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今さら聞けないデザイン経営とは?中小企業の価値を高める戦略を解説

デザイン経営

デザイン経営とは、企業活動のなかにデザインの考えを取り入れ、顧客ニーズに沿ったプロダクト作りや商品開発をおこなう経営手法です。ブランド力の強化や、新たなイノベーションの創造など、さまざまなメリットを期待できます。効果的にデザイン経営をおこなうには、全社的に取り組まなければなりません。社内のデザイナー育成や、経営の上流からデザインの考え方を採用するなどの必要があります。

この記事ではデザイン経営の概要やメリット、実施手順についてご紹介します。 競合他社や海外企業にも負けない、力強い経営を実現しましょう。

デザイン経営とは? わかりやすく解説

デザイン経営

デザイン経営とは、デザインの力を活用して、企業の価値を高めていく経営手法です。具体的にはデザインによってブランドをより力強く構築したり、イノベーションを創造したりします。これまでの経営手法よりもデザインに重きを置き、上流から下流まで一貫したデザインを施すものです。

経済産業省が公開している資料『デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック』から、デザインコンサルティングファームのトム・ケリー氏は、この20年ほどの間に「デザイン」という言葉の意味は、さらなる拡張を遂げたと話します。

現在では、「デザイン」の語は「デザインシンキング」(デザイン思考)を指すことも多くなりました。デザインシンキングとは、これまでデザイナーが仕事のなかで培ってきた「手法」(ツールセット)や「思考の方法」(マインドセット)を、プロダクトだけではなくより複雑な問題を孕んだサービスやシステムを設計するために利用することを指しています。

出典:デザインにぴんとこないビジネスパーソンのための“デザイン経営”ハンドブック/経済産業省

また、経済産業省が公開している資料『「デザイン経営」宣言』では、デザイン経営を「デザインを企業価値向上のための重要な経営資源として活用する経営である。」と定義しています。複雑な問題を解決するためには、従来のツールやマインドセットだけでなく、人間を中心に考えるデザイナーの思考をもって取り組む考え方です。BtoB/BtoCに関わらず、さまざまな企業で活用されています。

出典:「デザイン経営」宣言/経済産業省

「「デザイン経営」宣言」では、デザイン経営の効果を「ブランド力の向上」と「イノベーション力向上」による、企業競争力の向上と伝えています。それぞれを詳しく見ていきましょう。

「ブランド力向上」につながる

『「デザイン経営」宣言』では、デザインを「企業が大切にしている価値、それを実現しようとする意志を表現する営み」としています。それぞれの製品の見た目を魅力的なものにするのはもちろん、顧客が企業と接点を持つあらゆる場面において、価値や意思を徹底させていくことも、デザインの一つだといえるでしょう。それが一貫したメッセージとして顧客に伝わることで、他の企業では代替できないと顧客が思うブランド価値が生まれ、ブランド力が向上していきます。

「イノベーション向上」につながる

日本において“イノベーション”は「技術革新」と翻訳されており、新しい技術を開発する “発明”と同義のように捉えられてきました。しかし、イノベーションの本来の意味は“発明”そのものを指すものではなく、発明が実用化され、その結果として社会を変えることとされています。技術を開発するだけでイノベーションが起きません。重要なのは、社会のニーズを利用者目線で観察し、新しい価値に結びつけることであり、つまりデザインが介在することで、ようやくイノベーションが生まれるのです。

『「デザイン経営」宣言』では、「デザインは、イノベーションを実現する力になる。なぜか。デザインは、人々が気づかないニーズを掘り起こし、事業にしていく営みであるからだ。」と発信しています。また、デザインを生み出すデザイナーを「観察の達人」と評し、「デザイナーは、技術と人間中心的視点を上手く組み合わせることで、イノベーションを起こすのだ」と、デザイン・デザイナーがイノベーション向上に寄与する理由を説明しています。

また、イノベーションの事例として歯磨き粉のチューブを取り上げています。昔、歯磨き粉のチューブのフタは細く小さなものでした。今は大きく、回さなくても開けられるようになりました。これは1つのイノベーションが隠れており、フタを大きくすることで歯磨き粉が下まで落ちてくるようにしています。歯磨き粉の効果や味などを変えず、性能はそのままに、顧客のニーズに注目したデザインを施したことによるイノベーションです。

引用「デザイン経営」宣言(P2、P9)/経済産業省

従来の経営との違い

従来の経営手法と、デザイン経営の違いとして、プロジェクトの進め方が注目されます。いわゆるウォーターフォール開発とアジャイル開発の違いです。ウォーターフォール開発は良いプロダクトを作れば売れるという考えのもと、企画立案から製品開発をして、その後デザインを入れて、市場に投入していました。

デザイン経営ではアジャイル開発がおこなわれ、ユーザーの想定から課題の設定、試作、実験を何度も繰り返して商品化へとこぎ着けます。このすべての工程にデザインが関わり、顧客ニーズをもとに既存の考え方にとらわれずに開発を進めていきます。良い物でも、顧客から選ばれなければ売れないという考えがベースです。

デザイン経営の重要性

デザイン経営が重視されている背景として、昨今の技術進化があります。どの産業もITにより技術革新が進んでいて、これまでの経験だけでは顧客ニーズに対応しきれない状況が広がりつつあります。海外製品も次々と参入し、競争が激化していることも要因の一つです。

そのような環境で生き残っていくには、顧客から求められるような企業にならなければなりません。顧客から求められる企業になるには、その企業が掲げている目標や価値観を発信し、それが顧客に受け入れられる必要があります。単純に発信量を増やすだけでなく、デザインの考えを活用して、伝え方を最適化する必要があるのです。

デザイン経営のメリット・効果

デザイン経営を実施し、企業価値を適切に顧客に伝えられるようになれば、多くのメリットが期待できます。顧客ニーズに寄り添った企業価値を持っていれば、企業規模に関係なくブランド力を高められる点も魅力です。のちに紹介する事例では、大企業だけでなく、中小企業もデザイン経営で大きな効果を出しています。

デザイン経営の手法、実践方法

それでは、デザイン経営を実施する手法について見ていきましょう。デザイン経営を実施するには2つの必要条件があり、それらを満たしたあとに徐々に残りの手法も進めていく形になります。

【必要条件1】経営チームにデザイン責任者が参加する

先述でもご紹介した『「デザイン経営」宣言』で、必要とされている条件の1つです。 デザイン経営はその名のとおり、経営からデザインを取り入れる手法です。デザイン経営を実施していくには、経営チームにデザイナーが参画し、デザインを経営戦略の中核に位置づける必要があります。

経営メンバーとデザイナーが密接にコミュニケーションをとり、企業全体にデザインの考えを浸透させる必要があります。

【必要条件2】事業戦略を策定する上流からデザインが関与する

2つ目の必要条件です。経営手法にデザインを取り入れるために、事業戦略を策定するような最上流からデザイナーが関与することで、企業全体で一貫したデザイン経営を実施していきます。

経営戦略だけでなく、製品の企画やサービス開発なども最上流からデザイナーが関与しましょう。顧客ニーズを汲み取りながら製品開発を進めていけます。上記二つの必要条件を満たしたあとに、以下の取り組みを実施していきましょう。

専用部門の設置

デザイン経営は簡単に導入できるものではありません。すべての従業員がデザインをできるとは限らないためです。そこでデザイン経営専門の部署を設置し、デザイン経営の推進を進めることが有効です。その際、組織図のなかでも重要なポジションに位置づけ、部署を横断してデザインを施せるようにしましょう。

アジャイル型開発を導入する

プロジェクトを上から進めていくウォーターフォール開発から、アジャイル開発へと乗り換えることも有効な手法です。顧客ニーズの観察・仮説の立案・試作・見直しと仮説の再立案を繰り返します。これにより、製品の質を高めながら、スピーディに商品開発を進められます。良い物を作れば売れるという考えから、顧客から選ばれなければ売れないという考えを浸透させ、顧客目線に何度も立ち返りながらプロジェクトを進めていきましょう。

採用・人材育成の強化

デザイン経営を進めるには、デザインに強い人材が必要です。それらのスキル・経験がある人材の採用を強化しましょう。そのほか、外部の専門家の力を借りるという手段もあります。また、デザイン人材の採用だけでなく、優れたビジネスマインドをもった人材や、IT・テクノロジーに関して知識をもつ人材にデザイン手法をおこなうことも重要です。

デザイン経営専門部署を設置しつつも、その部署にいる人材だけがデザインに詳しい状態は健康的ではありません。企業全体でデザイン経営を進めていくために、採用・人材育成の強化も必要です。

会社の個性を理解し、創業者の思いを言語化する

デザイン経営の強みとして、企業価値をデザインで顧客に適切に伝えられることをご紹介しました。これを実行するには、企業価値を明確にしなければなりません。会社の個性、創業者の思いを言語化しましょう。他の企業にも価値を明確にすることで、デザイン経営はより鋭さを増していきます。

デザイン経営の成功事例

デザイン経営を実施するための参考として、デザイン経営の成功事例をご紹介します。

食品業界/A社の事例

食品業界の中小企業A社は、デザイン経営によって世界進出を果たしました。創業100年以上の歴史を持つ、歴史ある企業ですが、それらをリブランディング。長い歴史を振り返り、強みや背景を棚卸し。それらを活用してデザイン経営につなげました。

レガシー(伝統)を汲み取り、それを現代風に再構築。これにともないWebサイトやパッケージデザインもリニューアルしました。IT面だけでなく実店舗もそれにあわせ、新たにカフェも併設するなど、全社的にデザイン経営を推し進めています。

A社の代表は、デザイン経営はユーザー志向だけでなく、企業のアイデンティティーを深掘りしていくことも重要といいます。自社の歴史や強みを深掘りして「私たちは一体何者なのか」というキャラクター性も意識しているようです。これらのデザイン経営に関する取り組みにより海外展開も成功し、現在も世界に商品を届けています。

アパレル業界/B社の事例

アパレル業界のなかでも、アウトドア関係の製品を生み出しているB社も、デザイン経営によって大きな成功を実現しました。これまで洋服製造の下請け(OME)を主とした企業活動をおこなっていたB社。しかし、海外製品の増加や同じような製品の増加により、危機に瀕します。

そのようななかで新たにアウトドアを主としたブランドを設立。SNSを活用して顧客とコンタクトをとり、顧客のフィードバックを直に受け商品開発しました。これまでなかった商品開発に成功し、洗練されたデザインを採用することで、世界に衝撃を与えるブランドになりました。

印刷業界/C社の事例

印刷業界のC社は、社員教育に着目した形でデザイン経営を成功させた企業です。外部デザイナーとタッグを組みリブランディングを実施。CI(コーポレートアイデンティティ)を刷新しました。コーポレートアイデンティティとは企業の独自性を表すものです。企業と顧客の接点を包括的に設計して、自社がどのような企業であるかを顧客に伝わりやすくしました。あわせてWebサイトも刷新します。

コーポレートアイデンティティの策定とともに、社員一人ひとりにそれが浸透するよう、週一回ミーティングを開催。社会貢献活動も進め、SDGsにも取り組み、環境意識の高い顧客とのつながりを深めることに成功しています。

まとめ

デザイン経営は、企業の意思決定の上流からデザイナーが参画し、企業の価値や技術を顧客ニーズにあわせて届ける経営手法です。企業ならではの強みや歴史、思いを伝え、ブランディングを目指します。デザイン経営に取り組むには、経営チームにデザイナーが参画すること、そして事業戦略の上流からデザインに関わることが欠かせません。

企業全体でデザイン経営に取り組み、自社の強みを武器にして、競合他社にも負けない力強いブランディングを実現しましょう。

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