副業でも個人事業主になれる?メリット・デメリットをまとめて解説
副業を始める場合、個人事業主として活動するかどうかが一つのポイントになります。
税務署に開業届を提出し、個人事業主として認められることにはメリットがありますが、手続きの手間などの注意点もあるため、個人事業主になることについて事前に理解しておくことが重要です。
本記事では、副業で個人事業主になる方法やメリット、デメリットなどを詳しく紹介します。副業を検討中の方や、個人事業主としての副業を希望する方は、ぜひチェックしてみてください。
副業でも個人事業主になれる?
結論から述べると、個人事業主として副業することは可能です。開業届の提出を行えば、会社員と個人事業主を両立できます。
まずは、個人事業主の定義や会社員との違いについて、詳しく解説します。
個人事業主とは
個人事業主とは、法人ではなく個人として事業を営む人を指す言葉です。アルバイトや正社員のように雇用契約を結ぶのではなく、独自に事業を行っている方が該当します。
個人事業主として活動するには、税務署へ「開業届」を提出しなければなりません。手数料はかからず、書類を提出するだけで手続きが完了します。
会社員としてはたらいている状態でも、開業届を提出して個人事業主になることは可能です。
会社員と個人事業主の違い
会社員と個人事業主は、その立場やはたらき方が大きく異なります。
会社員は雇用契約に基づいてはたらき、会社から給与を支払われるのが特徴です。毎月安定した収入が得られるのは大きなメリットですが、会社の指揮命令に従う必要があるなど、仕事の自由度には制限があります。
一方、個人事業主は会社に雇用されず、自分自身で事業を運営するのが特徴です。事業の内容やはたらき方を自分で決められるため、自由度が高いというメリットがあります。しかし、収入が不安定になるリスクや、確定申告などの税務手続きを自分で行う手間が生じるのがデメリットです。
副業に取り組む個人が近年増加
近年、政府の後押しもあって副業に取り組む個人が増加しています。2023年にパーソルキャリアが行った調査では、副業をしている人の割合は8.4%で、前年の同調査より0.2ポイント増加しました。2年連続で増加していることから、会社員の副業は今後さらに浸透していくと考えられます。
出典:副業の実態調査【最新版】(パーソルキャリア)
副業で個人事業主になる4つのメリット
個人事業主として副業に取り組むことには、多くのメリットがあります。ここでは、副業で個人事業主になる4つのメリットについて、具体的に解説します。
経費を計上できる
副業で得た所得が20万円を超える場合、確定申告が必要となります。また、医療費控除やふるさと納税などで確定申告を行う場合は、20万円以下であっても申告が必要です。その際、個人事業主として事業にかかった各種経費を計上することで、節税につながります。副業で一定以上の収入を得たいのであれば、控除額の大きい「青色申告」の利用も含めて検討しておくのがおすすめです。
本業を続けながら新たな挑戦ができる
副業で個人事業主になると、本業を続けながら新しい分野に挑戦できるのもメリットです。「フリーランスとしてはたらきたい」「新しい職種に挑戦してみたい」と考えていても、転職や独立にはさまざまなリスクが伴うため、一歩踏み出すのに躊躇してしまう方も多いでしょう。
副業であれば、本業の安定した収入を維持したまま、興味のある分野に取り組むことができます。また、副業を通じて新しいスキルや経験を獲得できれば、いざというときにキャリアチェンジしやすくなるのもメリットです。
独立に向けた準備ができる
将来的に独立を目指している方にとって、副業で個人事業主として活動することは、リスクを抑えながら事前準備を進める最適な方法です。独立後すぐに安定した収入を得るのは難しく、仕事を受注できなかったり、顧客を獲得するまでに時間がかかったりするケースが珍しくありません。
そこで、副業の段階で仕事の流れを把握し、実績を積んでおけば、スムーズにフリーランスとしての活動を始められるでしょう。また、収支の管理や確定申告など、独立時にも対応が必要になる手続きを経験できる点も、独立を視野に入れている方にとっては、大きなメリットとなります。
屋号をつけられる
個人事業主として副業をすると、「屋号」をつけられるのもメリットです。屋号は事業を行う際に使用する名前のことで、会社名のようなものです。屋号をつけると、自分の本名ではなく屋号で銀行口座を作成したり、Webサイトや名刺に掲載したりできます。
特に、ブログやSNSなどで仕事の情報を発信する場合、屋号があると自身のプライバシーを守りながら活動できる点が大きなメリットです。さらに、屋号をつけることで事業のブランドイメージを構築しやすくなり、顧客に覚えてもらいやすいというメリットもあります。
副業で個人事業主になる3つのデメリット
副業で個人事業主になることには多くのメリットがある一方で、いくつかのデメリットもあるため、事前に把握しておくことが大切です。ここでは、具体的に3つのデメリットについて見ていきましょう。
届け出や申告に手間がかかる
個人事業主として副業をするためには、開業届を提出する必要があります。また、毎年の確定申告のために収支の記録や経費の計算など、事務作業の負担が増える点もデメリットです。
特に青色申告を利用する場合は、複式簿記で記帳を行い、必要書類を整える必要があるため、慣れるまでは手間取るかもしれません。会社の仕事をしながらこれらの手続きや事務作業に取り組むことに、負担を感じる方もいるでしょう。
失業保険を受給できない場合がある
副業で個人事業主として事業を行っていると、本業の勤務先を辞めた際に失業保険を受け取れなかったり、減額になったりする可能性があります。失業保険を受給するには失業状態であることが条件となりますが、副業で事業を継続している場合、「労働を続けている」と判断されるケースがあるためです。
プライベートの時間が減る
副業で個人事業主としてはたらく場合、本業以外の時間を使って事業に取り組むため、プライベートに使える時間が減ってしまいます。家族や友人との時間が制限されることにストレスを感じる方もいるでしょう。
会社員と個人事業主を両立するには、過労やストレスで体調を崩さないようスケジュール管理を徹底し、無理のないペースで取り組むことが大切です。
副業で個人事業主になるには
個人事業主として副業を行うには、次のステップで進めるとスムーズです。
- 勤務先の就業規則を確認する
- 開業に必要な届け出を行う
- 事業を開始する
それぞれのステップで取り組むべき内容を、以下で詳しく解説します。
1.勤務先の就業規則を確認する
副業を始めたいと思ったら、まず勤務先の就業規則をチェックするようにしてください。勤務先によっては、副業を全面的に禁止としているケースや、指定の条件を満たした場合にのみ許可されるケースがあるため、注意しなければなりません。
就業規則をチェックせずに副業を開始すると、発覚した際に解雇や減給などの罰則を受けるリスクがあります。副業を認めている企業でも、事前申請が求められる可能性があるため、自身の勤務先の副業に対する方針を把握しておくことが大切です。
また、副業が本業に悪影響を与えないよう心がけることも大切です。副業による疲労や時間の管理不足で本業に支障が出ると、会社から副業を制限されるかもしれません。副業を始める際には、本業の勤務先との信頼関係を崩さないよう注意しましょう。
2.開業に必要な届け出を行う
個人事業主になる場合は、開業届を提出しましょう。開業届は、個人で事業を開始したことを税務署に申告するための書類で、正式名称を「個人事業の開業・廃業等届出書」といいます。提出期限は開業後1ヶ月以内のため、事業を始める前に書類を準備しておくとスムーズに手続きが進められます。
確定申告で青色申告を選択したい方は、開業届と同時に青色申告承認申請書も提出しましょう。手間はかかるものの、青色申告を利用できるかどうかで納税額が変わるため、申請しておくのがおすすめです。
3.事業を開始する
必要な手続きを済ませたら、個人事業主として事業を開始します。副業として取り組む事業内容は自由に選べますが、自身のスキルや経験を活かせるものがおすすめです。得意分野であればスムーズに取り組めるうえ、事業としても成功しやすいでしょう。
特に、本業と関連性のある分野の副業は、本業にもプラスの影響を与えられる可能性があります。たとえば、本業で培った知識や経験を活かしたコンサルティング業務や、関連する業務の受託などです。副業に取り組むことで、新しいスキルや知見が得られ、本業でのパフォーマンス向上にもつながるでしょう。
まとめ
本記事では、副業で個人事業主になる方法やメリット、デメリットなどを詳しく紹介しました。
副業でも個人事業主になることは可能です。個人事業主になると、経費の計上ができたり、新たな挑戦ができたりといったメリットを享受できます。一方で、確定申告の手間やプライベート時間の減少といったデメリットも伴うため、メリットとデメリットを事前に把握したうえで決断することが大切です。
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