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はたらき方の多様化とは?具体的な制度例やメリット・デメリットを紹介
リモートワークやフレックスタイムでの勤務、副業や兼業など、はたらき方の多様化が進んでいます。日本では生産年齢人口が減少するなか、企業は多様なはたらき方を受け入れ、柔軟な手法で人材を確保していく必要が生じています。うまく活用すれば組織の活性化や人材流出の防止にもつながるため、前向きに検討したいテーマだといえるでしょう。個人にとっても、多様なはたらき方から自身の理想やプライベート事情に合ったものを選ぶことができれば、仕事に対する満足度が向上すると考えられます。加えて、たとえば時間を有効活用し副業・兼業に取り組めば、スキル向上や収入アップも期待できるでしょう。本記事では、はたらき方の多様化について、現状や背景、企業に導入されている具体的な制度例、企業と個人それぞれにもたらすメリット、デメリットなどをまとめて解説します。はたらき方の多様化にどう対応すべきか検討している経営者や企業担当者の方、自身にとっての理想的なはたらき方を模索している個人の方は、ぜひ参考にしてみてください。
地方副業とは?注目されている背景、個人や企業が取り組むメリットとデメリットを解説
政府が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表したことなどを受け、近年、副業を解禁する企業が増えてきています。また、それに伴い、副業に興味を持ち、実際に取り組む個人も増えてきましたそうしたなかで、近年注目を集めているのが「地方副業」です。地方副業は、地方に所在する企業などから案件を受け、副業として業務に取り組むことです。コロナ禍を経てリモートワークが普及したことなどにより、都市部に住みながら地方副業に取り組みたいと考える個人が増えてきました。本記事では、地方副業とは何か、注目される背景や個人と企業それぞれにとってのメリットやデメリットなども含めて解説します。地方副業に興味がある個人の方、副業解禁や副業人材の活用に興味がある企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
ソフトスキルとは?ハードスキルとの違いや代表的なスキルの例、高め方を解説
業務を円滑に進めるためには、専門的な知識をはじめとする「ハードスキル」だけでなく、業務の進め方や周囲とのコミュニケーションのとり方に関する「ソフトスキル」も不可欠です。しかし、客観的に評価しやすいハードスキルと比べ、ソフトスキルはどのように高めていけば良いのかわからないという方も多いでしょう。 本記事では、ソフトスキルの定義や特徴、ハードスキルとの違い、代表的なスキルの例などをまとめて解説します。ソフトスキルを高めたいと考えている個人の方、ソフトスキルを人事評価に取り入れたいと考えている企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。 ソフトスキルとは まず、ソフトスキルとは何かを以下3つのポイントで解説します。 ソフトスキルの定義 ソフトスキルの特徴 ハードスキルとの違い 順番に見ていきましょう。 ソフトスキルの定義 ソフトスキルとは、仕事を進行するうえで土台となる個人の行動や思考の特性を指す言葉です。具体的には、コミュニケーション力やリーダーシップ、適応力などを指します。 例えば、同じレベルの専門知識を有する人材であっても、周囲や取引先と適切なコミュニケーションをとりながら円滑に業務を進められる人もいれば、コミュニケーション不足によってトラブルを招きやすい人もいるでしょう。また、同じ指示を受けた場合に、自ら率先して道筋を示して周囲を引っ張る人もいれば、周囲のメンバーが動き出すのを待つ傾向にいる人もいるはずです。 このようなビジネスにおける行動・思考の特性をソフトスキルと呼びます。 ソフトスキルの特徴 ソフトスキルの特徴としては、以下の3点が挙げられます。 汎用性が高い 経験によって培われる 客観的な評価が難しい まず、コミュニケーション力やリーダーシップ、適応力などはほとんどすべてのビジネスパーソンに必要なスキルであると考えられ、後述する専門知識などの「ハードスキル」と比べて汎用性が高い傾向にあります。転職などの際には幅広い業界・職種で重宝されるスキルだといえるでしょう。 また、ソフトスキルは基本的に過去の人生経験によって培われます。書籍などで学んだとしても、自身の思考・行動の習慣として落とし込むのは簡単ではありません。 加えて、専門性の高さなどは資格の有無や実務経験などから測れますが、ソフトスキルは客観的な評価が難しい点も特徴です。数値化しにくい定性的なスキルであるため、採用面接などでソフトスキルを評価する際は、評価される側は伝え方、評価する側は質問の仕方を工夫する必要があります。 ハードスキルとの違い ハードスキルとは、教育や訓練によって獲得した技術や専門知識を指す言葉です。例えば、エンジニアのプログラミング能力や経理担当者の会計知識、法務担当者の法律知識などが挙げられます。 ハードスキルは実務を行ううえで必要な具体的な知識や技術であり、自主学習や社内研修、実務経験など、習得の方法はさまざまです。しかし、いずれも教育や訓練によって身につけている点が、経験のなかで培われていくソフトスキルとの大きな違いでしょう。 ソフトスキルとハードスキルはどちらか一方が重要というわけではなく、双方のスキルをバランスよく備えている人材が多くの職場で重宝されます。ソフトスキルだけでは実務の進行に困難が生じるでしょう。ハードスキルだけでも、周囲とのコミュニケーションなどに支障が生じるはずです。ソフトスキルとハードスキルをどちらも備えることで、周囲との信頼関係を構築しながら円滑に業務を遂行できるのです。 ソフトスキルがますます重要視される理由 時代を問わずビジネスに必要なソフトスキルですが、近年ますます重要度が増しているといわれています。ここでは、ソフトスキルの重要度が増している理由を解説します。 急激な時代の変化に左右されない 現代のビジネス環境は、変動性、不確実性、複雑性、曖昧性の高い「VUCAの時代」と言われています。 VUCAの時代では技術の変化が早いため、ハードスキルは常にアップデートし続ける必要があります。 対して、コミュニケーション力やリーダーシップ といったソフトスキルは、急激な時代の変化に左右されづらく、長期に渡って活用できます。そのため、変化の激しい時代において、ソフトスキルの重要性が高まっています。 AIに代替されづらい AI技術の進化により、多くのハードスキルがAIに代替され始めています。一方で、柔軟な思考や創造力、共感力といった人間ならではのソフトスキルは、AIには代替しづらいスキルです。例えば、顧客対応では、顧客の感情や微妙なニュアンスを読み取り、適切な対応をすることが求められます。 AIの技術革新が目覚ましい現代において、人間ならではのソフトスキルを磨く重要性が増していると言えます。 多様なはたらき方の普及 働き方改革により、リモートワークやフレックスタイム制度が普及し、多様なはたらき方が広まりました。この変化に適応するためには、自己管理能力や非対面でのコミュニケーション能力が重要です。例えば、リモートワークでは、オンライン会議やチャットツールを活用した情報収集や情報共有をする能力が求められます。 さまざまなはたらき方をする人たちと共に業務を進めるにあたり、ソフトスキルは重要度を増しています。 ソフトスキルの代表例10選 ここでは、代表的なソフトスキルとして以下の10項目をご紹介します。 コミュニケーション力 リーダーシップ 問題解決力 時間管理力 創造力 主体性 協調性 適応力 学習意欲の高さ 心の知能指数(EQ) 各ソフトスキルの内容や発揮される場面を見ていきましょう。 コミュニケーション力 コミュニケーション力とは、ビジネスの現場で業務を進めるにあたり、上司や同僚、関連部署、取引先と必要な意思疎通をしながら円滑に業務を進行する能力です。高度な専門性を有していても、周囲の意見や動きを無視して業務を進めてしまう人材では、企業として大きな役割を任せることは難しいでしょう。関係者との信頼関係を構築したうえで意見をすり合わせられるコミュニケーション力は、あらゆる職場で求められるものです。 リーダーシップ リーダーシップは、所属する組織の目標達成に向け、周囲のメンバーに方向性を示し、行動を促す能力です。リーダーシップには、全体像を正確に把握する能力や目標達成に向けて適切なビジョンを描く能力、意思決定の能力、関係者と友好な関係を築く能力、周囲のメンバーを励ます能力など、さまざまな要素が組み合わさっています。たとえ管理職でなくても、リーダーシップを発揮できる人材は、企業が成果を出すために欠かせない存在です。 問題解決力 問題解決力は、ビジネスの現状を分析することで目標達成に向けた課題や障害を特定し、その解決策を立案・実行する能力です。抽象的な課題を、いかに現場レベルの具体的なアクションに落とし込めるかが重要だといえるでしょう。問題の本質をとらえ、解決に導ける人材は高く評価されます。 時間管理力 時間管理力は、限られた業務時間のなかで業務の優先順位を整理し、期日を守りながら効率的に業務を進める能力です。どれだけ専門性が優れていても、全体で決められたスケジュールに遅延していては周囲のメンバーに迷惑がかかってしまいます。適切な時間管理力を備えていることは、組織の一員としてはたらくうえで重要な要素です。 創造力 創造力は、これまでにないアイデアやアプローチによって課題の解決やビジネスの成長につなげる能力です。すでに構築されたビジネスを運用・改善するだけでなく、新たな視点でイノベーションを生み出せる人材がいれば、企業の持続的な成長につながります。 主体性 主体性は、上司や同僚からの指示や確認を待つのではなく、自ら進んで行動を起こす能力です。組織の方向性と自身の担当業務を踏まえ、やるべきことを整理して実行できる人材であれば、安心して業務を任せられます。いわゆる「指示待ち」の人材ばかりの職場では、上司による管理コストが大きくなり、効率的な組織運営ができないでしょう。 協調性 協調性は、上司や同僚の行動や意見を尊重しながら、組織のために行動する能力を指します。自身の成果ばかりを追い求めたり、周囲の意見を無視してアクションを決定してしまったりするような人材がばかりでは、組織として継続的に成果を出すのは難しいでしょう。自身が所属する組織のメンバーと信頼関係を構築し、協力しながら業務を進められる人材が求められています。 適応力 適応力は、ビジネスを取り巻く環境が激しく変化する現代において、過去にとらわれることなく柔軟に解決策を模索し、対応する能力です。過去に構築されたビジネスのスキームが、現在の環境にも合っているとは限りません。企業として「時代遅れ」にならないためには、業界やマーケットの最新動向に興味を持ち、必要な改革を提案・実行できるような人材が必要です。 学習意欲の高さ 変化するビジネス環境のなかで企業として生き残っていくためには、常に新たな情報や知識、技術を取り入れる必要があります。所属する社員に対しても、過去に培った知見に満足することなく最新のテクノロジーやマーケットトレンドなどを常に把握しようとする「学習意欲」を求める企業は多いでしょう。自主的に最新の動向を把握し、業務に活かそうとする姿勢は、多くの企業で高く評価されます。 心の知能指数(EQ) 心の知能指数(EQ: Emotional Intelligence Quotient)は、他人や自身の感情を的確に把握し、業務に活かす能力です。具体的には、共感力や傾聴力、ストレス耐性、我慢強さなどが挙げられます。周囲のメンバーが抱えている不満を察知したり、自身の感情をコントロールしたりできれば、組織の業務が円滑に進むようコミュニケーションを図れます。特にリーダー的ポジションに就く場合に重視される能力だといえるでしょう。 ソフトスキルを高めるメリット ソフトスキルを高めることで個人だけでなく、組織全体のパフォーマンス向上にもつながります。 ここでは、ソフトスキルを高める具体的なメリットについて詳しく解説します。 生産性の向上が期待できる ソフトスキルを高めることで、職場のコミュニケーションが改善し、業務を効率的に進めることができます。例えば、明確な指示やフィードバックを行う能力が向上することで、誤解やミスの減少につながり生産性が向上します。 副業先や転職先など新たな環境でも活用できる ソフトスキルは、業界や職種を問わず活用できるスキルです。転職や副業といった新しい環境においても、ソフトスキルを活用することで環境に適応しやすくなります。 例えば、新しい職場での人間関係の構築や組織の風土への適応などを迅速に行うには、コミュニケーション能力や適応力が欠かせません。ソフトスキルは、自身のキャリアを広げることにも役立つスキルです。 プロジェクトマネジメントの質が向上する ソフトスキルは、プロジェクトマネジメントにも重要です。ソフトスキルが高いプロジェクトマネージャーは、チームの意見を尊重し、適切なフィードバックを行うことで、プロジェクトの成功率を高めることができます。 例えば、プロジェクトの進行状況を把握し、必要なサポートを提供することで、メンバーのモチベーションを維持するなど、プロジェクトを円滑に進めるためにソフトスキルが必要になります。 ソフトスキルを高める方法 経験によって培われることの多いソフトスキルですが、高めるためにはどうすればよいのでしょうか。ここでは、以下4つのステップをご紹介します。 自身が持つソフトスキルを理解する 上司や同僚にフィードバックをもらう ロールモデルを設定する 自己啓発と実践を繰り返す 順番に詳しく見ていきましょう。 自身が持つソフトスキルを理解する まず、自身がどのようなソフトスキルを持っているのか理解しましょう。自身が過去に実績を挙げた際やうまく成果が出せなかった際の行動を振り返り、本記事で紹介した代表的なソフトスキルの有無を確認してみてください。自信を持って強みだといえるものもあれば、十分に発揮できていなかったソフトスキルもあるはずです。 すでに備わっているものとそうでないものを理解したうえで、今後どのソフトスキルを高めていくべきか検討しましょう。 上司や同僚にフィードバックをもらう 自身での振り返りが済んだら、普段から業務で関わっている上司・同僚にフィードバックをもらいましょう。自分の行動が第三者にどのように見えているか確認できるはずです。自身の強みだと思っていたポイントがあまり評価されていなかったり、自身では見逃していた意外なソフトスキルが見えてきたりと、新たな発見があるはずです。 ロールモデルを設定する 現状を整理できたら、目標となるロールモデルを設定しましょう。職場などで成果を出している人物をロールモデルに設定し、行動や思考の特性を観察します。自身と同じような状況に置かれたとき、ロールモデルの人物がどのような行動をとっているのか、どのように周囲とコミュニケーションをとっているのかを観察し、発揮されているソフトスキルを洗い出します。 自己啓発と実践を繰り返す ロールモデルを観察し、自身が高めるべきソフトスキルが定まったら、読書やセミナー参加などの自己啓発を通して学び、実践します。ただし、前述の通りソフトスキルは知識として獲得しただけで身につくものではありません。学習した内容やロールモデルの行動を参考に、日々の自身の行動・思考を見直してみましょう。時間はかかるかもしれませんが、着実にソフトスキルが磨かれていくはずです。 まとめ 本記事では、ソフトスキルの定義や特徴、ハードスキルとの違い、代表的なスキルの例などをまとめて解説しました。 客観的に評価をしやすいハードスキルと異なり、定性的な能力であるソフトスキルは人材評価において軽視される場合もあります。しかし、組織が継続的に成果を出すためにはソフトスキル・ハードスキルの双方をバランスよく備えた人材が必要です。ソフトスキルは、企業・個人の双方にとってきわめて重要な要素だといえるでしょう。 近年、はたらき方の一つとして「副業」に注目が集まっていますが、副業を行う際も、今回紹介したソフトスキルはさまざまな場面で活かされます。必要に応じてソフトスキルを高めながら、より自分に合ったはたらき方を検討してみてはいかがでしょうか。 ▼関連記事 働き方改革とは?目的や具体的な変更点、生じる変化をわかりやすく解説 ビジネスアジリティとは?変化の早いVUCA時代に求められる背景 ITの特異点「シンギュラリティ」とは?意味やいつ起こるのか解説 メタ認知能力とは?重要性と高める方法、注意点について解説
複業とは?副業との違いや増加する背景、メリット・デメリットを解説
政府による働き方改革の推進によって副業に取り組む方が増えるなか、近年注目されているのが「複業」というはたらき方です。本業以外の仕事を行う「副業」とは異なり、本業を同時に複数持つ「複業」は、よりよいキャリアの形成や自分に合ったはたらき方の実現につながりやすくなります。 本記事では、複業の定義や副業との違いに加え、複業人口が増加する背景、複業に取り組むメリット・デメリットを解説します。本業以外の仕事を通じてスキルアップや収入アップを実現したいと考えている人は、ぜひ参考にしてみてください。 複業と副業の違い まずは複業と副業について、それぞれの定義やはたらき方を見ていきましょう。 複業とは 複業とは、端的にいえば「複数の本業を持つはたらき方」です。自身の経験や専門性を活かしながら、複数の業務を引き受け遂行します。特定の企業に在籍しながら他社の仕事を引き受けたり、特定の企業には所属することなく、フリーランスとして複数の取引先から仕事を引き受けたりといったさまざまなはたらき方が可能です。 引き受ける仕事はすべて本業であるため、専門性やプロ意識、コミットメントが求められます。もちろん従来の「副業」なら手を抜いてよいというわけではありません。それでも、複業として引き受ける仕事は、一つひとつを「本業」として扱い、成果を出すことが求められるといえるでしょう。また、複数の仕事を同時にスケジュール管理しながら進めていく必要があるため、より高い自己管理能力が必要になります。 副業とは 一方、従来の「副業」はあくまで本業に対するプラスアルファとして引き受ける仕事を指します。本業の活動時間を最優先に確保したうえで、空いた時間を活用して取り組むものだといえるでしょう。業務内容は、簡単な作業から一定の専門知識やスキルが求められるものまで業務内容はさまざまです。 前述の通り、副業だからといって手を抜いてよいわけではなく、取引先が求める基準を満たす必要があります。ただし、「複業」として取り組む業務に比べると求められる成果、時間や労力の基準は一般的に低い傾向にあるといえます。 複業人口が増加する背景 現代社会では、雇用形態やはたらき方の多様化が進んでいます。業務委託契約を結び複数の企業から案件を受注したり、正社員として企業に勤めながら別の企業の依頼を引き受けたりといったはたらき方が、今後も増えていくでしょう。 ここでは、近年複業人口が増加している背景として、以下の3点を解説します。 政府による働き方改革の推進 リモートワークの普及 企業による人材活用の多様化 順番に見ていきましょう。 政府による働き方改革の推進 まず挙げられるのが、政府による働き方改革の推進です。 少子高齢化によって生産年齢人口が減少するなか、日本経済や日本企業が成長を続けるためには、個人が今以上に能力を発揮できる社会にしていく必要があります。そのため、政府は働き方改革を通じて「多様な働き方を選択できる社会を実現し、働く方一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすること」を目指しています。 出典:「働き方改革」の実現に向けて(厚生労働省) 企業による副業解禁が進むなど、個人がスキルや経験を存分に発揮できる環境が整ってきたことで、複業というはたらき方も広がりつつあるといえます。 リモートワークの普及 新型コロナ感染症の拡大により、リモートワークの普及が複業人口の増加につながっていると考えられます。複数の本業を持つ場合、それぞれのオフィスに出社しながら業務を行うのは簡単ではありません。勤務日程をうまく調整できればよいですが、同じ日に複数のオフィスに出社する必要がある場合、移動にかかる時間が長くなってしまいます。 リモートワークが普及したことで、遠隔でも電話やメール、チャットツール、Web会議ツールなどを活用してはたらくことが可能になりました。リモートワークの場合、移動時間を気にすることなくスケジュールを組めるため、これまでに比べ複業を実現しやすい環境になったといえるでしょう。 近年では、政府が推進する「地方創生」の一環として、地方企業が首都圏に居住する人材に業務を委託するといった動きも加速しています。人手が不足する地方企業にとって、リモートワークを活用した人材活用は重要な選択肢の一つとなっています。 企業による人材活用の多様化 複業や副業に取り組む個人が増えるなか、企業の人材活用方法を多様化しています。仕事の機会が増えることで、複業人口の増加がますます加速しているといえるでしょう。 パーソルキャリア株式会社が運営する、プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」が実施した調査によると、2022年度(2022年4月〜2023年3月)に副業人材の活用を開始した企業は、前年度比123%と大きく増加していたことがわかりました。また、すでに副業人材を活用している企業のなかでも、活用人数が増えている割合は62.8%にのぼっています。 出典:副業人材の活用が企業に与える影響を調査(パーソルキャリア株式会社) 副業と複業は異なるものの、各業界で人手不足が深刻化するなか、正社員採用にこだわらず柔軟に人材を確保する企業は今後も増えていくでしょう。企業による人材活用の多様化は、複業人口の増加をさらに加速させるはずです。 複業に取り組む4つのメリット 個人が複業に取り組めば、以下のようなメリットが得られます。 スキルアップにつながる 収入が増える リスクヘッジになる はたらき方の自由度が増す 順番に見ていきましょう。 スキルアップにつながる 複数の本業に取り組むことでより多くの経験が積めるため、スキルアップにつながりやすいでしょう。 一つの企業に長く勤め続けることで、仕事での視野が狭まることがあります。また、同じような業務を長く担当している場合、新たな学びを得られる経験も減ってしまいます。しかし、複業によって新たな仕事先を見つけることで、自身の視野や経験の幅が必然的に広がっていくでしょう。 また、プロフェッショナル人材としての活躍が期待される案件なら、従来の業務と比べてより大きな役割を任せてもらえる可能性があります。例えば、経営者に近い視点で業務に取り組む経験ができれば、従来の業務にもポジティブな影響をもたらしてくれるはずです。 収入が増える 現在の仕事に加え、本業として新たな仕事に取り組むことで、収入を増やせる可能性が高まります。 「複業」として求められる水準の高い仕事にチャレンジすれば、ある程度まとまった収入を得ることができるでしょう。「副業」として募集されている仕事のなかには、専門的な知識や経験が必要ないため、報酬が低く設定されたものもあります。「複業」では、本業として業務に取り組むため、ハードルは低くないものの、報酬水準は一般的に高い傾向にあると考えられます。 また、複業を続けるなかで「別の業務で培った経験や知識が高く評価される」といった機会も増えるでしょう。本業を複数持つことで、それぞれの業務が相乗効果を生み出し、収入アップにつながることも期待できます。 リスクヘッジになる 複数の本業を持つ「複業」というはたらき方を選べば、一つの勤務先に依存することがなくなります。終身雇用に対する企業の姿勢が変化しつつあるなか、自身のキャリアを安定させるうえで重要な意味を持つでしょう。一社の経営環境が悪化し、仕事の継続が難しくなった場合でも、その他の仕事先の業務を増やすといった調整が可能です。また、複数の本業を持つことで人脈形成の機会が広がり、新たな仕事を紹介してもらえる可能性も高まります。 はたらき方の自由度が増す 複業に取り組むことで、結果的にはたらき方の自由度が増す傾向にある点もメリットといえるでしょう。複数の企業ではたらくためには、ワークライフバランスを考える必要があります。業務に費やせる時間や労力が限られているなか、複数の案件を行いながら最適なバランスを追求する必要があるからです。その結果、固定観念にとらわれることなく自由なはたらき方を選択できる可能性が高まります。 複業に取り組む2つのデメリット 一方、複業に取り組むうえでは以下のようなデメリットも理解しておく必要があります。 自己管理能力が求められる プロフェッショナルとしての活躍が期待される こちらも順番に見ていきましょう。 自己管理能力が求められる 複数の本業を同時並行で進める必要があるため、高い自己管理能力が求められます。多少のトラブルがあっても進行に支障が出ないよう、それぞれ余裕を持って進める必要があります。特にリモートで案件に取り組む場合は、上司や同僚のように同じ空間で業務に取り組む仲間がいません。進捗やスケジュールの管理は自分次第であるため、効率や優先順位を常に意識して業務に取り組む必要があります。 プロフェッショナルとしての活躍が期待される 複業に取り組む場合、すべての仕事が本業として扱われるため、高い専門性やコミットメントが必要となります。副業のなかには専門知識がなくても行える業務もありますが、複業では基本的にプロフェッショナルとして成果を出すことが求められます。 片手間のような感覚で臨むと、依頼元からの要求にうまく応えられないケースも出てくるでしょう。過去に培った知識や経験が活かせる案件を選び、適切にコミットメントしていくことが大切です。 まとめ 本記事では、複業の定義や副業との違いに加え、複業人口が増加する背景、複業に取り組むメリット・デメリットを解説しました。 政府による働き方改革の推進やリモートワークの普及、企業による人材活用の多様化などにより、複業に取り組む人は今後も増えていくでしょう。スキルアップや収入アップ、キャリアの安定性向上など、さまざまなメリットがある複業ですが、自身の経験や知識を活かせる案件選びが重要になります。 パーソルキャリア株式会社が運営する、プロフェッショナル人材の総合活用支援ブランド「HiPro(ハイプロ)」では、副業・兼業案件から経営領域の高度な案件まで、自分のスキルにあったプロジェクトを探せます。自身の専門性を活かし、新たなはたらき方を検討したいという人はぜひチェックしてみてください。
リモートワークとは?テレワークや在宅勤務との違い、メリット・デメリットを解説
オフィス以外の場所で勤務する「リモートワーク」は、新型コロナ感染症の拡大以降、急速に浸透しました。これまでオフィスでの勤務が当たり前だと考えていた企業や従業員にとって、はたらき方を見直すよい機会になったはずです。 リモートワークのメリットとデメリットを正しく理解することで、より効率的かつ満足度の高いはたらき方がしやすくなります。本記事では、リモートワークの定義やテレワーク、在宅勤務との違い、リモートワークのメリットとデメリットについて解説します。リモートワークの導入や浸透を進めたい企業担当者の方、リモートワークを活用してよりよいはたらき方を見つけたい個人の方は、ぜひ参考にしてみてください。 リモートワークとは?テレワークや在宅勤務との違い まず、リモートワークとは何かについて、以下3つのポイントで見ていきましょう。 リモートワークとは? テレワークとの違い 在宅勤務との違い リモートワークとは? リモートワークとは、英語の「remote(遠く離れて)」と「work(仕事)」からできた言葉で、オフィスに出社することなく自宅やカフェ、コワーキングスペースといった会社から離れた場所から仕事をするはたらき方です。 通信回線の高速化や、メール、チャットツール、Web会議ツールといったコミュニケーションツールの進化や普及により、近年ではオフィスに出社しなくても業務を行える環境が整うようになりました。そして、新型コロナ感染症の対策としてもオフィスに出社することなく仕事を進められる点が注目され、はたらき方の一つとして広く浸透しました。 テレワークとの違い リモートワークと似た言葉に「テレワーク」があります。リモートワークには明確な定義がありません。一方、テレワークは厚生労働省、総務省のサイトで以下のように定義しています。 「情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)を活用した時間や場所を有効に活用できる柔軟な働き方」のこと。Tele(離れて)とWork(仕事)を組み合わせた造語です。 出典:テレワークについて(厚生労働省、総務省) リモートワークとテレワークは言葉の意味に大きな違いはないものの、政府や地方自治体は用語として「テレワーク」を使う場合が多いと考えればよいでしょう。 在宅勤務との違い そのほかにリモートワークと似た意味で使われる言葉として、「在宅勤務」があります。在宅勤務は、その名の通り自宅にいながら業務にあたることを指します。リモートワークは自宅も含めた「オフィス以外の場所」での業務を指すため、在宅勤務はリモートワークの一種だといえるでしょう。 リモートワークの種類 ここでは、前述の在宅勤務を含めたリモートワークの種類について、以下の4つを見ていきましょう。 在宅勤務 サテライトオフィス勤務 モバイル勤務 ワーケーション 在宅勤務 在宅勤務は、前述の通り自宅にいながら業務を行うはたらき方です。勤務時間中は基本的に自宅にいることが求められ、電話やメールのほか、勤務先から支給されたパソコンを用いて業務システムなどにアクセスし、オフィスでの仕事と同様のはたらき方をするのが一般的です。 インターネット回線の普及が進み、自宅でも業務に支障がない程度の通信環境が整ったことも在宅勤務の浸透につながったと考えられます。育児や介護などでオフィスへの出社が難しい方でも自宅にいながら業務を行えるため、在宅勤務の浸透ははたらき方の多様化につながっているといえるでしょう。 サテライトオフィス勤務 サテライトオフィス勤務は、本来のオフィスから離れた場所に設けられたオフィスに勤務し、業務を行う勤務形態です。 オフィスへの通勤が大きな負担となっている社員などに対し、通勤の負担を軽減する策として導入されています。企業が指定するサテライトオフィスのほか、一般のコワーキングスペースでの就業を可能とするケースもあります。コワーキングスペースの利用であれば、企業にとって大きなコスト負担がなく、社員にとっても自身の都合に合わせて場所を選べるため、比較的導入しやすい制度だといえるでしょう。 モバイル勤務 モバイル勤務は、ノートパソコンやスマートフォンなどの端末を使って移動中や移動先で業務を行う勤務形態です。飛行機や新幹線といった交通機関のほか、取引先、カフェ、ホテルなどで仕事を行います。 例えば、営業先を訪問したあとに少しの業務のためにオフィスに戻るのは効率的とはいえないでしょう。カフェなどでの業務が所属組織で許可されていれば、移動にかかる時間や費用を無駄にすることなく業務を行えます。 ワーケーション ワーケーションは「ワーク(work:仕事)」と「バケーション(vacation:休暇)」を組み合わせた言葉で、仕事と休暇を兼ねた過ごし方を指します。休暇でリゾート地などを訪問しながら、滞在中の数日間を業務に充てるといったはたらき方です。 企業ではたらいていると、業務スケジュールの都合上まとまった休暇を取るのが難しいというケースは少なくないでしょう。ワーケーションであれば、休暇を取りながら急ぎの要件だけを対応するといったはたらき方が可能です。 ただし、オンとオフを切り替える難しさや管理者にとっての勤務状況の見えにくさといったデメリットもあります。 企業がリモートワークを導入するメリット・デメリット ここからは、企業がリモートワークを導入するメリットとデメリットをそれぞれ見ていきましょう。 企業がリモートワークを導入するメリット 企業がリモートワークを導入するメリットとしては、以下の4点が挙げられます。 生産性が向上する 従業員満足度が向上する 人材確保がしやすくなる オフィスのコストを抑えられる 順番に見ていきましょう。 ・生産性が向上する リモートワークを導入することで、対面での会議などの必要性を改めて見直すきっかけになったり、従業員が自身の作業に集中しやすくなったりするため、生産性の向上が期待できます。 週次や月次の会議など、過去の慣習によって続けているものもあるでしょう。リモートワークの導入によって改めて会議の必要性を見直し、組織全体としてより効率的なはたらき方の発見につながるケースが少なくありません。 ・従業員満足度が向上する リモートワークであれば通勤にかかる時間や身体的な負担が減り、従業員のはたらきやすさが改善されるため、従業員満足度の向上も期待できます。満員電車での往復に疲弊している従業員にとっては、週に一日でも通勤のない日ができれば勤務に対するストレスが軽減されるでしょう。往復にかかる時間はプライベートに費やせるため、ワークライフバランスも整いやすくなります。 ・人材確保がしやすくなる 全日リモートワーク可能にしたり、出社回数を月に一度などきわめて少なくしたりすることで、人材採用における地理的な制限が緩和されるというメリットもあります。 少子高齢化によって生産年齢人口が減少するなか、各業界が人手不足に陥っています。オフィス近隣で募集をかけても十分な人材が集まらない場合、リモートワークの導入によって居住地の制限が緩和され、人材の確保がしやすくなる可能性があります。 ・オフィスのコストを抑えられる リモートワークを導入すればオフィスに勤務する社員の数が減るため、オフィスの規模を縮小し、家賃や電気代を抑えることが可能になります。借りているビルのフロア数を減らしたり、より小さな規模のオフィスに引っ越したりすれば、毎月の固定費を削減できるでしょう。 企業がリモートワークを導入するデメリット 一方、リモートワークを導入することで企業には以下のようなデメリットも生じます。 社員の管理、評価が難しい 社内のコミュニケーションが減る 情報漏洩のリスクがある こちらも順番に見ていきましょう ・社員の管理、評価が難しい リモートワークでは、自宅やカフェ、サテライトオフィスなど離れた場所で業務にあたるため、上司は部下がはたらく様子を直接確認できません。業務の成果だけを見て管理や評価をする必要があるため、同じ空間ではたらきながら部下を指導してきた方は難しさを感じるでしょう。遠隔での業務に対応した勤怠システムやタスク管理ツールを導入するなど、管理方法に工夫が求められます。 ・社内のコミュニケーションが減る リモートワークの利用が増えるとオフィスで顔を合わせる機会が減るため、同僚同士や上司や部下との間のコミュニケーションが必然的に少なくなります。社員同士の関係構築がうまくいかず、業務上のミスコミュニケーションにつながる可能性もあるでしょう。社員によっては、従来のはたらき方と比べて疎外感をおぼえるかもしれません。チャットツールやWeb会議ツールなどを活用し、適切なコミュニケーションを維持することが大切です。 ・情報漏洩のリスクがある リモートワークでは、会社で使用しているノートパソコンや資料を社外に持ち出す必要があるため、情報漏洩のリスクが高まります。訪問先に端末や資料を置き忘れたり、使用したネットワーク回線からパソコンがウイルスに感染したりする可能性があります。 社内の資料や情報が外部に持ち出されることのないようルールを徹底したり、外部のネットワークを使用できないよう設定したりといったセキュリティ対策が欠かせません。 従業員がリモートワークを活用するメリット・デメリット リモートワークの導入は、企業だけでなく従業員にとってもさまざまなメリットとデメリットがあります。 従業員がリモートワークを活用するメリット 従業員がリモートワークを活用すれば、以下のようなメリットを享受できます。 通勤の負担が減る 可処分時間が増える 副業がしやすい ・通勤の負担が減る リモートワークであれば、通勤によって生じる身体的な負担やストレスが軽減されます。満員電車での往復だけでも疲労を感じるという方は少なくないでしょう。通勤の負担が減れば、そのぶん業務に集中しやすくなったり、はたらくこと自体へのストレスが軽減されたりといった効果が期待できます。 ・可処分時間が増える リモートワークを活用すれば、通勤時間が減ることで自由に使える時間(=可処分時間)が増えます。往復にかかっている時間がそのまま使えるため、日々の充実度が高まるでしょう。家族の団らんや趣味に充てるのはもちろん、副業に取り組むことも可能です。 また、育児や介護のため従来であればキャリアを諦めていたというケースでも、リモートワークというはたらき方を選択することで勤務を継続できる可能性があります。通勤にかかる時間が不要なため、プライベートにより多くの時間を割きながらキャリアを維持することも可能でしょう。 ・副業がしやすい 自宅に仕事をする環境が整っており、かつ本業の許可があれば、リモートワークで対応可能な副業も始められます。個人所有のパソコンや通信回線は必要になるものの、外出することなく対応できる業務であれば、本業の業務後など空いた時間を有効活用できるでしょう。 自身の経験や知識を活かして副業に取り組めば、さらなるスキルアップにつながり、本業にもポジティブな影響をもたらす可能性があります。 従業員がリモートワークを活用するデメリット 一方、従業員がリモートワークを活用することには、以下のようなデメリットもあります。 自己管理が難しい 他人とのコミュニケーションが減る ・自己管理が難しい リモートワークでは上司や同僚が周囲にいないため、自身でスケジュールや進捗を管理する必要があります。優先順位を考え、各タスクを効率よくこなしていくことが求められます。 また、オンとオフの切り替えが難しいと感じる方も多いでしょう。特に、これまでリラックスする場所だった自宅ではたらく場合、業務に集中できず普段より効率が悪くなるかもしれません。ワーケーションとしてリゾート地などで業務を行う場合も、業務に充てる時間を事前に決めておかないとメリハリのあるはたらき方は難しくなります。 ・他人とのコミュニケーションが減る リモートワークでは自身の業務に集中しやすい反面、同僚や上司との日常会話が減り、孤独感に感じる場合があります。自身の業務が評価されているのか分からず、やりがいを感じられないケースも出てくるかもしれません。チャットツールやWeb会議ツールをうまく活用し、必要なコミュニケーションを取りながら業務を進めていくのがよいでしょう。 まとめ 本記事では、リモートワークの定義やテレワーク、在宅勤務との違い、リモートワークのメリットとデメリットについて解説しました。新型コロナ感染症の拡大をきっかけに浸透したリモートワークは、はたらき方の一つとして企業や従業員の双方にとって重要な選択肢となっています。 はたらき方が多様化するなか、リモートワークで自宅から副業・兼業に取り組む人も増えてきました。パーソルキャリア株式会社が運営するHiPro Directでは、90%以上がリモート案件(2023年5月18日時点)となっています。自宅にいながら自身のスキルや経験を活かし、キャリアアップにつなげたいという方はぜひチェックしてみてください。
働き方改革とは?目的や具体的な変更点、生じる変化をわかりやすく解説
政府が進める「働き方改革」では、長時間労働の抑制や待遇格差の解消などを目指し、様々な法改正が2019年から順次施行されています。働き方改革の推進により、企業や社員に変化がもたらされることから、法律の変更点や必要な対応を把握しておくことが大切です。 本記事では、働き方改革の概要や目的に加え、具体的な法改正の内容、社員や企業それぞれに生じる変化などをまとめて解説します。働き方改革への対応を検討している企業担当者の方、働き方改革による変化をうまく活用したい会社員の方は、ぜひ参考にしてみてください。 働き方改革とは? ここでは、働き方改革を推進する目的と具体的な内容を見ていきましょう。 働き方改革を推進する目的 政府が働き方改革を推進する目的は、「一億総活躍社会の実現」です。一億総活躍社会とは、一人ひとりが個性と多様性を尊重され、それぞれの能力を発揮し、生きがいを感じることのできる社会を指します。 政府が働き方改革を推進する背景としては、生産年齢人口の減少やはたらき方に対するニーズの多様化などが挙げられます。生産年齢人口とは、国全体の労働力を支える15歳以上65歳未満の人口を指す用語です。少子高齢化によって日本の生産年齢人口は1995年の8,716万人がピークとなっており、以降は減少に転じています。推計では2030年に6,875万人、2065年には4,529万人まで減少するとされており、今後も日本経済・日本企業にとって労働力不足が大きな課題となるでしょう。 参考:令和4年版高齢社会白書(全体版)(内閣府) 生産年齢人口が減少するなかでも、経済を維持し、発展させるためには就業機会の拡大や多様なはたらき方の実現を促す必要があります。労働力不足といっても、育児や介護などの理由ではたらけない人々や、副業などの機会に恵まれずに能力を十分に発揮できていない人々が一定数存在します。長時間労働によって非効率なはたらき方を強いられている人々も存在するかもしれません。 就業環境を整備し、適切な機会さえ提供できれば、労働力の底上げは可能と考えられています。また、共働き家庭が増えたことなどから、より自由度の高いはたらき方を求める人々も増えています。 長時間労働などの不適切な就業環境を是正し、個人の事情や能力に合わせたはたらき方を選べる社会にするため、働き方改革が推進されているのです。 働き方改革の内容 働き方改革を推進するうえでのポイントとして、厚生労働省は次の2点を挙げています。 労働時間の見直し 待遇格差の解消 上記2点について、順番に解説します。 労働時間の見直し 働きすぎを防ぎ、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現するために、労働時間の見直しが進められました。具体的には、労働基準法の改正により、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から時間外労働の上限規制が設けられました。その結果、労使間の合意がある場合でも「時間外労働は年間720時間以内」「時間外労働と休日労働の合計は月に100時間未満」などの条件を守る必要が生じています。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。 時間外労働の上限について、改正前は労使間の合意があれば上限を超えて時間外労働を行わせることが可能でした。長時間労働が常態化している職場では、育児や介護との両立が難しいなどのほか、社員が心身に不調をきたす可能性もあるでしょう。法律によって時間外労働の上限を明確に設けることで、多くの人にとってはたらきやすい環境の整備が進んだといえます。 また、時間外労働の上限規制以外にも、ワークライフバランスの適正化や多様なはたらき方の実現に向けて「年次有給休暇取得の義務づけ」「フレックスタイム制の制度拡充」といった見直しも行われています。 待遇格差の解消 どのような雇用形態を選択しても納得してはたらき続けられるよう、待遇格差の解消も進められています。職務内容や責任範囲などが同じであるにもかかわらず、雇用形態によって給与や福利厚生に差が出るケースは少なくありません。不合理な待遇格差を解消し、個人の事情に合わせた雇用形態を柔軟に選べる環境を作ることも働き方改革の重要な取り組みです。 具体的には、「不合理な待遇格差」の該当例を明記した「同一労働同一賃金ガイドライン」が提示されました。このガイドラインに則り、雇用形態のみを理由とした待遇差が生じないよう社内規定を整備することが企業には求められます。 そのほか、「パートタイム・有期雇用労働法」が2020年4月(中小企業への適用は2021年4月から)に施行されました。同法は、パートタイム労働者やその他の有期雇用労働者が能力を有効に発揮できる雇用環境の整備に加え、はたらきや貢献に応じた公正な待遇の提供を目指しています。 参考:働き方改革 〜 一億総活躍社会の実現に向けて 〜(厚生労働省) 働き方改革関連法による変更点 働き方改革の推進にあたり、労働基準法や雇用対策法、労働安全衛生法など複数の法律が改正されています。この改正を総称して「働き方改革関連法」と呼びます。 ここでは主な変更点として以下のポイントを解説します。 残業などの時間外労働の規制 フレックスタイム制の拡充 年次有給休暇の確実な取得 高度プロフェッショナル制度の創設 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ 労働条件の明示の方法 過半数代表者の選任 勤務間インターバル制度の導入 産業医・産業保健機能の強化 順番に詳しく見ていきましょう。 残業など時間外労働の規制 労働基準法では、法改正以前から労働時間について上限が定められていました。しかし、労使間で合意があれば時間外労働が可能だったのです。時間外労働について上限はあったものの、違反をした場合でも行政指導が行われるのみでした。 働き方改革関連法(改正労働基準法)では、時間外労働の上限に加え、違反した場合の罰則・罰金についても規定されました。時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間とされ、特別の事情によって労使間の合意がある場合でも以下の上限を超えてはならないとされています。 年間720時間 休日労働を含め、複数月の平均がすべて月80時間 休日労働を含め、月100時間未満 また、時間外労働が月45時間を超えられるのは年間6ヶ月までです。前述の通り、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。時間外労働に対する明確な基準が設けられたことで、多くの職場で長時間労働が見直されるきっかけになりました。 フレックスタイム制の拡充 フレックスタイム制とは、一定期間内の労働時間をあらかじめ定めておき、それを満たす範囲内で社員が勤務時間を自由に選べる制度です。例えば、「今日は2時間早く退社し、明日は2時間分残業する」といったはたらき方が可能になります。フレックスタイム制によって調整できる期間が従来は1ヶ月であったところ、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって3ヶ月まで拡大されました。 フレックスタイム制を使えば、「育児や介護ではたらけない場合でも、ほかの勤務日で調整する」といったように、個人の事情に合わせて柔軟に勤務時間を調整できます。毎日決まった時間に勤務するのが難しい方でも、キャリアを諦めることなくはたらき続けられるでしょう。 従来は1ヶ月のなかで調整が必要だったなか、期間が3ヶ月に拡大されたことで、「子どもの夏休みに合わせて8月は労働時間を短くし、前後の月で調整する」といったように複数月にまたがる勤務スケジュールの調整が可能になりました。 年次有給休暇の確実な取得 年次有給休暇は、原則として社員の希望に基づいて任意の時期に取得できるものです。しかし、労働者自らが申し出る必要があることから、取得しづらいと感じる人が多いという問題がありました。その結果、日本における年休取得率は49.4%に留まっていたのです。 出典:働き方改革 〜 一億総活躍社会の実現に向けて 〜(厚生労働省) 、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、年5日の年次有給休暇の取得が企業に義務づけられました。使用者が労働者の希望を聞いたうえで取得の日程を指定し、年5日は年次有給休暇を取得させます。年次有給休暇取得の権利を持ちながら周囲に遠慮していた人も、企業の義務となったことで年5日は確実に取得できるようになりました。 高度プロフェッショナル制度の創設 働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、高度プロフェッショナル制度が創設されました。高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識をもとに高い収入を得る人々を対象とし、メリハリのあるはたらき方を可能にするための制度です。業務に従事する時間に関し、使用者から具体的な指示を受けて行うものではない業務を想定しており、具体例として金融商品の開発業務・ディーリング業務やアナリスト・コンサルタントの業務、研究開発業務などが挙げられています。また、年収は「基準年間平均給与額の3倍の額」を「相当程度上回る水準」以上とされており、具体的な想定年収額は1,075万円です。 高度プロフェッショナル制度には、年間104日以上かつ4週4日以上の休日確保が義務づけられるなど、長時間労働を防止する仕組みが設けられています。制度の対象者は限定的であるものの、高い専門性を持つ人材がより自由度の高いはたらき方を実現できる制度として重要な意味を持つといえます。 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ 月60時間を超える残業について、中小企業の割増賃金率は25%でしたが、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、大企業と同じ50%に引き上げられました。 月60時間以下の時間外労働であれば、中小企業・大企業ともに割増賃金率は25%です。しかし、月60時間を超えた分については中小企業が25%、大企業が50%と差がありました。改正によって中小企業の割増賃金率が50%に引き上げられたことで、月60時間を超える労働が常態化していた企業には大きな影響が出たと考えられます。長時間労働を見直すきっかけになったことでしょう。 中小企業で月60時間を超える時間外労働が発生していた人にとっては、割増賃金の増加または時間外労働の削減につながったはずです。 労働条件の明示の方法 働き方改革関連法(改正労働基準法)では、労働条件の明示方法が追加となりました。労働者が希望すれば、ファクシミリや電子メールなどによる労働条件の明示が可能となっています。 また、2024年4月からは労働条件明示のルールも変更になります。明示すべき事項が追加されるため、企業は提示する労働条件に漏れがないか確認が必要です。 具体的には、すべての労働者に対して就業場所や業務の変更範囲の明示が求められます。また、有期契約労働者に対しては更新上限・無期転換申込機会・無期転換後の労働条件を明示する必要があります。 参考:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省) 過半数代表者の選任 過半数代表者とは、労働者側の代表となる社員のことです。過半数代表者を選任する際、使用者側の意向が反映された人選になってしまえば、公平な労使交渉ができません。働き方改革関連法(改正労働基準法)では、「管理監督者でないこと」など選任時に留意すべきポイントが明確化されました。企業側が指名したり、自動的に選出される仕組みを採用したりするのは不適切とされています。 また、過半数代表者が必要な業務を円滑に遂行できるよう、企業側には事務スペースや事務機器の提供といった対応が求められます。 勤務間インターバル制度の導入 働き方改革関連法(労働時間等設定改善法の改正)により、勤務間インターバル制度の採用が努力義務となりました。勤務間インターバル制度とは、前日の勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上空けることを求める制度です。例えば、休息時間を11時間とした場合、前日23時まで残業した社員は翌日の勤務開始時間を10時以降としなければなりません。 労働時間等設定改善法の改正では、取引先に対して極端に短い納期の設定や注文内容の頻繁な変更などを行わないよう配慮に努めることも定められました。自社だけでなく取引先の労働時間に対しても配慮が求められています。 産業医・産業保健機能の強化 働き方改革関連法(改正労働安全衛生法)により、産業医・産業保健機能の強化がされました。具体的には、産業医の活動環境の整備や健康相談の体制整備、健康情報の適切な取り扱いといった項目が盛り込まれ、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないよう、健康管理の制度が強化されています。 労働安全衛生法の改正ではほかにも、労働時間の把握や労働時間に関する情報の通知、面接指導の対象となる要件などの観点で労働者の健康管理が強化されています。 働き方改革によって生じる変化 働き方改革の推進は、社員と企業の双方にさまざまな変化をもたらします。ここでは、社員側、企業側に生じる変化についてそれぞれ解説します。 社員側に生じる変化 働き方改革によって、長時間労働の抑制やフレックスタイム制の導入など社員にとってはたらきやすい環境が整いつつあります。育児や介護が必要な人でもスケジュールを調整しながら仕事を続けることができたり、長時間労働に悩まされていた人がプライベートの時間を確保できるようになったりするなど、ワークライフバランスの適正化が進むでしょう。 また、政府は働き方改革に関連して副業や兼業の後押しもしており、企業による副業解禁が進んでいます。社員にとって副業に挑戦しやすい環境が整ってきており、自身のスキルや経験を活かしながら新たな収入源を確保できたり、スキルアップが叶ったりする可能性があります。リモートワークの浸透により自宅で取り組める副業案件も多いため、本業を続けるなかでも空いた時間をうまく活用することも可能でしょう。副業でのスキルアップは本業にポジティブな影響をもたらすこともあります。 HiPro Directでは本業の経験を活かせる副業案件を多数取り扱っており、90%以上がリモート案件です(2023年5月18日時点)。働き方改革によって時間ができ、副業を検討したい人は、ぜひ案件をチェックしてみてください。 企業側に生じる変化 働き方改革によって様々な法律が改正され、企業では自社の労働環境を見直す必要が生じています。例えば、時間外労働の多い職場では業務フローや人員配置を見直すなど、長時間労働を防ぐ取り組みが求められます。 もし、残業や休日出勤を削減する取り組みを行った場合、現在の人員だけでは予定通りに業務を遂行できないケースも出てくるでしょう。長時間労働を前提とした事業体制では、法的な規制の遵守が困難となるため、新たな対策を検討する必要があります。 自社の社員だけでは既存の業務をまかないきれない場合は、社外のプロフェッショナル人材を活用したりフリーランス人材に業務を委託したりするなど、柔軟な人材活用が求められます。 企業による働き方改革の取り組み事例 最後に、自主的に働き方改革に取り組んでいる企業の事例を3つご紹介します。社員のモチベーションを高めながら労働環境を改善するためのヒントとして、参考にしてみてください。 在宅勤務や直行直帰の活用推進 食品業界のA社では、フレックスタイム制度やモバイルワーク制度を採用して柔軟なはたらき方を実現しています。フレックスタイム制度ではコアタイムも廃止したことで、社員の都合に合わせた、より自由な勤務スケジュールの選択が可能となりました。また、営業職の社員には直行直帰の活用も推進しています。 勤務時間や勤務場所を柔軟に選択できることから「時短勤務からフルタイム勤務に戻す社員が増える」など、ポジティブな変化が見られています。 朝型勤務の推奨 商社業界のB社は、社員に対して朝型のはたらき方を推奨しています。深夜残業を禁止し、早朝勤務を推奨することで労働生産性やはたらきがいの向上を狙っています。意識改革を図るため、早朝勤務を実施した社員に対するインセンティブを設けるなど、制度の浸透に取り組みました。 導入当初は社員からの反発があったものの、数年間かけて地道に取り組みを進めた結果、残業時間の削減や業績アップを実現しています。 育児支援制度の拡充 日用品業界のC社は、女性の活躍を推進するため育児支援制度を拡充しました。具体的には、男女ともに10日間の育児休暇取得を必須としたり、子どもが1歳半になるまでは週3日・1日最大3時間の勤務時間短縮を可能にしたりといった制度が挙げられます。性別にかかわらず、育児をしながらでも多様なはたらき方を選択できる環境を整えています。 まとめ 本記事では、働き方改革の概要や働き方改革関連法による主な変更点、企業や社員にもたらす影響などを解説しました。生産年齢人口の減少が進む日本社会において、よりよいはたらき方の追求は経済発展のために不可欠だといえるでしょう。 企業にとっては、長時間労働の抑制や待遇格差の解消など、新たな法律や規制に基づいて社内制度を整備していく必要があります。また、はたらき方の多様化に伴い、企業としても外部のプロフェッショナル人材やフリーランスの活用といった柔軟な人材活用への取り組みが求められます。 社員にとっては、働き方改革の推進によってより適切なワークライフバランスを保てるようになるでしょう。空いた時間をうまく活用して副業・兼業にチャレンジすれば、収入の増加やスキルアップにもつなげられるはずです。
周囲と自らの成長を持続するために多くの人とのつながりを大事にしたい
※FUTURE GATEWAY公式サイトに掲載された記事です。許可を得て転載しています。「FUTURE GATEWAY」は、先進的なライフスタイルを実践する人々を中心に、多様なパートナーとこれからのスタンダードをつくる共創イニシアチブです。この連載では、FUTURE GATEWAYに関わる人々の価値観に迫り、一緒に未来を考えていきたいと思います。今回登場するのは、人材サービス企業 パーソルキャリア株式会社で「副業やフリーランスといった人材活用が当たり前となる社会」の実現を目指すタレントシェアリング事業に携わる傍ら、オフィス家具メーカーにて「モノと場所のシェアリング」の新規事業にも挑戦する働き方を実践している江本匠弥さん。周囲と自らが成長し続けるために、多くの人とつながり続けながら、先進的な事業やプロジェクトに関わる幅広い活動をされています。江本さんの具体的な活動内容、その活動に至った経緯や思い、これからの目標などについてお話を伺いました。
はたらき方にはどんな種類がある?雇用形態や勤務時間による違いを解説
働き方改革が進み、ワークライフバランスの見直しやリモートワークが普及してきたことで、自分に合ったはたらき方を選べる環境が徐々に整備されてきました。子育てや介護、自己実現などのため、自分に合ったライフスタイルを構築したい人には追い風といえるでしょう。 そこで気になるのが、雇用形態や勤務時間といった諸条件による違いです。本記事でははたらき方の種類について、雇用形態や勤務時間などの観点から解説します。はたらき方を見直したいと考えている人はぜひ参考にしてみてください。 はたらき方の種類にはどのようなものがある? はたらき方の種類や条件を知るうえで、最初に把握しておきたいのが以下の2点です。 ・ 雇用形態別のはたらき方 ・ 社会保険の適用有無 順番に見ていきましょう。 雇用形態別のはたらき方 主な雇用形態としては、以下の5種類があります。 正社員 契約社員 派遣社員 アルバイト・パート 業務委託(副業・フリーランス) ここでは、雇用形態別の特徴やメリット、注意点を見ていきましょう。なお、上記のうち業務委託は雇用形態ではなく契約形態の一種ですが、ここでは多様化するはたらき方の一つとして解説します。 正社員 厚生労働省の資料によると、正社員は以下3つの条件に該当する労働者を指すとされています。 労働契約の期間の定めがない 所定労働時間がフルタイムである 直接雇用である 出典:勤務地などを限定した「多様な正社員」の円滑な導入・運用に向けて(厚生労働省) 正社員としての勤務では、雇用が安定していることや、他の雇用形態と比べて収入が高い傾向にあること、福利厚生や待遇が充実している傾向にあることから、比較的安定した労働環境を得られるのがメリットです。一方、はたらく年数が長くなると給与が上がっていく傾向にあるため、短期的に収入を伸ばすのが難しいとされます。努力や結果に応じた収入を望む人は成果報酬制度がある企業などを探すと良いでしょう。 契約社員 契約社員は、期間が定められた「有期労働契約」による雇用形態を指します。労働基準法により、契約期間の上限は原則3年と定められています。ただし、専門的な知識や技術などを有する労働者、または満60歳以上の労働者と労働契約を結ぶ場合の上限は5年です。 契約社員のメリットは、正社員に近い待遇を得られることや、企業によっては転勤や異動の可能性が低いこと、労働期間の定めが明確なことなどです。しかし、有期契約であることから長期的な安定性があるとはいえず、計画的なキャリア設計が必要です。 派遣社員 派遣社員は、人材派遣会社(派遣元)などと雇用契約を結んだうえで、人材派遣会社を通じてほかの会社に派遣されるはたらき方をいいます。派遣期間の上限は原則3年となっており、賃金は派遣元の会社から支給されます。ただし、派遣社員に対して指揮命令を行うのは派遣先の会社です。 派遣社員のメリットは、ライフスタイルに合わせて派遣先を選びやすいことや、アルバイトやパートと比べると賃金が高い傾向にあることなどです。一方、派遣期間に上限があるため、契約社員と同じく安定性があるとはいえないでしょう。 アルバイト・パート アルバイトやパートは、1週間あたりの所定労働時間が同一事業所における通常の労働者よりも短い雇用形態を指します。給与は時間単位で計算されるのが一般的です。 アルバイトやパートとしてはたらくメリットは、自分のライフスタイルに応じて労働時間を調整できることや、転勤や異動が基本的に発生しないことなどです。一方、一般的には責任のある仕事を担当できる機会が少ないとされているため、キャリアアップにつながりにくい点を理解しておく必要があります。 業務委託(副業・フリーランス) 業務委託は、副業を行う個人やフリーランスが企業などと業務委託契約を結び、業務に従事するはたらき方です。雇用関係はないため、厳密には雇用形態ではなく契約形態の一つです。副業の場合、本業を続けながら空いた時間で業務に取り組むのが一般的で、フリーランスの場合は個人事業主として業務を受託し、複数企業と契約することも珍しくありません。 業務委託のメリットは、自分のペースで業務に取り組みやすいことや、努力した分がそのまま収入につながりやすいことです。一方、雇用関係ではないため、案件が単発で終了するものもあります。事前に単発案件なのか継続案件なのか確認しましょう。 社会保険の適用有無 はたらき方を選択する際は、社会保険の適用有無を確認しておくことも重要です。社会保険とは、健康保険や厚生年金保険などの公的な保険制度を指します。また、雇用保険と労災保険を含む「労働保険」の適用有無も確認しておきましょう。 社会保険や労働保険の適用有無は、雇用形態の違いだけによって決まるものではなく、業種や雇用人数、労働時間などさまざまな要素によって決まります。一般的には、正社員であれば健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などの適用対象となるケースが多いため、より安心してはたらける環境だといえるでしょう。短時間勤務の正社員や契約社員、パート・アルバイトの場合は適用条件が定められており、勤務先への確認が必要です。 勤務時間・勤務地・給与制度におけるはたらき方の違い ライフスタイルに合わせてはたらき方を考える場合、雇用形態のほかに以下の3つの要素にも着目するとよいでしょう。 勤務時間 勤務地 給与制度 ここでは、それぞれの観点ではたらき方の種類やメリット、注意点をご紹介します。 勤務時間による違い 勤務時間という観点では、大きく4つのはたらき方が挙げられます。 固定時間制 変形労働時間制 フレックスタイム制 裁量労働制 順番に見ていきましょう。 固定時間制 固定時間制は、会社が定める所定の曜日や時間に勤務する形態のことです。後述するフレックスタイム制などの導入も最近では進んでいますが、正社員としての雇用であれば固定時間制が基本となっているケースはまだ多いでしょう。予定が立てやすい反面、業務量やプライベートの事情に応じた柔軟なはたらき方が難しいというデメリットがあります。 変形労働時間制 変形労働時間制は、1か月や1年など一定の期間内における総労働時間をあらかじめ定め、その枠内で勤務する形態です。シフト制の仕事や季節によって繁閑の差が大きい業種や職種などに適したはたらき方とされています。繁忙期に勤務時間を増やし、閑散期に勤務時間を減らすといったメリハリのあるはたらき方が可能な場合があります。 フレックスタイム制 フレックスタイム制とは、一定期間において定められた総労働時間のなかで、労働者自身が日々の労働時間を自由に決められる制度です。フレックスタイム制を導入している企業の多くは、勤務を必須とする時間帯として「コアタイム」を設けています。 例えば、フレックスタイム制では、ラッシュアワーを避けて出退勤をするといった柔軟なはたらき方が可能です。コアタイムが10時〜15時だった場合、10時以前および15時以降の勤務時間を自由に決められます。身体的な負担やストレスが軽減され、仕事のパフォーマンスが向上する可能性もあるでしょう。 裁量労働制 裁量労働制はみなし労働制とも呼ばれ、実際の勤務時間にかかわらずあらかじめ定められた労働時間分の勤務を行ったとみなす制度です。例えば、労働時間を1日8時間と定めた場合、実際の勤務時間が8時間未満だったとしても所定時間通り勤務したものとみなされます。 厚生労働省のサイトによると、具体的には以下3つのパターンがあります。 事業場外みなし労働時間制 専門業務型裁量労働制 企画業務型裁量労働制 出典:労働時間・休日(厚生労働省) 事業場外での勤務により労働時間の算定が困難な場合や、使用者が具体的な指示をしない専門業務・企画業務などを行う場合が想定されています。 勤務地による違い 近年では、リモートワークの普及によって勤務地に制約されないはたらき方も可能になりました。ここでは出社型、リモートワーク型それぞれの特徴を見ていきましょう。 出社型 出社型とは、従来のはたらき方ともいえる「オフィスへの出社」を前提とする勤務形態です。出社が必要なため、通勤にかかる時間や負担はデメリットといえます。しかし、上司や同僚と適宜コミュニケーションを取りながら業務を進められる点や、仕事とプライベートのオンとオフを明確に切り替えられる点はメリットです。製造業の技能職や小売業の販売職など、リモートワークの導入が難しい業種や職種では、出社型の勤務が一般的です。 リモートワーク型 リモートワーク型とは、オフィス以外の場所で業務を行うはたらき方のことで、テレワークとも呼ばれます。従来はWeb関連の職種やシステムエンジニア、プログラマー、デザイナー、カスタマーサポートなどの職種で利用されていましたが、新型コロナ感染症の拡大をきっかけに幅広い職種で活用が始まりました。すべての勤務をリモートワークにするのではなく、必要に応じて使い分ける「ハイブリッド型」も広く利用されています。 リモートワークのメリットは、出社が不要なため時間的、体力的な負担が軽減されることです。ただし、集中できる環境づくりやオンとオフの切り替えが難しい点には注意が必要です。 近年ではリモートワークで対応可能な副業や兼業を始める人も増えています。出社が不要なため本業を続けながら取り組みやすく、新たなスキルアップや収入アップの機会となっています。 給与制度による違い 給与制度は、大きく分けて固定給と歩合制の2種類があります。それぞれの特徴やメリット、注意点を見ていきましょう。 固定給 固定給とは、一定の時間・期間の勤務に対して事前に定められた金額が支払われる給与制度です。収入が安定しやすい点はメリットですが、成果に応じて収入が変動するわけではないため、モチベーションが上がりにくいという面もあります。営業職などにおいては、後述する歩合制と組み合わせることも少なくありません。 固定給のなかでは月給制や時給制が一般的ですが、ほかにも年俸制や日給制などがあります。年俸制とは、給与の年間支給額を定め、その総額を月ごとに分割して支給する制度です。日給制とは、1日あたりの給与が事前に決められている制度です。ただし、1ヶ月分まとめての支給になるなど都度支払いではないケースも多いため、確認をするようにしましょう。 歩合制 歩合制では、仕事の量や達成した成果に応じて給与が変動します。勤務先に貢献した分だけ収入に反映されるため、モチベーション高く業務に取り組める点はメリットです。ただし収入の安定性には欠けるため、特に完全歩合制の仕事を選ぶ場合などは慎重に検討しましょう。 まとめ 本記事では、はたらき方の種類について、雇用形態や勤務時間などの観点から違いを解説しました。 はたらき方を選ぶ際には、雇用形態や社会保険の適用有無、勤務時間、勤務地、給与制度、自分がどのようなキャリアやライフスタイルを望むのかといったさまざまな観点で検討することが大切です。 近年では、固定時間制かつ出社型の勤務以外にも多様なはたらき方が可能になりました。正社員としてはたらきながらリモートワークで副業や兼業に取り組む人や、フリーランスとして独立を選ぶ人も増えてきています。 本コラムを参考に、自分がどのようなはたらき方を望むのか、改めて考えてみてはいかがでしょうか。
兼業とは?副業との違いやできる条件・やるべきことを解説
会社員としてはたらきながらも、「ほかのスキルも獲得したい」「もっと収入をアップさせたい」と考えている人もいるでしょう。 新たなはたらき方として、兼業や副業が挙げられます。近年は国も兼業や副業を推進しており、広がりつつあります。 本記事では、兼業と副業の違いや、メリット・デメリットを解説します。また、兼業に必要な条件や、就業規則で禁止されている場合の対応についても紹介します。ぜひ最後までお読みください。 【定義】兼業と副業の意味の違いを解説 兼業と副業は、いずれも「本業以外に仕事を持っている状態」を指す言葉です。 一般的な使い分けとして、兼業は、本業を複数持ち業務に従事するようなはたらき方を意味することが多くで、つまり同等の仕事をかけ持ちするときに使われる言葉です。一方で副業は、本業とは別に仕事を持つことをいい、本業のかたわらで仕事をしているときに使われます。 兼業をするメリット・デメリット 兼業にはメリットとデメリットがあります。ここでは、はたらく人(雇用される側)の立場から見たメリットとデメリットを解説します。 兼業をするメリット3選 兼業のおもなメリットは以下です。 ・収入が増加する 収入の増加は、兼業で得られる大きなメリットです。 日本の企業は勤務年数に応じて給与が上がる傾向にあるため、そのような企業に雇用される立場では月収を増やすことは容易ではないでしょう。しかし、兼業をすれば単純に収入元が増えるほか、兼業先の報酬形態によっては自身が遂行した業務の分だけ収入を増やせるケースもあります。 生涯賃金がアップするだけでなく、兼業で得た収入を貯蓄や余暇活動に充てることも可能で、生活の質の向上につながります。 ・スキルを向上できる スキルの向上が見込める点も、兼業のメリットです。 企業に雇用される立場では、自社の業務が最優先となるため、自分の望むようなスキルアップが必ずしもできるとは限りません。しかし、兼業の場合は、自身が成長させたいスキルや新たに習得したいスキルに応じた兼業先を選ぶことができ、新しい知識や経験、スキルの習得がより容易になる可能性があります。 兼業を始める目的の中にスキルアップがあるのなら、「この能力を習得する」という具体的な目的を持って兼業に取り組むようにしましょう。 ・新たなキャリア形成ができる 兼業により、新たなキャリア形成を見込むことも可能です。 本業では、必ずしもやりたい仕事や得意分野に関われるとは限らないため、物足りなさを感じることもあるでしょう。一方、兼業では、自分のスキルや目的に合わせた仕事を選び従事することができます。その結果、新たなキャリア形成の可能性も生まれるかもしれません。 兼業をするデメリット3選 兼業をする際のおもなデメリットは以下です。 ・長時間労働になる恐れ 兼業のデメリットの一つが、労働時間の問題です。 本業に加えてはたらくことになるため、必然的に労働時間が増えます。兼業に意識が過度に傾くと、睡眠不足などの影響により本業に支障をきたす可能性もあります。本業の仕事がおろそかになれば、社内外からの評価も低下してしまうことが考えられます。 兼業をする際には、労働時間が長くなりすぎないよう、適切なスケジュール管理が必要です。 ・義務や責任により負担が増える 兼業による義務や責任による負担は、本業と同様に存在する可能性があります。特に、本業とは異なる分野の業務を担当する場合には、新たな負荷が生じる可能性もあります。 兼業で業務を行う際には、個人の状況や能力に合わせて、自身に適した業務内容や業務量を、あらかじめ考慮することが重要です。収入アップやスキルアップを目指す際に、無理をしすぎないように注意しましょう。 ・余暇が少なくなる 兼業は基本的に、本業の業務の前後か、もしくは休日を利用して行ないます。また、兼業でまとまった収入を得たい場合、例えば高度な資格やスキルがあるなどでなければ、労働時間を増やすことが一般的です。 このようなことから、兼業を頑張りすぎると、余暇が少なくなります。ストレスや疲労から回復する時間が取りにくくなるため、余暇も意識したスケジュール管理をおすすめします。 国も推進!ガイドラインからみる兼業や副業の条件とは 近年は国を挙げて、兼業や副業を推進しています。例えば厚生労働省は、平成29年の「働き方改革実行計画」を踏まえ、企業やはたらく人が安心して兼業・副業が行なえるようガイドラインを作成しました。 ガイドラインは令和4年7月に改訂され、労働者が希望するはたらき方に応じて、幅広く兼業や副業を行なえる環境の整備が重要であると指摘しています。 参照:副業・兼業の促進に関するガイドライン(令和4年7月8日改訂版)厚生労働省 就業規則で兼業や副業が禁止されていた場合 国が兼業や副業を推進している一方で、就業規則により兼業や副業を禁止している企業も少なくありません。就業規則には法的効力があるため、違反した場合は懲戒処分の対象になる恐れもあります。 兼業や副業により、懲戒処分を受ける可能性のある事例を紹介します。 ・本業に支障をきたした場合 例えば、本業の勤務時間中に兼業をしたり、兼業が原因で本業に影響をおよぼしたりした場合には、職務専念義務違反とみなされる恐れがあります。 ・同業他社での兼業 同業他社での兼業は、本業(企業)への利益侵害につながりかねず、企業によっては就業規則などで、競業避止義務が定められていることがあります。このような定めがある企業の場合には、規則違反とみなされる恐れがあります。 ・情報漏えいなどがあった場合 本業の企業秘密や営業機密を漏えいした場合、故意か過失かにかかわらず、秘密保持義務違反に該当する恐れがあります。 ・企業の信用などを毀損した場合 違法行為をともなう兼業など、本業(企業)の名誉や信用を損なう行為や、本業との信頼関係を損なう行為があった場合は、懲戒処分などの罰則を受ける可能性があります。 国家・地方公務員は許可制で一部兼業が可能 国家公務員や地方公務員は、国家公務員法(第103条、第104条)や地方公務員法(第38条)により、営利企業への従事等が制限されています。 具体的には、許可なく次の行為を行えません。 営利を目的とする団体の役員等の職を兼ねること 自ら営利企業を営むこと 報酬を得て事業または事務に従事すること しかし多様で柔軟なはたらき方へのニーズが高まるなか、一部の自治体では兼業や副業が解禁されつつあります。 例えば兵庫県神戸市では平成29年4月より、「地域貢献応援制度」を導入しています。この制度は、公益性の高い継続的な地域貢献活動に、市の職員が報酬等を得て従事する場合の取り扱いを定めたものです。具体的な活動内容として、須磨海岸での障害者支援活動や、手話通訳活動などが行なわれています。 参照:国家公務員の兼業について(概要)平成31年(2019年)3月 内閣官房内閣人事局 _ _ _ _ _地方公務員の社会貢献活動に関する兼業について 令和元年(2019年)11月22日 総務省 兼業をしようと決めたときにすべきこと3選 兼業をしようと決めた際には、以下の3つを確認してください。 1.企業のルールを確認する 兼業や副業が可能かどうか、自身の労働契約や企業の就業規則を確認します。企業のルールによっては手続きが必要な場合もあるため、併せて確認をしておきましょう。 2.兼業や副業の内容を検討する 兼業や副業のメリットは、自身のスキルやキャリアの向上のほか、充実感につながる点などです。ただし、自身の許容範囲を超える業務になると、ストレスや疲労を招きかねないため、兼業を行う際は、内容についてよく検討する必要があります。 3.上司や人事担当者と話し合っておく 兼業を始める際には、必要な手続きをするだけでなく、上司や人事担当者ともよく話し合っておくことが、兼業を円滑に進めるポイントです。 事前に上司や人事担当者に話すことで、兼業先が自社の競合であるというトラブルが防げるだけでなく、年末調整などの手続きも円滑に行うことができます。 兼業を始めた人がすべきこと3選 最後に、兼業を始めたあとにすべきことを3つ紹介します。 1.就業時間や健康を自己管理する 心身の健康を保ちながら兼業を続けるためには、自己管理が重要です。 兼業に関しても始業時間や終業時刻などを記録し、労働時間の把握をするとともに、健康管理に役立てましょう。 2.無理なく仕事を両立できているか判断する 本業の業務と兼業の業務を適切に把握し、問題なく両立ができているか常に自問自答する必要があります。 本業や兼業にかかわらず、業務中にミスが増えることや、疲労や睡眠不足が健康に悪影響を及ぼす場合には、兼業の継続について検討してみてください。 3.確定申告や住民税の申告をする ほとんどの給与所得者は、企業(給与の支払者)が行なう年末調整によって、所得税額の確定と納税が完了します。しかし兼業などで給与所得以外の所得が20万円を超える場合は、確定申告が必要です。 確定申告の詳細については、国税庁のホームページ「No.1900_給与所得者で確定申告が必要な人」などを参考にしてください。 参考:国税庁ホームページ また、住民税に関しては、兼業や副業による雑所得が20万円以下であっても、自治体への申告や納付が必須です。忘れずに手続きをしましょう。 まとめ 一般的に兼業とは、本業とそれ以外の事業を並行してかけ持ちすることを言います。一般的に、本業のかたわらで行なう副業と比べて、兼業は、双方の仕事をほぼ同等に行なう意味合いで用いられます。 兼業のメリットは、収入が増え、スキルアップやキャリアアップが期待できる点です。一方でデメリットとして、長時間労働に陥りやすいことが挙げられます。兼業に意識が過度に傾くとストレスや疲労を招いてしまい、本業に支障をきたすことになるため、徹底した自己管理が求められます。 また、兼業や副業で一定の収入を超えた場合には、個人での確定申告が必要です。 近年は「働き方改革」を踏まえ、国も兼業や副業を推進しています。しかし企業によっては、就業規則等により無断での兼業や副業を禁止しています。兼業を始める際には勤務先の就業規則を確認し、必要な手続きを行ないましょう。