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ワーケーションとは?定義や目的、メリット・デメリットを解説

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仕事と休暇の両立を目指すはたらき方である「ワーケーション」。働き方改革やコロナ禍などを経て、導入する企業は増加傾向にあります。しかし、ワーケーションという言葉は耳にするものの、どのような制度なのか、どのようなメリット・デメリットがあるのかよく分からないという方も多いのではないでしょうか。

本記事では、ワーケーションの定義や種類、企業目線・社員目線それぞれのメリット・デメリットなどを解説します。導入の目的や課題などもまとめているので、ワーケーションについて知りたい方や導入を検討している企業担当者の方はぜひ参考にしてみてください。

ワーケーションとは

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そもそもワーケーションとはどのようなものなのでしょうか。以下3つの観点からワーケーションについて解説します。

  • ワーケーションの定義
  • テレワークとの違い
  • ブレジャーとの違い

ワーケーションの定義

「ワーケーション」は、「ワーク(work:仕事)」と「バケーション(vacation:休暇)」を組み合わせた言葉です。

テレワークなどを活用して観光地やリゾート地、帰省先などで仕事をし、同じ場所で休暇も楽しむワークスタイルを指します。まとまった休みを取りにくい場合でも、ワーケーションであれば仕事をしながら休暇を楽しめることから、近年注目が集まっているはたらき方です。例えば、7日間連続の休暇取得が難しい場合でも、期間中の1~2日だけ旅行先から勤務することで必要な業務に対応し、その後は再び休暇を楽しむといった使い方が可能です。

また、普段の職場と異なる場所ではたらくことにより、リラックス効果による生産性や創造性の向上といった効果も期待されています。 ワーケーションは企業が自社の社員向けに制度として設けるほか、個人で自主的に実施し、本業だけでなく副業・兼業に費やすための時間にするといった利用方法もあります。

テレワークとの違い

テレワークは「テレ(tele:離れて)」と「ワーク(work:仕事)」を組み合わせた言葉で、普段の職場から離れた場所ではたらくことを指します。一方、休暇の過ごし方も考慮し、観光地やリゾート地などでテレワークをするのがワーケーションです。つまり、ワーケーションはテレワークの一種と考えると分かりやすいでしょう。

コロナ禍の影響でテレワークが普及・浸透したなか、テレワークを有効活用する方法としてワーケーションにも注目が集まりました。

ブレジャーとの違い

ブレジャーは「ビジネス(Business)」と「レジャー(Leisure:余暇)」を組み合わせた言葉で、出張先などで滞在期間を延長し、余暇を楽しむことを指します。

ブレジャーとワーケーションは仕事と休暇を組み合わせる点では共通しています。しかし、ワーケーションが休暇を前提として行き先を決める一方、ブレジャーは先に出張先が決まっているなか、滞在期間を延長して休暇も楽しむという点が大きな違いです。

ワーケーションがワークスタイルの一種であるのに対し、ブレジャーは出張などにおける過ごし方・楽しみ方の一つといえるでしょう。

ワーケーションの2つのタイプ

ここでは、ワーケーションを「個人での実施」と「企業での実施」の2つに分けて解説します。

個人での実施

企業の制度としてではなく、個人が自由に計画を立てて自主的にワーケーションを実施するケースです。

政府による副業解禁の推進やテレワークの浸透が後押しとなり、ワーケーションを取り入れる個人は増加傾向にあります。近年では、ワーケーション向けの宿泊プランやサブスク、地方自治体による特設サイトなども登場しており、より注目が集まるはたらき方となっています。

会社員の方が本業・副業に取り組むためにワーケーションを実施するほか、時間・場所の制約を受けにくい職種の方やフリーランスの方が取り入れる傾向にあります。ワーケーションの目的は、多忙ななかでの休暇の取得はもちろん、仕事の効率を高めるための環境づくりやプライベートの充実などさまざまです。

ワーケーションを取り入れれば、従来であれば長期休暇の取得が難しかった方でも必要な業務をこなしながら休暇を楽しめるようになります。副業や兼業に集中するための機会としても利用できるでしょう。

企業での実施

企業が自社の社員向けにワーケーションを実施するケースも増えています。導入の目的は、福利厚生の拡充や業務効率の向上、社員同士の交流による組織活性化など、企業や状況によってさまざまです。休暇メインのものから業務メインのものまで内容が幅広いほか、開催場所も一般的なホテルや旅館に加え、自社が保有する保養所、サテライトオフィスなど多岐にわたります。

特に部署または会社全体でワーケーションに取り組む場合、業務上の調整が比較的容易であったり、一人ひとりが気兼ねなく参加できたりする点はメリットです。

企業がワーケーションを導入するメリット

企業がワーケーションを導入する主なメリットは以下の3点です。

  • 社員の満足度が向上する
  • 生産性の改善が期待できる
  • 有給休暇の取得を推進できる

順番に見ていきましょう。

社員の満足度が向上する

ワーケーションを導入することで、社員の満足度の向上が期待できます。会社の制度として利用できることに加え、普段の職場から離れて仕事をすることでストレスが軽減される可能性は高いでしょう。仕事の合間にプライベートで観光やアクティビティを楽しめば、リフレッシュした状態で仕事に向き合えるかもしれません。

また、チーム全体でワーケーションを実施すれば、社員同士の親睦が深まり、人間関係が改善する可能性もあります。ワーケーションの期間だけでなく、その後の業務にもポジティブな影響をもたらすでしょう。

生産性の改善が期待できる

ワーケーションを実施すれば、社員一人ひとりの生産性の改善も期待できます。普段と異なる環境で仕事をするため、五感が刺激されることで物事の捉え方が変わったり、新しいアイデアがひらめきやすくなったりします。また、特定のテーマに絞ったワーケーションとすることで、集中的に議論を交わし、プロジェクトを前進させるといった使い方も可能です。

さらに、プライベートの楽しみがあることでスケジュール管理の意識が高まり、より効率よく仕事を終えようとするため、業務の効率化にもつながりやすいでしょう。

有給休暇の取得を推進できる

ワーケーションの導入は、有給休暇の取得促進にもつながる可能性があります。仕事と休暇を組み合わせることで、まとまった有給休暇を取得しやすくなるからです。

社員の有給休暇取得率は企業のイメージを左右するものであり、採用活動などにも影響します。ワーケーションを導入することで取得率が向上すれば、イメージアップにつながるなどポジティブな影響が期待できます。

働き方改革が推進される昨今、有給休暇の取得率は企業の内情を表す指標の一つとなっているため、取得率向上に向けた取り組みは重要度が高いといえるでしょう。

企業がワーケーションを導入するデメリット

メリットが多いワーケーションですが、デメリットも存在します。企業がワーケーションを導入するデメリットは以下の3つです。

  • 人事評価が難しい
  • 環境整備のコストがかかる
  • セキュリティリスクが上がる

こちらも順番に見ていきましょう。

人事評価が難しい

ワーケーションを導入すると、参加している社員の人事評価が難しいと感じるかもしれません。オフィス勤務と異なり、仕事に取り組む姿勢や進捗状況を把握しにくくなる可能性があるからです。業務に取り組む姿勢や成果を出すまでのプロセスの把握は困難であり、適切な評価を下すのは簡単ではありません。

また、休暇を兼ねた就業形態であるため、勤務時間の管理も難しいでしょう。 適切な評価を行えるよう、ワーケーション参加時の勤務状況の管理や評価方法について、仕組みを整えておく必要があります。

環境整備のコストがかかる

ワーケーションを導入するにあたり、環境整備のコストがかかる点もデメリットです。オフィス外でも業務に支障をきたさないよう、通信環境やコミュニケーション手段、管理システムなどを整備する必要があるからです。

組織単位で実施する合宿型や、遠隔地にオフィスを設けるサテライトオフィス型を採用する場合は、ワーケーションを行う施設の確保や維持にも多大なコストがかかります。

また、組織全体でワーケーションに参加したものの、通信トラブルなどによって業務が行えないとなれば大きな損失になる可能性もあります。オフィスと同様の環境で仕事ができるよう、強固なインフラが求められるでしょう。

制度としてワーケーションを導入する際は、実現に向けて必要な設備やそのコストを精査したうえで検討を進める必要があります。

セキュリティリスクが上がる

ワーケーションに参加するためには、パソコンや資料の持ち出しが必要になるでしょう。そのため、セキュリティリスクが上がる点にも注意が必要です。会社が貸与している端末の紛失や盗難など物理的なリスクに加え、外部のWi-Fiなどへの接続による情報漏洩のリスクなども想定しておく必要があります。

ワーケーションでは、普段と異なる通信回線やシステムを使うことに加え、行動範囲が広くなる傾向にあることから、通常のテレワークよりもリスクが高いと考える必要があります。取引先や顧客、従業員の情報が漏洩すれば、会社としての信頼を失うような重大なトラブルに発展しかねません。

セキュリティリスクを軽減するため、新たなルールや仕組みの整備が不可欠です。

会社員がワーケーションに参加するメリット

会社員がワーケーションに参加する主なメリットは以下の3点です。

  • 長期休暇が取りやすくなる
  • 仕事の効率が上がる
  • はたらきながらリフレッシュできる

こちらも順番に見ていきましょう。

長期休暇が取りやすくなる

会社員がワーケーションを利用すれば、長期休暇が取りやすくなります。オフィスへの出社が不要なため、期間中に対応が必要な業務がある場合でも、ワーケーション先からリモートで勤務することが可能です。

仕事を行う日程を先に決めておけば、家族との旅行などでもうまくスケジュールを調整できるはずです。

仕事の効率が上がる

仕事の効率が上がるのもワーケーションに参加する大きなメリットです。参加するワーケーションの種類や場所などによって異なるものの、一般的にはオフィスと比べてストレスが少なく集中できる環境を作りやすいといえるでしょう。

普段の仕事と異なり、静かな場所で目の前の仕事に集中できる環境であれば、業務効率の向上が期待できるでしょう。

はたらきながらリフレッシュできる

はたらきながらリフレッシュできるのもワーケーションのメリットです。 例えば、他人の目を気にすることなく自分のペースで仕事ができたり、仕事の合間にリラックスできる場所を訪れたりできます。普段と異なる環境に身を置くだけで、気持ちが晴れたり普段感じているストレスが軽減されたりする可能性もあるでしょう。

その結果として、仕事に対するモチベーションが上がったり新たなアイデアが生まれたりといった効果も期待できます。

会社員がワーケーションに参加するデメリット

一方、会社員がワーケーションに参加する際は以下のようなデメリットにも注意が必要です。

  • 自己管理が求められる
  • 業務時間外もはたらいてしまうことがある

自己管理が求められる

ワーケーションには自己管理が求められるため、気を抜くとパフォーマンスが下がってしまうケースもあります。

そのため、自身でスケジュール管理を行い、仕事と休暇をうまく切り替えながら取り組む必要があります。うまく自己管理ができなければ、せっかくワーケーションに参加してもメリットを十分に享受できないでしょう。ホテルの部屋など、仕事場所を決めておくことでオン・オフを切り替えるスイッチにするといった工夫が求められます。

業務時間外もはたらいてしまうことがある

ワーケーション期間中は、業務時間外にもかかわらずついはたらいてしまうこともあるかもしれません。

ワーケーションでは仕事と休暇の境が曖昧なため、つい電話やメールが気になり、対応してしまうケースがあります。例えば、仕事がひと段落して休暇を楽しんでいたものの、職場からの連絡が目に入ったことで対応を始めてしまうといった状況が考えられます。

業務時間外は連絡を取らないようにしたり、休暇中であることを第三者が認識できるよう工夫したりといった対応が必要です。

企業が実施するワーケーションの種類

ここでは、企業が実施するワーケーションの種類についてさらに詳しく見ていきましょう。大きく分けて「休暇型」と「業務型」の2つがあり、業務型はさらに地域課題解決型・合宿型・サテライトオフィス型の3つに細分化されます。

休暇型

休暇型ワーケーションは、その名の通り休暇を主な目的として開催するものであり、福利厚生の一環として導入される傾向にあります。社員のリフレッシュを目的としているため、有給休暇と組み合わせてリゾート地や観光地に長期滞在し、現地でリモートワークを行うといった使い方が一般的です。

休暇がメインであるため、社員による前向きな利用が期待できるでしょう。社員の満足度の向上につながりやすい一方、勤務実績の管理や業務の評価をどのように行うかは課題となります。

業務型

業務型ワーケーションは、目的や形式によって以下3つのタイプに分けられます。

  • 地域課題解決型
  • 合宿型
  • サテライトオフィス型

それぞれの特徴を見ていきましょう。

地域課題解決型

地域課題解決型とは、その地域の関係者と交流・協力して地域課題の解決に取り組むことを目的としたワーケーションです。ワーケーションによるビジネス人口の流入や、地域と企業の関係性の構築は、受け入れ地域の活性化にも繋がります。地域社会との結びつきを重視する企業にとっては重要な取り組みになるでしょう。

地域課題の解決に取り組む場合、提携宿泊施設などの優遇制度を利用できる場合もあります。

合宿型

合宿型とは、普段のオフィスとは異なる環境に集団で宿泊し、業務や議論、グループワークなどを行うワーケーションです。 新設された部署内での交流や新入社員の受け入れなど、組織内でチームビルディングが必要な場合に加え、新商品・サービスの開発など、特定のプロジェクトに集中的に取り組み、成果を出したい場合などにも活用されます。

宿泊先で共同生活を送ることによって人間関係の構築につながったり、集中的に議論することで新たなアイデアが生まれたりといった点がメリットです。

一方、参加者は自身で滞在先を決められないほか、現地での行動に制限があるケースもあります。ほかのワーケーションと比べて「業務の一環」とのイメージが強く、リフレッシュや満足度の向上にはつながりにくい可能性があります。特に、集団行動が苦手な社員にはかえってストレスを与えてしまう場合もあるため注意が必要です。

サテライトオフィス型

サテライトオフィス型は、通常のオフィスから離れた場所に設けられたサテライトオフィスやシェアオフィスで業務を行うワーケーションです。社員に柔軟なはたらき方を提案できることで離職率の低下や採用力の向上に繋がりやすいほか、地方における事業機会の創出に繋がる可能性もあります。

一方、オフィスの賃料・維持コストや就業環境の整備、セキュリティリスクへの対策など、実施にかかる費用・手間は課題になるでしょう。

参考:「新たな旅のスタイル」ワーケーション&ブレジャー(国土交通省 観光庁)

企業によるワーケーションの実施状況

令和4年3月に観光庁(国土交通省)が公開した調査結果によると、企業におけるワーケーションの認知率・導入率はそれぞれ以下の通りです。

  • ワーケーション認知率:66.0%(前年度48.5%)
  • ワーケーション導入率:5.3%(前年度3.3%)

ワーケーションの導入率はまだ高いとはいえないものの、前年度と比較すれば認知率・導入率ともに大きく向上しています。また、テレワークの実施形態としては在宅勤務の割合が97.1%から91.3%に下落した一方、サテライトオフィス・レンタルオフィスの割合が上昇しています。はたらき方の多様化が進むなか、今後もワーケーションの利用はさらに広がると考えられるでしょう。

なお、ワーケーションを導入しない理由としては、以下の項目に多くの回答が集まっています

  • 業種として向いていない(60.5%)
  • ワークと休暇の区別が難しい(20.5%)
  • 効果を感じない(16.3%)

ワーケーション期間中の業務効率やオン・オフの切り替えについて、課題を感じている企業も多いと考えられます。

出典:今年度事業の結果報告(国土交通省 観光庁)

まとめ

本記事では、ワーケーションの定義や種類、企業目線・社員目線それぞれのメリット・デメリットなどを解説しました。

観光地などで仕事と休暇を兼ねる「ワーケーション」は、働き方改革やコロナ禍などに後押しされ、認知度・導入率が高まりつつあります。

企業としては、社員の満足度向上や生産性の改善、有給休暇取得の推進といったメリットが期待できます。一方で人事評価の難しさやコスト負担、セキュリティリスクの高さには注意が必要です。

社員としては、ワーケーションを活用することでまとまった休暇が取りやすくなるほか、業務効率が上がったりはたらきながらリフレッシュできたりといったメリットがあります。副業・兼業に集中する時間を作りたい方にもおすすめのはたらき方だといえるでしょう。一方、自己管理が求められる点や仕事と休暇の境が曖昧になる点はデメリットです。

企業にとっても社員にとっても、新しいはたらき方の選択肢としてワーケーションは今後もより重要性を増していくでしょう。

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