インフルエンサーマーケティングとは?効果と成功事例をわかりやすく解説します
近年、Z世代と呼ばれる若者を中心に、購買行動に慎重な判断を見せるようになっています。
新型コロナウイルス感染拡大による家計の圧迫や、歴史的な円安問題による物価の上昇などもあり、初期購入はもちろん、継続的な商品・サービス購入を促すことは一筋縄ではいかないでしょう。
このような状況下で、注目を集めているのがインフルエンサーマーケティングです。
若者世代を中心に影響力を高めるインフルエンサーの活用は、セールスを加速させるためにも重要なポイントであるといえます。
そこで今回は、インフルエンサーマーケティングの意味や効果、代表的なSNSやマーケティング会社についてご紹介します。
インフルエンサーマーケティングとは
インフルエンサーマーケティングとは、企業がPRしたい商品・サービスを、インフルエンサーを介して発信するマーケティング手法です。
プラットフォーム上で一定の知名度を持つインフルエンサーの宣伝により、そのフォロワーを中心に興味・関心を高め、購買を促します。
インフルエンサーとは?
インフルエンサーは、広義では世の中に大きな影響を与える人物を指す言葉です。
特にインターネット上で影響力のある有名人を指す場合が多く、SNSプラットフォームにて多数のフォロワーを持つユーザーが該当する傾向にあります。
近年はタレントや俳優などの芸能人や、ファッションモデルやスポーツ選手などの特定業界で活躍するプロだけでなく、先述のSNSプラットフォームなどで一定のフォロワー数を獲得している場合であれば、そのユーザーが一般人であってもインフルエンサーに含まれます。
インフルエンサーマーケティングでは、そのような高い影響力を持つインフルエンサーを広告塔に起用することで、自社の商品・サービスの認知度を向上させ、購入フェーズまでの情報提供を行います。
インフルエンサーマーケティングの効果
インフルエンサーマーケティングで期待できる効果は、主に4つあります。
効果測定・分析がしやすい
インフルエンサーマーケティングは一部の例外を除き、インターネット上で行われることが多いため、効果測定・分析がしやすい特徴を持っています。
投稿に対するリーチ数に加えて、いいね・シェアなどのエンゲージメント率、サイトへの遷移率、購買数など、マーケティングファネルごとにユーザーの割合を出しやすいため、プロモーションの課題も特定しやすいでしょう。
ターゲティングしやすい
インフルエンサーのフォロワーは、彼らの提供するバリューに対して共感や応援の意思を持って集まり、コミュニティを形成しています。そして、このコミュニティには属性に一定の偏りがあるケースが多いです。
そのため、インフルエンサーのコミュニティを活用することで、企業は年齢・性別などのデモグラフィック(人口統計学属性)だけでなく、価値観や購買動機などのサイコグラフィック(心理的属性)もターゲティングしやすいというメリットがあります。
中にはファッションモデルやスポーツ選手など、特定ジャンルに強みを持ったインフルエンサーもいます。購買属性とマッチするインフルエンサーが見つかれば、自社の商品・サービスの世界観が受け入れられやすく、従来の広告展開と比べてスムーズな態度変容が期待できるでしょう。
コストを抑えられる
インフルエンサーの価格設定は、広告のようなクリック課金ではなく、発注単位でかかります。その金額はインフルエンサーのフォロワー数を基準に変動する傾向にあるため、活用の内容次第ではコスト削減が期待できるでしょう。
特にテレビや雑誌など、不特定多数の人間にアプローチを行うマスマーケティングと比較すると、興味・関心のある層に絞って配信を行える分、インフルエンサーマーケティングのほうが1人あたりの単価を抑えられる可能性が高いといわれています。
クチコミが拡散されやすい
インフルエンサーの特徴は、フォロワーに対して共感性の高いコンテンツを提供できる点にあります。
これは商品・サービスの紹介も同様であり、彼らのクチコミに対していいね・シェアなどを通じて、フォロワーによる情報拡散が期待できるでしょう。
近年はインターネットの普及で広告接触数が増えたことを嫌って、広告の存在自体を無視する、あるいは広告ブロックのアプリを使うユーザーも一定存在しています。
しかし、インフルエンサーマーケティングであれば、そのようなユーザーにも情報が届きやすく、ブランドの認知向上にも役立てられるでしょう。
広告感を無くせる
インフルエンサーを介して商品・サービスの情報を発信することで、企業から直接売り込まれている印象がなくなり、広告という認識が薄まります。
通常の広告ではどうしても企業に購入を促されている認識になりやすいため、抵抗感を抱く方も少なくありません。
しかし、インフルエンサーマーケティングでは、商品・サービスとは直接的な関係がないインフルエンサーの言葉をベースにするため、売り込まれているという印象を抱きにくくなるでしょう。
消費者目線のレビューを期待できる
インフルエンサーの投稿は実体験として発信される傾向にあるため、消費者目線でのレビューが期待できます。
特に現在はクチコミが購買行動の重要な判断材料になっているため、影響力の高いインフルエンサーによるレビューは有効であるといえます。
また、インフルエンサーを起点に、幅広いユーザーの声を収集できることで、品質改善や新商品の開発にもつなげることができるでしょう。
インフルエンサーマーケティングで活用されるSNS
インフルエンサーマーケティングで活用される主なSNSは、「YouTube」「Instagram」「TikTok」「Twitter」「Facebook」の5媒体が挙げられます。
YouTube(ユーチューブ)
YouTubeは、多種多様な動画コンテンツを共有するためのSNSプラットフォームです。総務省の調査結果(※)では、SNSの利用率において全年代平均85.2%という驚異的な数値を記録するほど、影響力の大きいプラットフォームとなっています。
あらゆるジャンルの動画コンテンツが投稿されているため、商品・サービスに合致したインフルエンサーを見つけやすいプラットフォームといえるでしょう。
Instagram(インスタグラム)
Instagramは、写真・動画をメインに投稿するSNSプラットフォームです。総務省の調査結果(※)では、SNSの利用率において10代〜30代の50%以上が利用しているプラットフォームであることが判明しています。
インスタ映えという流行語にも表れているように、Instagramは写真映えするコンテンツとの相性が高いプラットフォームです。美容、食品、アパレルなどの写真を掲載し、そこにショッピング機能を紐づけることで、認知から購買までのフェーズをシームレスでつなげられます。
TikTok(ティックトック)
TikTokはショートムービーの投稿に強みを持つSNSプラットフォームです。総務省の調査結果(※)では、SNSの利用率において10代の57.7%が利用しているプラットフォームであることが判明しています。
BGMやエフェクト機能により、カジュアルな印象を与えやすいのがTikTokの特徴です。10代の利用者が多いことからも、友達のノリのような空気感を大切にする傾向にあり、ビジネス色を排除したアプローチを行う際に適しています。
Twitter(ツイッター)
Twitterはテキスト投稿に強みを持つSNSプラットフォームです。総務省の調査結果(※)では、SNSの利用率において10代・20代の65%以上が利用しているプラットフォームであることが判明しています。
各業界のトレンドやリアルタイムの情報検索性に優れており、リツイート機能を使った拡散力の高さが特徴です。企業の公式アカウントも多数存在しており、リツイートキャンペーンによるプレゼント企画や、商品・サービスの誕生秘話など、多様な手法での認知獲得が行われています。
Facebook(フェイスブック)
Facebookは実名登録制のSNSプラットフォームです。総務省の調査結果(※)では、SNSの利用率において30代の数値が最も高く、48%が利用しているプラットフォームであることが判明しています。
実名登録制であることから、年齢・性別だけでなく、職業やライフステージなどの細かいターゲティングに強みを持っています。ビジネスにおいて企業横断的なつながりを持つ手段としても活用されており、海外での利用率も高いといわれているプラットフォームです。
※出典:令和2年度情報通信メディアの利用時間と情報行動に関する調査報告書 (総務省)
インフルエンサーマーケティングの成功事例
ここではインフルエンサーマーケティングを活用した成功事例として、2社の事例をご紹介します。
化粧品メーカーの事例
A社がインフルエンサーマーケティングを通じて取り組んだのは、朝の美容習慣の浸透です。
もともと化粧品は就寝前に利用するイメージがあり、朝は出勤前で忙しいこともあって、どうしても習慣として根付くのが難しい傾向にありました。
そこで同社が行ったのが、インフルエンサーを交えてのワークショップの開催です。オーガニック素材を使った朝食メニューづくりや、朝用のクリームを体感するワークアウトなど、朝に焦点を置いたコンテンツ作成に取り組む一方で、複数のインフルエンサーが朝の美容に対する考え方や商品の使用感を発信し、共感を通じて「実際に試してみたい」と思える環境構築を行いました。
この取り組みを通じて、同社は朝用のスキンケア商品で高い評価を得ることに成功しています。
化粧品メーカーの事例
B社がインフルエンサーマーケティングを通じて取り組んだのは、インフルエンサーのファン化です。
同社はこれまでにインフルエンサーマーケティング施策を実施してきたものの、投稿内容が徐々に画一的になってしまい、マンネリ化が課題となっていました。
そこで同社は、キャンペーンに直接応募してきたインフルエンサーに商品を無償提供しました。投稿の事前チェックや強制は一切行わず、実際に商品を試したインフルエンサーが、自発的に投稿するのを待ったのです。
この取り組みによって、インフルエンサーによる熱のこもったレビューが投稿され、通常の約3倍にあたるエンゲージメント率の獲得に成功しています。
企業がインフルエンサーマーケティングを行うときのポイント
企業がインフルエンサーマーケティングを行う際には、5つのポイントがあります。
目的を設定する
インフルエンサーマーケティングの具体的な施策は、消費者の行動フェーズによって異なります。
そのため、PRの目的が「認知の拡大」「興味・関心の獲得」「クチコミの拡散」「購買の促進」のどれに該当するのかを明確化できていなければ、見当違いの施策を実施してしまうリスクもあります。
必ず目的を決めたうえで、それに合った施策を考えるようにしましょう。
適切なKPIを設定する
PRの目的が異なれば、必然的に成否の判断材料となる指標も変わってきます。
認知フェーズであればリーチ数、興味・関心フェーズであればエンゲージメント数など、各フェーズに合わせたKPI設定を行うことで、適切な効果分析ができるようになるでしょう。
自社のターゲット層とマッチするインフルエンサーを選ぶ
インフルエンサーマーケティングの成否は、インフルエンサーの選定が大きく影響してきます。そのため、インフルエンサーが形成しているコミュニティが、自社ブランドのターゲット層と合致しているかを見極めることが重要です。
仮にインフルエンサーの年齢や性別が自社のターゲット層とマッチしていても、そのフォロワーが同じ属性であるとは限りません。インフルエンサーが20代の女性だったとしても、フォロワーの割合は30代の男性が多いなど、インフルエンサーとフォロワーの属性に相違がある可能性は十分にあり得ます。
また、誤解されやすい要素として、フォロワー数が効果に比例するという考えがあります。しかし、フォロワー数の多さが効果を高めるという絶対性はありません。フォロワー数が多ければ、休眠アカウントの数も多い可能性があるため、インフルエンサーのエンゲージメント数は必ずチェックするようにしましょう。
インフルエンサーの影響力を適切に管理する
インフルエンサーマーケティングを実施する場合は、オンライン/オフラインを問わず、リスク対策を怠ってはいけません。
過去にはインフルエンサーの宣伝によってオンラインショップのサーバーがダウンする、イベント会場に参加者が集まりすぎて収拾がつかなくなるなどの事象が発生しています。
これらのような事態が発生してしまうと、最悪の場合は炎上してしまい、ブランドイメージが失墜してしまう可能性もあります。そのため、あらゆるリスクを想定し、影響力を加味した対策を立てることが大切です。
インフルエンサーに裁量権を持たせる
インフルエンサーによるPRは、ステルスマーケティングに接触するリスクを孕んでいます。
日本では事業者の依頼によるクチコミ掲載の情報が、事業者にとって著しく優良あるいは有利であると判断された場合、景品表示法違反になる可能性があるため、投稿に対する過剰な要求には注意が必要です。
また、インフルエンサーの投稿から自由度を奪ってしまうと、どうしても投稿内容が広告チックになってしまい、クチコミとしての効力が弱まってしまいます。
そのため、可能な限りインフルエンサーに裁量権を与え、リアルな声を発信してもらうように心がけましょう。
インフルエンサーを探す方法
自社のターゲット層とマッチするインフルエンサーを探す方法は、主に3つあります。
自社で直接探す
コストを抑える手法としては、自社でSNSを検索し、該当するインフルエンサーに対してDM(ダイレクトメッセージ)などを通じて直接交渉する方法があります。
この手法では仲介業者がいないため、低コストで実現できるうえに、自社の希望を過不足なく伝えやすいというメリットがあります。
反面、自社ブランドと親和性の高いインフルエンサーを特定する難しさと、報酬交渉、PR内容のすり合わせ、マネジメントなど、マーケティング施策に関わる全ての業務を自社で執り行う必要があります。そのため、自社にノウハウがない場合や、人的リソースに余裕がない場合は、別の手法を選んだほうが良いでしょう。
プラットフォームツールを使用して探す
自社ブランドと親和性と高いインフルエンサーを、工数をかけずに見つける方法としては、マッチング・プラットフォームを利用するという方法があります。
検索機能によるインフルエンサーの抽出や、公募によるインフルエンサーの選定など、サービスによって内容は異なりますが、選定や連絡を容易に行えるのがメリットです。
反面、交渉やマネジメントは自社で行う必要があり、サービス利用料が発生することがデメリットになるでしょう。
インフルエンサーマーケティング会社に依頼する
インフルエンサーマーケティングの知見・ノウハウがない場合は、インフルエンサーのキャスティング会社に依頼するという方法があります。
キャスティング会社であれば、インフルエンサーごとのフォロワーの性質や過去の事例などを熟知しており、自社ブランドに適したインフルエンサーを選定することができるでしょう。中には施策の実施や効果分析まで担当してくれる会社もあります。
デメリットとしては、細かなすり合わせを怠ると施策の意図がズレてしまう、コストが割高になるなどが挙げられます。
代表的なインフルエンサーマーケティング会社
ここでは代表的なインフルエンサーマーケティング会社を3社ご紹介します(2022年7月時点情報)
UUUM
企業名 | UUUM株式会社 |
提供サービス | LMND(インフルエンサーマッチングプラットフォーム) |
所属インフルエンサー | YouTuberなど |
UUUM株式会社は、YouTuberの大手マネジメント事務所です。HIKAKIN、はじめしゃちょー、フィッシャーズなど、日本トップクラスの登録数を誇るYouTuberが多数所属しています。
近年では吉本興業株式会社と資本業務提携を行い、お笑い芸人を起用したインフルエンサーマーケティングにも注力しています。
Find Model
企業名 | 株式会社Find Model |
提供サービス | Insta Lab(インフルエンサーマッチングプラットフォーム) |
登録インフルエンサー | インスタグラマーなど |
株式会社Find Modelは、主にInstagramのマーケティング施策に力を入れているインフルエンサーマーケティング会社です。
1億8000万人という最大リーチ数と、1万件以上の支援実績を強みとし、企画から効果分析のレポーティングまでをワンストップでサポートしています。
3ミニッツ
企業名 | 株式会社3ミニッツ |
提供サービス | ソーシャルメディアマーケティング支援 |
登録インフルエンサー | YouTuber、インスタグラマーなど |
株式会社3ミニッツは、女性YouTuber特化型のプロダクションとして誕生した会社です。
社内にクリエイティブチームを持っており、戦略立案からコンテンツ企画、効果分析・改善までを一貫して担当できるのが強みです。
まとめ
本記事では、インフルエンサーマーケティングの意味や効果、代表的なSNSやマーケティング会社についてご紹介しました。
インフルエンサーはイノベーター理論におけるアーリーアダプタ(初期採用者)に該当し、次のトレンドを創り出すほどの影響力を有しています。
インフルエンサーによるクチコミ・評価は、後の購入者となり得るアーリーマジョリティ(前期追随者)やレイトマジョリティ(後期追随者)にとっても重要な判断材料となるため、いかにインフルエンサーを効果的に活用できるかが、市場を攻略する鍵ともいえるでしょう。
また、近年はLTV(Life Time Value/顧客生涯価値) の最大化を図るという意味でも、コミュニティとの接点をどのように獲得するかが重要になっています。そのうえでインフルエンサーマーケティングを通じて、自社ブランドと親和性の高いインフルエンサーを特定することは、自社に合った適切なコミュニティを発見することにもつながるでしょう。
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