広報戦略とは?効果的なフレームワークや具体的な進め方を解説
広報戦略は、企業のブランディングを行ううえで欠かせない取り組みです。従来はテレビや新聞などのマスメディアが広報活動の中心でしたが、最近ではインターネットやSNSを活用した広報活動に変わっています。
広報戦略を効果的に実施するためには、フレームワークの活用が欠かせません。しかし、さまざまなフレームワークがあるため、どれを選べば良いかわからない方も多いでしょう。この記事では、広報戦略において効果的なフレームワークと、その具体的な進め方について解説します。
広報戦略は企業成長に欠かせないもの
広報戦略は、広報担当者が社内外のステークホルダーへ向けて、自社や商品・サービスの認知度を高めるといったブランディングを図るために、プランや行動を策定することです。
広報活動は、短期的な成果のためではなく、企業の長期的・持続的な成長のために行われます。もし、戦略を立てずにその都度対応してしまえば、企業の行動に一貫性が持てず、社会からの信頼を得ることやステークホルダーとの良い関係を作ることも難しいでしょう。
広報戦略を立てることで一貫性を持った正しい広報活動が実施でき、その結果、企業の成長促進にもつながっていくのです。
広報戦略が注目される背景
昨今、広報戦略が注目されている背景には、主に以下の3つがあります。
情報量が増加したため
スマートフォンの普及や新たなサービスの登場により、社会全体の情報量が増加しています。
これまで、情報収集の主な手段はテレビや新聞などのマスメディアでした。しかし、近年ではスマートフォンなどの普及により、インターネットを介して簡単に情報収集できるようになりました。その反面、インターネット上には膨大な量の情報があふれているため、受け手には情報の取捨選択が求められるようにもなりました。
情報の発信方法や情報の受け取り方が複雑化していくなか、広報活動をより効率的に進めるために、広報戦略は注目されています。
嗜好や属性が細分化しているため
以前は、テレビや新聞などのマスメディアに出稿すれば、多くの人が同じ情報を得て、すぐに認知度を高められました。しかし、スマートフォンの普及によって手軽にインターネットを活用できるようになってからは、一人ひとりが自分の好みにあった情報を取得するようになり、消費者の関心も細分化しています。
そのため広報活動を行う際は、ターゲットの嗜好や属性に合わせたメッセージを発信しなければなりません。それぞれのメッセージを考えていくうえで広報戦略は指針となり、重要な役割を担います。
近年では、購買活動に関わるデータを収集・分析できるデジタルマーケティングと広報戦略を組み合わせていくことにも、注目が集まっています。
コストを抑えるため
テレビや新聞といった従来のメディアによる広報活動では、莫大な費用がかかるため、費用対効果が見合わないことがありました。
しかしインターネットが普及した現代では、デジタルマーケティングによってターゲットの属性を細かく指定して広報活動ができるため、従来のメディアと比べてコストを抑えながら効果を得られます。
適切な広報戦略を立ててより大きな成果を出せるようになれば、それまで広報や宣伝にかけていたコストを抑えられます。
広報戦略にフレームワークを活用するメリット
フレームワークとは、ビジネスの課題を解決するために活用される思考の枠組みのことです。広報戦略を立てる際は、自社の分析や外部環境の洗い出しをして整理する必要があるため、一から自分の考えで進めていくことは難しいでしょう。
フレームワークというあらかじめ決められた枠組みを活用すれば、時短にもなり生産性の向上が期待できます。また、フレームワークは過去に実績のあるビジネス手法であるため、精度の高い広報戦略を立てられます。
広報戦略にフレームワークを活用するデメリット
広報戦略のフレームワークは、ルールや機能の使い方を覚えるといった、使いこなすまでの学習期間が必要になります。
また、さまざまな種類のフレームワークが存在しているため、自社の状況に合わせた適切なフレームワークを選定しなければなりません。さらに、フレームワークごとに目的が異なるため、使い分けるためのスキルも求められます。
適切なフレームワークを選べないと、想定していた結果が得られないこともあります。
広報戦略に効果的な7つのフレームワーク
広報戦略には、以下7つのフレームワークが効果的です。
- PEST分析
- SWOT分析
- 4P分析
- STP分析
- バリューチェーン分析
- 4C分析
- ビジネスモデルキャンバス
それぞれの特徴を解説します。
PEST分析
PEST分析とは、以下4つの自社を取り巻く外部環境を洗い出し、その変化を大局的に予測することで、自社に与える影響を明らかにするフレームワークです。
- Politics(政治):政治的要因、政府が打ち出す政策や法律、条例の制定、改正など
- Economy(経済):経済的要因、景気の動向やインフレ率、経済成長率など
- Society(社会):社会的要因、人口の変化、流行、ライフスタイルの変化など
- Technology(技術):技術的要因、技術革新や市場全体の取り組み、特許など
4つの視点で外部環境を分析することで、現状に合った適切な広報戦略や情報発信の方法が明らかになるため、時代に合った形で自社の存在をアピールできます。
SWOT分析
SWOT分析とは、以下4つの観点から自社の内部環境と外部環境のプラス・マイナス要因を洗い出し、それぞれを組み合わせて最適な戦略を模索するためのフレームワークです。
- Strength(強み):内部環境・プラス要因、自社の強み
- Weakness(弱み):内部環境・マイナス要因、自社の弱み
- Opportunity(機会):外部環境・プラス要因、新たなビジネスチャンスの可能性
- Threat(脅威):外部環境・マイナス要因、外部からの脅威
4P分析
4P分析とは、以下の4つの要素を検討し、商品やサービスの強みやアピールポイントを戦略に活かすフレームワークです。
- Product(商品・サービス):自社の商品・サービスにどのような強みがあるか
- Price(価格):インパクトのある値付けか
- Place(流通チャネル):販路や店舗は適切か
- Promotion(プロモーション):どのような方法で販促活動をおこなうのか
STP分析
STP分析とは、以下3つの観点から自社の立ち位置を明確にして、強みを最大化できる市場を選定するためのフレームワークです。
- Segmentation(セグメンテーション):市場の細分化、性別、年齢、居住地などで分類
- Targeting(ターゲティング):細分化した市場のうち、どの市場を狙うのかを決定
- Positioning(ポジショニング):狙うべき市場のなかで、自社の立ち位置を明確化
新規事業の立ち上げや、新商品の開発で使われる機会の多いフレームワークです。広報の領域でも、市場や顧客の関係性を明らかにできるため有効です。顧客視点に立った精度の高い広報戦略につながることが期待されます。
バリューチェーン分析
バリューチェーン分析とは、事業活動を分類し、それぞれの活動によって生まれる付加価値を分析するフレームワークです。
企業の活動を生産から消費までの主活動と、それ以外のバックオフィスなどを副次活動に分け、次にそれぞれの活動で発生するコストと付加価値を洗い出します。このコストと付加価値の分析結果で、自社の強みや改善点を明らかにできます。
4C分析
4C分析とは、以下4つの観点から消費者目線での販売手法を考えるフレームワークです。
- Customer value :顧客から見た価値
- Customer cost :顧客が払う費用や手間
- Convenience :顧客が簡単に入手できるかどうか
- Communication :顧客とのコミュニケーション方法
広報戦略を立てる際は、顧客目線が欠かせません。4C分析を活用することで、顧客目線を戦略に取り入れるとよいでしょう。
ビジネスモデルキャンバス
ビジネスモデルキャンバスとは、以下9つの観点からビジネスの構造を整理して、設計図のようにわかりやすく可視化するフレームワークです。
- Customer Segments(顧客セグメント):価値を提供したい具体的なターゲット
- Value Propositions(価値の提案):顧客にもたらす価値
- Key Resources(おもなリソース):顧客に価値を提供し続けるために必要なリソース
- Key Activities(主要活動):価値を提供するためにおこなうべき活動
- Key Partners(おもなパートナー):外部に委託する活動や外部から調達するリソース
- Customer Relationships(顧客との関係性):顧客を維持できる仕組みになっているか
- Channels(チャネル):どのようなルートで顧客に価値を届けるか
- Cost Structure(コスト構造):発生するすべてのコスト
- Revenue Streams(収益の流れ):顧客に価値を提供した結果生じる収益を得る仕組み
フレームワークを活用した広報戦略の進め方
フレームワークを活用した広報戦略は、基本的には次の手順で進めると効率的です。
現状把握
まずは、自社が置かれている状況やステークホルダーの意見などを調査・分析し、把握する必要があります。
広報戦略では、自社がどのような価値を社会に与えられるかがポイントとなります。そこで、市場内での自社の立ち位置を把握することが大切です。先述したSWOT分析を活用すれば、自社の強みや弱みが明確になり、外部環境との関係性も明らかにできます。
広報戦略の立案
前のステップで把握した自社の現状と、企業の将来像を比較し、実施すべきことを洗い出しましょう。理想と現実とのギャップを解消するために、ギャップをできるだけ整理することが大切です。
具体例として、以下の戦略が挙げられます。
- プレスリリース配信
- SNS運用
- キャンペーンの実施
- 社内報の作成
- イベントの実施
広報戦略の実施
広報戦略が立案できたら、施策を実施します。実施の際は広報戦略で発信する情報と、自社の事業やサービスに一貫性をもたせることが重要です。
万が一、広報活動で発信した情報と商品・サービスがかけ離れていて整合性がとれない場合には、世間やステークホルダーからの信頼を失い、ひいては企業ブランドの価値も下げてしまう可能性があります。
効果測定
最後は実施した結果を冷静に評価し、改善点を洗い出します
現在はインターネットを介して実行結果をデータで収集しやすくなりました。計画どおりに進んだかどうかを判断し、反省点があれば、次回以降の改善策を考えるなど、広報戦略をブラッシュアップします。
まとめ
広報戦略とは、自社や商品・サービスを社会に広く知ってもらうための活動です。
広報戦略を立て、一貫性のあるメッセージを発信し続ければ、社会やステークホルダーからの信頼を獲得しブランド力の向上につながります。効果的に実施するためには、さまざまなフレームワークを適切に組み合わせながら戦略を進めることが大切です。
自社のブランディングや企業イメージの向上を考えている方は、本記事を参考にフレームワークを活用しながら広報戦略の立案を進めてみてはいかがでしょうか。
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