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日本が海外市場開拓をするために知っておきたい戦略の考え方とは?

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日本は少子高齢化に伴い、国内市場が停滞傾向にあります。同時に、市場を支える生産年齢人口も年々減少しています。

そのような背景から、より広い販路を求め、海外進出を検討する企業も少なくないでしょう。

当コラムでは、海外市場の開拓を検討する企業が知っておきたい情報、開拓をする際の具体的な戦略の立て方について解説します。

なぜ海外市場開拓の戦略を立てる必要があるのか

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はじめに、海外市場の開拓がなぜ必要なのか、3つの理由を見ていきましょう。

日本は人口減少に伴い需要も減少している

日本は少子高齢化が進んでいます。1995年には8,726万人いた生産年齢人口(15歳~64歳の人口)は、2050年には5,275万人(2021年対比29.2%減)に減少すると予想されています。

出典:令和4年版 情報通信白書(総務省)

生産年齢人口減少の影響は大きく、国内需要の減少や産業構造の変化、労働力不足など、企業はさまざまな課題に直面しています。企業は、経営を安定させる一つの方法として、海外というより大きな市場で販路を拡大し、新しい活路を見つけようとしています。

コストを抑えられる可能性がある

進出する国によって、法人税などの税金や人件費が日本よりも安い可能性があります。たとえば、シンガポールの法人税は17%です。日本は国税と地方税を合わせると約30%であるため、税率を半数近く抑えられます。このように税金が安い国に進出できれば、コストを削減しながら利益を伸ばすことが可能です。

一方、人件費については、昔のように海外に外注すれば安く商品が作れる時代ではなくなっています。現在も人件費が安い国がある一方で、今後日本よりも人件費が高くなる国も増えていく可能性があることを理解しておかなければなりません。

海外進出を検討する際は、その国や地域ごとのコストや特性を適切に見極める必要があります。

海外市場開拓の戦略を立てる前に知っておきたいこと

海外進出への戦略を立てる前に、日本と現地の違いを知っておく必要があります。

その国の文化を理解する

国や地域が違えば文化や商習慣も異なります。求められる商品やサービスの形も変わるでしょう。そのため、日本で成功した商品やビジネスモデルを持ち込んでも、成功するとは限りません。

海外展開を成功させるためには、その国や地域の文化をリサーチし、理解することが欠かせません。以下は、現地を理解するためのリサーチの例です。

  • 現地の消費者・ライフスタイル・トレンドに関する調査
  • 現地の市場・競合他社に関する調査
  • 現地の販売先に関する調査
  • 現地の商品に関する調査
  • 現地のマーケティングに関する調査

現地の経済状況や価値観、需要を知ったうえで、日本ならではの技術や品質を引き継ぐのか、現地に合わせてローカライズさせるのか、適切な判断が求められます。

情報収集が容易ではない

新たなビジネスを始めるうえで、市場調査などの情報収集は欠かせません。しかしながら海外進出の場合、国内と比べて情報収集が難しいケースが多くあります。

物理的距離があるため、まずはインターネットを用いて情報収集することになるでしょう。とはいえ、インターネット上には不明確な情報もあるほか、古い情報と新しい情報が混在しているため、正しい情報の取得が容易ではありません。

現地調査も、海外で実施するとなると決して安くはありません。また、現地のネットワークが不足していると、せっかく現地調査や現地視察を行っても、十分な成果が得られないことも考えられます。

情報収集が適切に行えなかった場合、早期撤退も招きかねません。予算との兼ね合いはありますが、必要に応じて調査会社への依頼も検討し、十分に情報収集することが求められます。

【国別】海外販路開拓市場の特徴と動向

ここからは、国別の海外販路の特徴と動向を確認していきましょう。

アメリカ

外務省の調べによると、アメリカは日本企業の進出国ランキングで2位(※)に位置しており、実に多くの日本企業がアメリカに進出しています。中国・インドについで世界3位の人口規模であり、GDPもトップと世界最大級のマーケットを持つ国であることは、進出先としての魅力の一つといえるでしょう。

日本のように移民が少なく独自の発展を遂げてきた国とは異なり、アメリカは多民族が共存する国であり、世界の文化が集積しているともいえます。したがって、アメリカでの成功は、のちの他の国へのグローバル展開を容易にする可能性があります。

一方、日本企業の進出が多い分、競争も激しいため、プロモーションやマーケティングの手法が重要視されます。

中国

世界で最も人口が多く、世界第2位のGDPを誇る中国は、今後の経済成長も期待されている国です。また、消費意欲が高い国民性だといわれていることもあり、マーケットとして魅力的で、日本企業の進出国ランキングでは1位(※)に位置しています。

労働力の多さと比較的低価格で労働力を確保できることから、以前は「世界の工場」と呼ばれていましたが、経済発展とともに人件費が高騰しています。また、中国でビジネスを展開する場合、政治的情勢や民族問題などを考慮しなければなりません。

タイ

タイはASEANのなかで、日本企業の進出が最も多い国(※)です。隣接国も多いため「アジアのハブ」としても機能しており、アジア周辺国への輸出拠点としても活用されています。親日国ともいわれるタイでは日本の製品・サービスの市場は広がっており、タイ人の生活のなかに自動車や和食などの日本製品が根付いていることも特徴でしょう。

その一方で、日本と同様にタイでも少子高齢化が進んでおり、人口も減少しています。東南アジアは人口が増加している印象がありますが、タイにおいては、日本と同様に労働力の減少やマーケットの縮小が予測されています。

(※)参考:海外進出日系企業拠点数調査 2022年調査結果(外務省)

海外市場開拓方法

海外市場開拓方法には、輸出・直接投資・インバウンドの3つが挙げられますが、それぞれの手段と役割を解説します。

輸出

日本で生産した商品を海外で販売するためには、海外販売代理店と契約し直接取引を行う方法と、日本の商社を通じ現地で販売する方法の主に2種類があります。

規模が大きく品質も認められているメーカーであれば、すでに海外販路が構築された日本の商社を利用したほうが、効率よく販売できるでしょう。

一方、小量生産の商品は、通常、日本の商社を通じて市場に出すのが難しいです。その場合は、海外販売代理店と直接取引をすることになります。

また、輸出するうえでは、現地の慣習や宗教にも配慮しなければなりません。特に食品に関しては、宗教上食べることが許されない品物も存在するため、取り扱いに慎重さが求められます。海外で商品を販売する際は、特定の宗教から食品販売の認証を受ければ、対外的に安全で健康的な食品であることをアピールできるでしょう。

直接投資

海外市場開拓には、現地に工場や店舗を設けて直接投資する方法もあります。海外に生産拠点や販売・サービス拠点を設けるメリットは、以下のとおりです。

  • 日本より人件費や材料費が安い場合は、コストを削減できる
  • コスト削減によって生産性や収益性を高められる
  • 新規顧客を現地で獲得することにより売上増加が期待できる

直接投資によるメリットは大きいものの、現地採用する人材は日本人と文化や習慣、考え方が違うという点に留意が必要です。日本と同じ感覚でマネジメントを行うと、意図が伝わらずトラブルに発展してしまうこともあるでしょう。

日本の仕組みやルールに納得して働いてもらうためには、丁寧なコミュニケーションが重要になります。また、現地をよく知る協力機関と連携を図り、対策をとることも有効でしょう。

インバウンド

インバウンドとは、訪日外国人を対象とした販売網の確立のことです。日本に興味を持って訪日した外国人向けに日本製品の販促をして製品を使ってもらい、さらなる売上を狙う手法です。

訪日外国人数は2019年に過去最高の3,188万人を記録し、インバウンドは高い効果を期待できる手法の一つでした。しかし、コロナウイルス感染拡大により、観光目的の入国者の受け入れは一時ストップしました。今後、入国規制などの緩和が進むにつれて、少しずつインバウンドの回復が期待できるでしょう。

出典: 2019 年(令和元年)の世界の観光の状況(国土交通省)

海外市場開拓の具体的な戦略の立て方

ここからは、海外市場開拓の具体的な戦略を確認していきましょう。

狙う市場(進出国)を定める

まずは進出国を決定する必要があります。その際、事業化調査は必須です。事業化調査を実施するうえでは、公的機関の支援を活用したり、調査企業へ依頼したりすることが一般的です。ただし、現地へ調査に行く際は、自社の担当者も同行させ、ありのままの情報をつかむ必要があります。

また、日本との比較という観点での情報収集も大切です。気候・歴史・宗教・商習慣など、現地の特性を把握し、日本との違いや似ている部分を洗い出しましょう。現地に詳しい取引先や、専門家からのアドバイスに耳を傾けるのも有効です。

資金調達を行う

進出先を決定するには、調査企業への依頼や現地調査費用で大きな資金が必要になるケースも少なくありません。そのため、取引のある金融機関へ融資を依頼し資金調達する企業もあります。

初期投資費用の捻出が難しい場合は、国や地方公共団体が中心に行っている助成金や補助金などを利用することも一つの手段です。支給の対象条件に合致すれば、海外進出の後押しとなるでしょう。

スケジューリングを行う

海外進出の準備にあたっては、余裕をもったスケジュールを組む必要があります。事前リサーチからブランディング戦略、協力機関の選定・確保、実際の運用まで、対応しなければならない要素が多岐にわたるためです。

海外進出したものの、事業拡大が難しいと判断し、撤退する企業もあります。その場合の損害は、国内事業で失敗した時よりも遥かに大きくなる可能性があります。海外進出は中・長期での長いスパンで戦略を練ってください。

現地に詳しい人材を見つける

海外進出を成功させるためには、現地に精通している人材(現地パートナー)を見つけてチームで取り組むことが大切です。現地の言葉や習慣、文化を知らない日本人だけでの販路開拓は、難航するリスクが高まります。

したがって、現地の市場動向に詳しい、現地のコミュニティなどに精通している、といった現地パートナーとの協働を目指しましょう。現地パートナーならではの貴重なアドバイスを受けられる可能性があります。

まとめ

海外市場開拓をするためには、海外販路開拓先の歴史や文化、宗教、生活状況など、知っておきたいことが多数あります。現地の状況を知らない企業が現地のニーズをくみ取り、商品やサービスを提供することは難しいからです。

海外進出する際には、中長期的なスケジューリングが重要となります。綿密なリサーチのもと、万全の状態で臨みましょう。

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