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副業の活性化が日本企業にもたらす効果とは

副業の活性化が日本企業にもたらす効果とは
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副業における企業と個人の動向

副業の活性化が日本企業にもたらす効果とは

最近は副業を認める会社が増えてきた。昨年、私の会社で調査したところ、すでに認められている会社は16%、「(現在は認められていないが)導入検討がされている(20%)」も加えると近い将来にはかなりの会社で副業が可能になるだろう。私が以前勤めていたトヨタ自動車も最近副業が解禁になった。「トヨタがやったのだからうちも…」と追随する大企業が増えてくるかもしれない。

調査では、「実際に副業をやっている人」はまだ4%だったが、44%の方が「今後はやる気がある」と答えている。副業と言えば若い人のイメージがあったが、50代でも38%が「やる気がある」と答えたことは予想以上だった。

参考:「副業に関する調査」/A.T.Marketing Solution

なお、海外では、副業を禁止している会社などほとんどない。社員と会社は「労働の対価として報酬を払う」という対等な契約関係にあるのだから、報酬に見合う価値を提供できていれば、副業を禁止する理由などないはずだ。今後ジョブ型雇用が進むと、副業を禁止する理由は更になくなるだろう。 副業の目的はいろいろあると思うが、以下では3種類に分類してみた。

副業の目的

収入補填型

本業での収入を副業で補うのを目的としたもの。例えば、会社員が就業時間外にコンビニやフードデリバリーで働いたりするようなこと。このような副業が増えている背景には、日本人の給与水準が30年間も上がらないことがあるのだろう。

参考:「令和2年版 厚生労働白書−令和時代の社会保障と働き方を考える−」より 図表1-8-2 平均給与(実質)の推移(1年を通じて勤務した給与所得者)/厚生労働省

自己能力横展開型

本業で培ってきた能力(生産性資産)を自社以外のフィールドでも活用することで、収入を得ながら自身の能力にも厚みを加えていくもの。例えば、企業のマーケティング担当者が、(競合社以外の)他企業の商品戦略やコミュニケーション戦略をサポートするようなことや、社員デザイナーが他社のデザインを請け負うことなどもこれに該当するだろう。

自己実現、複業型

会社の業務とはまったく関係なく、自分自身がしたかったこと。例えば友人と無農薬野菜の販売事業を立ち上げたり、NPOなどで働くことなど、収入が主目的ではなく、自己の実現や社会貢献を目的にすること。「副業」ではなく「複業」と呼ぶ方もいる。

副業とリスキリングの関連性

「自己能力横展開型」は最近言われているリスキリングにもつながるだろう。リスキリングというと、IT系を中心としたまったく新しいスキルを身に着けることをイメージする方も多いと思うが、副業を通じて自分自身がすでに持っている能力の幅を広げることも立派なリスキリングだと思う。自社では普通のことでも外に出ると重宝されることも多いし、他社での武者修行を通じて経験値を更に高めることもできる。大企業の管理部門の経験者に助けてもらいたいベンチャー企業は多いだろうし、逆にベンチャー企業で事業の立ち上げをやってきた方の考え方を学びたい大企業もあるだろう。その延長線上には転職や独立の道もあるかもしれない。

前職(トヨタ自動車)時代に、異業種の商品企画部員同士の交流会があり、お互いの企業の商品を企画しあうことをやったことがある。自社では考えもしなかったようなアイデアが出てきて、大変刺激を受けた。守秘義務等の問題を適切にしておけば、企業同士で副業社員の交換留学制度を導入しても面白いかもしれない。

ミドル・シニア社員と副業

個人的にはミドルやシニア社員の方が副業に向いていると思う。若い方は自社のノウハウを吸収するためにまずは本業に集中し、着実に生産性資産を蓄積する方がいいと思う。自社の仕事を十分にこなせない人が副業をやっても、あまり能力が高まるとは思えないからだ。その点、自社では「宝の持ち腐れ」になっている年配社員が他社で活躍することは社会全体の利益にもつながる。

最近では「タレントシェアリング」という考え方が広まりつつある。個人の才能を社会で共有するという考え方には私も大賛成だ。

副業が企業の閉塞感に風穴を開ける

日本社会の閉塞感の一因として「労働流動性の低さ」が言われて久しい。その意味において、最近の転職市場の活性化は良いことだと思う。しかし、社会を活性化させる方法は転職だけではないだろう。自身の本拠地を持ちながら副業を活用して活躍の場を広げることは、他国にはない新しい日本人の働き方になる可能性を秘めている気がする。副業の活性化が企業の枠を超えた人材の共有を促し、日本企業の閉塞感に風穴を開けることを大いに期待したい。

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髙田 敦史

A.T. Marketing Solution 代表/一般財団法人ブランド・マネージャー認定協会 アドバイザー/東京理科大学非常勤講師/広島修道大学非常勤講師

1985年にトヨタ自動車入社後、商品企画を12年、広告・宣伝を14年、タイ・シンガポールでの海外駐在などを経験。2012年からは、レクサスブランドマネジメント部長としてグローバルレクサスのブランディングおよび広告宣伝、広報活動を主導。2016年7月、A.T. Marketing Solutionを設立し、ブランディング、コミュニケーションについてのコンサルティング業務を行う。 著書に、サラリーマンのキャリア関係について書いた「45歳の壁、55歳の谷~自分らしく勝つ! サラリーマンのための6つのシナリオ~」高陵社(2023年1月)がある。

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