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相談役とは? 役割から顧問や役員との違い、メリット・注意点を解説

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コーポレートガバナンス強化の波を受け、経営体制の透明性が求められる今、相談役の存在意義についてその是非が問われています。現役経営陣とのしがらみがある相談役が経営に口を出すことに対して、投資家の反応も変化を遂げはじめているからです。では、その背景は一体、どこにあるのでしょうか。

当コラムでは、相談役の在り方を改めて考えるための基礎知識として、今一度その役割や定義、選定基準についてご紹介します。

 

相談役とは?

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相談役とは企業文化のようなもの

・役職について

その定義(具体的な仕事内容や、存在の意味合いなど)は各企業がそれぞれ任意に定めており、厳密に法律で定められている訳ではありません。また、設置の有無も各企業の任意で定められます。

・役割について

一般的には、経営の重要事項について協議・検討・決定する際、役員に準ずる立ち位置として、アドバイスや調整を行うことが期待されています。

・仕事内容について

相談役はあくまでアドバイザーであり、直接業務を遂行することはありませんが、自身の人脈や肩書を活かし、別途社外活動(他社との交流活動、社会貢献活動など)に参加する相談役もいます。なお、具体的な業務範囲については、企業ごとに定款や委嘱規程によって取り決められることが一般的です。

・報酬相場について

役員陣と同等であったり、名誉職の意味合いでの任命の際には一般職と同等であったりと、様々なケースがあります。

相談役となる対象人物は?

社内の役員(会長、社長など)が、退任後にそのまま就任するケースが一般的です。意味合いとしては、名誉職として任命するケースや、実質的な企業トップとしての立ち回りを期待されるケースもあります。

相談役に似ている顧問、役員、参与との違い

・役割の違い

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4者の中でも、相談役は社内出身に強みがあります。事業環境や経営理念の背景を理解した上でアドバイスできる点から、経営陣としては課題解消へのよき壁打ち相手となります。

・人選対象の違い

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相談役に加え、役員・参与は基本的に社内出身者を起用します。一方で、顧問は持ち合わせる専門性を求めて、外部人材を誘致するケースもあります。

・意思決定権の違い

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相談役・顧問は法律上その役回り・規定を定められていないため、経営に対する意思決定権は持ち合わせていません。あくまでも第三者であり、アドバイザリーとしての役割を求められています。

企業にとってのメリット

課題解決に有効なアドバイスが得られる

今までの経営経験をもととしたアドバイスを受けられるメリットがあります。アドバイスを仰ぐという観点では、外部のコンサルタントを活用する手もありますが、相談役は基本的に社内出身のため、経営陣にとっては社内事情をよく理解した上での壁打ち相手となります。

企業成長につながる人脈が得られる

仮に、相談役を含め自社内で完結できない経営課題が発生したとしても、経験で得た人脈を頼りに、外部のプロフェッショナルとつながることも可能でしょう。また、人脈紹介によって新たな顧客開拓の販路を見出せる側面もあります。

4つの契約フロー

1:委嘱規程の作成

委嘱規程とは、設置目的や任期、任務、報酬などを明示化したものです。透明性を担保する意味合いで作成されます。選定指標となるため、任命前に作っておく方がよいでしょう。

2:適任者の選定

先述の規程をもとに、候補者を選定します。規程とともに、下記のような経験の有無もひとつの選定指標となります。

<候補者に多い経験・出身例>

  • 取締役、監査役出身者
  • 関連企業の役員出身者(取締役、監査役退任後)
  • 専門分野に長けた知見を備えている専門家

3:様々な要因に基づく報酬の決定

下記は、一般的な相談役の報酬を決める軸の例です。

・常勤、非常勤

常勤の場合は、稼働の有無にかかわらず定額支給が一般的であるのに対し、非常勤の場合は相談事が発生しない場合、無給となるケースもあります。

・会社の規模

就任先の会社規模が大きいほど、報酬も上がる傾向にあります。

・就任前の役位や専門性、パワーバランス

相談役の就任前のスペック(役位や専門性)、現状の役員陣との報酬バランスを加味し決定する企業もあります。

4:委嘱契約書の締結

上記の通り、相談役は元経営陣が多いため経営陣からの退任時に締結する事が多いです。承認後、委嘱契約書を締結し、相談役としての肩書がつくこととなります。なお、移植契約書には先述の「委嘱規程」で定めた基準を記載し、正式に合意形成を図ります。

相談役を雇う前の注意点や把握すべきポイント

相談役の情報を開示する必要がある

2017年「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針(CGSガイドライン)」の策定により、相談役に社長やCEOの経験者を置く場合、就任している者の任期や役割、人数、処遇等の開示が推奨されることとなりました。

あくまでも開示は任意とされていますが、近年の相談役に対する実態(後述)や、投資家の関心が集まっていることを踏まえると、非開示であり続けることは、実質企業にとってマイナスとなる要素を持ち合わせています。

社会保険の加入義務が生じる場合がある

相談役でも、従業員の4分の3以上の労働時間が発生する場合、社会保険に加入しなければなりません。また、労働保険(労災保険・雇用保険)の場合、原則相談役には当てはまらないものの、いわゆる「労働者」的な役割が強ければ保険対象となるケースもあります。就業規則をはじめとした、一般労働者に適用される規定に該当するか否かを照らし合わせる必要があるため、判断に迷う場合は社労士など、専門知見を持ち合わせる人物に相談する方が賢明です。

相談役の人数については企業によって様々

小規模企業では数名、大企業の場合だと10~30名ほど設置されているケースもあります。

近年の相談役に関する実態

上場企業の内、相談役制度を設置する企業は約8割

2016年に経済産業省が発表した「コーポレート・ガバナンス・システムに関する実務指針 (CGS ガイドライン)」では、相談役・顧問の制度・慣行を有する企業が約 78%存在し、役員出身者(現任・退任双方含む)が相談役として在任している割合は約 62%(そのうち元社長・CEO が相談役・顧問として現に在任している企業が約 58%)を占めている、とされています。

相談役を廃止する企業の増加

とはいえ、近年では大手企業を中心に、相談役や顧問制度を廃止する企業も増え始めています。2018年にトヨタ自動車社が相談役・顧問を61人から9人へ大幅削減した事例は、記憶に新しい方も多いでしょうし、2020年1月に日産自動車、2021年6月には関西電力が、コーポレートガバナンスの一層の強化を目的に、相談役制度の廃止を発表しています。

廃止の主な背景としては、役割・成果の不透明性が挙がっています。相談役の関与による成果や役割は可視化しづらく、株主側へその意義を説明することは非常に難儀です。そのため、間接的に経営体制に対する不信につながりやすく、場合によっては株主から「相談役はいらない」と判断されるリスクもはらんでいる、ということです。

まとめ

相談役の役割から、メリット・デメリットについてご紹介しました。デメリットの背景としては、お伝えした通り「実態の不透明性」による側面が強いことが分かりますが、それ以上に、高い実践レベルでのアドバイスを仰げるというメリットもあり、相談役制度を重要視する企業もまだまだ少なくありません。

ここで一概に相談役の設置について是非を述べることはしませんが、いずれにせよ、その実態と必要性を、透明性を保ちつつ株主・投資家側へ明示することが、より一層求められる時代となるのは間違いなさそうです。

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