、ペルソナ分析をしないといけないと感じた場合は、このコラムの内容を参考にペルソナ分析を行い、実務に活かしていただけたら幸いです。
VRIO分析とは?自社の競争優位性を分析するためのフレームワークを解説
VRIO分析とは、競合他社と比較して自社の経営資源にどれくらい競争優位性があるかを分析するためのフレームワークです。自社の経営資源の強みや弱みを把握する際に便利な手法で、把握しておけば自社マーケティングに活用できます。 本コラムでは、VRIO分析の概要や目的、構成する4つの要素を解説。さらに、実際にVRIO分析を実践するための手順と注意点も紹介します 。 VRIO分析とは? VRIO分析とは、自社の競争優位性を把握するためのフレームワークです。 Value(経済的価値)、Rarity(希少性)、Inimitability(模倣困難性)、Organization(組織)の4つの視点で構成され、それぞれの頭文字を取ってVRIO(ブリオ)分析と呼びます。 VRIO分析は自社の経営資源であるヒトや資金、情報などを評価することで、自社の強みと弱みを分析し、市場における自社の競争優位性を可視化します。 数ある経営資源のなかで自社の核となる独自の強みを把握することは、経営戦略を立てるうえで大切です。 次の章では、VRIO分析の4つの構成要素について深く掘り下げます。 VRIO分析の4つの要素 前述のとおり、VRIO分析では以下4つの要素について分析をおこないます。 Value(経済的価値) Rarity(希少性) Inimitability(模倣困難性) Organization(組織) それぞれの要素について、詳しくみていきましょう。 Value(経済的価値) Valueとは、自社のもつ経営資源の“経済的な価値”です。市場や社会に対してどれだけの価値を生み出せるのかを評価します。 経済的な価値とは、金銭的なものだけにとどまりません。社会やヒトが求めるものを満たせる付加価値を企業が保有しているのであれば、それらも評価対象となります。 また、外部環境からの脅威に対してどのような対応ができるかも評価対象です。 Rarity(希少性) Rarityとは、自社の経営資源が競合他社と比較してどの程度希少性があるのかを評価する項目です。 例えば、自社がもつ技術に確かな需要があり、その技術をもつ競合他社が少ないのであれば希少性が高い経営資源であると評価できます。希少性の評価対象は、技術に限らず、提供している商品やサービスなども該当します。 Inimitability(模倣困難性) Inimitabilityとは、自社の経営資源の独自性を分析し、競合他社が模倣しやすいかどうかを評価する項目です。 どれだけ経済的価値や希少性が高くても、他企業が簡単に模倣できるようでは、その経営資源の独自性は低いということです。経営資源を保有していない企業がそれを模倣する際にコストがかかればかかるほど、Inimitabilityが高いと評価できます。 自社の技術、歴史のほか、因果関係の不明瞭性(企業のもつ競争優位性と経営資源との関係が外部から判断しにくいなど)や、社会的複雑性(経営資源の現象が複雑で外部から判断しにくい)が模倣困難性を判断する指標です。また、特許の有無も指標の一つです。 Organization(組織) Organizationとは、自社のもつ経営資源を有効に活用できる組織体制が整っているかどうかを評価する項目です。経済的価値、希少性の高さ、模倣困難性で優れた経営資源をもっていても、それを活かせる組織でなければ優れた経営資源であるとはいえません。 評価の対象は、経営資源を活用できる組織のルールの有無と運用実態、競争優位性を維持できる体制の有無があるかなどです。自社の経営資源を長期にわたって有効活用していくためにも、重要な要素の一つです。 VRIO分析の手順 VRIO分析では、以下4つのステップで分析をおこないます。順序が誤っていると、正しい評価をおこなえないため注意しましょう。 1.分析の目的を明確化させる はじめに、なぜVRIO分析を行うのかを言語化し、分析の目的とゴールを明確にします。目的を明確にせずに漠然と分析をスタートさせてしまうと、いつまでもゴールにたどりつけません。 「自社の強みを把握して、競争優位性があるか明確にしたい」「経営課題を解決するため、自社の弱みを理解したい」など、具体的に設定しましょう。 2.競合他社を選定する 続いて、おもに“ Rarity(希少性)”と“Inimitability(模倣可能性)”の評価に大きくかかわる比較先企業を選定します。 VRIO分析では、自社と競合他社を比較することで自社の競争優位性を探っていくため、比較先企業選びは大切です。 比較対象範囲が広すぎると、分析に時間がかかりすぎる、評価結果が大きく変わるなどが起こるため、はじめはできるだけ比較範囲を絞ると良いでしょう。 3.自社の経営資源を要素に沿って評価する 自社の経営資源を構成する4大要素(ヒト・モノ・カネ・情報)を洗い出し、それぞれをVRIO分析の4要素(Value、Rarity、Inimitability、Organization)に沿って評価します。 評価の際は、Excelなどで作成した表を使用するのがおすすめです。 表の縦軸には経営資源、横軸にはVRIO分析のV(経済的価値)、R(希少性)、I(模倣困難性)、O(組織)の各項目を設定します。横軸の右端には“評価の根拠”などを書き込めるスペースを設置。表作成後に、V・R・I・Oの順番で○×を書き込んで評価していきます。 4.評価結果をもとに経営戦略を策定する すべての経営資源についての評価が出そろったことを確認し、結果をもとに今後の経営戦略を立てていきます。自社の弱みに対する改善策や、強みのさらなる強化策などを競合や他業界のビジネスモデルなども参考に検討しましょう。 戦略立案後は、その戦略を進めていくスケジュールや人員配置など、具体的な計画を立てて実行に移します。 なお、経営戦略立案の際は、VRIO分析だけでは不十分です。VRIO分析はあくまで自社分析に焦点をあてたものであるためです。VRIO分析とあわせて外部要因の分析で使われるフレームワークであるPEST分析や、顧客・競合・自社を包括して分析する3C分析も理解し活用しましょう。 VRIO分析を行う際の注意点 VRIO分析を行う際には、いくつかの注意点があります。分析にとりかかる前によく確認しておきましょう。 ターゲットの範囲を指定する 比較先企業を選定する際は、ターゲットの範囲を慎重に選定する必要があります。地域や企業規模、企業がターゲットとする顧客層に注目して選びましょう。 ターゲットが適切でないと分析精度が下がり、正しく評価できない可能性があるためです。誤った分析をもとに経営戦略を立てても、注力するべき方向性や投資内容を間違えてしまうでしょう。 例えば、自社のターゲット層が“安さを重視する顧客”であれば、選定するターゲットの範囲も同じ属性に絞る必要があります。仮に競合他社が“希少性を重視する顧客”がターゲットの場合、顧客獲得の方向性は自社と当然異なります。 ターゲット範囲のミスは、正しい評価につながらないため注意しましょう。また、ターゲット範囲を広くとりすぎると、分析精度が荒くなり実用的なデータを得られないことがあります。 価値は変動することを理解する 市場や顧客のニーズといった外部環境は変化していくものです。 一度価値があるとの評価が得られても、それが長く続くとは限りません。そのため、外部環境の変化を常に把握し、適宜評価を見直すことが大切です。 まとめ VRIO分析とは、経済的価値、希少性、模倣困難性、組織という4つの視点から自社の経営資源を評価し、競争優位性を把握するためのフレームワークです。VRIO分析によって自社の強みや弱みを見出すことで、経営戦略の立案に役立つでしょう。 VRIO分析を行う際に重要となることは、ゴールの明確化です。また、比較する企業のターゲット範囲を誤ると、正しい分析結果を得られないことがあるため注意しましょう。 分析プロセスや注意点を十分に意識しながらVRIO分析を活用し、経営戦略の立案・実行に役立ててください。
ECRS(イクルス)とは? 業務効率化に役立つフレームワークについて解説
ECRS(イクルス)は、作業効率化やコスト削減などの業務改善に役立つフレームワークです。 業務工程を改善するには、各作業工程を分析し課題の洗い出しが必要です。業務効率化のフレームワークを活用すると、少ない手間とコストで課題を効率的に改善できるでしょう。 本コラムでは、業務効率化に役立つECRSの概要や具体的な活用方法を解説します。 ECRS(イクルス)とは? ECRS(イクルス)とは、業務工程改善の優先順位を表すフレームワークです。以下4つの言葉の頭文字から、ECRSと呼ばれています。 Eliminate(排除) Combine(結合) Rearrange(組み換え) Simplify(簡素化) ECRSの利用により効果を得るためには、E→C→R→Sの順に取り組むことが重要です。改善の効果がもっとも大きいのは“Eliminate(排除)”で、以降C→R→Sの順で効果が小さくなっていきます。 ECRSはもともと、製造業の生産管理現場で使われていた業務改善の指針です。しかし、生産管理だけでなく他の業界でも応用が利くため、あらゆる業界・業種で用いられるようになりました。 ECRSを活用するメリット ECRSに則って業務改善をおこなうと、4つのメリットが得られます。 コスト削減 ECRSの原則に当てはめて不要な業務を排除することで、必要な業務だけが残り、それまで求められてきた業務量や業務時間の負担の削減が可能です。また、業務の簡素化は作業時間の短縮につながり、他の業務に時間を割くことも可能に。 ECRSの順番に沿った業務改善は、余計なコストをかけずに済むようになるだけではなく、リソースの有効な分配にもつながります。 情報共有の改善 ECRSに従って業務改善すると、情報をスムーズに共有できる環境を社内に構築しやすくなります。 例えば、社内で使用するコミュニケーションツールが、主にメールだったとしましょう。この場合、ビジネスチャットツールへの移行により、社内外とのコミュニケーションにおける活発化・スピードアップが見込めます。 アドレスを指定し個別に送るメールと異なり、ビジネスチャットツールではグループのメンバーに一括でメッセージを送れます。これはECRSにおけるC(結合)の一つといえるでしょう。 情報をよりスピーディに社内およびクライアントに一括で共有できるため、効率的です。また、情報の確認などの二度手間や対応漏れも防げます。 属人化の解消・防止 属人化とは、特定業務の進め方・手順・進捗状況を作業担当者しか把握しておらず、周囲が認識していない状況のことです。 「担当者が変わったことにより品質が落ちた」「クライアントから問い合わせがあっても、担当者が休みだと対応できない」などのトラブルは、まさに属人化の弊害です。 専門性の高い複雑な作業・業務は知識の共有が難しく、担当者が固定されやすくなります。そのため、特定の人物のみに業務が集中し、属人化することが少なくありません。 ECRSのS(簡素化)に沿って業務を見直すことで、複雑さを低減したり一部自動化・機械化したりすると、特定の人物に依存することなく、常に一定の成果が出せる体制を整えられます。結果的に作業スピードが向上するため、業務時間の短縮にもつながるでしょう。 生産性の向上 ECRSで既存の業務を洗い出すと、業務ごとの必要性や妥当性を判断しやすくなります。洗い出したあとには必要な業務が明確化するため、改善前に比べて業務量と業務時間が短縮できるでしょう。 ECRSの4つの改善指針 E:Eliminate(排除) 最初に、業務のなかで排除できるものはないかを確認します。各業務の内容と何のためにその業務をしているのか、本来の目的を洗い出しましょう。 明確な理由・目的が見当たらない場合、その業務は慣例化しているだけかもしれません。日々当たり前のように取り組んでいる業務であっても、新たなシステムの導入や従業員の成長により不要になることも。 具体例としては、慣習化されている定例会議、日報・レポートなどの書類作成業務の廃止、頻度を減らすなどが挙げられます。 C:Combine(結合) 複数の部署で同様の業務に取り組むなど、特定業務にリソースが集中している状態ではコストがかさみます。「同様の業務をまとめられないか」「同時並行や同時処理でその業務をおこなえないか」などを検討しましょう。 具体例としては、メールをグループ送信やグループチャットに変える、複数あるマニュアルを一つにまとめるなどが挙げられます。 R:Rearrange(組み換え) 業務を実行する順番の入れ替えや業務を実行する場所・担当者の変更、業務自体を別の方法に変えるなどして、効率化を図ります。 例えば、作業担当者の定期的な持ち場の入れ替え、社内業務の一部を外部に委託することなどが考えられます。 S:Simplify(簡素化) 業務をさらにシンプルにできないかという視点で、業務を見直す工程です。 複雑な業務であれば、その分、人的なミスが発生しやすくなります。また、難度の高い複雑な業務は個々のスキルや経験の違いにより、作業を進めるスピードや品質に差が生じることも。 複雑な業務や難度の高い業務の簡素化は、工数の削減や効率化につながります。さらに、誰でも一定の成果を上げられることから、属人化の防止にも役立つでしょう。 業務の簡素化には、マニュアルの作成や資料などのテンプレート化がおすすめです。 ECRSをおこなう前に必要なこと ECRSで業務の見直しをする前には、以下の2点が必要です。 具体的な計画を立てる 業務の見える化を行なう 業務を見直す目的が明確に見えていない状態では、ECRSの効果を十分に発揮できません。各項目で必要な内容を解説するため、自社に置き換えてイメージしてみてください。 具体的な計画を立てる “いつまでにどのような状態にするか”を明確にした計画を立てます。事前に具体的な計画を立てておくと、業務の無駄を効率的に省けるだけではなく本来の目的に向かいながら施策を実施できるでしょう。 業務の見える化をおこなう 業務の見える化を実行すると、業務全体の概要を把握できます。加えて、社員の労働環境や仕事の時間配分など、目に見えない工程への理解を深められるでしょう。 ECRSに則った業務改善の進め方 ECRSに従って、以下の手順で業務改善を進めていきます。 やみくもにECRSで改善をおこなうだけでは、効果的な成果は得られません。手順に従って、自社の業務改善を進めていきましょう。 業務一覧表を作成する ルーティン業務とイレギュラー業務に仕分けする 作業に時間がかかる原因を突き止める フレームワークに当てはめる 複数の部署にまたがって業務を改善する場合は、話し合いの場を設けながら取り組んでいくことをおすすめします。 業務一覧表を作成する 効率的に業務改善を進めるための業務一覧表を作成します。業務一覧表には、業務名・担当者・業務の目的・頻度・所要時間などを記入します。 業務一覧表を作成する際は、思い浮かぶ業務をすべて列挙することがポイントです。「あまり重要ではない」と感じている業務に、具体的な改善点が見つかることもあります。重複した内容や漏れがないように、業務を洗い出しましょう。 レギュラー業務とイレギュラー業務に仕分けする 業務一覧表に記載される業務を、レギュラー業務とイレギュラー業務に分けます。 レギュラー業務とは、日常的に発生するパターン化された業務のこと。その他、決められた手順で繰り返しおこなうような単純作業も該当します。 イレギュラー業務とは、事前にマニュアルや業務の引き継ぎ書には記載されていない、突発的に発生する業務です。社内外で起きたトラブルの対応も含まれます。 なお、部署や業務の担当者により、レギュラー業務とイレギュラー業務の割合は変わります。 作業に時間がかかる原因を突き止める 業務の洗い出しの時点で、作業ごとにかかる時間を確認しましょう。また、時間がかかりすぎる作業に対して、その原因や改善ポイントを考えることも重要です。 ECRSのフレームワークに当てはめる際にも、作業に時間がかかる原因を突き止めておくと業務改善をスムーズに進められます。 フレームワークに当てはめる 業務一覧表を作成し、業務ごとの改善ポイントをまとめたあとは、ECRSのフレームワークに当てはめて業務改善を図っていきます。 E(排除)…業務そのものをなくせないか C(結合)…作業をまとめておこなえないか R(組み換え)…他の作業に代替できないか S(簡素化)…業務をよりシンプルにできないか まとめ 業務効率化や業務改善は、どの企業のどの部署でも常に検討される問題です。業務の効率化を図るうえで、4つの要素から成り立つECRSというフレームワークの活用が、社内のコスト削減や情報共有の改善などにつながります。 生産性を上げるためにも、無駄な業務はないか、他の業務に代替できないかを考えることが必要です。ECRSの頭文字である、排除・結合・組み換え・簡素化の順番に改善に取り組み、業務の効率化を進めましょう。 無計画に業務改善に乗り出しても効果は出ません。ECRSに則った業務改善の進め方を参考に、改善に取り組むことをおすすめします。
広報戦略とは?効果的なフレームワークや具体的な進め方を解説
広報戦略は、企業のブランディングを行ううえで欠かせない取り組みです。従来はテレビや新聞などのマスメディアが広報活動の中心でしたが、最近ではインターネットやSNSを活用した広報活動に変わっています。 広報戦略を効果的に実施するためには、フレームワークの活用が欠かせません。しかし、さまざまなフレームワークがあるため、どれを選べば良いかわからない方も多いでしょう。この記事では、広報戦略において効果的なフレームワークと、その具体的な進め方について解説します。 広報戦略は企業成長に欠かせないもの 広報戦略は、広報担当者が社内外のステークホルダーへ向けて、自社や商品・サービスの認知度を高めるといったブランディングを図るために、プランや行動を策定することです。 広報活動は、短期的な成果のためではなく、企業の長期的・持続的な成長のために行われます。もし、戦略を立てずにその都度対応してしまえば、企業の行動に一貫性が持てず、社会からの信頼を得ることやステークホルダーとの良い関係を作ることも難しいでしょう。 広報戦略を立てることで一貫性を持った正しい広報活動が実施でき、その結果、企業の成長促進にもつながっていくのです。 広報戦略が注目される背景 昨今、広報戦略が注目されている背景には、主に以下の3つがあります。 情報量が増加したため スマートフォンの普及や新たなサービスの登場により、社会全体の情報量が増加しています。 これまで、情報収集の主な手段はテレビや新聞などのマスメディアでした。しかし、近年ではスマートフォンなどの普及により、インターネットを介して簡単に情報収集できるようになりました。その反面、インターネット上には膨大な量の情報があふれているため、受け手には情報の取捨選択が求められるようにもなりました。 情報の発信方法や情報の受け取り方が複雑化していくなか、広報活動をより効率的に進めるために、広報戦略は注目されています。 嗜好や属性が細分化しているため 以前は、テレビや新聞などのマスメディアに出稿すれば、多くの人が同じ情報を得て、すぐに認知度を高められました。しかし、スマートフォンの普及によって手軽にインターネットを活用できるようになってからは、一人ひとりが自分の好みにあった情報を取得するようになり、消費者の関心も細分化しています。 そのため広報活動を行う際は、ターゲットの嗜好や属性に合わせたメッセージを発信しなければなりません。それぞれのメッセージを考えていくうえで広報戦略は指針となり、重要な役割を担います。 近年では、購買活動に関わるデータを収集・分析できるデジタルマーケティングと広報戦略を組み合わせていくことにも、注目が集まっています。 コストを抑えるため テレビや新聞といった従来のメディアによる広報活動では、莫大な費用がかかるため、費用対効果が見合わないことがありました。 しかしインターネットが普及した現代では、デジタルマーケティングによってターゲットの属性を細かく指定して広報活動ができるため、従来のメディアと比べてコストを抑えながら効果を得られます。 適切な広報戦略を立ててより大きな成果を出せるようになれば、それまで広報や宣伝にかけていたコストを抑えられます。 広報戦略にフレームワークを活用するメリット フレームワークとは、ビジネスの課題を解決するために活用される思考の枠組みのことです。広報戦略を立てる際は、自社の分析や外部環境の洗い出しをして整理する必要があるため、一から自分の考えで進めていくことは難しいでしょう。 フレームワークというあらかじめ決められた枠組みを活用すれば、時短にもなり生産性の向上が期待できます。また、フレームワークは過去に実績のあるビジネス手法であるため、精度の高い広報戦略を立てられます。 広報戦略にフレームワークを活用するデメリット 広報戦略のフレームワークは、ルールや機能の使い方を覚えるといった、使いこなすまでの学習期間が必要になります。 また、さまざまな種類のフレームワークが存在しているため、自社の状況に合わせた適切なフレームワークを選定しなければなりません。さらに、フレームワークごとに目的が異なるため、使い分けるためのスキルも求められます。 適切なフレームワークを選べないと、想定していた結果が得られないこともあります。 広報戦略に効果的な7つのフレームワーク 広報戦略には、以下7つのフレームワークが効果的です。 PEST分析 SWOT分析 4P分析 STP分析 バリューチェーン分析 4C分析 ビジネスモデルキャンバス それぞれの特徴を解説します。 PEST分析 PEST分析とは、以下4つの自社を取り巻く外部環境を洗い出し、その変化を大局的に予測することで、自社に与える影響を明らかにするフレームワークです。 Politics(政治):政治的要因、政府が打ち出す政策や法律、条例の制定、改正など Economy(経済):経済的要因、景気の動向やインフレ率、経済成長率など Society(社会):社会的要因、人口の変化、流行、ライフスタイルの変化など Technology(技術):技術的要因、技術革新や市場全体の取り組み、特許など 4つの視点で外部環境を分析することで、現状に合った適切な広報戦略や情報発信の方法が明らかになるため、時代に合った形で自社の存在をアピールできます。 SWOT分析 SWOT分析とは、以下4つの観点から自社の内部環境と外部環境のプラス・マイナス要因を洗い出し、それぞれを組み合わせて最適な戦略を模索するためのフレームワークです。 Strength(強み):内部環境・プラス要因、自社の強み Weakness(弱み):内部環境・マイナス要因、自社の弱み Opportunity(機会):外部環境・プラス要因、新たなビジネスチャンスの可能性 Threat(脅威):外部環境・マイナス要因、外部からの脅威 4P分析 4P分析とは、以下の4つの要素を検討し、商品やサービスの強みやアピールポイントを戦略に活かすフレームワークです。 Product(商品・サービス):自社の商品・サービスにどのような強みがあるか Price(価格):インパクトのある値付けか Place(流通チャネル):販路や店舗は適切か Promotion(プロモーション):どのような方法で販促活動をおこなうのか STP分析 STP分析とは、以下3つの観点から自社の立ち位置を明確にして、強みを最大化できる市場を選定するためのフレームワークです。 Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化、性別、年齢、居住地などで分類 Targeting(ターゲティング):細分化した市場のうち、どの市場を狙うのかを決定 Positioning(ポジショニング):狙うべき市場のなかで、自社の立ち位置を明確化 新規事業の立ち上げや、新商品の開発で使われる機会の多いフレームワークです。広報の領域でも、市場や顧客の関係性を明らかにできるため有効です。顧客視点に立った精度の高い広報戦略につながることが期待されます。 バリューチェーン分析 バリューチェーン分析とは、事業活動を分類し、それぞれの活動によって生まれる付加価値を分析するフレームワークです。 企業の活動を生産から消費までの主活動と、それ以外のバックオフィスなどを副次活動に分け、次にそれぞれの活動で発生するコストと付加価値を洗い出します。このコストと付加価値の分析結果で、自社の強みや改善点を明らかにできます。 4C分析 4C分析とは、以下4つの観点から消費者目線での販売手法を考えるフレームワークです。 Customer value :顧客から見た価値 Customer cost :顧客が払う費用や手間 Convenience :顧客が簡単に入手できるかどうか Communication :顧客とのコミュニケーション方法 広報戦略を立てる際は、顧客目線が欠かせません。4C分析を活用することで、顧客目線を戦略に取り入れるとよいでしょう。 ビジネスモデルキャンバス ビジネスモデルキャンバスとは、以下9つの観点からビジネスの構造を整理して、設計図のようにわかりやすく可視化するフレームワークです。 Customer Segments(顧客セグメント):価値を提供したい具体的なターゲット Value Propositions(価値の提案):顧客にもたらす価値 Key Resources(おもなリソース):顧客に価値を提供し続けるために必要なリソース Key Activities(主要活動):価値を提供するためにおこなうべき活動 Key Partners(おもなパートナー):外部に委託する活動や外部から調達するリソース Customer Relationships(顧客との関係性):顧客を維持できる仕組みになっているか Channels(チャネル):どのようなルートで顧客に価値を届けるか Cost Structure(コスト構造):発生するすべてのコスト Revenue Streams(収益の流れ):顧客に価値を提供した結果生じる収益を得る仕組み フレームワークを活用した広報戦略の進め方 フレームワークを活用した広報戦略は、基本的には次の手順で進めると効率的です。 現状把握 まずは、自社が置かれている状況やステークホルダーの意見などを調査・分析し、把握する必要があります。 広報戦略では、自社がどのような価値を社会に与えられるかがポイントとなります。そこで、市場内での自社の立ち位置を把握することが大切です。先述したSWOT分析を活用すれば、自社の強みや弱みが明確になり、外部環境との関係性も明らかにできます。 広報戦略の立案 前のステップで把握した自社の現状と、企業の将来像を比較し、実施すべきことを洗い出しましょう。理想と現実とのギャップを解消するために、ギャップをできるだけ整理することが大切です。 具体例として、以下の戦略が挙げられます。 プレスリリース配信 SNS運用 キャンペーンの実施 社内報の作成 イベントの実施 広報戦略の実施 広報戦略が立案できたら、施策を実施します。実施の際は広報戦略で発信する情報と、自社の事業やサービスに一貫性をもたせることが重要です。 万が一、広報活動で発信した情報と商品・サービスがかけ離れていて整合性がとれない場合には、世間やステークホルダーからの信頼を失い、ひいては企業ブランドの価値も下げてしまう可能性があります。 効果測定 最後は実施した結果を冷静に評価し、改善点を洗い出します 現在はインターネットを介して実行結果をデータで収集しやすくなりました。計画どおりに進んだかどうかを判断し、反省点があれば、次回以降の改善策を考えるなど、広報戦略をブラッシュアップします。 まとめ 広報戦略とは、自社や商品・サービスを社会に広く知ってもらうための活動です。 広報戦略を立て、一貫性のあるメッセージを発信し続ければ、社会やステークホルダーからの信頼を獲得しブランド力の向上につながります。効果的に実施するためには、さまざまなフレームワークを適切に組み合わせながら戦略を進めることが大切です。 自社のブランディングや企業イメージの向上を考えている方は、本記事を参考にフレームワークを活用しながら広報戦略の立案を進めてみてはいかがでしょうか。
5(ファイブ)フォース分析とは?具体的な分析方法と事例を紹介
5フォース分析とは、新製品開発や新規事業の立ち上げ、既存事業のさらなる拡大に活用するためにおこなうマーケティング分析の一つです。競合他社や業界全体を分析することで、自社の優位性や立ち位置などを把握できます。 しかし、実際にはどのような目的で使うのか、どのようなやり方で分析を進めればよいのか、イメージできない方も多いのではないでしょうか。 本記事では、5フォース分析の目的や進め方について説明します。また、実際の5フォース分析の具体例も紹介しています。 これから新規参入したい事業がある方や、既存事業の改善を図りたい企業にとって参考になれば幸いです。 5フォース分析とは? 5フォース分析は、自社を取り巻く「脅威(フォース)」を5つに分類して、自社の競争優位性を分析するフレームワークです。5フォース分析における「フォース」とは、「脅威」や「競争要因」を指します。 5フォース分析は、自社がさらされている脅威を5つに分類することからスタートします。それらの脅威を分析して、業界や競合他社の状況と収益構造を明らかにしたうえで、自社の競争優位性や課題を把握することを目的としたフレームワークです。 おもに新製品の開発や新規事業の立ち上げ、既存事業の改善などに活用できます。 脅威を明らかにする5フォース分析 現在は、企業を取り巻く環境や顧客ニーズの変化が激しい時代です。いくら有名なブランドを有し業界において高い地位を獲得していたとしても、新しい価値観の提案などを武器に新規参入してくる企業はあとを絶ちません。 企業はその規模の大小を問わず、競争原理のなかで事業を展開しています。そして、その競争のなかでさまざまな要素が脅威(フォース)となり、自社の存在を脅かし続けています。 これから新規参入する事業者は既存の事業者を分析したうえで、自社のどこに勝算があるかを探ることができ、既存事業者は競合各社が持つ脅威を明らかにできるのが、5フォース分析の特徴です。 ポーター教授著書「競争の戦略」で語られた 「5フォース分析」は、アメリカのマイケル・E・ポーター教授が提唱した、業界の競争要因を分析するためのフレームワークです。 ポーター教授は、経営戦略を考えるうえで業界の競争状態、つまり「競争要因」を知ることが重要だとしました。その「競争要因」には「5つの競争要因(5フォース)」があり、これを分析することで業界の収益構造が明らかになります。この5フォース分析は、経営に不可欠なツールとされています。 ポーター教授のいう「業界」とは、いわゆる小売業界・製造業といった従来の業界とは少し意味合いが異なります。なぜなら、かつては競合とは認識されていなかった他業界の企業が、近年では競合になることも大いにあるからです。ポーター教授は、業界とは「互いに代替可能な製品」をつくっている会社集団である、と定義しています。製品そのものではなく、その価値や効用に注目して業界を考えるべきであると説いているのです。 例えば、自動車の製造企業は、これまでは自動車業界という同じ業界内の企業だけを競合相手と考えていればよかったわけです。しかし、最近ではまったくの異業種であるIT業界の企業なども競合とみなす必要性が出てきました。 このように、業界内だけではなく、業界外にも代替となるサービスが増えているため、つねに自社の事業やサービスの立ち位置を理解しておくことが大切です。 5フォース分析の目的 5フォース分析をする目的は企業によってさまざまですが、大まかに以下の2点が挙げられます。 競合要因の特定と自社の優位性の把握 新規参入や新製品の開発における収益性の検討 それぞれについて簡単に解説します。 競合要因の特定と自社の優位性の把握 自社に影響をおよぼす脅威を5つに分けて分析することで、どのような脅威があるのかいち早く察知し課題が見つかるとともに、自社が持つ優位性を知れます。 既存サービスの改善や拡大、ブランドの認知力向上などに活用できます。 新規参入や新製品の開発における収益性の検討 5フォース分析を通して市場や競合の収益構造を分析することで、参入成功率や収益性を考慮に入れた参入戦略が立てやすくなります。参入成功率や収益性を予測し検討できれば、新規参入や新製品開発を実施するかの判断がしやすくなります。 5フォース分析の5つの脅威 ここでは、実際に5フォース分析で使用する5つの脅威(5フォース)について解説します。 業界内の競合 業界への新規参入者 代替品の存在 買い手の交渉力 売り手の交渉力 それぞれの項目を詳しく解説していきます。 業界内の競合 1つ目の脅威は業界内の競合他社です。自社と同じ業界内の企業やブランドの強さを、そのシェア率、資本金、商品ラインアップ、従業員数などから分析します。同じ業界のなかで顧客に選んでもらうためには、競合他社との差別化が重要なポイントです。 分析によって、自社の強みや、他社がすぐには真似できないような要素や戦略がないかを洗い出します。価格競争以外の戦い方が見つかれば、業界内で有利な立ち位置につけます。 業界への新規参入者 2つ目の脅威は、業界への新規参入者です。新規参入者は、つねに自社のポジションを脅かす存在です。市場の動向によっては新しい価値やお得な価格設定の新規参入が増え、自社のシェアや売上が落ちるリスクがあります。新規参入の壁の高さは、脅威として押さえておきたい指標なのです。 つねに新しい商品やサービスが登場する現代では、既存のブランド力だけでは生き残れません。新規参入者への脅威に対抗するには、自社がデファクトスタンダードを作るほど影響力のある存在になるなどの手段が考えられます。 市場規模はもちろん、新規で参入してくる企業にどのような強みがあるのか、参入のための資材や技術レベル、スイッチング・コストまでを踏まえて、自社にどの程度の影響をおよぼすのかを見極めましょう。逆に、分析によって自社が他業種へ新規参入するチャンスを得られる場合もあります。 代替品の存在 3つ目の脅威は、自社の商品やサービスの代替品の存在です。この場合、同じ業界の競合他社ではなく、他の業界で開発された製品による脅威を指しています。顧客視点に立って広く見渡して、自社のサービスや商品の代わりとなりうる代替品がないかを探します。コストやニーズはもちろん、どのような層が代替品に乗り換えているかなども確認してください。 例えば飲食店の場合、デリバリーサービスが代替品として考えられます。このようなケースでは、来店ポイントや特典をはじめ、来店したときの体験などで差別化を図れないかなどを検討することになるでしょう。業界内の情報だけではなく、つねに顧客のニーズや動向を見ることが重要です。 買い手の交渉力 4つ目の脅威は買い手の交渉力です。買い手とは業界内の顧客を指します。競合が多く価格競争が激しくなっているときは、買い手の交渉力が強くなっている状態です。その要因には、買い手が他社からの調達が容易になっていたり、購買量が増えたりしていることが考えられます。 例えば、自社が販売している商品やサービスに競合他社が多い場合、他社が自社よりも安くお得な価格帯を打ち出せば、顧客は他社へ簡単に乗り換えてしまいます。 このように買い手の交渉力が高くならないようにするには、キラーコンテンツといった、自社のサービスや商品に独自の付加価値をつけることも重要です。また分析をする際に/、ただの価格競争になっていないかも見極めましょう。 売り手の交渉力 5つ目の脅威は売り手の交渉力です。この場合の売り手とは、自社の商品やサービスなどの事業に必要な原材料や資源を提供する者(サプライヤー)のことです。 例えば、自社の製品を作るために必要な材料を特定の企業や団体から取り寄せている場合、その供給元からの原価が高騰するとそのまま売値に反映され、利益にも影響します。売り手の交渉力が高くなると仕入れコストが上がり、収支バランスが悪くなるのです。 対策としては、自社でその材料を開発できるような仕組みを作ることや、複数の売り手と契約をするなど、代替可能な状態にしておくことが考えられます。 5フォース分析の進め方 前節で5フォース分析の目的や5つの脅威(フォース)について解説しました。ここでは実際に分析をしてみたい方に向けて、フォース分析の進め方を解説します。 分析の目的を明確化する データの収集・準備 5フォース分析を実践 施策立案 手順に沿って分析を進めて、自社の事業の発展へつなげられるようにしましょう。 1.分析の目的を明確化する 5フォース分析で何を得たいのか、まずは分析をおこなう目的を明確化します。新規参入事業についての戦略を検討したい、新ブランドの立ち上げに向けた業界分析をしたいなど、目的を明確にすることが重要です。 分析する目的を持たずにやみくもに分析すると、目的がブレてしまい、戦略の役に立たなくなる可能性もあります。事前に目的を明確にしてから取り組むようにしましょう。 2.データの収集・準備 データの収集時には、競合となる企業と分析の対象範囲がどこまでなのかを、まず決定します。次に、対象範囲内の客観的な情報を収集します。 精度の高いデータを準備できなければ、あいまいな分析となり、計画や戦略にうまく活かせません。そのため、情報元には公式のサイトや公的機関が調査・公表しているデータをはじめ、一次情報と呼ばれる信頼度の高いものを使用すると良いでしょう。 3.5フォース分析を実践 次に5フォース分析をおこないます。集めたデータや情報をもとに5つの脅威(フォース)に分類して、それぞれを分析します。 自社の脅威となる要素にはどのようなものがあるのか、自社の持つ強みは何か、自社を取り巻く環境や業界の現状、市場動静がどうなっているのかなど、細かく分析し把握していきましょう。 また、5フォース分析は複数人で実施することが重要です。一人で分析すると主観が入りやすいため、複数人でさまざまな観点から分析をすることをおすすめします。 4.施策立案 最後に5フォース分析をした結果、発見した自社の強みや脅威となるポイントをまとめ、次の事業計画や戦略に実行可能な施策として反映させましょう。 いくつかのアイデアを出して、チームで優先順位を決めて進めるのもおすすめです。 5フォース分析を適切におこない、新しい事業や既存のブランドの拡大に活かしていきましょう。/ 【業界別】5フォース分析の事例 ここでは、実際に他社のサービスをもとに5フォース分析を実践した事例を挙げます。 具体的な事例を見ることで分析のイメージが膨らんで、自社のサービスに応用できれば幸いです。 自動車業界/A社の事例 まずは、自動車業界のA社で分析をおこなった事例です。 業界内の競合 国内外の競合は多く存在している。ブランド力の高いメーカーも多くあり、既存の脅威が高い状態だと考えられる。 業界への新規参入者 国内ではトップシェアを誇る生産数のため、すぐに新規参入による脅威にさらされることは考えにくい。しかし、電気自動車(EV)などの新しいメカニズムの商品が登場するのに加え、IT企業の参入も考えられるため、岐路に立たされている。 代替品の存在 都心部では、自動車よりも公共交通機関を活用する人が多い。また、若年層を中心に車を所有しなくなっている。カーシェアやレンタカーなどの利用も増えている。電気自動車も代替品としての脅威と見られる。 買い手の交渉力 ブランドの信頼度が高いため、すぐには脅威となるものはない。ただ、自動車の所有欲求が乏しい若者への訴求力が求められていくかもしれない。 売り手の交渉力 世界でも有数の規模であり、数多く存在するグループ会社から部品などの供給を受けているため、大きな脅威は今のところはない。 アパレル業界/B社の事例 次に、アパレル業界のB社の事例を紹介します。 業界内の競合 世界にも展開しているため、競合も世界規模になっており、脅威は強い。 業界への新規参入者 インターネット通販業界などの参入が挙げられるが、店舗型の新規参入障壁は高い。また、B社ほどの規模になるまでには時間がかかると見られ、そこまで脅威は強くないと考えられる。 代替品の存在 インターネット通販やアパレルのレンタルサービス、サブスクリプションサービスなどが誕生しており、脅威となる可能性がある。 買い手の交渉力 B社はアパレル業界のなかでは大手のブランドだが、買い手はB社にこだわらずとも衣類は他で購入もできるため、買い手の交渉力は高い。 売り手の交渉力 実店舗数が多く、安定した利益をキープしていることから、売り手の交渉力はそこまで高くない。 飲食業界/C社の事例 最後はカフェを展開する飲食業界C社の事例です。 業界内の競合 競争率が高い業界のため、脅威となる企業は多く存在する。 業界への新規参入者 コーヒーなどのカフェ商品は、他の飲食店でも安く提供する企業が増えており、新規参入の脅威は強くなる可能性がある。 代替品の存在 100円台で質の高い商品が提供されるコンビニ商品は、代替品として考えられる。 買い手の交渉力 混んでいたら顧客は他の飲食店に移動ができるため、買い手の交渉力は高いといえる。 売り手の交渉力 商品の原料に関しては、多くの選択肢があるため脅威ではない。しかし、店舗を構える場所は売上にかなり影響を与えるため、もし賃料などが高騰したとしても自社に選択肢は少ない。そのため、不動産に関する売り手の交渉力は高いと考えられる。 このように実際に自社製品やサービスをもとに5フォース分析をおこない、事業に活かしていきましょう。 まとめ ここまで5フォース分析について、5つの脅威(フォース)や5フォース分析の目的を、実際に分析した具体例などを用いて解説してきました。 5フォース分析は、競合他社のサービスや製品を分析できるフレームワークで、業界の収益構造の把握・新ブランドの戦略・既存サービスの改善など、さまざまな施策に活かせます。5フォース分析を実践して、自社のさらなる事業拡大に貢献しましょう。