ペルソナ分析とは?分析方法や企業の活用事例を解説
企業のマーケティング活動を考えるなかで「ペルソナ分析」という言葉を耳にすることがあるでしょう。
当コラムではペルソナ分析を知りたいビジネスパーソンに向けて、ペルソナ分析の概要や実施する目的に始まり、メリットやデメリット、具体的な事例まで紹介します。
ペルソナ分析とは
はじめに、ペルソナ分析の概要を理解しましょう。ペルソナの意味やターゲットとの違いを解説します。
そもそもペルソナとは?ターゲットとの違いは?
「ペルソナ」とは、商品やサービスの購入者となる顧客像を指します。ペルソナ分析とは、商品・サービスを購入する顧客像を具体的にイメージできるよう、詳細に作り出すマーケティングフレームワークのひとつです。
似たような言葉に「ターゲット」があります。ペルソナもターゲットを設定する点は同じです。しかしターゲットとペルソナは、顧客像をどこまで具体的にするかが異なります。
ターゲットが顧客像を特定の「集団」や「属性」程度でまとめたものであるのに対し、ペルソナ分析では、より顧客像を突き詰め、できるだけ人物像を1人に絞り込むところまで設定します。たとえば、ターゲットの顧客像は以下のような設定になります。
- 30代
- 男性
- 会社員
- 既婚
一方でペルソナの場合は、以下のようにさらに細かく具体的に顧客像を設定します。
- 山田 太郎
- 男性
- 35歳
- 30歳の妻
- 3歳と5歳の子どもが2人
- 年収700万
- マンション暮らし
- 趣味はゴルフ
- 老後を意識し始め、資産形成に興味がある
- 両親は地方在住
- 友人は大学時代からの付き合いが数名
このように、ペルソナを分析する場合、絞り込んだ人物がどのような状況で、どのような趣味嗜好をもち、どのような価値観の持ち主か、といったところまで深く設定します。さまざまな要素が含まれることが、ターゲットとの根本的な違いです。
ペルソナ分析をする目的
ペルソナ分析をする目的は、具体的な顧客像を定め、より精度の高い顧客視点での商品やサービスの開発・販促を行うためです。
ペルソナ分析をすると具体的な顧客像がわかり、商品開発やマーケティング施策の課題の解決策や、響くキャッチフレーズが考えやすくなります。
たとえば、インターネット広告では精微なターゲティングの配信が可能なため、ペルソナ分析をして顧客像を明確にすることで、より効果的な広告を配信できます。
このように、ペルソナ分析をすると効果的な商品・サービス開発やマーケティング施策を実行できるでしょう。
ペルソナ分析のメリット
ペルソナ分析のメリットの代表例としては、以下の3つがあります。
- 顧客視点で施策を考えられる
- プロモーションの精度を高められる
- 社内の共通認識、判断軸をもてる それぞれを解説します。
顧客視点で施策を考えられる
ペルソナ分析をすると、顧客視点で具体的な施策を検討しやすくなります。なぜなら、ペルソナ分析で具体的な顧客像を設定するため、ニーズや購入の検討タイミングなど、顧客の考えや行動をイメージしやすくなるからです。
顧客の考えや行動をイメージできれば、ニーズを明確化し効果的な商品・サービスの開発がしやすくなります。このようにペルソナ分析をして顧客視点で施策を考えられると、より効果的な施策を練られるようになります。
プロモーション精度を高められる
プロモーションの観点からも、ペルソナ分析は有効です。「プロモーション」とは、商品やサービスの認知度を上げて購入に繋げるための活動を指します。プロモーションを考える際には、顧客がどのような形で情報に接し、どのような形で興味をもち購買に至るのか把握する必要があります。
たとえば、40代男性をターゲットにしたケースを考えてみましょう。都心在住の会社員と設定した場合、通勤時に電車のつり革広告や駅中広告に接する機会が多いと考えられます。反対に郊外在住と設定した場合、車通勤の可能性が出てくるため、前述の広告に接する機会が少ないかもしれません。
以上のように、ペルソナ分析を行い顧客像が詳細になるほど、より効果的なプロモーションがしやすくなります。
社内の共通認識、判断軸をもてる
ペルソナ分析をすると、社内で商品やサービスの顧客像に関する共通認識、判断軸をもちやすくなります。
「マーケティング」といっても、営業、販促担当、広報、製品開発、カスタマーセンターなど、多くの部門が関わっています。そのため大まかなターゲット設定のみで話を進めてしまうと、一人ひとりが思い描く顧客像にズレが発生しかねません。
ペルソナ分析をして自社の顧客像を明確化、共有化しておくことで、それぞれの判断のズレを抑えやくなります。プロジェクトに関わるすべての人が共通認識を持ち議論できれば、正しい判断がしやすくなり、意思決定も迅速にできるでしょう。
ステークホルダーが多くなるほど、自社の顧客像が分散されがちです。誤った方向に進みそうな場合でも、軌道修正できるようにペルソナ分析をおこない、首尾一貫したマーケティング活動を進めていきましょう。
ペルソナ分析のデメリット
ペルソナ分析のデメリットとして代表的な例は、以下の2つがあります。
- 時間がかかる
- 誤ったペルソナ像になる可能性がある
時間がかかる
ペルソナ分析は顧客像をよりリアルな形に近づけるためには、時間がかかります。
単純にターゲット設定と比べても設定すべき項目が多いうえに、精緻な像に近づけるためアンケートやインタビューといった調査をおこなうケースも少なくありません。さらに、コストと時間をかけてペルソナ設定を行っても、時間が経過してマーケット状況が変われば、再度ペルソナを設定する必要も出てきます。
ペルソナ分析は実施やその後の更新に手間と時間がかかることを認識しておく必要があります。
誤ったペルソナ像になる可能性がある
収集する情報の正確性が欠けていたり、データに基づくことなく想像や思い込みでペルソナを考えてしまったりすると、誤ったペルソナ像を作り上げてしまう可能性があります。
ペルソナ分析を誤ってしまうと、プロモーション活動に悪影響を及ぼす可能性があります。ペルソナ分析の結果に基づいてプロモーション活動をおこなう場合、ペルソナ分析により作った人物像が実態と乖離していると顧客に的外れなアプローチを行うことになり、コストの浪費につながりかねません。
このような事態に陥らないためには、適切な手法で分析し、情報に不足がないように努める必要があります。正しいプロモーション活動をするためにも、ペルソナ分析は丁寧に進める必要があります。
ペルソナ分析の方法
ペルソナ分析の方法を解説します。これから紹介するステップで進めると、正確な情報に基づいたペルソナ分析ができるでしょう。
STEP1 ある程度のターゲット層を決める
最初に、セグメント別に大枠のターゲット層を決めましょう。特定の商品を購入するのはどのような人物なのか、想像してみるのがおすすめです。
既存商品の購買情報をヒントにするとターゲットを想起しやすいため、社内でデータを収集しましょう。自社内のデータが乏しければ、総務省や経済産業省、その他研究機関、業界団体などが公表しているデータを入手することもおすすめです。
その後、ターゲットをさらに絞り込み具体化し、自社で開発した商品・サービスを購入しやすい顧客像のグループを複数作ります。初期の段階で顧客像を具体的に絞りすぎると、実態からかけ離れたペルソナを設定してしまう可能性があるので注意しましょう。
STEP2 アンケートを実施する
ターゲット層を決めた後は、アンケートを実施します。アンケートの対象は、STEP1で作成したグループに分けて実施することが望ましいです。サービス・商品によって異なりますが、アンケートの代表的な項目は以下のとおりです。
- 名前
- 性別
- 職業
- 年齢
- 既婚、未婚
- 年収
- 趣味
- よく使用するSNS
- 消費行動
- よく使用するお店
- よく見るメディア
上記はあくまでも一例にすぎません。自社の製品では、他にどのような項目があるとプロモーション活動がしやすいか検討してみましょう。アンケートの手法にはさまざまありますが、この段階のものであれば、単一選択型のようなシンプルなものを心がけましょう。複雑なアンケート形式にすると、回答率が低下する可能性もあるので注意してください。
STEP3 アンケート結果をグループ分けする
アンケートにより明確になった情報から、共通項目があるグループに分けます。グループ分けをしたら、そのなかからインタビューをする対象者を決めましょう。グループごとにインタビューをする人物を決めますが、複数人選ぶようにしてください。
STEP4 インタビュー調査をする
次に、インタビュー調査を実施しましょう。インタビュー調査は、ペルソナ分析のなかでも非常に重要な段階です。これまでは、あくまでデータ上でしか顧客ニーズに触れていませんが、ここでは直接顧客の意見に向き合うことになります。
そのため、インタビュー調査の際には、何を聞くべきか十分に検討する必要があります。年齢や家族構成など基本情報から、趣味や仕事の役職など、さまざまな情報を聞けるように準備しましょう。
STEP5 ペルソナを決定する
インタビュー調査の結果から、ペルソナを決定します。インタビューの設問項目に分けて整理していくと、ペルソナ設定がしやすくなります。
- 基本情報
- 仕事について
- 趣味について
このように、分野別に考えていきます。ある程度具体的なペルソナが決定したら、ミスや漏れがないか念入りに確認しましょう。確認作業を怠らずに実施することで、より精度の高いペルソナを設定できます。
STEP6 商品購入までのストーリーを作る
設定したペルソナの顧客がどのように商品を購入するか、ストーリーを作りましょう。購入までのストーリーを作ると、マーケティング活動の進め方を検討しやすくなります。自社の製品を知り、興味を持ち、紆余曲折を経て購入に至ったプロセスを明確に記載してください。
ペルソナ分析をして購買までの具体的なストーリーを描くと、より効果の高い広告施策を検討できるようになります。
ペルソナ分析の具体的な事例を紹介
ここからは、ペルソナ分析の結果をマーケティング活動に活かしている企業の事例を紹介します。それぞれの事例から理解を深め、ペルソナ分析の具体的な活用イメージを掴みましょう。
飲料メーカーの事例/A社
A社の発泡酒は綿密なペルソナ分析が功を奏し、安定した売上の貢献につながった事例です。
具体的には、過去の定量的なデータ分析から、ペルソナを「30代後半以上の男性」にフォーカスし、消費者へライフスタイルや目標など内面に関するインタビュー調査を実施しました。質問の半分は製品とは直接関係ない質問だったそうですが、インタビューの記録はペルソナづくりの定性的な情報になりました。
共通項をまとめることで具体的なペルソナを設定でき、それを基に商品名やパッケージデザインなどの商品開発を進めた結果、ヒット商品誕生につながりました。
IT業界の事例/B社
B社は、部門やプロジェクトごとに個別のペルソナを設定していました。過去に制作されたペルソナを他の部署や他のプロジェクトでも参考にしようと試みましたが、メンバーからの共感が得られず再活用できないため、非効率な状態でした。
そこで、メンバーからの共感と業務の効率化を両立するため、部門間で共有できるようなペルソナを作成するプロジェクトを立ち上げます。
その結果、部門ごとにバラバラにペルソナを設定し活動していた従業員が連携し、ペルソナに響くような商品開発やサポート体制を考えるようになりました。 B社のように、ペルソナを設定することで従業員の業務に対する姿勢の改善につながるケースもあります。
ペルソナ分析の注意点・失敗例
ペルソナ分析をする際の注意点・失敗例は以下のとおりです。
- 注意点:目的を明確にする
- 注意点:担当者、関係者全員にイメージしやすいよう意識する
- 失敗例:ペルソナ分析の深掘りが甘い
- 失敗例:ペルソナを理想像にする
注意点や失敗例を理解すると、実際にペルソナ分析をする際に失敗するリスクを低減できます。ペルソナ分析をする前に一読しておきましょう。
目的を明確にする
なぜペルソナ分析をするのか、目的を明確にしておきましょう。目的が不明瞭のままペルソナ分析をしても、有効的な活用は見込めません。
そのため、まずは「ペルソナ設定を活用して開発機能を決定する」「プロモーションも、この設定をもとに行う」など、ペルソナ分析の目的を明確にすることをおすすめします。
担当者、関係者全員がイメージしやすいよう意識する
担当者や関係者全員がイメージしやすいようにペルソナ分析をしましょう。ペルソナ分析の結果を関係部署に共有しても、その内容が不明瞭であれば適切な形で共通認識をもてない可能性があります。
関係者間でイメージしやすくなるよう、想像しやすい人物を設定しつつ、分かりやすい言葉を使用し表現することを意識してください。
ペルソナ分析の深堀りが甘い
ペルソナ分析の失敗例に、深堀りが甘いケースが挙げられます。具体的な顧客像を作れていなければ、ペルソナ分析を活用した効果的なマーケティングはできません。年齢や性別などのセグメントだけではなく、生活スタイルや年収、役職など、より具体的な顧客像を作りましょう。
ペルソナを理想像にする
ペルソナを自社にとって理想的な人物像にしてしまうと、マーケティング活動で失敗する可能性があります。
ペルソナを設定する際、どうしても自社にとって都合の良い、理想的な人物像に近づけてしまいがちです。そのようなことが原因で誤ったペルソナ分析を行った結果、マーケティング活動に支障をきたす恐れがあります。
可能な限り多くの、また正確な情報を収集し「リアルなペルソナ像」を設定することを心がけてください。
まとめ
ペルソナ分析には時間がかかりますが、正しく実践することでより高い成果を期待できるマーケティング活動が行えます。
自社のマーケティング活動がうまくいっていない、効果的な販促活動をしたい、ペルソナ分析をしないといけないと感じた場合は、このコラムの内容を参考にペルソナ分析を行い、実務に活かしていただけたら幸いです。
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