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【税理士監修】フリーランスの所得税・住民税ガイド|計算方法や支払い方法を解説

フリーランスの所得税のイメージ

「会社員時代と税金の仕組みが違いすぎて、何から手をつかればいいか分からない…」
「確定申告の時期が近づくと、毎年不安で本業に集中できない」

フリーランスとして独立し、税金の手続きの複雑さに戸惑う方が少なくありません

本記事では、フリーランスが納めるべき所得税と住民税の基本から、具体的な計算方法、年収別の税額シミュレーションを解説します。また、申告の流れや節税対策も詳しく紹介します。

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フリーランスにかかる所得税・住民税とは?

フリーランスが向き合うべき主要な税金は「所得税」と「住民税」の2つです。これらは納税先や計算の根拠が異なり、その違いを理解することが税務戦略の第一歩となります。

以下、それぞれの特徴を詳しく解説します。

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所得税とは

所得税は、個人の1年間の所得に対して課される「国税」です。国税庁が管轄し、国の運営、たとえば社会保障、公共事業、教育などの財源として使われます。

所得税の特徴は、所得が多くなるほど税率が高くなる「超過累進税率」が採用されている点です。これは、支払い能力(担税力)に応じて公平に税を負担するという考え方に基づいています。

つまり、所得が高い人ほど、より高い割合で税を負担する仕組みになっています。この超過累進税率の構造は、後述する節税対策、特に法人化を検討する際の判断材料のひとつになります。

計算の基本は「収入−必要経費−各種所得控除=課税所得金額」という式で算出された課税所得金額に、定められた税率を掛けて税額を決定します。

なお、2013年〜2037年分までは、確定したその年分の所得税額に対して2.1%を乗じた「復興特別所得税」も併せて申告・納付する仕組みになっており、最終的な納付額は「所得税+復興特別所得税」となります。

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住民税とは

住民税は、その年の1月1日時点で住所を置いている都道府県および市区町村に納める「地方税」です。これは、私たちが日々利用する教育、福祉、消防・救急、ゴミ処理といった地域行政サービスを維持するための財源であり、地域社会を維持するうえで重要な役割を果たしています。

住民税は、大きく分けて二つの要素で構成されています。一つは前年の所得金額に応じて課税される「所得割」と、もう一つは所得にかかわらず定額で課される「均等割」です。

この「均等割」を理解することが重要です。なぜなら、所得税が各種控除の結果0円になったとしても、地域社会の一員であることに対する固定費である「均等割」部分は原則として発生するためです。

フリーランスの所得税・住民税の計算方法

所得税と住民税の計算は複雑に見えますが、その構造を分解すれば理解しやすくなります。所得税は超過累進税率に基づき、住民税は所得割と均等割の二階建て構造で計算されます。ここでは、それぞれの具体的な計算方法と税率を解説します。

所得税の計算方法・税率(2025年)

所得税額は、以下の計算式で算出されます。

所得税額=課税所得金額×税率−控除額

この計算を簡単に行うために、国税庁は「所得税の速算表」を公開しています。2025年(令和7年)分の確定申告で適用される税率は以下の通りです。

課税される所得金額

税率

控除額

1,000円から1,949,000円まで

5%

0円

1,950,000円から3,299,000円まで

10%

97,500円

3,300,000円から6,949,000円まで

20%

427,500円

6,950,000円から8,999,000円まで

23%

636,000円

9,000,000円から17,999,000円まで

33%

1,536,000円

18,000,000円から39,999,000円まで

40%

2,796,000円

40,000,000円以上

45%

4,796,000円

引用:No.2260 所得税の税率(国税庁)

ここで注意したいのは、表中の「控除額」が追加の節税枠ではないという点です。これは超過累進課税の複雑な段階計算を簡略化するための数学的な調整値です。

たとえば課税所得700万円の場合、本来は所得段階ごとに税率を掛けて合算する手間がかかりますが、速算表を使えば「7,000,000×23%−636,000円=974,000円」と一度の計算で済みます。この仕組みを理解することで、速算表をより正しく活用できます。

住民税の計算方法・税率

住民税は「所得割」と「均等割」の合計額で決まります。所得税の確定申告を行えば、その情報が市区町村に連携されるため、自分で住民税を計算して申告する必要は基本的にありません。

所得割

所得割は、前年の課税所得金額に対して課される税金です。税率は、一部の自治体を除き、原則として全国一律10%(市区町村民税6%、道府県民税4%)です。政令指定都市の場合は、市民税8%、道府県民税2%と内訳が異なることがありますが、合計10%である点は同じです。

所得税と住民税の計算で決定的に違うのが「基礎控除」の額です。令和7年度の所得税の基礎控除は、以下のとおりです。

  • 合計所得⾦額132万円以下:95万円
  • 合計所得⾦額132万円超336万円以下:88万円(令和9年分以後は58万円)
  • 合計所得⾦額336万円超489万円以下:68万円(令和9年分以後は58万円)
  • 合計所得⾦額489万円超655万円以下:63万円(令和9年分以後は58万円)
  • 合計所得⾦額655万円超2,350万円以下:58万円

一方、住民税の基礎控除は43万円と、所得税の基礎控除に比べて低く設定されています。この差が、所得税は0円でも住民税は課税されるという状況を生む主な原因です。

均等割

均等割は、所得金額にかかわらず、その地域に住む住民が等しく負担する固定の税額です。標準的な税額は、市区町村民税3,000円、道府県民税1,000円の合計4,000円です。この金額には、東日本大震災からの復興財源確保のための臨時措置(2023年度で終了)に代わり、2024年度からは新たに国の「森林環境税」1,000円が上乗せされています。自治体によっては、独自の環境税などを上乗せしている場合もあります。

出典:個人住民税(総務省)説明資料〔個人住民税について〕(総務省)令和7年度税制改正による所得税の基礎控除の見直し等について(国税庁)

年収別|フリーランスの所得税・住民税はいくらかかる?

税金の計算式を理解しても、実際に自分の年収でいくらになるのかを把握するのは難しいものです。ここでは、年収別に所得税・住民税、さらに国民健康保険料を含めた手取り額の目安をシミュレーションします。節税効果の大きい「青色申告」と「白色申告」でどれだけ差が出るのか、そのインパクトを具体的に見ていきましょう。

計算は以下の条件に基づいています。

  • 配偶者なし(独身)
  • 20歳〜39歳(介護保険料第2号被保険者ではない)
  • 国民健康保険料率は東京都中央区の令和7年度(2025年度)料率(所得割率7.71%・均等割額47,300円)で計算
  • 住民税は税率10%・均等割額5,000円で計算
  • 計算を簡略化するため、必要経費・消費税・個人事業税は含んでいません
  • 青色申告(65万円控除)と白色申告の両方を比較
  • 所得控除は基礎控除と社会保険料控除のみを考慮
  • 所得税の基礎控除は令和7年度を使用

※復興特別所得税(所得税額の2.1%)は計算に含んでいません

出典:国民健康保険の保険料(中央区)

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年収300万円の場合の税額目安

【はじめに:社会保険料の計算】

税金を計算する前に、所得控除の対象となる社会保険料(国民年金・国民健康保険料)を算出します。

■国民年金保険料

  • 令和7年度(2025年度)の月額17,510円で計算します。
  • 17,510円×12か月=210,120円

■国民健康保険料(東京都中央区令和7年度料率)

  • 所得割:(3,000,000円-430,000円)×7.71%=198,147円
  • 均等割:47,300円
  • 合計:198,147円+47,300円=245,447円

■社会保険料控除合計

  • 210,120円+245,447円=455,567円

出典:国民年金保険料(日本年金機構)

【青色申告(65万円控除)の場合】

青色申告は、帳簿付けなどの要件を満たすことで、所得から最大65万円の特別控除を受けられる制度です。

■所得税の計算

  • 課税所得金額3,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-880,000円(基礎控除)-455,567円(社会保険料控除)=1,014,433円→1,014,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額1,014,000円 × 5%(税率) = 50,700円

所得税額:50,700円

■住民税の計算

  • 課税所得金額3,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-430,000円(基礎控除)-455,567円(社会保険料控除)=1,464,433円
  • 住民税額
    • 所得割:1,464,433円×10%(税率)≒146,400円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:146,400円+5,000円=151,400円

住民税額:151,400円

■税金合計(青色申告)

50,700円(所得税)+151,400円(住民税)=202,100円

【白色申告の場合】

白色申告は、青色申告のような特別控除がない、より簡易な申告方法です。

■所得税の計算

  • 課税所得金額3,000,000円(所得)-880,000円(基礎控除)-455,567円(社会保険料控除)=1,664,433円→1,664,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額1,664,000円×5%(税率)-0円(控除額)=83,200円

所得税額:83,200円

■住民税の計算

  • 課税所得金額3,000,000円(所得)-430,000円(基礎控除)-455,567円(社会保険料控除)=2,114,433円
  • 住民税額
    • 所得割:2,114,433円×10%(税率)≒211,400円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:211,400円 + 5,000円 = 216,400円

住民税額:216,400円

■税金合計(白色申告)

83,200円(所得税)+216,400円(住民税)=299,600円

年収500万円の場合の税額目安

【はじめに:社会保険料の計算】

まず、所得控除の基礎となる社会保険料を計算します。

■国民年金保険料

  • 17,510円×12か月=210,120円

■国民健康保険料(東京都中央区令和7年度料率)

  • 所得割:(5,000,000円-430,000円)×7.71%=352,347円
  • 均等割:47,300円
  • 合計:352,347円+47,300円=399,647円

■社会保険料控除合計

  • 210,120円+399,647円=609,767円

【青色申告(65万円控除)の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額5,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-680,000円(基礎控除)-609,767円(社会保険料控除)=3,060,233円→3,060,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額3,060,000円×10%(税率)-97,500円(控除額)=208,500円

所得税額:208,500円

■住民税の計算

  • 課税所得金額5,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-430,000円(基礎控除)-609,767円(社会保険料控除)=3,310,233円
  • 住民税額
    • 所得割:3,310,233円×10%(税率)≒331,000円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:331,000円+5,000円=336,000円

住民税額:336,000円

  • ■税金合計(青色申告)
    208,500円(所得税)+336,000円(住民税)=544,500円

年間の税金合計額(青色申告):544,500円

【白色申告の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額5,000,000円(所得)-630,000円(基礎控除)-609,767円(社会保険料控除)=3,760,233円→3,760,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額3,760,000円×20%(税率)-427,500円(控除額)=324,500円

所得税額:324,500円

■住民税の計算

  • 課税所得金額5,000,000円(所得)-430,000円(基礎控除)-609,767円(社会保険料控除)=3,960,233円
  • 住民税額
    • 所得割:3,960,233円×10%(税率)≒396,000円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:396,000円+5,000円=401,000円

住民税額:401,000円

■税金合計(白色申告)
324,500円(所得税)+401,000円(住民税)=725,500円

年収700万円の場合の税額目安

【はじめに:社会保険料の計算】

まず、所得700万円の場合の社会保険料(国民年金・国民健康保険料)を算出します。

■国民年金保険料

  • 17,510円×12か月=210,120円

■国民健康保険料(東京都中央区令和7年度料率)

  • 所得割:(7,000,000円-430,000円)×7.71%=506,547円
  • 均等割:47,300円
  • 合計:506,547円+47,300円=553,847円

■社会保険料控除合計

  • 210,120円+553,847円=763,967円

【青色申告(65万円控除)の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額7,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-630,000円(基礎控除)-763,967円(社会保険料控除)=4,956,033円→4,956,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額4,956,000円×20%(税率)-427,500円(控除額)=563,700円

所得税額:563,700円

■住民税の計算

  • 課税所得金額7,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-430,000円(基礎控除)-763,967円(社会保険料控除)=5,156,033円
  • 住民税額
  • 所得割:5,156,033円×10%(税率)≒515,600円(100円未満切り捨て)
  • 均等割:5,000円
  • 合計:515,600円+5,000円=520,600円

住民税額:520,600円

■税金合計(青色申告)

563,700円(所得税)+520,600円(住民税)=1,084,300円

【白色申告の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額7,000,000円(所得)-580,000円(基礎控除)-763,967円(社会保険料控除)=5,656,033円→5,656,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額5,656,000円×20%(税率)-427,500円(控除額)=703,700円

所得税額:703,700円

■住民税の計算

  • 課税所得金額7,000,000円(所得)-430,000円(基礎控除)-763,967円(社会保険料控除)=5,806,033円
  • 住民税額
    • 所得割:5,806,033円×10%(税率)≒580,600円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:580,600円+5,000円=585,600円

住民税額:585,600円

■税金合計(白色申告)

703,700円(所得税)+585,600円(住民税)=1,289,300円

年収1,000万円の場合の税額目安

【はじめに:社会保険料の計算】

所得1,000万円の場合、国民健康保険料が上限額に達するかを確認して計算する必要があります。

■国民年金保険料

  • 17,510円×12か月=210,120円

■国民健康保険料(東京都中央区令和7年度料率)

  • 所得割(上限前):(10,000,000円-430,000円)×7.71%=737,847円
  • 東京都中央区の保険料上限額(医療分65万円+支援金分22万円=87万円)を下回っているため、上限は適用されません。
  • 合計:737,847円(所得割)+47,300円(均等割)=785,147円

■社会保険料控除合計

  • 210,120円+785,147円=995,267円

【青色申告(65万円控除)の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額10,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-580,000円(基礎控除)-995,267円(社会保険料控除)=7,774,733円→7,774,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額7,774,000円×23%(税率)-636,000円(控除額)=1,152,020円

所得税額:1,152,020円

■住民税の計算

  • 課税所得金額10,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-430,000円(基礎控除)-995,267円(社会保険料控除)=7,924,733円
  • 住民税額
  • 所得割:7,924,733円×10%(税率)≒792,400円(100円未満切り捨て)
  • 均等割:5,000円
  • 合計:792,400円+5,000円=797,400円

住民税額:797,400円

■税金合計(青色申告)

1,152,020円(所得税)+797,400円(住民税)=1,949,420円

【白色申告の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額10,000,000円(所得)-580,000円(基礎控除)-995,267円(社会保険料控除)=8,424,733円→8,424,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額8,424,000円×23%(税率)-636,000円(控除額)=1,301,520円

所得税額:1,301,520円

■住民税の計算

  • 課税所得金額10,000,000円(所得)-430,000円(基礎控除)-995,267円(社会保険料控除)=8,574,733円
  • 住民税額
    • 所得割: 8,574,733円×10%(税率)≒857,400円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:857,400円+5,000円=862,400円

住民税額:862,400円

■税金合計(白色申告)

1,301,520円(所得税)+862,400円(住民税)=2,163,920円

年収1,500万円の場合の税額目安

【はじめに:社会保険料の計算】

所得1,500万円の場合、国民健康保険料が上限額に達するため、計算方法が変わります。

■国民年金保険料

  • 17,510円×12か月=210,120円

■国民健康保険料(東京都中央区令和7年度料率)

  • 所得割は上限額(医療分65万円+支援金分22万円=870,000円)が適用されます。
  • 合計:870,000円(所得割の上限額)+47,300円(均等割)=917,300円

■社会保険料控除合計

  • 210,120円+917,300円=1,127,420円

【青色申告(65万円控除)の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額15,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-580,000円(基礎控除)-1,127,420円(社会保険料控除)=12,642,580円→12,642,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額12,642,000円×33%(税率)-1,536,000円(控除額)=2,635,860円

所得税額:2,635,860円

■住民税の計算

  • 課税所得金額15,000,000円(所得)-650,000円(青色申告特別控除)-430,000円(基礎控除)-1,127,420円(社会保険料控除)=12,792,580円
  • 住民税額
    • 所得割:12,792,580円×10%(税率)≒1,279,200円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:1,279,200円+5,000円=1,284,200円

住民税額:1,284,200円

■税金合計(青色申告)

2,635,860円(所得税)+1,284,200円(住民税)=3,920,060円

【白色申告の場合】

■所得税の計算

  • 課税所得金額15,000,000円(所得)-580,000円(基礎控除)-1,127,420円(社会保険料控除)=13,292,580円→13,292,000円(1,000円未満切り捨て)
  • 所得税額13,292,000円×33%(税率)-1,536,000円(控除額)=2,850,360円

所得税額:2,850,360円

■住民税の計算

  • 課税所得金額15,000,000円(所得)-430,000円(基礎控除)-1,127,420円(社会保険料控除)=13,442,580円
  • 住民税額
    • 所得割:13,442,580円×10%(税率)≒1,344,200円(100円未満切り捨て)
    • 均等割:5,000円
    • 合計:1,344,200円+5,000円=1,349,200円

住民税額:1,349,800円

■税金合計(白色申告)

2,850,360円(所得税)+1,349,200円(住民税)=4,199,560円

フリーランスの約30%が「確定申告が難しい」と回答

「ここまで見てきたように、フリーランスの税金計算は複雑に感じられる場合があります。もしあなたが「難しい」と感じていても、それは決してあなただけではありません。客観的なデータからも、その感覚が一定程度示されています。

HiProが発表した「副業・フリーランス人材白書2025」によると、フリーランスが活動する上での課題として「確定申告が面倒・難しい」と回答した人の割合が非常に高いことが示されています。

具体的には、 メンバークラス層(日常的な業務を担う人材層)では33.6%、ハイクラス層(高度な課題解決スキルを持つ人材層)でも28.2%が回答しています。

出典:副業・フリーランス人材白書2025(HiPro)

フリーランスが確定申告で所得税・住民税を申告する流れ

確定申告は、1年間の事業活動を整理する大切なプロセスの一つです。一見すると複雑で巨大なタスクに思えますが、手順を分解して一つずつ進めれば、着実に完了できます。ここでは、確定申告のプロセスを4つのステップに分けて解説します。

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【税理士監修】フリーランスは確定申告が必要?ケース別の判断基準やメリット、やり方を解説

1.必要書類とデータを準備する

確定申告は、まず1年間の取引記録を整理することから始まります。この最初のステップが、申告全体の正確性に大きく影響します。

準備すべき主なものは以下の通りです。

収入に関する書類

発行した請求書の控え、支払調書など

必要経費に関する書類

支払った請求書、領収書、レシートなど

各種控除証明書

国民年金や国民健康保険の控除証明書、生命保険料控除証明書、iDeCoの掛金払込証明書など

その他

事業用の銀行口座の通帳や取引明細

日頃から会計ソフトに入力したり、月ごとに領収書をまとめてファイリングしたりする習慣をつけておくと、申告時期の負担を大幅に軽減できます。

2.申告書類を作成する

必要なデータが揃ったら、申告書類の作成に取り掛かります。フリーランスが作成する主要な書類は以下の3点です。

確定申告書

所得や控除、最終的な納税額を記入するメインの書類です。

青色申告決算書(青色申告の場合)

貸借対照表や損益計算書など、複式簿記に基づいた詳細な財務諸表です。

収支内訳書(白色申告の場合)

収入と必要経費の内訳を記載する、比較的簡易な書類です。

作成方法としては、国税庁の「確定申告書等作成コーナー」を利用する方法、市販の会計ソフトを利用する方法、税理士に依頼する方法などがあります。会計ソフトを使えば、日々の取引入力から申告書類を自動作成できるため、簿記の知識に自信がない方でも取り組みやすくなります。

3.申告書類を提出する

作成した申告書類は、原則として翌年の2月16日から3月15日までの期間内に税務署へ提出します。

提出方法は主に以下の3つです。

e-Tax(電子申告)

インターネット経由で申告する方法です。「e-Taxでの申告が青色申告特別控除(65万円)の適用要件の一つとされており、利用することで多くのメリットが得られます。

郵送

管轄の税務署宛に郵送します。消印が提出日とみなされるため、期限に余裕を持って送付しましょう。

税務署の窓口へ持参

直接税務署の窓口や時間外収受箱に投函します。

出典:No.2020 確定申告(国税庁)

4.納税する

「申告書の提出後、算出された所得税を納付することで、確定申告の手続きが完了します。納付期限も原則として申告期限と同じ3月15日です。具体的な納付方法については、次の章で詳しく解説します。還付がある場合は、申告書に記載した銀行口座に後日振り込まれます。

フリーランスが所得税・住民税を納付する方法

確定申告で税額が確定したら、次は納税です。所得税と住民税では納付方法が異なります。便利な方法や期限に余裕が持てる方法など、それぞれの特徴を理解し、自分に合った納付方法を選びましょう。

所得税の納付方法

所得税には多様な納付方法が用意されています。それぞれのメリット・デメリットを比較して選択することが重要です。

納付方法

概要

メリット

注意点

振替納税

指定した預貯金口座から自動で引き落とされる方法。事前の届出が必要。

納付期限が4月中旬頃になり、資金繰りに余裕が生まれる。一度手続きすれば翌年以降も自動で継続される。

届出が必要。残高不足だと延滞税が発生する。

e-Tax(電子申告)

ダイレクト納付やインターネットバンキングを利用して電子的に納付。

自宅や事務所から24時間いつでも納付可能。

事前の利用開始手続が必要。

クレジットカード納付

専用サイトを通じてクレジットカードで納付。

ポイントが貯まる場合がある。分割払いも可能。

決済手数料がかかる。納付額に上限がある。

スマートフォンアプリ納付

スマートフォン決済アプリを利用して納付。

手軽でスピーディ。

納付額に上限がある(通常30万円)。

コンビニ納付

税務署で発行またはQRコードで作成した納付書でコンビニのレジで支払う。

24時間いつでも現金で支払える。

納付額の上限は30万円。納付書が必要。

金融機関・税務署窓口

納付書を持参し、現金で支払う。

手数料がかからない。領収証書がその場で発行される。

窓口の営業時間に合わせる必要がある。

出典:【税金の納付】(国税庁)

住民税の納付方法

住民税は、6月頃に市区町村から送られてくる「納税通知書」と納付書を使って納付します。会社員時代の給与天引き(特別徴収)とは異なり、自分で納付手続きを行う「普通徴収」となります。

納付方法は主に以下の通りです。

  • 納付書での支払い:納税通知書に同封されている納付書を使い、金融機関、郵便局、市区町村の窓口、コンビニエンスストアなどで支払います。
  • 口座振替:事前に手続きをすれば、指定した口座から納期ごとに自動で引き落とされます。
  • クレジットカード・スマートフォン決済:自治体によっては、専用サイトやアプリを通じてクレジットカードやスマートフォン決済での納付に対応しています。お住まいの市区町村のウェブサイトで確認しましょう。

支払いは、年4回(通常6月、8月、10月、翌年1月)の分割払いが基本ですが、送られてくる納付書を使って第1期の納期限までに全額を一度に納付することも可能です。

会社員からフリーランスになった人が所得税・住民税で注意すべきポイント

会社員からフリーランスへの転身は、はたらき方の自由度が高まる一方で、税金の仕組みの変化に戸惑う場面も少なくありません。特に、フリーランスになった初年度に予期せぬ住民税の請求が届き、資金計画に影響を与えることがあります。そのため、事前の備えが重要です。

会社員時代最後の1年にかかる住民税は退職後に請求される

この問題の根源は、住民税の課税の仕組みにあります。住民税は、常に「前年」の1月1日から12月31日までの所得を基準に計算され、翌年の6月から納付が始まります。

会社員の間は、この住民税が毎月の給与から天引き(特別徴収)されるため、納税している実感は薄いかもしれません。しかし、会社を退職すると、この給与天引きがストップします。そして、会社員として高い給与を得ていた最後の年の所得に基づいて計算された住民税が、フリーランスとして収入が不安定になりがちな1年目に請求されるのです。

出典:個人住民税(総務省)

退職後に請求される住民税は自分で納付する

退職すると、住民税の徴収方法が給与天引きの「特別徴収」から、自分で納付書を使って支払う「普通徴収」に切り替わります。

退職時期によって手続きは異なりますが、多くの場合、退職後の翌年6月に、前年の会社員時代の所得に基づいた1年分の住民税の納税通知書が自宅に届きます。

たとえば、年収600万円の会社員だった場合、年間の住民税額はおおよそ30万円前後になります。この金額が、フリーランスとして活動を始めたばかりの時期に、4回に分けて(あるいは一括で)請求されえるのが特徴です。

予測できる支出であるため、事前に備えることが重要です。会社員最後の年の給与やボーナスから、翌年の住民税として支払うべき金額をあらかじめ取り分けておきましょう。

フリーランスが所得税・住民税を払えない場合は?ペナルティと対策を解説

フリーランスは収入が不安定になりがちなため、予期せぬ事態で税金の支払いが困難になる可能性も考えられます。しかし、納税は国民の義務であり、滞納にはペナルティが伴います。万が一の際のペナルティと、利用できる公的な救済制度を正しく理解し、冷静に対処することが重要です。

滞納した場合のペナルティ

納期限までに税金を納付しない場合、以下の法的な手続きが段階的に進みます。

  1. 督促状の送付:納期限を過ぎると、まず税務署や市区町村から督促状が届きます。
  2. 財産の差し押さえ:督促状を無視し続けると、財産調査が行われ、預貯金、売掛金、不動産、自動車などの財産が強制的に差し押さえられます。差し押さえられると、事業の継続が困難になるだけでなく、取引先からの信用も失墜します。
  3. 延滞税の発生:滞納した税金には、納期限の翌日から納付する日までの日数に応じて「延滞税」という高金利の利息が課されます。令和4年から令和7年までの延滞税の税率は、納期限の翌日から2か月間は年2.4%、それを過ぎると年8.7%という利率が適用されます。

このように、滞納は大きな不利益につながります。放置すると不利益が大きくなるため、できるだけ早めに対応することが大切です。

出典:No.9205 延滞税について(国税庁)

減免・猶予制度の概要と申請方法

税金の支払いが困難な場合、国や自治体は救済制度を設けています。主な制度は、以下のとおりです。

納税の猶予制度

災害、盗難、病気、事業の廃業や著しい損失など、特定の事情により納税が困難な場合に、申請によって納税を1年間(状況によりさらに1年延長可能)猶予してもらえる制度です。

猶予期間中は、財産の差し押さえが行われず、延滞税の一部または全部が免除されることもあります。分割での納付計画を立てられ、事業の立て直しを図る時間を得られます。

換価の猶予

滞納がある場合でも、税金を一時に納付することで事業の継続や生活の維持が困難になるおそれがある場合に、申請により差し押さえられた財産の売却(換価)を待ってもらえる制度です。

出典:第3章 換価の猶予(国税庁)

これらの制度を利用するには、税務署や市区町村の納税担当窓口への申請が必要です。

財産状況や納税が困難な事情を説明する書類の提出が求められますが、誠実に対応すれば、多くの場合は現実的な解決策を一緒に考えてくれます。連絡を絶ち、問題を放置することは避けましょう。

フリーランスができる所得税・住民税の節税対策

フリーランスにとって適切な節税は、事業の安定運営に役立ちます。ここでは、フリーランスが実践すべき効果的な節税対策を体系的に解説します。

必要経費を漏れなく計上する

節税の基本は、事業活動にかかった費用を「必要経費」として漏れなく計上し、課税対象となる所得を圧縮することです。

見落としがちな必要経費をしっかり把握することが、手取り額を増やす第一歩となります。見落としがちな必要経費は、以下のとおりです。

家事按分を徹底する

自宅を事務所として使っている場合、家賃、水道光熱費、インターネット通信費などを事業使用割合に応じて経費に計上できます。

たとえば、床面積の30%を仕事スペースとして使っているなら、家賃の30%を経費にできます。

知識への投資も経費

スキルアップのための書籍購入費、セミナー参加費、オンライン講座の受講料なども「新聞図書費」や「研修費」として計上可能です。

打ち合わせ費用

取引先や見込み客とのカフェでの打ち合わせ費用は「会議費」として認められます。

租税公課

個人事業税や消費税、事業用の固定資産税、自動車税なども経費になります。

青色申告特別控除を活用する

白色申告から青色申告へ切り替えることは、フリーランスにとって節税効果が特に大きい方法の一つです。青色申告には、以下のような強力なメリットがあります。

最大65万円の特別控除

複式簿記で記帳し、e-Taxで申告することで、所得から最大65万円を控除できます。

赤字の繰越控除

事業で赤字(純損失)が出た場合、その赤字を翌年以降3年間にわたって黒字と相殺できます。事業が不安定な初期段階では特に心強い制度です。

家族への給与を経費に

生計を共にする家族に支払う給与を「青色事業専従者給与」として全額経費にできます(要届出)。これにより所得を分散させ、世帯全体での税負担を軽減できます。

出典:No.2072 青色申告特別控除(国税庁)

各種控除を申告する

所得控除は、納税者の個人的な事情を税負担に反映させるための制度です。活用できるものはすべて申告し、課税所得をさらに引き下げましょう。

控除の種類

内容

節税効果

社会保険料控除

支払った国民年金、国民健康保険料の全額が控除対象。

支払った分だけ課税所得が減るため効果大。

小規模企業共済等掛金控除

iDeCo(個人型確定拠出年金)や小規模企業共済の掛金の全額が控除対象。

老後資金を準備しながら高い節税効果を得られる最強の制度。

生命保険料控除

生命保険、介護医療保険、個人年金保険の保険料に応じて最大12万円が控除対象。

将来への備えが節税につながる。

医療費控除

年間の医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に受けられる控除。

家族分も合算可能。セルフメディケーション税制との選択。

寄附金控除

ふるさと納税や認定NPO法人への寄付で受けられる控除。

実質2,000円の負担で返礼品を受け取れます。

これらの控除は、自ら申告しなければ適用されません。年末に送られてくる控除証明書などを大切に保管し、忘れずに申告しましょう。

法人化も視野に入れる

事業が成長し、所得が一定の水準を超えたとき、「法人化」は、節税の選択肢として検討に値する方法です。単なる節税策というよりも、事業のあり方を見直す経営判断としての側面があります。

検討すべき主なタイミングは以下の2つです。

課税所得が800万円〜900万円を超えたとき

個人の所得税・住民税を合わせた税率は、所得が増えるにつれて上昇し、最大55%に達します。一方、法人税の税率は利益800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%と、個人の税率より低く設定されています。この税率の逆転現象が起こるのが、課税所得900万円前後です。

年間の売上(課税売上高)が1,000万円を超えたとき

売上が1,000万円を超えると、その2年後から消費税の納税義務が発生します。しかし、このタイミングで法人を設立すると、法人として新たに2年間、消費税の納税が免除される可能性があります(資本金1,000万円未満などの条件あり)。

法人化には設立費用や社会保険料の負担増などのデメリットもありますが、高い所得を得ているフリーランスにとっては、それを上回る節税メリットと社会的信用の向上が期待できます。

ただし、安易にマイクロ法人などを作成して管理できずに放置すると、最終的に税務リスクを負う可能性があるため、注意が必要です。

出典:No.6501 納税義務の免除(国税庁)

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【税理士監修】フリーランスの消費税とは?納税方法や計算方法をわかりやすく解説

フリーランスの所得税・住民税に関するよくある質問

ここでは、フリーランスが抱きがちな税金に関する具体的な疑問について、Q&A形式で簡潔に解説します。

Q1.所得税が0円になることはある?

年間の総収入から必要経費と各種所得控除(青色申告特別控除など)を差し引いた「課税所得金額」が0円以下になれば、所得税はかかりません。たとえば、収入が少なくても、基礎控除や社会保険料控除などを適用した結果、課税所得がマイナスになるケースです。

ただし、注意点があります。前述の通り、住民税の基礎控除は43万円と所得税より低いため、課税所得が45万円の場合、所得税は0円でも住民税の所得割は課税される可能性があります。また、所得にかかわらず課される住民税の均等割(約5,000円)は、原則として支払う必要があります。

出典:説明資料〔個人住民税について〕(総務省)

Q2.控除を多く受かるためにすべきことは?

控除を最大限に活用するには、以下の4点を徹底することが重要です。

必要経費の徹底的な洗い出し

事業に関連する支出はすべて記録し、特に家賃や光熱費の家事按分を見逃さないようにしましょう。

青色申告の選択

最大65万円の特別控除は、インパクトが大きい節税策です。

掛金控除の満額利用

iDeCoや小規模企業共済は、老後の資産形成と節税を両立できる非常に有利な制度です。可能であれば上限額まで活用しましょう。

個人的な支出も確認

家族全員の医療費を合算して医療費控除を申請したり、ふるさと納税(寄附金控除)を活用したりと、事業以外の控除も忘れずに申告しましょう。

Q3.税理士にはいつ・どんなときに相談すべき?

税理士への相談は、事業のフェーズに応じて検討するのが賢明です。明確な相談のタイミングは以下の通りです。

年間売上が1,000万円を超えたとき

消費税の課税事業者となり、申告業務が格段に複雑になるため、専門家のサポートが強く推奨されます。

法人化を検討し始めたとき

法人設立の手続き、役員報酬の設定、税務上のメリット・デメリットの判断など、高度な専門知識が必要になるため、税理士へ相談すると安心です。

本業が忙しく、経理業務が負担になったとき

自分で経理作業に費やす時間で得られるはずの売上(機会損失)が、税理士費用を上回ると感じたら、それはアウトソースするサインです。

税金について理解を深め、安心してフリーランスを続けよう

本記事では、フリーランスが直面する所得税と住民税について、基本的な仕組みから具体的な計算方法まで解説しました。また、納付や節税対策、そしてトラブル対応まで、多角的に解説しました。

所得税は国の税金で所得に応じた累進課税、住民税は地方の税金で所得割と均等割から成ります。青色申告は、最大65万円の控除をはじめとする強力なメリットがあり、フリーランス必須の制度といえるでしょう。会社員からの独立直後は、前年所得に基づく高額な住民税請求に備える必要があります。必要経費や控除の活用から、高所得時の法人化という構造転換まで、事業ステージに応じた税金への対応が重要です。

まずはご自身の昨年の支出を見直し、必要経費として計上し忘れているものがないか確認することから始めてみましょう。

(監修日:2025年8月8日)

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山本 聡一郎氏

山本聡一郎税理士事務所(https://nagoya-soutax.com/)|税理士

山本聡一郎税理士事務所 代表税理士。1982年7月生まれ。名古屋市中区錦(伏見駅から徒歩3分)にてMBA経営学修士の知識を活かして、創業支援に特化した税理士事務所を運営。クラウド会計 Freeeに特化し、税務以外にも資金調達、小規模事業化持続化補助金などの補助金支援に力を入れている。

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