グロースマーケティングとは?求められる背景や具体的な進め方を解説
グロースマーケティングは、自社のファンを作り、顧客と良好な関係を続けていくことを目的としたマーケティング手法です。
競合他社が増え、新しい形態のサービスが次々に登場する昨今においてグロースマーケティングは企業が持続した成長を遂げるための有効なマーケティング手法として注目されています。
ITツールを活用して顧客行動をデータ化し、これに基づいて顧客目線で素早く検証と改善を繰り返しながら、自社のファンを増やすことが重要です。
この記事では、グロースマーケティングの概要や注目されている背景、グロースマーケティングの進め方の注意点をご紹介します。グロースマーケティングを導入して顧客と良好な関係を続け、収益の向上を目指しましょう。
グロースマーケティングとは
グロースマーケティングは顧客との関係性を維持、あるいは強化する施策をとり、企業の持続的な成長を促進するマーケティング手法のことです。
グロースマーケティングの特徴は、マルチチャネルの活用とデータドリブンな意思決定により、継続的な改善を行う点にあります。常に最適な手法を模索するためのテストを繰り返すことで、顧客のニーズを理解し、体験価値を向上させることを目的としているのです。
グロースマーケティングによって企業を応援するファンが増えると、顧客ごとの売上が長期的に増加し、LTV(顧客生涯価値)の向上につなげられるでしょう。LTVが高くなれば、企業は持続的な成長を実現できます。
グロースマーケティングが必要な3つの理由
グロースマーケティングに注目が集まる背景には、主に3つの理由があります。
- 情報量が増えたため
- サービスの提供形態が変化してきたため
- 顧客のニーズが多様化しているため
情報量が増えたため
近年はインターネットの普及やITツール、AIなどの発達によって、顧客や市場の情報を細かくデータ化できる時代になりました。これらのデータは顧客の行動や好みを可視化するため、客観的な事実に基づいてより精度の高いターゲティングとアプローチの分岐ができるようになったのです。
もちろん、データは量さえ蓄積すればいいというわけではありません。どのようなデータを蓄積し、どのように分析し、どのようにマーケティング施策に反映していくかというデータの質と活用法が重要です。
サービスの提供形態が変化してきたため
これまで、商品やサービスは買い切りが基本でした。ところが昨今は、サブスクリプションと呼ばれる継続課金型のサービスが普及してきています。一度に多くの支払いを求めず、毎月少額ながらも安定した収益を得られる形式です。
サブスクリプション型で提供されるサービスは、支払いタイミングが毎月訪れるため、この時期に他社への乗り換え検討が発生しやすくなります。これにより、新しい顧客を獲得するだけでなく、既存顧客を維持するための工夫が定期的に求められる時代になりました。
だからこそ、グロースマーケティングを通じて顧客の利用状況や需要の変化を分析し、競合との差別化を図り、顧客を継続的に惹き付けることが重要になったのです。
顧客のニーズが多様化しているため
インターネットやSNSの発達によって、誰しもが簡単に多くの情報へ触れられる時代になりました。これにより、顧客の価値観も多様化しています。日本だけでなく世界の考え方に触れ、これまでとは違う軸で商品を判断する顧客が増えたのです。
そこで、獲得した顧客との関係性を重視し、良好な関係を続けてLTVを向上させるグロースマーケティングに注目が集まっているのです。
グロースマーケティングとグロースハックの違いとは
グロースマーケティングと混同されやすい言葉に、グロースハックがあります。グロースハックとはデータを収集し、分析した結果をもとに商品の品質や利便性の向上につなげていく手法のことです。
サービス改善のための計画立案や効果検証、そのフィードバックまでを範囲とすることもあります。サービス自体の成長を指しており、グロースマーケティングに比べて短期的な成果を出すためのテクニックや手法そのものに着目する意味合いが強くなります。
一方のグロースマーケティングは、商品だけでなく企業の経営戦略や組織改革まで含めて、長期的に成長させる戦略を指しています。グロースマーケティングは長期的な戦略を指すのに対して、グロースハックはその方向に進むための短期的な戦術といってよいでしょう。
グロースマーケティングの進め方
ここではグロースマーケティングを進めるための具体的な手法について、いくつかのステップに分けてご紹介します。順番に進めていくことで、着実なグロースマーケティングを目指しましょう。
ペルソナの設定
まずは、自社の商品やサービスに対する理想的な顧客像を指すペルソナを作成します。具体的なペルソナの要素は以下の通りです。
用語 | 対象属性 |
---|---|
デモグラフィック変数(人口統計学的属性) | 年齢、性別、職業、世帯規模など |
サイコグラフィック変数(心理学的属性) | 価値観、趣味嗜好、ライフスタイルなど |
ジオグラフィック変数(地理学的属性) | 地域、人口密度、気候など |
ビヘイヴィア変数(行動学的属性) | 使用頻度、ロイヤリティなど |
ペルソナを定めることで、どのような顧客にアプローチするのかが明確になり、社内で共通認識が持て、施策ごとにターゲットがブレる心配がなくなります。
自社で活用しているITツールやアンケートのデータをもとに、ペルソナを想定することも有効でしょう。
カスタマージャーニーマップの作成
顧客が自社の商品・サービスを買うまで、どのような行動をたどるか整理したものをカスタマージャーニーマップと呼びます。顧客がいつ商品を知り、どのような経緯で商品に興味を持ち、どのような比較・検討を経て購入に至るのかを整理することで、マーケティング施策の精度向上につなげます。
カスタマージャーニーマップは、商品や業界によってさまざまな形があります。自社の商品・サービスを購入するユーザーがどのような行動をするかを把握したうえで、カスタマージャーニーマップを作成しましょう。
目標の設定
マーケティング施策に着手する前に、目標設定をおこないます。過去のアンケートや、これまでの企業活動で用いてきた目標をそのまま設定することも可能です。
しかし、グロースマーケティングを本格的に始めるのであれば、データをもとに目標を設定することをおすすめします。ユーザーの行動履歴や購入履歴を把握できるCRMツールを導入している場合は、目標設定に役立つでしょう。
OODAループを回す
目標を定めたら、施策を実施していきます。冒頭でもお伝えしたとおり、グロースマーケティングは仮説と検証を高速で繰り返していく手法です。商品の完成が7割程度だとしても、リリースすることで顧客の反応を見て、素早く改善を加えていけます。
検証と改善を繰り返す際に、よく活用されるのはPDCAサイクルです。計画・実行・確認・改善を繰り返すことで、一歩一歩目標に向かって進めていけるでしょう。
また、より高速にプロジェクトを進めていきたい場合は、OODA(ウーダ)ループもおすすめします。
以下の4つの単語の頭文字をとったフレームワークが、OODAループです。
- Observe(観察)
- Orient(情勢判断)
- Decide(意思決定)
- Act(実行)
PDCAサイクルとOODAループの最大の違いは、順番を無視して戻れる点です。Observe(観察)やOrient(情勢判断)というプロセスがあるように、外部環境の変化を細かく確認し、チャンスがあればすぐに軌道修正してスピーディにプロジェクトを進めていけます。
グロースマーケティングを運用するときの重要なポイント
ここでは、グロースマーケティングを進めていくうえでの、注意点や重要なポイントについて解説します。
顧客目線での分析
あらゆるマーケティングで、顧客目線での分析は重要です。特に、グロースマーケティングは顧客との関係性を強く意識する手法です。顧客と良好な関係を築いてファンになっていただき、持続した企業成長を目指します。
そのためには、顧客体験を意識したうえでの目標設定や施策の立案が必要です。今以上の満足度を得るためにはどのような体験が不足しているのかを、顧客の行動履歴や要望から読み取り、改善していくことが求められます。また、顧客行動を分析することで、顧客さえ気づいていない隠れたニーズの把握につながることもあるでしょう。
体制を整える
グロースマーケティングは、顧客体験の向上によって、企業のファンを増やしていく手法です。これには全社的に取り組む必要があります。
例えば、商品開発部門だけでグロースマーケティングに取り組み、プロモーションの部門が別の考え方で動くと、顧客体験は統一されません。各部門が連携し、目標や考え方を共有して、一貫した施策をおこなってください。
だからこそ、グロースマーケティングを推進するためには、専門チームや体制を整えておくことが重要です。それぞれの部門を横断するポジションを配置するのもいいでしょう。
実践と検証を繰り返す
現代は、顧客のニーズが移り変わりやすく、顧客が離脱するスピードも高まっています。顧客が常に同じ悩みを抱えているとは限らないため、顧客行動データやトレンドの流行り廃りにアンテナを立てる必要があるでしょう。
顧客と良好な関係を続けるには、顧客の気持ちに沿った商品やサービスを提供し続けなければなりません。データによって顧客の気持ちを推察するだけでなく、顧客の声を拾い上げ、素早く検証と改善のループを回していくことが重要です。
まとめ
これまでのプロジェクトの進め方は、商品やサービスを中心に考えることが主流でしたが、グロースマーケティングは顧客との関係性の維持、LTV向上を中心に考えます。
昨今、顧客はさまざまな価値観を持つようになりました。画一的なマーケティングでは、多様な価値観に対応できなくなりつつあります。
しかし、技術の進歩によって、今では顧客コードを細かくデータ化できるようになりました。それらのデータを活用し、顧客と良好な関係を維持するグロースマーケティングに注目が集まっているのです。
グロースマーケティングを進めるうえで重要なのは、顧客目線で素早く検証と改善を繰り返していくことです。OODAループというビジネスフレームワークなども取り入れ、顧客が本当に求めているサービスを開発していきましょう。
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