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空間選択の課題解決に挑む住宅販売DXのスタートアップが語る、開発現場を越えて活きるIT フリーランサーの魅力

株式会社スタイルポート

IT人材不足が問題視されるなか、ITフリーランサーの活用はさらなる広がりが予想されます。一方、活用イメージが湧かない、活用に不安があるという企業も少なくはありません。より良いサービス開発・組織成長をしている企業は、どのようにITフリーランサーと協業しているのでしょうか。

そこで今回は、不動産テックのスタートアップとして業界でも注目を集める株式会社スタイルポートに伺い、ITフリーランサーの活用メリットや、自社に合った人材と出会うためのポイントを伺いました。

 

誰もが“自分に合った空間選択”をできる世界を目指して

――まずは御社の事業について教えてください。

「空間の選択に伴う後悔をゼロにする」というミッションを掲げ、事業を展開しています。人生において人は様々な選択をしますが、空間を選択する場面も結構あって。たとえば家を借りるとき、家を建てるとき、大きめの家具を買うとき、リフォームもそうですよね。

空間を見て、理解し、自分の目的に合っているかを考えながら選ぶ。その結果、イメージと違ったり、失敗したりという経験をされた方は多いと思います。そうした後悔をなくすために、私たちはテクノロジーを用いて、誰もが自分に合った空間選択を可能にするインフラの創造に取り組んでいます。

――具体的にはどんなサービスを展開しているのでしょうか。

「ROOV(ルーブ)」というサービスです。ROOVは、住宅販売に必要なさまざまな情報のやりとりを、販売側と購入検討側が手軽に行える、コミュニケーションプラットフォームです。

たとえばマンション購入を検討しているお客さまに対して、販売側はこれまで、間取図・イラスト・建築模型などを用いて空間を説明してきました。クラウド型VR内覧システムの「ROOV walk(ルーブ ウォーク)」では、CAD図面から3DCGで室内空間を作成しているため、たとえ未竣工のマンションであっても、室内を自由に歩き回るように擬似的に内覧できます。また、インテリアサンプルを表示できたり、床やキッチンの天板の色を変更したりといったオプションも、簡単にシミュレーションできる機能を備えています。

図面や模型だけでは確認できないことも多く、お客さまは購入を決断しにくい。ROOV walkでは、システムを触りながら隅々まで確認しイメージを膨らませられるので、空間選択時の不安を取り除くお手伝いができると考えています。

また、マンション販売の商談で必要となる物件情報を集約できるのが、「ROOV compass(ルーブ コンパス)」です。マンションや部屋タイプを比較検討する際、これまではほとんどの場合、実際にマンションギャラリーを訪問し、各資料を手に入れる必要がありました。ROOV compassではクラウドに情報を格納し、パソコンやスマートフォンなどのWebブラウザで間取図やVRコンテンツ、眺望・周辺環境といった情報をワンストップで提示できます。販売側はスマートな説明がしやすくなりますし、お客さまは検討を進めやすくなる。ROOV walkと組み合わせることで、オンラインマンションギャラリーとしてトータルに活用いただけます。

――マンション購入時に活用されるシステムなんですね。

現状は新築分譲マンション販売企業様における導入が中心ですが、マンションに特化したプロダクトにしたいわけではありません。空間の把握が必要となる、ありとあらゆる場面でご活用いただけるように進化させたいと考えていて、今年3月には、戸建ての注文住宅の設計の場面で活用できるサービスも、フィジビリティ段階ではありますが、スタートしました。

――ROOVの開発にあたって、フリーランスのエンジニアを活用していると伺っています。経緯を教えてください。

ROOVがプロトタイプの頃は社内のエンジニアで対応していたのですが、実際に事業として成立できるとなったタイミングで、エンジニアの増員に動きはじめました。もちろん正社員雇用も考えましたが、今以上に知名度の低い小さな組織だったので、我々の求めるスピード感で適切な技術をもつ方に出会うのは、簡単ではありません。一方、ITフリーランサーを紹介してくれるエージェントに相談した際は、順調に引き合わせていただけたので、そちらにお願いするようになっていきました。

元々フリーランスと正社員に区別をつけていなかったので、優秀な方とスピーディに出会えるのであれば、フリーランスの方も大歓迎でした。

――現在フリーランスの方は何名いますか。

開発チームには9名のフリーランスの方がいます。正社員のエンジニアが6名なので、正社員より多いんですよ。

――フリーランスの比率が高いのは驚きです。

意識はしていなかったのですが、気づいたら半数以上がフリーランスの方でしたね。

「自社分析」で確度の高いマッチングを

吉田巧さん

――フリーランスの方はどのような役割を担っていますか。

多くの方に、プロダクトの根幹となる重要な役割を担っていただいています。プロパーが設計を担当して、残りの部分をお任せするスタイルではなく、ビジネスとしてやりたいことをお伝えしたうえで「じゃあどういう設計にしようか」という段階から一緒に進めていますね。

なかには、セールスやマーケティングとのすり合わせなど、開発の範囲を超えた業務にも積極的に取り組んでくれる方もいます。セールスが相談や問い合わせなど、お客さまからヒアリングしてきた内容を、率先して拾ってくれることも。「これは○○な事情だから」と状況説明してくれたり、不具合だと分かれば対応してくれたりと、能動的に開発部門外とも関わってくれるので大変ありがたいです。

――フリーランスの方に参画いただくことで、どのようなメリットを感じていますか。

優秀なフリーランスの方は経験してきた現場が多かったり、それぞれの現場で経験した内容の密度が濃かったりするので、こちらの想定を超えた多様なインプットをもらえるメリットがあります。技術的なことはもちろん、彼らは様々な現場の運営手法やエンジニアへのマネジメントを見てきているので、「前の現場では○○をしてくれてやりやすかった」などの意見をくれるんですよね。我々はまだ小さな組織で手探りのことも多いので、良い意見を積極的に取り入れています。流動性の高いフリーランスの方が多く所属しているからこそ、そうした情報が得られやすいのだと思います。

また、組織として高い機動性を維持できるというメリットもありますね。先ほども触れましたが、適切な技術をもつ方を正社員で探すのは難易度が高い。もし見つかったとしても正規雇用となるとお互い慎重にならざるを得ず、プロジェクトにジョインするまでに時間がかかりがちです。一方、各分野で活躍されているフリーランスの方は、比較的そうした課題がクリアしやすい。新たな開発力が必要となったときにスムーズに人材を確保できていることで、結果的に開発スピードが高められると感じています。

――フリーランスエンジニアの存在が、開発・組織に良い影響を与えているんですね。 一方で、フリーランスの方を迎え入れるにあたり不安を感じることはありましたか。

どの程度当事者意識をもっていただけるかを常に意識しています。企業やプロジェクトによって求める当事者レベルは異なりますが、当社の場合、大きなミッションに少人数で挑んでいるので、やることを全部決めてあげて「この部分にだけスキルを発揮してもらえればOK」という状況はほぼありません。自分のようにマネジメントする立場であっても、すべてを見据えてカバーするのは難しい。そういったときに同じ目線で考え、考慮が漏れていれば指摘したり提案してくれたりするような方でないと、ご活躍いただくには厳しい環境だと思います。フリーランスの方によってもスタンスはそれぞれなので、希望に沿う方とマッチングできるかは気になりますね。

――マッチングの精度は多くの企業で懸念点として挙がります。また「せっかく良い人と出会ってもすぐに離れてしまいそう」という不安もよく聞かれます。御社では複数のITフリーランサーと開発を進めていますが、自社に合う方を見つけ、長く活躍いただくために気をつけていることはありますか。

それについては、採用担当やCTOともよく話題に挙がりますし、永遠の課題だと感じています。しかし突き詰めてゆくと結局、「会社のことを自分たちがどれぐらい分かっているのか」というところに行きつくのではと感じています。

自分を客観視できる能力は様々な場面で求められますが、きっと会社も同じなのではないかと考えています。組織が何を大事にしていて、どのようなバリューがあって、いつか組織から離れるときにはどうあってほしいのか。それらを自分たち自身がクリアに分かっていると、エージェントの方も探しやすくなりますし、面談時にも相手の方が「自分に合っている組織なのか?」を判断しやすいですよね。

――自己分析ならぬ、「自社分析」ですね。

そうですね。就活で「自己分析しなさい」とよく言われますが、同じことを会社もやらないといけないなと思います。会社としての考え方や想いを伝えて「いいね」と感じてもらえれば、カルチャーがマッチしているということなので、長く活躍いただける確率は上がると思います。もちろんスキル面も大事なので、技術条件と合わせて、会社のスタンスもすぐに答えられるように整理できていることが大事なのではないでしょうか。

“良好な関係構築”が、健全な人材流動化につながる

吉田巧さん

――ITフリーランサーが増加したり、活用する企業が増えたりと、IT人材の働く形は変化しています。この状況をどうご覧になっていますか。

私個人の考えとしては、働き方の多様性という観点でもフリーランスという選択肢が広がることは良いと思います。また業界全体としても、優秀な人材が様々な現場でスキル発揮できる仕組みが広がることはポジティブに感じます。一つひとつの企業から見れば、もちろん「優秀な方に長くいてもらいたい」と考えると思いますが、社会全体への貢献度は高いのではないでしょうか。

ITフリーランサーに限らずですが、働く人々が今後こうなったら面白いかなと考えていることが一つあって…。

――ぜひ聞かせてください。

最近のスタートアップの共通点に「生涯雇用を前提としていない」という考え方があります。働く個人の考え方は変化し、正社員であっても一つの会社に勤める期間は数年から長くて10年ほどではないでしょうか。会社も、今いるメンバーが定年まで所属し続けるとは思っていないことが多いのではないかと思います。一見寂しいように聞こえるかもしれませんが、決してマイナスな話ではないと考えています。

生涯雇用ではないことを念頭に置きながらも、良好な関係を築き、良好な関係のまま次の活躍の場に送り出せれば、もしかしたら別の機会で、また戻ってきてもらうような“縁”が生まれるかもしれません。「またあの人の力を借りたいな」と思ったときに、タイミングもありますが、良好な関係が築かれてさえいれば「再会」は不可能ではないはずです。しかも、一度送り出してから戻ってくるまでにその方は別の場所で経験を積んでいるわけですから、そうすると以前よりもスキルアップした状態で、また一緒に働ける。

そうした人と企業の結びつきが広がると「人材の上昇スパイラル」のようなものが生じて、人材の高い流動性がより良い効果を生み出していくのではないか、と考えています。

――それは面白い世界観ですね。個人にも企業にも好影響が循環するように感じます。 御社では、今後もフリーランスの方と共に開発を続けていくのでしょうか。

はい。今いる方はもちろん、フリーランス・正社員問わず、今後もぜひ良い方と出会いたいと思っています。

――ありがとうございます。では最後に今後の展望を教えてください。

たとえば音楽は、レコードやCDという物理媒体からデジタル配信への変化を遂げました。では住空間そのものはというと、デジタル化することはないはずです。人が生きている限り、この先も形を変えることなくあり続ける面白い存在だなと感じています。

誰かが住まいを必要とし設計・建築され、そこに住まい、住まわれなくなり、最終的に取り壊される。それぞれのフェーズで多様なニーズが発生しますよね。現在私たちが展開するサービスは設計や販売時の活用が中心なので、比較的前半のフェーズに寄っています。しかし入居して生活がはじまってからも、インテリアをどうしようとか、リフォームをどうしようとか、空間に対する判断や選択のアクションは続いていく。ぜひそういった場面にもつなげていけるよう、プロダクトを一歩ずつ進化させていきたいです。

――不動産の枠も越えていきそうですね。

そうですね。空間全般への利便性を上げるため、サービスやソリューションの創造に取り組みたいです。

取材後記
印象的だったのは、正社員のエンジニアとフリーランスのエンジニアを良い意味で区別していないということでした。採用も、日々の開発も、勉強会も、常にフラットに関係性を築こうとする姿勢は、フリーランスの方にとっても居心地の良い環境なのではないでしょうか。人材を確保すれば安心というわけではなく、どのようにフリーランス人材と協業していくかという、細部まで考えることが大事だと感じました。
and HiPro編集部
パーソルキャリア株式会社
and HiPro(アンドハイプロ)は、「『はたらく』選択肢を増やし、多様な社会を目指す」メディアです。雇用によらないはたらき方、外部人材活用を実践している個人・企業のインタビューや、対談コンテンツなどを通じて、個人・企業が一歩踏み出すきっかけとなる情報を発信してまいります。

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