商品開発のためのわかりやすい企画書の書き方
コロナ禍により、これまでにはなかったニーズが求められています。また、SDGs(持続可能な開発目標)をはじめとする、トレンドワードもいくつか注目され、ますます市場ニーズの変容が起こっています。
そのため、そのような市場ニーズの変容に応えるべく、新たな商品開発に事業投資する企業も少なくありません。
その証拠にSDGsを例にした場合、中小企業庁が運営する中小企業・小規模事業者を対象にした支援情報サイト「ミラサポPlus」(※)には、「サステナブルな衣類の供給を目指し、新サービスを始めたメーカー」や、「廃棄される農作物を活用し、安心安全なクレヨンの製造販売を始めた企業」などの事例が紹介されており、既存事業とは異なる、新たな商品開発に注力する企業は、市場で増加傾向にあることがわかります。
本コラムをお読みの企業担当者様におかれましても、これまでにない商品開発を積極的に検討の上、今後、企画書の作成を予定されている方も多いのではないでしょうか。
既存事業とは異なるニーズを満たす、商品開発を実現するためには、自社の経営層に対し、商品開発の必要性や開発のメリットなど伝え、理解してもらう必要があり、わかりやすい企画書の作成は不可欠です。
ただし、企画書の作成に際し、「今まで一度も企画書を書いたことがないから不安」、「経営層の了承をスムーズに得たいが、企画書の構成段階で行き詰っている」といったお悩みを抱えている方も多いはず。
そこで本コラムでは、商品開発の企画書に必要な項目からはじまり、企画書の基本的な構成や、作成時のポイントなどについて、詳しく解説します。
※出典:中小企業庁「ミラサポplus」
商品開発の企画書に必要な項目
わかりやすい企画書の作成には、企画書に必要な情報やポイントを簡潔にまとめることが大切です。以下に、企画書に不可欠な3つの項目をご紹介します。
問題提起・現状分析
企画書を作成する背景には、「現状になんらかの問題があり、その問題が解決された後の事業ビジョンを実現したい」といった明確な意図があるはずです。そのためには企画書の冒頭で、「なぜこの企画書を作成するに至ったのか」という企画の背景と目的を明らかにし、現状の問題を提起する必要があります。
また、読み手と問題意識の共有を図るには、数値データを用いた現状分析も欠かせません。現状の問題を数値データとして可視化することで、企画書の説得力がより一層高まります。
問題の解決策
問題の解決策の提示なしに、問題提起は意味を持ちません。企画書は言い換えれば、「現状の問題と将来の事業ビジョンとのギャップを埋める、解決策をまとめた提案書」です。
解決策を提示する際には、誰の目から見ても納得できるソリューションでなければいけません。「この新商品を開発すれば、現状の問題は解決できる」ことを示すためにも、具体的な数値データをもって、解決策の実施後に期待される効果なども記載しましょう。
予算・スケジュールなどの情報
問題の解決策が「絵に描いた餅」とならないよう、商品をリリースするまでの予算・スケジュールなどの情報について、企画書に盛り込む必要があります。具体的には、「商品開発に向け、各開発工程において、どれほどの費用が発生するのか」「想定のスケジュールは現実的か」といった点について明示します。
プロジェクトの全容を数値データとして示すことで、実現の可能性が高い商品企画であることを読み手に訴求しましょう。
基本的な構成
商品開発の企画書の構成はいくつか種類がありますが、シンプルかつ意図が伝わりやすい構成を、以下にご紹介します。
表紙
企画書の表紙は、読み手が最初に目を止める重要な項目であり、以下の要素を記載するのが一般的です。
- 宛名
- 企画のタイトル、サブタイトル
- 企画者の名前、所属部署名
- 企画書の作成日
最も大切な「企画のタイトル、サブタイトル」では、企画の背景・目的が瞬時に読み手に伝わるよう、難しい表現や長いタイトルは避け、シンプルな表現を心掛けましょう。
企画の背景
表紙の次は、企画の背景を伝えることが一般的です。商品開発の企画がどのような理由で生まれたのかなど、企画の背景を最初に伝えることで、よりスムーズに次項目の「企画の目的」を、読み手に伝えることができます。
企画の目的
続いて、なんのためにこの企画を行うのか、企画の目的を伝えます。読み手の興味・関心を喚起させるため、「〇年後にシェア1位を奪取するため」「新規顧客を〇〇社開拓するため」など、ストーリー性を持って目的達成後の事業ビジョンを伝えるとなおいいでしょう。
問題提起
事業ビジョンの実現に向け取り組むべき課題として、現状の問題を提起します。読み手の納得感を得る問題提起には、客観的な指標が不可欠です。「今後の事業発展に、この企画内容はふさわしい」と読み手に共感してもらうためにも、市場調査などで得たデータを充分に活用しましょう。
商品の概要
前段で提起した問題を解決できる商品の概要を、こちらで示します。市場や顧客に対する商品の根本的な価値を示すため、商品のターゲットやコンセプトをはじめ、訴求・差別化ポイント、商品の仕様・価格といった要素を盛り込むのが一般的です。また、読み手に商品を明確にイメージしてもらえるよう、商品イラストや3Dモデルも加えることをおすすめします。
予算・スケジュール・収支見込
最後に、予算とスケジュール、収支見込のページを作成します。いかに商品のアイディアが優れていたとしても、想定される予算とスケジュールが事業運営に影響をもたらすようであれば、読み手となる経営層はリリースの判断を下せません。
数値の信頼性を高めるためにも、開発・生産コストの内訳だけでなく、リリース前の不具合発生に対する修正費用も予め加えておくのが得策です。また、収入見込の実現性を示すため、収支見込は前段の問題提起で収集した市場調査などのデータをもとに算出するといいでしょう。
商品開発の企画書を作成するときのポイント
商品開発の企画書は、読み手にとって見やすく、瞬時に理解できる内容へと工夫することが大切です。以下に、4つのポイントをご紹介します。
1スライド=1メッセージ
1枚のスライドに多くの情報を詰め込み過ぎた場合、読み手のストレスとなり、興味が途中で削がれ、企画意図が伝わらない恐れがあります。「1スライド=1メッセージ」を心掛け、簡潔に企画の目的などを伝えるようにしましょう。
データに裏打ちされた根拠がある
企画書の説得力を高めるには、データに裏打ちされた根拠が求められます。根拠の提示は感覚的なものではないという印象を読み手に与え、企画書の説得力がより一層増します。また、経営層が最適な判断を下せるよう、商品開発後の収支見込もデータとして盛り込みましょう。
配色はシンプルに
メッセージの強調を目的に、多くの色彩を用いる方がいますが、あまりに配色が多いる企画書は非常に見づらく、理解に時間がかかります。配色は多くても、3色までに抑えましょう。
グラフや表を使って見やすくする
企画書の根拠となる数値やデータは、グラフや表を使って見やすくまとめることで、読み手が瞬時に理解しやすくなります。文章での表現が難しい、または長文になる恐れがある場合は、グラフや表を積極的に活用し、読み手の読解をサポートしましょう。
まとめ
商品開発の企画書には、問題提起・現状分析と問題の解決策、予算・スケジュールなどの情報の3つの項目が不可欠であること、また、読み手に最後まで興味深く読んでもらえるよう、企画書には、基本的な構成と注意すべきポイントがあることなどについて、本コラムを通してお伝えしました。
ここまでお読みになり、本格的に企画書の作成をお考えの方もいらっしゃるかもしれませんが、経営層が賛同する企画書の作成には、前述の通り、充分な市場調査やデータを用いた効果予測が求められるため、一筋縄ではいきません。
企画書の作成に拘った結果、想定外の時間を要し、プロジェクトが遅延すれば本末転倒ですが、ゼロから企画書を作成する場合、多大な工数が発生します。
そこでおすすめなのが、外部のテンプレートの活用です。テンプレートは記載すべき項目が元から用意されているため、企画書の構成に悩むことはありません。企画書の作成経験がない方や、作成時間が限られている方は、テンプレートを上手に活用し、自社向けにカスタマイズするといいでしょう。
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