地方副業とは?注目されている背景、個人や企業が取り組むメリットとデメリットを解説
政府が「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を発表したことなどを受け、近年、副業を解禁する企業が増えてきています。また、それに伴い、副業に興味を持ち、実際に取り組む個人も増えてきました
そうしたなかで、近年注目を集めているのが「地方副業」です。
地方副業は、地方に所在する企業などから案件を受け、副業として業務に取り組むことです。コロナ禍を経てリモートワークが普及したことなどにより、都市部に住みながら地方副業に取り組みたいと考える個人が増えてきました。
本記事では、地方副業とは何か、注目される背景や個人と企業それぞれにとってのメリットやデメリットなども含めて解説します。地方副業に興味がある個人の方、副業解禁や副業人材の活用に興味がある企業担当者の方は、ぜひ参考にしてみてください。
地方副業とは
地方副業とは、主に都市部ではたらく人材が、地方に所在する企業に副業という形で関わり、貢献するはたらき方を指します。地方といっても、副業を行う個人にとっての故郷を指すわけではなく、自身の故郷以外の地方で副業に取り組む方も珍しくありません。
地方副業と聞くと、物理的距離があるためハードルが高そうだと感じるかもしれませんが、リモートワークの普及によってはたらきやすい環境が急速に整っています。オンラインやオフライン、どちらの案件も存在し、オンラインで従事可能な案件や、月に一度程度の訪問でよい案件を選べば、都市部での生活を維持しながら地方に貢献できるため、副業に関心がある個人にとって新たな選択肢となっています。
また、地方の企業が人材を獲得する際、これまでは地元住民や移住者を雇用する方法が主な選択肢でした。しかし、地方副業では居住地に関係なく人材を獲得できます。そのため、特に過疎化が進行する地域では、地域を活性化する方法の一つとして注目されています。
地方副業が注目される背景
近年地方副業が注目されている背景としては、以下の3点が挙げられます。
- リモートワークの普及
- 自治体などによる地方創生の推進
- 移住することなく地方の仕事を経験できる
順番に見ていきましょう。
リモートワークの普及
リモートワークが普及し、遠隔地でも仕事がしやすくなったことは、地方副業に注目が集まる理由の一つです。地方副業に興味があっても、都市圏に住んでいるため地方の企業と対面ではたらくのは難しいと感じる方も多いでしょう。
リモートワークが可能な案件であれば、物理的距離は関係なく地方副業に従事できます。リモートワークが普及したことで、副業の選択肢が大きく広がったといえるでしょう。
自治体などによる地方創生の推進
地方副業が注目される背景として、自治体などによって地方創生が推進されている点も挙げられます。地方創生は、各地域がそれぞれの特徴を活かす形で自律的かつ持続的な社会を創生することを目指す取り組みです。
地方創生において注目されているのが、地域と多様な形で関わる「関係人口」の増加です。定住人口のように地域に居住はしないものの、関係人口はオンラインやオフライン問わずさまざまな形で継続的に地域と関わりを持ちます。地方副業に取り組む副業人材は、関係人口の一種として地域づくりの担い手となることが期待されています。
移住することなく地方の仕事を経験できる
プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」では、2023年に「地方でのはたらき方に関する実態調査」を行いました。その結果、一都三県(東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県)在住の会社員(経営者、役員含む)929名のうち、地方副業に興味がある会社員の割合は約6割(59.2%)にのぼりました。また、地方副業のメリットとして「本業を辞めずに地方の仕事を経験できる」「転居せずに地方ではたらくイメージを掴める」などが挙げられ、「地方転職」よりもハードルが低く、移住することなく地方の仕事を経験できる選択肢として魅力を感じていることがわかります。
出典:<地方でのはたらき方に関する実態調査>(HiPro(ハイプロ))
副業に取り組む個人が増えるなか、地方副業は新たな副業の選択肢として今後も重要な役割を担う可能性が高いといえるでしょう。
地方副業で活躍できる職種の例
地方副業として募集されている案件は、営業やマーケティング、エンジニア、広報、経理など幅広くあります。営業であれば販路拡大の支援、マーケティングであればECサイトの販売戦略構築やSNS活用、エンジニアであればサイト構築やアプリ開発など、内容は多岐にわたります。
都市部の企業などで培った最新の事例やノウハウは、地方企業にとって重要なナレッジとなるケースが少なくありません。副業での経験が個人としての成長や本業でのキャリアアップにつながるといった相乗効果も期待できます。
地方副業が個人にもたらすメリットやデメリット
地方副業に個人が取り組んだ場合、具体的にどのようなメリットやデメリットがあるのでしょうか。順番に見ていきましょう。
個人側のメリット
個人が地方副業に取り組むメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 思い入れのある地方に貢献できる
- 都市部で培ったスキルや経験を活かせる
- 新たなスキルや知識を習得できる
思い入れのある地方に貢献できる
都市部ではたらきながらも、特定の地域に思い入れがあるという個人の方もいるでしょう。本業があるため移住は難しい場合でも、地方副業という選択をすることで地域に関わることが可能です。完全リモートの案件や、月に一度出社が必要な案件などさまざまな選択肢があるため、自身の希望や都合に合わせて案件を選べば、思い入れのある地方に貢献できます。
都市部で培ったスキルや経験を活かせる
都市部で会社員としてはたらきながら、そこで培ったスキルや経験を活かせることもメリットの一つです。競争の激しい都市部のビジネスで培った知見は、地方の自治体や企業に重宝される可能性があります。自分では当たり前の知識だと思っていたものでも、副業先にとっては新しい学びとなるケースは少なくありません。
新たなスキルや知識を習得できる
地方副業に取り組むことで、本業では携われないようなプロジェクトに参画し、貴重な経験ができる可能性もあります。地方には中小企業も多く、本業よりも経営者と近い距離ではたらく機会もあります。特に、スポットコンサルの案件などであれば経営者と直接コミュニケーションをとるケースが少なくありません。都市部企業での勤務では得にくい「経営者目線」での経験を得ることができれば、本業も含めたキャリアにおいてプラスにはたらく可能性が高いでしょう。
個人側のデメリット
一方で、個人が地方副業に取り組む際には以下のようなデメリットも認識しておく必要があります。
- セルフマネジメントが難しい
- ワークライフバランスが崩れやすい
ただし、これらは地方副業に限らず副業全般に共通するものでもあります。順番に見ていきましょう。
セルフマネジメントが難しい
本業のほかに副業案件を受託すれば、セルフマネジメントの難易度は上がります。活働時間や仕事の進捗管理などをすべて自身で行う必要があるため、開始当初は本業やプライベートとの調整に苦労するかもしれません。負担が大きくなりすぎないよう、徐々に副業の業務量を増やしていくのがよいでしょう。
ワークライフバランスが崩れやすい
副業を開始する場合、もともとプライベートだった時間の一部を割くことになります。本業と副業だけで起床時間のほとんどを占めるような状況では、疲労やストレスが溜まってしまうでしょう。ワークライフバランスをどう整えるかは事前によく検討することが大切です。
地方副業が募集側企業にもたらすメリットやデメリット
副業人材を募集する地方企業にとっても、さまざまなメリットやデメリットがあります。
募集側企業のメリット
募集側企業にとってのメリットとしては、以下の3点が挙げられます。
- 人材不足の改善につながる
- 人件費を抑えられる
- 地域の活性化に貢献できる
人材不足の改善につながる
生産年齢人口の減少に伴って全国的に人材不足が加速するなか、特に地方での正社員採用は難しいという現状があります。そうしたなか、地方副業案件とすることで、居住地を問わず外部人材の活用が可能になる点は大きなメリットです。必要なスキルや経験がある人材を周辺地域から探すのは簡単ではありません。都市部の副業人材を対象とすることで、企業が抱える課題の解決に貢献できる人材とのマッチングの機会が広がります。
人件費を抑えられる
副業という形で人材を活用することで、正社員の採用と比べてコストを抑えられる点もメリットとして挙げられます。正社員としての採用では長期雇用が前提となるため、給与の高い優秀な人材を雇うことが難しい企業も多いでしょう。副業人材であれば短期間での活用も可能なため、必要な期間のみの活用にすることで、結果的に人件費を抑えることも可能です。
地域の活性化に貢献できる
地域を支える企業の持続的成長は、地方創生の推進に欠かせません。その一方で、人材不足などにより、地域の企業が新しいことに挑戦しにくい状況にあることも事実です。そうしたときに、都市部の優秀な人材を副業人材として活用することで、新たな取り組みや課題の解決が可能となります。その結果、企業の成長が促進され、地域活性化への貢献にもつながっていくでしょう。
募集側企業のデメリット
一方、副業人材を募集する地方企業には以下のようなデメリットもあります。
- 人材の管理が難しい
- 情報漏洩のリスクがある
人材の管理が難しい
地方副業として都市部人材を活用する場合、リモートワークを導入するケースが増える可能性があります。しかし、副業人材が異なる場所ではたらくため、管理が難しいというデメリットがあります。
また、どのように業務を切り出して依頼すればいいのかわからず、スキルの高い人材をうまく活用しきれないというケースもあります。副業人材とのマッチングサービスのなかには、副業人材の条件合意成立までサポートしてくれるサービスも存在するため、そうしたサービスを活用すれば、副業人材の活用を進めやすくなるでしょう。
情報漏洩のリスクがある
たとえ故意ではないとしても、副業人材に共有したノウハウや情報が外部に流出する可能性がある点は、リスクだといえます。副業人材を活用する際は、情報の取り扱いに関して事前にルールを整備するなど、対策したうえで人材活用を進める必要があります。
地方での副業案件を探すには
地方副業に興味があるものの、どう探してよいかわからないという個人の方も多いでしょう。近年では、地方副業に特化したマッチングサービスも登場しています。
プロフェッショナル人材の総合活用支援サービス「HiPro(ハイプロ)」では、地方副業に特化した「HiPro Direct for Local」を展開しており、地方副業の案件を探せます。リモートワークOKな案件が豊富なため、現在、都市部に住んでいて地方副業に興味があるという方は、ぜひ一度チェックしてみてください。
まとめ
本記事では、地方副業とは何か、注目される背景や個人と企業それぞれにとってのメリットやデメリットなどを含めて解説しました。
地方副業に興味を持つ個人が増えているなか、政府や地方自治体による地方創生の推進や新型コロナ感染症対策をきっかけとしたリモートワークの普及などにより、地方副業への注目度が高まっています。個人と募集側企業のそれぞれにメリットとデメリットが存在しますが、はたらき方が多様化する現代においてはぜひ検討したい選択肢の一つだといえるでしょう。
地方副業に興味がある個人の方、副業解禁や副業人材の活用に興味がある企業担当者の方は、本記事でご紹介した内容を参考に検討を進めてみてはいかがでしょうか。
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