フリーランスと業務委託契約の違いとは?業務委託契約書の種類や作成方法を解説。
近年、フリーランスとして働く方が増えています。フリーランスは雇用契約ではなく、業務委託契約を結び、企業から仕事を請け負う働き方です。
フリーランスとして働くと自由度が増す代わりに、生じたトラブルは自分で対処する必要があります。そのために必要なのが業務委託契約書です。
フリーランスとして働くのであれば、業務委託契約について理解しておきましょう。
当記事では、フリーランスと業務委託の違い、業務委託契約の種類や締結時の注意点などを解説します
フリーランスの定義
厚生労働省はフリーランスについて次のように定義しています。
実店舗がなく、雇人もいない自営業主や一人社長であって、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る者
※引用:フリーランスとして安心して働ける環境を整備するためのガイドライン(厚生労働省)
上記のとおり、フリーランスの定義は経験や知識、スキルを活かし個人で仕事をすることであるため、職種(ライター、動画編集者、プログラマーなど)に関係なくフリーランスと名乗れます。
フリーランスと業務委託契約の違い
業務委託とは、企業が社内で対応できない業務を外部に委託することです。その業務に対し、スキルや成果物の提供することで報酬を得る契約を指します。
フリーランスが自由な働き方や働くスタイルのことを指すのに対し、業務委託契約は契約形態を指す言葉です。
また、フリーランスという働き方は、雇用(労働契約)ではありません。そのため、労働基準法などの法令が適用されない場合があります。
フリーランスと副業や個人事業主の違い
フリーランスと混在して使われるのが「副業」や「個人事業主」という言葉です。
副業は、企業と雇用契約を結びながら、空いた時間に他の仕事で収入を得る働き方のことです。ただし、最近ではフリーランスと副業は、区別せずに分類していることもあります。
また、個人事業主は税務署に開業届を出している個人を含め、法人を設立せず事業を行っている個人のことです。開業届を出すと税務上の区分が変わり、個人事業主と分類されます。個人事業主は、事業が軌道に乗った場合、法人化することで事業拡大が可能です。
業務委託契約の種類
フリーランスが仕事を受ける際は、業務委託契約を結びます。実務上では、以下3つの契約を総称して業務委託契約と呼びます。
- 委任契約
- 準委任契約
- 請負契約
ご自身がかかわる業務において、どの契約を結ぶべきか理解することが大切です。
委任契約
委任契約とは、業務の遂行自体を目的としており、法律行為をともなう契約を指します。この法律行為をともなう業務とは、税理士に税務相談するなどです。
委任契約の特徴は、一定の事務処理を委託する点にあり、成果物や結果に関係なく対価が発生します。
例えば、委任契約で弁護士へ依頼した場合、訴訟代理人(弁護士)は裁判の勝敗にかかわらず報酬を得られます。
準委任契約
準委任契約は、法律行為をともなわない業務を委託する場合に結ぶ契約です。委任契約と同じく、業務の遂行に対して報酬が支払われます。
準委任契約が用いられる業務の例は、システム運営やリサーチ業務などです。例えばシステム開発のテスト作業を依頼する場合、具体的な納品物はありません。法律をともなう業務にも該当しないため、準委任契約で締結することになります。
請負契約
請負契約とは、依頼時に決められた仕事の完成を約束し、仕事の結果に対して報酬を受け取る契約のことです。企業と請負契約を交わしたフリーランスは、期限内に成果物を納品する義務を負います。
成果物が完成するまでの時間配分や方法などの過程は、フリーランスの裁量次第であることが請負契約の特徴です。
例えば、ライターの場合、執筆した記事が成果物となり、報酬の対象ですが、ライターは執筆時間や執筆の進め方に対して、基本的には企業から指示を受けることはありません。
フリーランスが業務委託契約書を結ぶ重要性
フリーランスが企業から仕事を受注する場合は、業務委託契約書を締結し、保管しておきましょう。業務委託契約を結ぶことで、成果物や報酬に関するトラブルを防ぎやすくなります。
フリーランスが契約書を交わさずに働くことは要注意
契約書は契約内容を示す証拠書類としての役割はもちろん、企業とのトラブルを防ぐ意味でも重要な役割を果たします。
契約書があれば、依頼した企業側も、受注したフリーランス側も安心して取引が可能です。
仮に契約書がない場合、お互い認識のずれからトラブルに発展しかねません。最悪の場合、契約解除となることもあるでしょう。
そのため、契約書に納期や報酬などの基本的な条件をはじめ、著作権の譲渡や機密情報の取り扱いなどを明記することが重要です。万が一、トラブルが生じてしまった場合も、契約内容をもとに解決できる可能性が高くなります。特に取引金額の大きな案件は注意しましょう。
フリーランスが直面するよくあるトラブル
フリーランスになると、契約条件や報酬の支払いなどのトラブルが発生します。企業であれば、専門人材や担当部署が対応しますが、フリーランスであれば個人で対処しなければなりません。
よくあるトラブルは、以下の3つです。
- 二重派遣・偽装請負
- 契約解除・損害賠償
- 報酬の未払い
二重派遣・偽装請負
二重派遣とは、派遣会社から派遣された労働者を、派遣先の企業がさらに別の企業へ派遣することです。A社がB社に派遣社員を派遣、さらにB社がC社に派遣するような行為を指します。
特にITフリーランス界隈で多いといわれる二重派遣は、仲介する企業の多さから業務内容や労働条件が守られにくいことが問題視されており、法律で禁止されています。
併せて覚えておきたいのが、偽装請負です。偽装請負とは、実質的に労働者派遣であるのにもかかわらず、請負契約に偽装する行為のことです。
フリーランスにもかかわらず、発注者から直接、業務時間や労働時間の指示を受けている場合は、偽装請負となっている可能性があります。
契約解除・損害賠償
契約解除とは、契約を締結したあと、相手の同意なしに一方的に契約を解除することです。業務委託契約を結んだにもかかわらず、業務のクオリティに満足しないからと、発注自体を取りやめるという行為などが該当します。
契約解除には、正当な理由が必要です。正当な理由がないにもかかわらず、一方的に契約の解除を通達し、支払いを拒否される場合は債務不履行を理由として、相手方に損害賠償請求をすることができます。
報酬の未払い
報酬の未払いを防ぐため、まずは原因を知っておきましょう。報酬の未払いが発生する原因は、以下のとおりです。
自分側の原因
- 請求書を発行していない
- 納品物に不備があり、検収が完了していない
納品が完了したのであれば、請求書を発行しましょう。納品物に不備があった場合は、契約を完了していないことになるため、支払いが行われません。
企業側の原因
- 支払い処理の漏れ
- 請求書が届いていない
- 振込先への送金ミス
- 支払いができない事情がある
企業側が原因となるケースでは、企業にお問い合わせが有効です。問い合わせによって、支払いされていない理由のほとんどは解決できるでしょう。
支払いができない事情には、相手の資金不足が挙げられます。そのような場合は、裁判するなどの手段にでる必要がある場合もあります。
契約書は企業とフリーランスどちらが用意すべきか
契約書は、企業、フリーランスどちらが用意しても問題ありません。
ただし、可能であればフリーランスの方が自身で作成することをおすすめします。なぜなら、基本的に業務委託契約書は作成した側が有利となる条件で記載されることが多いからです。
自身にとって不利な契約とならないように、契約書は自身で作成するとよいでしょう。
また、大企業は契約書の雛形を用意しており、雛形の修正が難しい傾向にあります。基本的には雛形に沿うかたちになりますが、修正回数などの条件面は慎重に確認しておきましょう。
フリーランスの業務委託契約の流れ
フリーランスと企業が業務委託契約をする場合の流れは、以下の4ステップです。
- 契約内容の相談、話し合い
- 業務委託契約書の作成
- 業務委託契約書の内容を確認
- 業務委託契約の締結
契約内容の相談・話し合い
はじめに、企業と請け負う仕事の内容を話し合います。具体的には、業務内容、契約内容、報酬、契約期間などです。
業務委託契約書の作成
内容に双方の合意を得られたのであれば、契約書を作成します。基本的に発注側の条件が有利となることが多いため、できる限り契約書は受注するフリーランス側が作成することがおすすめです。
業務委託契約書の内容を確認
作成した業務委託契約書を双方で確認します。このとき、不利な条件となっていないか確認することが重要です。
業務委託契約書の締結
最後に業務委託契約書を製本します。契約書はどちらか一方が持つのではなく、2部用意してフリーランスと企業それぞれが持つようにしましょう。契約書を書き換えるリスクを避けるため、割印を押すことが重要です。
また、最近では電子サインを使用するケースも増えています。
業務委託契約書に記載する事項
業務委託契約を締結する際の主な記載事項は、以下の5つが挙げられます。
あとでトラブルとなるのを避けるため、契約書に明記しておきましょう。
- 契約内容・業務範囲
- 報酬・支払い条件
- 契約期間・納期
- 権利・著作権
- 秘密保持の同意
契約内容・業務範囲
契約内容や業務範囲はお互いの認識の違いが起こりやすいため、できるだけ正確に細かく記載することが重要です。
報酬・支払い条件
報酬(委託料)を明記します。定期払いか成功報酬なのか、支払時期は当月か翌月か、支払方法もあらかじめ決めておくことが大切です。
また、変更があったときに備えて「事情が変化した場合は協議可能」と記載しておきましょう。
契約期間・納期
業務の契約期間を記載します。委任契約の場合はもちろん、仕事の完成が求められる請負契約であっても目安として期間を記載しておくとよいでしょう。
権利・著作権
委託する業務内容が著作物制作にあたる場合や、業務成果物が知的財産権を有する場合、権利が委託者と受託者のどちらに帰属するかを記載します。曖昧にしておくとトラブルの原因となるため、事前に明記しましょう。
秘密保持の同意
仕事をするうえで個人情報や知的財産など、第三者に漏らすとリスクのある情報を取り扱うことは多々あります。秘密保持はフリーランスと企業双方にとってトラブルを防止するために必要なため明記しておきましょう。
業務委託契約書の作成ポイント
フリーランスになり、はじめて業務委託契約書を作成するという方は多数いらっしゃいます。業務委託契約書の作成ポイントは以下のとおりです。
- 雛形(テンプレート)を使用する
- 契約内容は柔軟に対応する
- 疑問点は解消し、認識の相違をなくす
- 言葉の意味が明確か確認する
- 一般的な形式を備えているか確認する
雛形(テンプレート)を使用する
業務委託契約書を結ぶ際は、雛形を使用しましょう。フリーランスの増加にともない情報発信が増えており、インターネット上に公開されたテンプレートを利用することが可能です。
業務委託契約書に記載する内容は契約書のため、雛形を使用すれば時間を節約できます。
また、専門家によって作成されたものであれば、契約内容の項目漏れを防ぐ効果も期待できます。
契約内容は柔軟に対応する
業務内容によって、記載するべき項目も変わります。業務委託契約書を作成する際は、業務内容に合わせて項目を記載しましょう。
また、詳細に書くことだけでなく、必要な情報を取捨選択することも重要です。フリーランスの方は、外注しなければ契約もご自身で行うことになります。契約内容を詳細に書くと確認作業も増えるため、自分に適した契約書に変更していく必要があります。
疑問点を解消し、認識の相違をなくす
業務委託契約書にサインする前に、少しでも疑問に感じることがあれば相手方に確認しましょう。契約書を締結するということは、契約内容に合意したことと同義です。万が一トラブルが発生した場合、契約内容をもとに話し合いをします。そのため、お互いの認識に相違がない状態で契約を交わすことが重要です。
言葉の意味が明確か確認する
記載されている言葉が、多義的になっていないかどうか注意しましょう。言葉が多義的になると、当事者間での解釈のずれが発生する可能性があります。
例えば、契約書の漏れを防ぐ目的で、「等」という言葉が使用されます。この「等」は、人によって解釈の余地がある言葉です。「等」に含まれる意味がどの程度の範囲であるのかを明記しなければトラブルになるリスクがあります。契約書作成時に、よく話し合うことが重要です。
一般的な形式を備えているか確認する
報酬や契約期間、権利などの項目は、ほとんどの契約書に含まれています。いずれもトラブルになりやすい項目です。業務委託契約書を締結する前に、必要な項目が記載されているか確認しましょう。
まとめ
フリーランスは、自身の経験や知識、スキルを活用して収入を得る働き方です。
自由に働くことができる反面、契約書なしで仕事を請け負うと、トラブルのもとになります。企業とフリーランスがお互いに安心して仕事ができるよう、業務委託契約書の書き方を理解することが重要です。
フリーランスとして仕事を請け負うときは、業務委託契約書を締結しましょう。
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