and HiPro [アンド ハイプロ]

副業が事業所得になるケースとは?雑所得との違いや判断基準まで解説

フリーランスの事業所得のイメージ

「自分の副業の収入は事業所得?それともただの雑所得?」
「自分の副業が事業所得として認められるか不安」

副業に取り組む中で、このような税務上の区分について不安を感じる方は少なくありません。本記事では、事業所得と雑所得の基本的な違いや判断のポイント、事業所得として申告する場合の留意点について解説します。

バナー:本業があるから踏み出せる、次の一歩を。初めての副業ならHiPRO Direct

そもそも「事業所得」「雑所得」とは?

副業収入の申告を考える上で、「事業所得」と「雑所得」の違いを理解することは重要です。この2つの所得区分では、税法上の扱いが大きく異なり、節税効果や将来の事業展開にまで影響を及ぼします。

ここでは、それぞれの定義と本質的な違いを解説します。

▼関連記事
【税理士監修】フリーランスが納める税金の仕組み・節税対策を徹底解説

事業所得とは?国税庁の定義と副業での該当例

事業所得は、以下のように定義されています。

「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得」

引用:No.1350 事業所得の課税のしくみ(国税庁)

「事業」とは、単に収入を得る行為を指すのではなく、独立性・継続性・営利性といった要素を伴う活動とされています。一般的には、自己の責任と判断のもとで、利益を得ることを目的に、反復・継続して行われる経済活動から得られる所得が事業所得に区分される可能性があります。

副業が事業所得に該当する例としては、以下のようなケースが考えられます。

  • フリーランスのWebデザイナーやコンサルタントとして、継続的に複数のクライアントから案件を受注している
  • 在庫を仕入れて管理し、ネットショップを継続的に運営している
  • 専門資格を活かして、独立した立場で継続的にサービスを提供している

判断において重要なのは、活動の「種類」よりも「遂行形態」とされています。会社員として本業があっても、副業が事業として成り立つだけの客観的な事実があれば、事業所得と認められる場合もあります。

雑所得とは?該当する副業とその特徴

一方、雑所得は、以下のように定義されています。

「雑所得とは、利子所得、配当所得、不動産所得、事業所得、給与所得、退職所得、山林所得、譲渡所得および一時所得のいずれにも当たらない所得」

出典:No.1500 雑所得(国税庁)

これは、他の9種類の所得に分類されない、「その他」の所得を包括するカテゴリーです。

事業所得が「事業である」という積極的な要件を満たすことで成立するのに対し、雑所得は他のどのカテゴリーにも当てはまらない場合に分類されます。

副業においては、以下のような収入が雑所得に該当する場合が多く見られます。

  • 単発で依頼された原稿の執筆料や講演料
  • 趣味の延長線上にあるハンドメイド作品の不定期な販売
  • アフィリエイト収入やネットオークションでの利益(事業規模でない場合)

これらの活動に共通する特徴は、事業と呼べるほどの継続性や営利性が乏しいことです。副業の内容が片手間やお小遣い稼ぎの範囲にとどまると判断される場合には、雑所得に区分されることがあります。

副業が「事業所得」か「雑所得」かを判断する目安と注意点

副業収入が事業所得にあたるのか、それとも雑所得に区分されるのかは、判断が難しいと感じる方が少なくありません。ここでは、過去の判例や国税庁の見解を参考に、その判断の目安を整理します。

社会通念上「事業」といえる規模で行っている場合は「事業所得」

所得区分を判断する上で重要な原則は、その活動が「社会通念上事業といえる程度で行っているかどうか」です。

実際、過去の最高裁判所の判例でも明確に示されています。特に有名なのが、昭和56年4月24日の最高裁判決(最二判昭和56年4月24日民集第35巻3号672頁)で、ここでは事業所得を次のように定義しています。

事業所得とは、自己の計算と危険において独立して営まれ、営利性、有償性を有し、かつ反覆継続して遂行する意思と社会的地位とが客観的に認められる業務から生ずる所得をいい

引用:最高裁判所判例集(裁判所)

この判例からわかる、事業所得と認められるための具体的な要素は以下のとおりです。

自己の計算と危険

他者からの指揮命令下にあるのではなく、自身の判断と責任で事業を運営し、経済的なリスクを負っているか

営利性・有償性

活動の主たる目的が利益の追求であり、提供するサービスや商品に対価が支払われているか

反復継続性

一度きりの取引ではなく、継続的・反復的に業務を遂行する意思と実態があるか

客観的地位

屋号を掲げる、専用の設備を持つ、専門資格を活かすなど、その活動が客観的に見て「事業」として認識されるだけの体裁を整えているか

事業所得に該当するかどうかは、これらの要素を総合的に勘案し、社会一般の常識に照らして判断されることになります。

帳簿を作成・保存している場合は「事業所得」になる可能性が高い

前述の「社会通念」という基準は、その性質上、どうしても主観的な判断が入り込む余地がありました。

曖昧さを解消し、納税者にとってより予測可能性の高い基準を示すため、国税庁は2022年に所得税基本通達を改正して新たな判断の目安を公表しました。

国税庁が示す目安は以下のとおりです。

収入金額

記帳・帳簿書類の保存あり

記帳・帳簿書類の保存なし

300万円超

概ね事業所得

概ね業務に係る雑所得

300万円以下

概ね事業所得

業務に係る雑所得

出典:雑所得の範囲の取扱いに関する所得税基本通達の解説(国税庁)

この表からわかる重要な点は、「帳簿をきちんと作成・保存している」という行為そのものが、事業性の強い証拠と見なされることです。

国税庁は、収入金額が300万円以下であっても、取引を記録した帳簿書類を適切に保存していれば、事業所得として取り扱われる可能性があるとしています。

ただし、帳簿保存があっても例外的に雑所得と判断されるケースがある点には注意が必要です。具体的には、以下のケースが当てはまります。

  1. その所得の収入金額が僅少と認められる場合(例:例年300万円以下で、かつ本業収入の10%未満)
  2. その活動に営利性が認められない場合(例:長年赤字続きで、黒字化への具体的な取り組みが見られない)

小遣い稼ぎや趣味の延長で、営利性や継続性が乏しい場合は「雑所得」

活動の目的が利益追求よりも個人の趣味や楽しみが強い場合や、活動が不定期・単発で終わる場合は、雑所得に区分される可能性が高いと考えられます。

たとえば、以下のようなケースが該当します。

  • 友人に頼まれて数点だけハンドメイドアクセサリーを販売した場合
  • 知人の子供に数回だけ勉強を教えた謝礼

これらの活動は、社会通念上「事業」と呼ぶには規模や計画性が不足していると判断されます。

フリーマーケット・ネットオークションの利益など片手間で得た収入は「雑所得」

まず大前提として、自身や家族が生活のために使用していた衣服、家具、家電といった「生活用動産」を売却して得た利益は、原則として非課税です。確定申告の必要は原則ありません。

しかし、以下のケースに該当する場合は課税対象となり、雑所得として申告することになります。

  1. 営利目的で売買している
  2. 継続的な売買で利益をあげている
  3. 貴金属や宝石、書画、骨とうなど価額が30万円を超えるものを売却している

最初から転売目的で商品を仕入れて販売している場合は生活用動産の譲渡には当たらず、営利活動と見なされます。また、たとえ不用品の処分であっても、それを継続的・反復的に行い、相当な利益を上げている場合は、雑所得に区分される場合があります。

出典:No.3105 譲渡所得の対象となる資産と課税方法(国税庁)

副業が「事業所得」であることのメリット

副業収入を「事業所得」として申告することは、単なる所得区分の違いにとどまりません。事業活動を行う人に認められた各種の税制上の特例や優遇措置を利用できる可能性がある、という点が大きな特徴です。

ここからは、副業を事業所得として申告するメリットを解説します。

必要経費を幅広く計上できる

事業所得も雑所得も、収入を得るために直接要した費用を「必要経費」として差し引ける点は共通しています。しかし、事業所得の場合は、範囲がより広く、かつ税務調査においても主張しやすくなる点が魅力です。

たとえば、自宅兼事務所の場合、事業で使う割合(面積や時間)に応じて家事按分し、経費計上できます。雑所得でも可能ですが、認められる割合の根拠をより厳密に問われる傾向があるため注意が必要です。

また、取引先との飲食代や従業員のための費用など、雑所得の場合と比べて、必要経費として認められる範囲が比較的広いとされる傾向があります。

▼関連記事
【税理士監修】フリーランスの経費の完全ガイド|使える経費はいくらまで?節税と確定申告について解説

青色申告特別控除が受けられる

事業所得で申告するメリットの一つが、「青色申告」を選択できることです。青色申告を行うことで、「青色申告特別控除」が受けられます。

この控除額には、記帳レベルや申告方法に応じて3つの段階があります。

最大65万円の控除

事業所得または事業的規模の不動産所得があり、正規の簿記の原則(複式簿記)で記帳し、貸借対照表と損益計算書を添付します。

 

その上で、e-Taxによる電子申告または優良な電子帳簿保存を行う場合に適用されます。

55万円の控除

上記のうち、e-Tax申告や電子帳簿保存の要件を満たさない場合に適用されます。

10万円の控除

複式簿記ではなく簡易な帳簿で申告する場合に適用されます。

最大65万円の所得控除は、課税所得を直接圧縮するため、税負担を大きく軽減する効果があります。これは雑所得では利用できない、事業所得として申告する際の大きなメリットの一つといえます。

出典:No.2072 青色申告特別控除(国税庁)

所得が赤字の場合に損益通算ができる

副業では、経費が収入を上回り、赤字(損失)になる場合があります。事業所得の場合、この赤字を他の所得(会社員であれば本業の給与所得)と相殺できます。

たとえば、給与所得が500万円あり、副業の事業で100万円の赤字が出たとします。この場合、損益通算を行うことで、その年の課税対象となる所得は400万円(500万円−100万円)に圧縮可能です。

結果として、給与から源泉徴収されていた所得税の一部が還付され、手元資金の補填につながる場合があります。

一方で、雑所得で生じた赤字は、他の所得と損益通算することはできません。

出典:No.2070 青色申告制度(国税庁)

家族への給与を経費にできる(青色申告の場合)

青色申告を行う事業所得者には、「青色事業専従者給与」という特例が認められています。これは、生計が同じ配偶者や15歳以上の親族が、その事業に従事している場合に支払った給与を、全額必要経費として計上できる制度です。

この制度を活用することで、配偶者に経理や事務作業を手伝ってもらい、その対価として給与を支払えます。家計全体で見れば収入は変わりませんが、事業主の所得を圧縮できるため、結果的に税負担の軽減につながる場合があります。

ただ、この特例の適用を受けるには、事前に「青色事業専従者給与に関する届出書」を税務署に提出しなければなりません。また、その親族が年間6か月を超える期間(または事業に従事できる期間の半分を超える期間)事業に従事しているなどの要件を満たす必要があります。

出典:No.2075 青色事業専従者給与と事業専従者控除(国税庁)

30万円未満の少額減価償却資産の特例(青色申告の場合)

事業を行う上で、パソコンや机、専門機材などの設備投資は不可欠です。通常、取得価額が10万円以上の資産(減価償却資産)は、その耐用年数に応じて数年間にわたって分割して必要経費に(減価償却)します。

しかし、青色申告を行う中小企業者等(個人事業主を含む)には、一定の条件を満たすことで「少額減価償却資産の特例」が適用されます。これにより、取得価額が30万円未満の減価償却資産は、全額を必要経費として計上できます。

たとえば、25万円の高性能パソコンを購入した場合、この特例を使えばその25万円全額をその年の必要経費にできます。これにより、その年の課税所得を圧縮でき、結果的に投資した資金を税負担の軽減という形で早期に回収できる可能性があります。

ただ、少額減価償却資産の特例の適用には年間合計300万円の上限があります。また、購入・使用を開始した事業年度に計上しなければならない点には注意が必要です。

出典:No.2100 減価償却のあらまし(国税庁)

副業が「事業所得」の際の確定申告の流れ

副業を事業所得として申告すると決めたら、次は具体的な確定申告の手続きを進めることになります。流れ自体はシンプルですが、各ステップで正確な作業が求められます。

ここでは、事業所得の確定申告における基本的な4つのステップを解説します。

▼関連記事
【税理士監修】フリーランスは確定申告が必要?ケース別の判断基準やメリット、やり方を解説

1.帳簿を作成する

確定申告の基盤となるのが「帳簿」の作成です。

日々の売上や必要経費を会計ルールに従って記録することで、後に決算書を作成でき、税務調査に備えた経費の根拠資料にもなります。

帳簿の付け方には、主に2つの方式があります。

  • 複式簿記
  • 単式簿記(簡易簿記)

複式簿記とは、貸借対照表と損益計算書を作成するための正規の簿記原則です。青色申告で最大65万円または55万円の特別控除を受けるためには、この方式での記帳が求められます。

単式簿記(簡易簿記)とは、収入と支出をシンプルに記録する方法です。青色申告の10万円控除や白色申告では、この方式でも認められます。

2.確定申告に必要な書類を作成する

年間の取引の記帳が完了したら、その集計結果をもとに確定申告に必要な書類を作成します。事業所得(青色申告)の場合、主に以下の書類が必要となります。

確定申告書

全所得を合算し、税額を計算する基本書類です。

青色申告決算書

1年間の事業成績をまとめた書類で、以下の2つから構成されます。

 

・損益計算書(P/L):売り上げ・経費・利益を記載し、年間の儲けを示します。

 

・貸借対照表(B/S):年末時点での資産、負債、資本の状況を示し、財政状態を明らかにします。

各種控除証明書

生命保険料控除、地震保険料控除、社会保険料控除など、所得控除を受けるために必要な証明書類です。

本人確認書類

マイナンバーカード、または通知カードと運転免許証などの身元確認書類の組み合わせが必要です。

確定申告の直前になって準備すると、記載漏れや添付忘れなどが発生する恐れがあるため、早めに準備しておきましょう。

出典:【申告書の提出】(国税庁)

3.税務署に書類を提出する

作成した申告書類は、原則として翌年の2月16日から3月15日までの申告期間内に、所轄の税務署に提出します。提出方法には、主に以下の3つがあります。

e-Tax(電子申告)

国税庁のオンラインシステムを利用してインターネット経由で提出します。青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、この方法での申告が要件の一つとなります。

郵送

所轄の税務署宛に郵送します。信書扱いとし、通信日付印が提出日と見なされます。

窓口持参

税務署の窓口に直接持参して提出します。時間外収受箱への投函も可能です。

近年は、e-Tax(電子申告)の国税庁のオンラインシステムを利用してインターネット経由で提出するのが主流です。青色申告で65万円の特別控除を受けるためには、この方法での申告が要件の一つとなっています。

出典:No.2020 確定申告(国税庁)

4.申告した税金を納付する

確定申告書を提出後、確定した税額を期限までに納めます。納付期限は原則3月15日 です。

納付方法は、以下のとおりです

  • 金融機関や税務署の窓口での現金納付
  • 指定した預金口座からの振替納税
  • クレジットカード納付
  • スマートフォンアプリ納付
  • コンビニ納付

それぞれに利便性や手数料の違いがあるため、自分に合った方法を選びましょう。期限を過ぎると延滞税がかかる場合があるため、忘れずに対応することが大切です。

出典:【税金の納付】(国税庁)

副業が「事業所得」の際に最低限やっておきたいこと

副業を「事業」として継続的に行い、税務上のメリットを十分に活用するためには、確定申告そのものだけでなく、事前の準備や各種手続きを整えておくことが欠かせません。

ここでは、事業所得として申告する場合に最低限取り組んでおきたい4つのポイントを紹介します。

開業届の提出

副業を事業として行う意思を税務署に伝える手続きが「開業届(個人事業の開業・廃業等届出書)」の提出です。提出期限は「事業を開始した日から原則1か月以内」とされています。

開業届を提出することで、個人事業主として活動していることを公的に証明できます。青色申告の承認を受けるには、開業届の提出が前提条件となるため、早めに手続きをしておくと安心です。

また、事業用の銀行口座を開設する際や金融機関から融資を受ける際にも開業届の控えを求められる場合があります。e-Taxを利用すればオンラインでの提出も可能です。

出典:A1-5 個人事業の開業届出・廃業届出等手続(国税庁)

必要経費の記録と領収書の保管

事業所得の計算において、必要経費を漏れなく計上することは節税の基本です。そのためには、事業活動で発生した費用の領収書やレシート、請求書など証拠書類を必ず保管し、正確に帳簿へ記録する習慣が不可欠です。

「これは必要経費になるだろう」という自己判断だけでなく、その支出が「事業の売り上げを向上するために、どのように必要だったか」を客観的に説明できることが重要です。

特に、家事按分を行う費用については、その計算根拠(使用面積や時間など)も記録しておく必要があります。記録がなければ、税務調査の際に必要経費として認められず、追徴課税のリスクが生じるため注意が必要です。

▼関連記事
【税理士監修】フリーランスのための領収書ガイド|発行・保存の方法や注意点を徹底解説

青色申告の準備と申請

事業所得のメリットを最大限に活用するためには、「青色申告」の選択が推奨されます。青色申告を行うためには、事前に「所得税の青色申告承認申請書」を税務署に提出し、承認を受けなければなりません。

この申請書の提出期限は、青色申告をしようとする年の3月15日までです。ただし、その年の1月16日以降に新たに事業を開始した場合は、事業開始日から2か月以内が提出期限となります。

開業初年度から青色申告を希望する場合は、開業届と同時に申請するのが効率的です。この申請をしておくかどうかで、最大65万円の特別控除 や 赤字の繰越控除 など大きなメリットが得られるかどうかが変わります。

出典:A1-8 所得税の青色申告承認申請手続(国税庁)

住民税の支払い方法の選択

住民税は、前年の所得に基づいて計算され、市区町村に納める税金です。納付方法には、給与から天引きされる「特別徴収」と、自宅に送られてくる納付書にて自分で納める「普通徴収」の2つがあります。

何も選択しなければ、副業所得を含めた総所得に対する住民税額が計算され、その全額が本業の会社の給与から特別徴収されます。

自治体によっては対応できないケースもありますが、自分で納付したい場合は、確定申告書の第二表にある「住民税に関する事項」の欄で、「給与・公的年金等以外の所得に係る住民税の徴収方法」の「自分で納付」を選択します。

これにより、副業の事業所得にかかる分の住民税だけを普通徴収に切り替え、自宅に届く納付書によって自分で納めることが可能です。

副業が「事業所得」の場合に必要な帳簿の保存期間

事業所得として申告する場合、法律によって帳簿や領収書などの書類を一定期間保存することが義務付けられています。この保存義務は、税務調査の際に申告内容の正当性を証明するための根拠となるため、非常に重要です。

保存期間は、青色申告か白色申告か、また書類の種類によって異なります。

青色申告を選択した場合

青色申告は、高い節税効果が得られる一方で、より厳格な記録と保存が求められます。主要な帳簿や書類の保存期間は原則として7年間です。

書類の種類

具体例

保存期間

主要な帳簿

仕訳帳、総勘定元帳、現金出納帳など

7年

決算関係書類

損益計算書、貸借対照表、棚卸表など

7年

現金預金取引等関係書類

領収書、請求書、預金通帳、借用証など

7年(※)

その他の書類

見積書、契約書、納品書、送り状など

5年

出典:記帳や帳簿等保存・青色申告(国税庁)

※現金預金取引等関係書類については、前々年分の所得が300万円以下の場合は、保存期間が5年間に短縮されます。

保存期間の起算日は、その年の確定申告期限の翌日(通常は3月16日)からです。

白色申告を選択した場合

白色申告者にも、記帳と帳簿書類の保存が義務付けられています。青色申告ほど厳格ではありませんが、定められた期間、適切に書類を保管する必要があります。

書類の種類

具体例

保存期間

法定帳簿

収入金額や必要経費を記載した帳簿

7年

任意帳簿

上記以外の業務に関して作成した帳簿

5年

書類

決算に関して作成した棚卸表、請求書、領収書など

5年

白色申告の場合、収入や経費を記録した主要な帳簿(法定帳簿)は7年間、それ以外の帳簿や書類は5年間の保存が必要です。

起算日の考え方は青色申告と同様です。これらの保存義務を怠ると、申告内容の信頼性が揺らぎ、税務調査で不利な判断を受ける可能性があるため、必ず保管しておきましょう。

出典:No.2080 白色申告者の記帳・帳簿等保存制度

副業が「事業所得」である場合の注意点

副業を事業所得として申告することは多くのメリットをもたらしますが、同時に事業者としての責任も伴います。守るべきルールを軽視すると、かえって大きなリスクを招くことになりかねません。

ここでは、事業所得で申告する際に特に注意すべき3つのポイントを解説します。

帳簿付けと証拠書類の保存を徹底する

帳簿付けと証拠書類の保存は原則として必要であり、適切に行うことが望ましいです。

記録が不十分であったり、保存されていなかったりすると、税務調査が入った際に経費の計上が否認される可能性があります。営利性や継続性が不十分と判断されると、雑所得として取り扱われる可能性もあります。

そうなれば、青色申告特別控除や損益通算といったメリットは得られず、追徴課税が発生する可能性があります。会計ソフトなどを活用し、取引が発生する都度、記帳と書類保管を徹底する習慣をつけましょう。

無理な損失計上や過度な節税を狙わない

損益通算は事業所得の大きな魅力ですが、適切な運用を行わないとリスクを負うことがあります。

よくあるケースとして、明らかに営利目的とは思えない活動(趣味の延長など)で、意図的に赤字を作り出す場合が挙げられます。そのような赤字を給与所得と損益通算して税金の還付を受ける行為は、税務署から厳しくチェックされます。

また、長期間にわたって赤字が継続し、かつ赤字を解消するための具体的な営業努力などが見られない場合も同様です。その活動の「営利性」が否定され、事業所得ではなく雑所得と判断される可能性があります。

さらに、プライベートな旅行や食事の費用を「接待交際費」として計上するなど、事業と無関係な経費を紛れ込ませる行為も、税務調査で指摘されやすい典型的な例です。

税務署から否認される恐れがあるため、節税はルールの範囲内で行うことが重要です。

わからないことはすぐに税理士・専門家に相談する

税法は非常に複雑であり、解釈が難しい部分も少なくありません。所得区分の判断や必要経費にできる範囲など、少しでも疑問や不安を感じた場合は、税理士などの専門家に相談するとよいでしょう。

特に、初めて事業所得として申告する場合や、取引が複雑化してきた場合は、専門家のアドバイスが有用です。早期に相談することで、安心して事業に集中できる環境を整えられるでしょう。

副業が「事業所得」かどうかで悩む人によくある質問

副業の所得区分に関しては、多くの人が同じような疑問や悩みを抱えています。ここでは、特に多く寄せられる質問をピックアップし、それぞれに具体的かつ明確に回答します。

副業収入が少額でも申告すべき?

副業収入が少額でも、原則として申告が必要です。ただし、申告の種類と基準が異なります。

まず、会社員などの給与所得者が副業を行っている場合、副業の所得(収入から経費を引いた儲け)が年間20万円以下であれば、所得税の確定申告は不要とされています。しかし、これはあくまで所得税の話です。住民税にはこのルールが適用されないため、所得が1円でもあれば、お住まいの市区町村役場に住民税の申告をする義務があります。

確定申告をすれば、その情報が役場に連携されるため住民税の申告は不要になります。確定申告をしない場合は、別途住民税の申告が必要になることを忘れてはいけません。

出典:確定申告が必要な方(国税庁)

必要経費にできるものの範囲は?

必要経費とは、「収入を得るために直接必要な売り上げ原価や販売費、管理費その他費用」を指します。副業の内容によってさまざまですが、一般的には以下のようなものが該当します。

  • 仕入代金
  • 文房具やコピー用紙などの消耗品費
  • 打ち合わせのための交通費や会議費
  • 事業に関する情報収集のための書籍代やセミナー参加費
  • 広告宣伝費

自宅で作業している場合は、家事按分によって家賃や水道光熱費、通信費の一部も必要経費にすることが可能です。

副業が複数ある場合は全て事業所得に含めていい?

所得区分は、副業の活動ごとに判断します。したがって、複数の副業を掛け持ちしている場合、ある副業は事業所得、別の副業は雑所得(または給与所得)という状況も珍しくありません。

ただ、確定申告の際は、これらの異なる種類の所得を一枚の確定申告書で申告します。所得の種類ごとに申告書を分けたり、別々に提出したりすることはできません。

副業の事業所得について理解を深めて適切に申告しよう

本記事では、副業収入が「事業所得」と「雑所得」のどちらに分類されるかについて、その定義から具体的な判断基準、税制上のメリット、実務上の注意点までを網羅的に解説しました。

まずは、今年の副業の収入と必要経費をすべてリストアップし、領収書を整理することから始めましょう。その上で、自分の副業が「事業」としての実態を備えているか、本記事の基準に照らして客観的に判断してみてください。

▼関連記事
副業の始め方を4ステップで紹介|メリット・デメリットや注意点も解説
【税理士監修】フリーランスの消費税とは?納税方法や計算方法をわかりやすく解説
【年収別】フリーランスの税金をシミュレーション!節税対策もわかりやすく解説|税理士監修

バナー:本業があるから踏み出せる、次の一歩を。初めての副業ならHiPRO Direct

関連するタグ

この記事が気に入ったら「シェア」

RECOMMENDED