コホート分析とは?注目される背景や活用のメリット、使えるツールを紹介
ユーザー行動を追跡・分析する手法として、マーケティング領域でよく利用されるのが「コホート分析」です。コホート分析という言葉を聞いたことがあっても、具体的にどのように分析を進めるのか、どのような目的に合った分析手法なのか分からないという方も多いでしょう。
本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説します。コホート分析によってマーケティング活動の最適化を図りたいと考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
コホート分析とは
コホート分析とは何か、ここでは以下3つのポイントで解説します。
コホート分析の概要
コホート分析で重要な3つの効果
コホート分析が特に有効なビジネス
順番に見ていきましょう。
コホート分析の概要
「コホート」とは、同時期に生まれたり似たような経験をしたりすることで、同じような思考や行動の傾向がある集団を指す言葉です。マーケティングにおけるコホート分析では、分析対象となるユーザーを属性や条件によってグループ分けし、その後の行動を追跡・分析します。
各グループの行動を追うことで、マーケティング活動の最適化につながるヒントが得られるため、有効な分析手法として利用されています。特にWebマーケティングにおいては、Webサイトにアクセスした時期や時間、流入元のプラットフォームなどで細かく分けられるため、ユーザーグループごとの定着率やリピート率などを正確に算出することが可能です。
ベースとなる顧客行動データは、WebサイトやSNS、メールなどから収集したものが用いられます。近年ではツールの発展によって収集できるユーザーデータの種類が増えており、コホート分析の利用価値はますます高まっています。
コホート分析で重要な3つの効果
コホート分析は統計学の分析方法の一つとして用いられてきました。統計学でのコホート分析は、主に以下3つの効果によって人々の思考・行動が影響を受けると考えられています。
年齢効果:加齢やライフステージの移行に伴うもの
時代効果:過ごした時代の社会環境によるもの
コホート(世代)効果:生まれ育った時期・環境によるもの
10代と40代、昭和生まれと令和生まれなど、人々が持つ思考・行動の習慣は年齢や過ごした時代、環境によって左右される部分が少なくありません。共通項を持つグループの特徴をつかむことで、行動・意識などからくる消費行動の調査に用いられてきました。
マーケティング手法としてコホート分析を用いる際は、「特定の期間にサービス登録を完了した」「同一週にアプリをダウンロードした」というように共通項を見出してグループ分けし、分析する場合もあります。自社ビジネスの最適化につながるよう、適切なグルーピングをすることが重要です。
コホート分析が特に有効なビジネス
コホート分析が活用できる代表的なビジネスとしては、以下のようなものが挙げられます。
ECサイトの運用
サブスクリプションサービス
Webサイトの運用
SNSの運用
共通する特徴は、顧客との接点が継続的にあることです。ECサイトであればリピート購入、サブスクリプションサービスであれば購読の継続など、顧客に長く利用してもらうことがビジネスの成長に欠かせません。そのため、コホート分析によってユーザー行動を追跡・分析し、リピート購買や購読の継続につながるようマーケティング活動を最適化します。
ユーザー行動の傾向を把握できていれば、変化を予測したうえでの対策が可能です。例えば、月額利用料無料キャンペーン時に登録したユーザーをグルーピングしておき、無料期間の終了とともにサブスクリプションサービスを解約されないよう、キャンペーンの案内やクーポンの付与などで継続を促すといった施策が考えられます。
コホート分析が注目される背景
コホート分析が近年注目される背景としては、以下の3点が挙げられます。
サブスクリプションサービスの浸透
オンラインショッピングの拡大
SNSやWebサイトの活用拡大
順番に見ていきましょう。
サブスクリプションサービスの浸透
いまやサブスクリプションサービスは誰もが使うものとなり、動画配信サービスやレンタルサービスなどさまざまな種類が登場しています。しかし、なかには事業の継続が難しく、サービスを終了するものもあります。
サブスクリプションサービスの事業を継続するには、いかに顧客をつなぎとめるかが重要です。そこで役立つのが、コホート分析による顧客行動の把握です。顧客離れの要因を特定し、適切なタイミングで的確なアプローチを行うことで、顧客満足度を維持し、継続契約につなげます。
そのためには、顧客を特徴ごとにグルーピングし、それぞれのグループに対して適切なアプローチを検討していく必要があります。購読開始後のどのタイミングでフォローするのが良いか、解約率が高いのはどのような特徴を持つ顧客グループなのかなどを分析することで、各顧客グループに適したアプローチの検討が可能になるでしょう。
また、一部の顧客グループにポジティブな変化が生じた場合は、その要因を特定し、その他のグループにも展開するといった活用も可能です。
オンラインショッピングの拡大
オンラインショッピングの拡大も、コホート分析が注目されている背景の一つと考えられます。
オンラインショッピングの事業を成功させるには、顧客のリピーター化が重要です。リピーターを増やすためには、コホート分析を通じて顧客の購買行動の傾向を把握し、マーケティング施策に落とし込むのが効果的です。具体的な手法としては、顧客グループごとにおすすめの商品をメールで案内したり、カート内に入ったまま購入されていない商品について、適切なタイミングでリマインドしたりといった方法が考えられます。
リピーターを育成してロイヤルカスタマーを創出できれば、売上の安定だけでなく口コミなどの効果も期待できるでしょう。オンラインショッピング事業に取り組むなら、顧客理解を深めるうえでコホート分析は大いに役立つはずです。
SNSやWebサイトの活用拡大
SNSやWebサイトがビジネスに広く活用されるようになったのも、コホート分析が注目されている一つの要因です。SNSやWebサイトの活用においては顧客との継続的な接点の確保が重要であり、顧客をグルーピングしたうえで行動傾向を把握するコホート分析が役立ちます。
例えば、SNS上でフォローした時期やフォロー期間によってユーザーをグルーピングすれば、商品の購入やサービスの契約につながりやすいタイミングを把握できます。適切なタイミングでプッシュすることで、マーケティング施策の効果を高められるでしょう。
コホート分析を行う3つのメリット
コホート分析を行う主なメリットは、以下の通りです。
ユーザー維持率の向上につなげられる
売上予測の精度が上がる
マーケティング施策の効果検証ができる
コホート分析は現状の維持・改善に役立つだけでなく、今後のビジネスに役立つ基礎データの収集にも活用できます。それぞれのメリットについて見ていきましょう。
ユーザー維持率の向上につなげられる
ユーザーの維持率を高めたい場合は、コホート分析でユーザー離れの要因やタイミングを特定することで維持率向上につながるヒントを得られます。サブスクリプションサービスの契約期間やSNSのフォロー期間、商品の定期購入期間などを顧客グループごとに把握することで、必要なアクションのタイミングがつかめるでしょう。
もっとも離脱が発生しやすいタイミングやその理由を把握できれば、別の顧客グループが同じ状況に陥る前に対策をとれます。例えば、サブスクリプションサービスの契約開始から3か月目に解約が多く発生している場合は、新しく購読を開始したグループに対して、3か月目の利用が終了する少し前にクーポンを配布するなど、予防的な対策が可能です。
売上予測の精度が上がる
コホート分析で顧客グループごとの行動傾向を明らかにできれば、精度の高い売上予測が立てられるようになります。例えば、ECサイトであれば初回購入後のリピート購入について、購入率やタイミング、購入金額を予測できます。また、サブスクリプションサービスであれば初回購読からの継続期間について、精度の高い予測ができるでしょう。
収集したデータは、短期的な売上の予測はもちろん、類似のサービスを新たに立ち上げる場合などにも活用できます。事業計画の立案や必要なリソースの確保に役立つはずです。
マーケティング施策の効果検証ができる
コホート分析は、マーケティング施策の効果検証にも活用できます。例えば、キャンペーンをきっかけに利用を開始したユーザーの購読継続率を検証したり、同じ属性を持つ複数のグループに対して異なるタイミングでクーポンを配布し、反応率の良いタイミングを見極めたりといった使い方ができます。
マーケティング施策は、初回の実施で計画通りの効果が出ることは多くありません。コホート分析によって効果を検証し、改善を繰り返すことで、徐々にマーケティング施策の効果を高めていくことが可能です。
コホート分析に使えるツール
ここでは、コホート分析に使える代表的なツールとして、以下の2つをご紹介します。
Googleアナリティクス(GA4)
エクセル
Googleアナリティクス(GA4)
Googleアナリティクスは、Googleが提供しているWebサイトのアクセス解析ツールです。Webサイトを訪れたユーザー数が把握できるだけでなく、得られたデータを活用してさまざまな分析ができます。
例えば、自社サイトを訪れたユーザーを年齢や地域、性別といったグループに分けたうえで、コンバージョン率やサイトの再訪問率を比較すれば顧客の詳細な分析が可能です。成果の出ている顧客グループを分析し、マーケティング活動に落とし込めば、顧客の獲得効率を高められるでしょう。
エクセル
エクセルに顧客のデータを入力し、グループごとに分析することも可能です。例えば、サブスクリプションサービスの利用開始日と解約日を入力し、その差をエクセル関数で算出します。特定の条件で顧客をグループ分けし、解約までにかかった平均日数を比較すれば、顧客グループごとの特徴を把握できます。
専門的なツールが必要なく、簡単な関数だけで分析できるため、前述のGoogleアナリティクスなどに精通していない方でもコホート分析を活用できるでしょう。
まとめ
本記事では、コホート分析の概要や注目される背景、活用のメリット、ツールなどをまとめて解説しました。
Webマーケティングが一般化した現代において、顧客をグルーピングしたうえで追跡・分析するコホート分析は活用の機会が増えています。特に、ECサイトやサブスクリプションサービスなど顧客との継続的な接点が重要なビジネスにおいては、コホート分析に基づくマーケティング施策の最適化が大きな効果を発揮するはずです。まずはGoogleアナリティクスやエクセルなどの身近なツールを使い、コホート分析を取り入れてみてください。
マーケティング領域には今回解説したコホート分析をはじめ、さまざまなフレームワークが存在します。抱える課題によって適切に使い分けることで、課題の特定や施策の効果を高められるでしょう。一方、テクノロジーの発達によってマーケティング活動の領域は広がっていることから、難易度も高くなり、求められる知見やノウハウも時代の変化と共に多様化していることも事実です。
マーケティングの課題を解決するには、外部の専門家(プロ人材)の支援を受けるのも一つの方法です。状況に応じてさまざまな手段を取り入れながら、マーケティング領域の強化を目指しましょう。