広報戦略とは?注目される背景や具体的な進め方を解説
多くの企業で人材不足が続く昨今、限られたリソースで大きな効果を得るためには、戦略的な広報活動が欠かせません。
戦略を立てず、やみくもに進めてしまうと、施策を実施しても適切な効果が得られず、時間の無駄になってしまう可能性もあります。
今回は、広報戦略の概要やメリット、進め方を解説します。広報戦略の重要性を正しく理解し、限られたリソースでも大きな効果が得られる体制づくりを進めましょう。
広報戦略とは?
広報戦略は、社内外のステークホルダーに発信するメッセージの指針です。
そもそも広報は、企業の情報を社会に届けるための活動を指します。企業からすれば正しい広報活動の実施はステークホルダーとの信頼関係を深め、持続的な成長につながります。
もし広報戦略を立てず、場あたり的に進めてしまうと、企業の行動に一貫性が見られず、社会的な信頼も得にくいでしょう。
広報戦略が注目される3つの背景
広報戦略が注目される理由は、おもに以下の3つが考えられます。
- 情報の取捨選択が求められている
- 主要メディアが変化している
- 企業イメージの重要性が増している
情報の取捨選択が求められている
スマートフォンの普及により、ユーザーが企業を知るスポットには物理的な制限がなくなりました。この変化によってウェブルーミングが加速し、ユーザーは足を運んで商品を選ぶよりも前に、インターネットで情報を収集するようになったのです。
ユーザーの情報収集では、認知から購入までのフェーズで少しずつ企業の絞り込みが進んでいきます。つまり、ユーザーに選ばれる企業になるためには、戦略的に情報発信が求められる時代となったといえます。
主要メディアが変化している
これまではテレビや新聞など、世帯を対象としたマスメディアでのコミュニケーションが主流でした。しかし、スマートフォンの普及によって個人を対象としたコミュニケーションが現実味を帯びてきました。
この個人とのコミュニケーションの場となっているのが、SNSなどのソーシャルメディアです。ソーシャルメディアの台頭で、企業には個人と直接コミュニケーションを取るという新たな選択肢が生まれました。
一方、総務省の調査結果では、若年層を中心にソーシャルメディアの平均利用時間が長時間化しており、特に20代の行為者率(該当の情報行動を取った人の1日当たりの比率)は令和3年の調査では84.1%を記録しています。
※出典:令和3年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書<概要>(総務省)
これからの消費の中核を担う世代がソーシャルメディアに流れている状況下において、企業はソーシャルメディアでのコミュニケーションを強化する必要があります。さらにSNSではコミュニケーションに双方向性(インタラクティブ)の特徴がありるため、これまで以上に対話を重視することが求められるため、結果、企業はより戦略的な広報に取り組むようになりました。
企業イメージの重要性が増している
近年、CSR(Corporate Social Responsibility:企業の社会的責任)に注目が集まったことで、企業イメージの重要性が増しています。広報戦略は、統一性のある指針を発信するために欠かせないため、企業イメージの形成に役立つでしょう。
特に、国連サミットで『持続可能な開発目標(SDGs)』が2015年に採択されてからは、多くの企業がSDGsへの取り組みを公表し、企業イメージの向上を図るケースも見られます。
広報戦略のメリットとは
広報戦略には、おもに以下5つのメリットがあります。
- ブランディングにつながる
- コストパフォーマンスに優れている
- ユーザーとの接触機会が増える
- 軸のある施策を打ち出せる
- 定期的な振り返りができる
ブランディングにつながる
特定の領域に特化した情報発信は、「〇〇といえばこの企業」というように企業や製品・サービスに対するブランドイメージを強化・確立させるため、企業のブランディングにつながります。
広報活動は、自社の商品やサービスを宣伝するマーケティングとは異なり、企業がユーザーにとって有益な存在であることを伝えることが大切です。ユーザーは、自身や周囲のコミュニティにとって価値の高い企業によいイメージを持ちます。そのため、広報活動により自社の価値が向上すると、商品やサービスの成約にも結びつきやすくなるでしょう。
コストパフォーマンスに優れている
これまで広報活動の中心だったテレビや新聞は、コストが大きくかかる一方、細かなターゲティングが難しいため、費用対効果が見合わないこともありました。現代では、Webマーケティングによって個人の属性を細かく指定した広告展開ができるため、コストを抑えつつ効果が得られます。
また、これまでの営業活動は飛び込みやテレアポが中心でしたが、タイミングの見極めが難しいという課題がありました。一方で、現代はプル型営業が主流となり、それを実現するために広報戦略をいかに効果的に行い、ユーザーの行動を促すかが重要となっています。広報戦略によってプル型営業が実現できると、営業活動にかかるコストを削減できるでしょう。
ユーザーとの接触機会が増える
広報戦略に基づいた情報発信を行うことで、ユーザーとの接触機会は増え、自社の認知度が高まります。有益な情報を提供し続けるうちに、ユーザーの企業イメージは向上し、商品やサービスの成約につながりやすくなります。
また、情報を発信する媒体は1つに絞るのではなく、オウンドメディアやSNSなど、多方面に向けた広報戦略が効果的です。
軸のある施策を打ち出せる
戦略的な広報活動は、施策に一貫性を与えるため、ユーザーとの信頼関係を構築しやすくなるでしょう。一貫性のある情報発信は社内向けの広報活動(インナーブランディング)の場でも活用できることから、事前に広報戦略を立てることが大切です。
定期的な振り返りができる
広報戦略は施策の結果をデータとして取得できるため、施策の良し悪しを分析しやすいです。結果を分析することで戦略どおりに施策を実施できたのかがわかり、今後の課題や改善点が明らかになります。
広報戦略の立て方を5つのステップで解説
広報戦略は、以下の流れで進めるとよいでしょう。
- 現状の把握
- 実施すべきことの洗い出し
- スケジュールの策定
- 広報活動の実行
- 効果測定
1.現状の把握
広報戦略を立てるには、経営戦略の理解が重要です。経営戦略の立案には、以下5つのフレームワークが活用できます。
- SWOT分析
- PEST分析
- STP分析
- 4P分析
- バリューチェーン分析
SWOT分析
SWOT分析は、自社と市場を把握するためのフレームワークで、以下4つの観点で分類します。
- Strength(強み):自社の強み
- Weakness(弱み):自社の弱み
- Opportunity(機会):新たなビジネスチャンスにつながる可能性
- Threat(脅威):外部からの脅威
内部環境(自社)と外部環境(市場)を明らかにすることで、戦略策定やマーケティングの意思決定が可能です。
PEST分析
PEST分析は、以下4つの観点を洗い出し、自社を取り巻く外部環境を明らかにするフレームワークです。
- Politics(政治):政府が打ち出す政策など
- Economy(経済):景気、インフレ率など
- Society(社会):人口の変化、収入の変化、ライフスタイルの変化など
- Technology(技術):市場全体の取り組みなど
自社が市場に参入した際に、外部環境の影響をどのように受けるかを明確にし、参入するかどうかの判断や施策の立案を実施します。
STP分析
STP分析は、以下3つの観点で自社の立ち位置を明確にするフレームワークです。
- Segmentation(セグメンテーション):消費者を性別、年齢、居住地などのセグメントに分類
- Targeting(ターゲティング):狙うべき消費者の層を設定
- Positioning(ポジショニング):市場からみた自社の立ち位置
競合を把握し、自社が勝てるポジションを明確にします。
4P分析
4P分析は、以下の4つを検討して、自社のマーケティング戦略を立案し実行レベルに落とし込むために実施するフレームワークです。
- Price(価格)
- Promotion(プロモーション)
- Product(製品・サービス)
- Position(流通・チャネル)
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析は、企業活動を主活動と支援活動に分類し、ボトルネックを特定するためのフレームワークです。企業活動の仕組みを可視化することで、工程単位での問題点や付加価値を明らかにしていきます。
バリューチェーン分析により、各工程で自社が消費者に対してどのような価値を提供できているのか把握できます。また、競合のバリューチェーン分析は、事業戦略の改善にも役立つでしょう。
2.実施すべきことの洗い出し
さまざまなフレームワークの活用とステークホルダーを対象にした調査により、自社の目指すべき姿が明らかになったあとは、現状とのギャップを整理し、ギャップを埋めるために実施すべきことを洗い出しましょう。
具体的には、以下の活動があげられます。
社外向け | 社内向け |
---|---|
プレスリリース配信 | 社内報の作成 |
イベント企画・運営 | クリッピング |
メディア対応 | ブランドムービーの作成 |
会社案内の作成 | イントラネットの運用 |
Webサイト・SNS運営 | ブランド理解研修の実施 |
3.スケジュールの策定
実施内容が決まったらスケジュールを策定します。SNSの運用やプレスリリース配信など、広報活動の幅は広範に渡ります。
原稿作成からフィードバック、サイトへの反映まで様々な人が関わるため、社内のリソース状況を把握しながら余裕をもったスケジュールを設定しましょう。
4.広報活動の実行
ここでは、先ほど設定した施策を実行します。広報活動の注意点は、それぞれの活動で発信するメッセージに一貫性を持たせることです。広報活動に一貫性がなかった場合、ユーザーからの信頼が落ちてしまい、企業ブランドの価値を下げる可能性があります。
5.効果測定
実行結果を集計し、数値から現状の課題や今後の改善策を検討します。
現在は、インターネットの普及により実行結果をデータで取得できるため、効果測定に関係するデータを集計しましょう。
集計したデータをもとに、施策が計画どおりに進んだかどうかを判定し、足りない部分があれば今後どのような改善活動をすべきかを見つけ出すことが重要です。
まとめ
広報戦略とは、ステークホルダーに発信するメッセージの指針です。
広報戦略に沿った情報発信は、企業に一貫性を持たせるため、信頼獲得やブランディング向上につながります。
自社のブランディングや企業イメージの向上を考えている方は、本記事を参考に広報戦略の立案を進めていきましょう。
この記事が気に入ったら「シェア」