【弁護士監修】フリーランスには顧問弁護士は必要?依頼のタイミングや必要な準備を解説

フリーランスとして活動する中で、契約内容や報酬、知的財産の取り扱いなど、法律に関わる判断が必要になる場面は少なくありません。小さな見落としや誤解が、思わぬトラブルにつながることもあります。こうしたリスクに備え、必要なタイミングで弁護士に相談できる体制を整えておくことは、はたらき方の安定性を高めるうえで非常に役立ちます。
本記事では、フリーランスに顧問弁護士が必要かを解説します。また、弁護士に依頼すべきタイミングや、メリット、相場も紹介します。
フリーランスに顧問弁護士は必要?

フリーランスに顧問弁護士が必要かどうかは、事業の売上規模ではなく、法的な責任の性質によって決まります。会社員や法人経営者とは異なり、フリーランスは事業上のリスクが個人の生活に直結します。この点を理解することが、弁護士の必要性を考える上での第一歩です。
顧問弁護士が必要な人の特徴
顧問弁護士の必要性は、特定の年収や職種で決まるものではなく「どのような事業状況にあるか」で判断されます。
以下の特徴に当てはまる場合、顧問弁護士の助言を受けることで、法的なトラブルから事業を守る体制を整えることが可能です。
契約書の作成・確認の機会が多い人
フリーランスとしての仕事は、契約の取り決めに沿って進められることが基本です。契約書を取り交わす機会が多ければ多いほど、納品物の仕様、支払い条件、責任の所在などを巡るトラブルのリスクは高まります。
ここで重要なのは、単に受け取った契約書を確認するだけでなく、自ら主導権を握るという視点です。クライアントから提示される契約書は、クライアント側に有利な内容になっている可能性が高いです。これに都度対応するのは時間と精神力を消耗します。
顧問弁護士と連携することで、自らの事業内容に最適化された契約書を作成することが可能です。事前に自社の業務に合った契約書を用意しておくことで、クライアント主導の契約内容にそのまま従うのではなく、自らの条件を交渉に反映させやすくなります。自衛策であると同時に、信頼性のある対応として、理不尽な値引き要求を防ぐことにもつながるでしょう。
知的財産権(IP)を扱う業務をしている人
デザイナー、ライター、ITエンジニア、コンサルタントなど、創造的な成果物を生み出すフリーランスにとって、知的財産権(IP)の管理は事業の根幹に関わる問題です。リスクは二つの側面にあります。一つは、自らが作成したロゴや文章、コードなどの著作物が、許可なくあるいは正当な対価なく流用されることから守ること。もう一つは、意図せず他者の著作権や商標権を侵害してしまい、損害賠償請求訴訟に発展するリスクです。
特に注意すべきは、業務委託における著作権の帰属に関する誤解です。クライアント側は「報酬を支払ったのだから、権利は自社にある」と考える可能性がありますが、著作権法では、契約書で「著作権の譲渡」を明確に定めない限り、著作権は制作者(フリーランス)に残ります。この認識のズレが、「納品したデザインを別の媒体で勝手に使われた」といったトラブルのきっかけとなります。
顧問弁護士は、使用範囲(ウェブ限定、印刷物で1年間など)や権利譲渡の条件を契約書に明記し、双方が納得の上で取引を進めるための道筋をつけてくれます。
事業の拡大・法人化を検討している人
事業が成長し、従業員の雇用、業務委託パートナーと契約する、共同で事業を立ち上げる、あるいは法人化を検討するなどの段階になると、法的な論点は格段に複雑化します。特に、人を雇用すれば労働基準法などの法律を遵守する義務が生じます。
このプロセスにおいて、弁護士は単なる書類作成の代行者ではありません。
事業の将来像に合わせて、株式会社と合同会社のどちらが適切かといった法人形態の選択から、定款の作成、各種許認可の確認まで、事業の基本構造を共に考えてくれます。
早期に弁護士から助言を受けることで、事業拡大後に起こりがちな法的リスクをあらかじめ回避しやすくなるでしょう。
高額な取引を扱うことが多い人
プロジェクトの金額が大きくなるほど、一度のトラブルが事業に与えるダメージは深刻になります。報酬の未払いや、納品物をめぐる損害賠償請求が発生した場合、事業の存続そのものが脅かされかねません。
ここでいう「高額」とは、絶対的な金額ではありません。自身の年間売り上げの大部分を占めるような案件は、たとえクライアントにとっては少額でも、フリーランスにとっては紛れもなく「高額取引」です。弁護士は、リスクを客観的に評価し、分割払いや着手金の確保、検収条件の明確化といった、確実に報酬を回収するための具体的な条項を契約に盛り込むよう助言してくれます。
顧問弁護士でなくても弁護士に依頼することは可能
顧問契約は継続的なサポートを前提としますが、法的な支援が必要な場面は、必ずしも継続的とは限りません。単発の契約書チェックや、一度きりのトラブル解決など、特定の課題に対してのみ弁護士の助言を求める「スポット依頼」という選択肢も広く利用可能です。顧問契約とスポット依頼のどちらが適しているかは、自身の事業フェーズや直面する課題によって異なります。
重要なのは、選択肢があることを知り、状況に応じて適切な形で専門家の力を借りることです。
フリーランスが弁護士に依頼するべきタイミングと判断基準
トラブルは、大きくなる前に解決するのが鉄則です。弁護士への相談を検討すべき具体的な「危険信号」を理解し、迅速に行動するための判断基準を身につけましょう。
報酬の未払い・債権回収の問題が発生したとき
報酬の未払いや支払遅延は、フリーランスが遭遇しやすいトラブルの一つです。単なる支払忘れから、意図的な支払拒否までその態様はさまざまです。
弁護士に依頼する判断基準は、「通常の催促で解決しない」と見極めた時点です。弁護士は、段階的なアプローチで圧力を強めていきます。まず、弁護士名義で送付の事実と内容が公的に証明される「内容証明郵便」を利用し、法的手続きを視野に入れていることを明確に伝えます。最終的には、簡易裁判所の手続きである「支払督促」や「少額訴訟」へと移行します。
損害賠償請求や契約不履行を主張されたとき
「納品物に欠陥があった」「納期遅延で損害が出た」といったクレームを受け、損害賠償を請求されるケースは、フリーランスにとって防御が求められる深刻な事態です。このような状況で、法的な知識なく自己判断で対応することは非常に危険です。不用意な発言が、自らの非を認めることになりかねません。
弁護士に依頼すべきタイミングは「相手方から金銭的な要求や、契約不履行の指摘を受けた直後」です。弁護士の最初の役割は、コミュニケーションの窓口を一本化し、法的な観点から相手の主張の正当性を冷静に分析することです。契約書に定められた責任範囲や、損害賠償額の上限条項などを確認し、そもそも相手の請求が契約上有効なのかを判断します。
初動対応によって、クレームが訴訟に発展するのを未然に防げる可能性があるため、早めに弁護士への依頼を検討するとよいでしょう。
一方的に契約を解除された場合
順調に進んでいたはずのプロジェクトが、クライアントの都合で突然打ち切られると、フリーランスにとって大きな打撃となります。このような一方的な契約解除が法的に許されるのか、そして既に行った作業に対する報酬や逸失利益をどこまで請求できるのかを判断するには、専門的な知識が不可欠です。
特に、「フリーランス新法」では、6か⽉以上の継続的な業務委託契約を解除する場合、原則として30日前までの予告が義務付けられるなど、フリーランスを保護する新たなルールが導入されています。弁護士はこのような最新の法令に精通しており、クライアントの行為が違法である可能性を指摘し、それを交渉の強力な武器として、正当な補償を勝ち取るための交渉を進められます。
出典:フリーランスの取引に関する新しい法律が11⽉にスタート!(内閣官房)
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契約書の作成・リーガルチェックをしたいとき
弁護士に相談する適切なタイミングは、トラブルが起きた後ではなく、起きる前です。
特に、契約書にサインする前が、相談すべきタイミングといえるでしょう。クライアントから提示された契約書はもちろん、共同事業者とのパートナーシップ契約、秘密保持契約(NDA)など、法的な権利義務を発生させるあらゆる文書が対象です。
たとえば、秘密保持契約(NDA)の場合、「秘密情報」の定義が不当に広かったり、不必要に長期間の競業避止義務が課せられていたりすると、将来のビジネスチャンスを大きく制限されかねません。弁護士は、こうしたフリーランスにとって不利益となる条項について、必要に応じて修正を促します。
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納品後のクレームや修正対応トラブルが発生した場合
「当初の仕様にない機能の追加を求められる」「際限なく修正を要求される」といった、いわゆる「スコープ・クリープ(業務範囲の逸脱)」は、多くのフリーランスを疲弊させる問題です。このようなトラブルは、当事者間の主観的な言い争いになりがちです。
弁護士は、契約書という客観的な基準に立ち返り、何が契約の範囲内で、何が範囲外なのかを明確に切り分ける手助けをします。さらに、契約外の要求にどう対応すべきか、具体的なプロセスを構築することも可能です。
知的財産権トラブルに巻き込まれたとき
前述の通り、知的財産権のトラブルは、自らの権利が侵害される「攻撃側」のケースと、他者の権利を侵害したと主張される「防御側」のケースの両方があり得ます。どちらの立場であっても、専門家による迅速な対応が不可欠です。
特にインターネット上の権利侵害は、証拠が短時間で削除されてしまう可能性があるため、時間との勝負になります。侵害を発見した場合は、速やかに証拠を保全し、差止請求や損害賠償請求の手続きを進める必要があります。逆に侵害を主張された場合は、訴訟に発展する前に、相手方との交渉で解決を図ることが重要です。知的財産権に詳しい弁護士は、こうした特殊な手続きのサポートを手助けしてくれます。
フリーランスが弁護士に依頼することで得られるメリット
弁護士への依頼は、トラブル解決にとどまらず、リスク管理や契約の適正化を通じて、事業全体の信頼性と効率を高める手段にもなります。
ここでは、フリーランスが弁護士と連携することで得られる具体的なメリットを解説します。
契約書のチェックと作成でトラブルを予防できる
弁護士が提供する価値の根幹は、「予防法務」にあります。堅牢な契約書は、取引における明確なルールブックとして機能し、業務範囲、報酬、納品物の検収基準、権利の帰属といった点に関する誤解や認識のズレを劇的に減らします。これは、将来起こりうる紛争を未然に防ぐ、効果的でコストパフォーマンスの高い手段です。問題が起きた後に対応するよりも、事前に予防するほうが労力もコストも抑えられます。
報酬未払いなどのトラブルに適切に対処できる
報酬の未払いはフリーランスにとって死活問題ですが、個人で催促を続けても相手に軽視され、無視されることが少なくありません。ここに弁護士が介入することで、状況を変えられる可能性が高まります。
法律事務所の名称で送付される督促状は、法的手続きも辞さないという明確な意思表示になるため、相手方にプレッシャーを与え、裁判に至らずとも支払いを促す動機付けとなり得ます。
法律や労務の知識不足によるリスクを回避できる
フリーランスはそれぞれの専門分野のプロフェッショナルですが、かならずしも法律の専門家ではありません。下請法、著作権法、そして新たに施行されるフリーランス新法など、事業に関連する法規制は多岐にわたり、常に変化しています。これらの法規制を知らずにいると、意図せず法令違反を犯してしまったり、法律で保護されている権利を行使できなかったりするリスクがあります。弁護士は、いわば「外部の法務・コンプライアンス部門」として機能し、フリーランス自身が気づいていないような潜在的リスクから事業を守ってくれます。
債権回収や取引先との交渉を代行できる
困難なクライアントとの交渉や、滞った報酬の回収作業は、多大な時間と精神的なエネルギーを消費することが多いです。このようなストレスの多い業務を専門家である弁護士に一任することで、フリーランスは本来注力すべき創造的な仕事や、新たな顧客獲得に集中できます。弁護士が「交渉役」を担うことで、フリーランスはクライアントとの直接的な対立を避け、感情的な消耗を防げます。
法改正にもすぐ対応できる
法的な環境は絶えず変化しています。近年の「フリーランス新法」の制定は、その象徴的な例です。この法律は、発注者に対して契約内容の明示を義務付けたり、一方的な契約解除を制限したりするなど、フリーランスの権利を強化する多くの規定を含んでいます。
信頼できる顧問弁護士がいれば、法改正の情報をいち早く入手し、自らのビジネスにどのような影響を与えるか、契約書や取引慣行をどう見直すべきかといったアドバイスを受けられます。
法改正の内容を正しく理解し、契約書や業務運用を早めに見直すことで、リスクを回避しやすくなるでしょう。
弁護士費用はどれくらい?フリーランス向けの相場
弁護士費用を懸念するフリーランスは多いです。かつては日本弁護士連合会(日弁連)が報酬基準を定めていましたが、2004年に廃止され、現在は各法律事務所が自由に料金を設定しています。しかし、今なお多くの事務所が、この旧日弁連基準を「妥当な料金」の目安として参考にしています。
単発相談
単発相談(スポット相談)は、30分から1時間単位で法律相談を行う形式です。特定の課題について一度だけアドバイスが欲しい場合に適しています。料金は弁護士の専門性や経験によって異なりますが、30分あたり5,000円から10,000円程度が一般的な目安です。近年は、初回の相談を無料としている事務所も増えています。
顧問契約
顧問契約は、月額定額制で継続的な法律相談サービスを受ける契約です。いつでも気軽に相談できる体制を確保したい場合に適しています。フリーランスや小規模事業者向けのプランでは、月額1〜5万円程度が相場です。
サービス内容(月々の相談時間、契約書レビューの件数など)によって料金が変動するため、自分のニーズに合ったプランを選ぶことが重要です。
その他(着手金・報酬金)
訴訟や調停、具体的な交渉代理など、個別の案件対応を依頼する際には、顧問料とは別に費用が発生します。主なものに「着手金」と「報酬金」があります。
着手金(ちゃくしゅきん) | 案件に着手してもらうために支払う費用で、結果にかかわらず返金されないのが原則です。 |
報酬金(ほうしゅうきん) | 案件が成功裏に解決した場合に支払う成功報酬です。回収できた金額や相手からの請求を減額できた金額など、「経済的利益」を基準に計算されます。 |
これらの金額は、経済的利益の額に応じて算出するという旧日弁連基準を参考にすることが多く、たとえば経済的利益が300万円以下の訴訟であれば、着手金8%、報酬金16%が目安となります。
また、顧問契約を締結している場合、着手金や報酬金が割引されることもありますが、事務所によって対応は異なるため、契約前に確認することが大切です。
フリーランスが自分に合った弁護士を選ぶ方法
自らの事業にとって適切な法務パートナーを見つけるためには、いくつかの重要な視点があります。以下4つのポイントを参考にして下さい。
自分の業界・業種の支援実績があるかをチェックする
フリーランスが自分に合った弁護士を選ぶなら、自身の事業に関連する業界・業種の支援実績があるかをチェックすることが大切です。
法律は広範であり、弁護士にも専門分野があります。たとえば、IT業界の契約問題であれば、システム開発契約特有の論点を熟知している弁護士が適任です。クリエイティブ分野であれば、知的財産に深い知見を持つ弁護士が適しているといえるでしょう。
弁護士事務所のウェブサイトで「取扱分野」や「解決事例」を確認し、自分の業界での実績が豊富かどうかを必ず確認しましょう。
直面しているトラブルの対応経験を確認する
業界の専門性に加え、具体的なトラブル内容に関する経験も重要です。たとえば、報酬の未払い問題で悩んでいるなら、債権回収に強い実績を持つ弁護士を選ぶとよいでしょう。知的財産権の侵害が問題なら、知的財産関連の実績が豊富な弁護士に依頼すると安心です。ウェブサイトで「報酬未払い回収実績多数」「著作権侵害相談ください」といった具体的なキーワードでアピールしている弁護士は、その分野に自信と経験がある可能性が高いです。
緊急時にすぐに連絡が取れるかどうかをチェックする
ビジネス上の問題は、平日の日中だけに発生するとは限りません。トラブルの兆候を察知したときに、すぐ連絡が取れる体制は心強いものです。顧問契約のメリットの一つは、このアクセスのしやすさにあります。
相談を検討する際には、メールの返信にかかる平均的な時間、電話やチャットでの相談が可能かなど、コミュニケーションのルールを事前に確認しましょう。迅速なレスポンスは、問題の早期発見・早期解決に直結します。
相談しやすい雰囲気かどうかを確認する
弁護士とは、事業の根幹に関わるデリケートな情報を共有する関係になります。そのため、専門知識や実績だけでなく、個人的な相性も重要です。初回の法律相談は、弁護士の専門性を見極めると同時に、この相性を確認する絶好の機会です。
こちらの話を丁寧に聞き、専門用語をかみ砕いて分かりやすく説明してくれる、信頼できる人柄の弁護士を選びましょう。
フリーランスが弁護士にトラブルの相談をする前に準備しておくべきこと
弁護士への相談は、時間が限られており、費用も発生します。その価値を最大限に引き出すためには、事前の準備が不可欠です。
以下の4点を整えて相談に臨みましょう。
相談したい内容を明確にする
弁護士に相談する前に、何が問題で、どういう結果を望んでいるのかを自分の中で整理しておくことが重要です。まず、トラブルに至るまでの経緯を時系列で書き出してみましょう。
いつ、誰が、何をしたのかを客観的な事実をまとめることで、弁護士は短時間で状況を把握できます。そして、「未払いの報酬を回収したい」「契約を解除したいが、損害賠償を請求されないか知りたい」など、相談のゴールを明確にしておくと、より具体的で的確なアドバイスを得られます。
契約書・メール・チャットなどの証拠を整理する
法的な判断は、客観的な証拠に基づいて行われます。口約束だけでなく、契約書、発注書、請求書はもちろんのこと、クライアントとの間で交わされたメールやチャットツールのログもすべて重要な証拠となります。
これらの情報を日付順に整理し、相談時にすぐ提示できるように準備しておきましょう。証拠が整理されていると、弁護士は事実確認に時間を費やすことなく、すぐに法的な分析と戦略立案に入れます。
相談相手や状況の情報をまとめる
トラブルの相手方に関する情報も、弁護士が戦略を立てる上で有益な材料となります。相手方の正式名称、所在地、担当者名といった基本情報に加え、これまでの取引履歴や関係性、相手の事業内容などもまとめておきましょう。
たとえば、相手が大企業なのか、小規模な事業者なのかによって、交渉のアプローチは変わってきます。これらの背景情報が、より効果的な解決策を見出すためのヒントになります。
相談費用の目安を調べる
弁護士への相談は有料が原則です。多くの法律事務所では、ウェブサイトに料金体系を明記しています。相談を予約する際に、相談料がいくらかかるのか、時間は何分なのかを必ず確認しましょう。
初回相談無料の事務所も多いですが、その条件(相談内容の制限など)も併せて確認しておくと安心です。事前に費用を把握しておくことで、当日の相談に集中でき、予期せぬ出費に慌てることもなくなります。
弁護士への相談・依頼を考えるフリーランスによくある質問
ここでは、フリーランスが弁護士への相談を検討する際によく抱く疑問について、Q&A形式で解説します。
Q1.フリーランスでも法テラスや無料相談は使える?
条件がありますが、フリーランスでも法テラスや無料相談を利用できます。法テラス(日本司法支援センター)は、経済的に余裕のない方向けに無料の法律相談や弁護士費用の立替えを行う公的な機関です。
利用には収入と資産に関する厳格な基準があり、たとえば東京在住の単身者の場合、手取り月収が約20万200円以下、資産(預貯金等)が180万円以下といった要件を満たす必要があります。フリーランス(個人事業主)の場合、収入は確定申告書の所得金額(売り上げから必要経費を差し引いた額)を基に計算されます。
また、法テラスとは別に、多くの法律事務所が初回無料相談を実施しています。これは費用をかけずに弁護士の専門的な見解を聞き、その弁護士との相性を確かめる絶好の機会です。
出典:弁護士・司法書士費用等の立替制度のご利用の流れ(法テラス)
Q2.弁護士に頼むとどのくらいの期間で解決できる?
解決までの期間は、案件の性質によって大きく異なります。簡単な交渉や督促状の送付で解決する場合は、数週間から1ヶ月程度で済むこともあります。
一方で、複雑な契約トラブルや損害賠償請求が本格的な訴訟に発展した場合は、解決までに1年以上を要することも珍しくありません。弁護士の多くは、時間と費用のかかる訴訟を避け、交渉による早期解決を目指すのが一般的です。
Q3.契約書がなくても弁護士に相談できる?
契約書がなくても弁護士に相談可能です。契約は、書面がなくても口頭での合意で法的に成立します。契約書がない場合、合意内容を証明することが難しくなるのは事実ですが、不可能ではありません。
弁護士は、メールやチャットのやり取り、請求書、納品物、銀行の振込記録といったさまざまな間接的な証拠を組み合わせることで、契約の存在と内容を立証する手助けをしてくれます。契約書がないからと諦めずに、まずは手元にある証拠を持って相談することが重要です。
Q4.顧問契約とスポット依頼はどちらがいい?
顧問契約とスポット依頼のどちらが良いかは、あなたの事業モデルとニーズ次第です。
継続的なリスク管理や予防法務を重視し、頻繁に契約や交渉が発生するビジネスであれば顧問契約が適しています。
一方で、法的な問題がめったに発生せず、特定のトラブルが起きた時だけ対応できれば良いという場合は、スポット依頼の方がコスト効率が良いでしょう。
信頼できる弁護士を見つけよう
本記事では、プロフェッショナルとして活動するフリーランスにとって、弁護士が単なるトラブル解決屋ではなく、事業の持続的な成長に不可欠な戦略的パートナーであることを示してきました。
報酬の未払いや一方的な契約解除といった危機的状況から、日々の契約書チェックという予防的措置まで、弁護士が介入すべきタイミングは多岐にわたります。
優れた弁護士は問題を解決するだけでなく、問題の発生を未然に防ぎ、あなたが自身の専門分野に安心して集中できる環境を創出してくれます。少しでも曖昧な点や不安を感じる部分があれば、弁護士の助言を求めましょう。
(監修日:2025年8月18日)
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