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オンボーディングとは?新人研修との違いや目的、進め方をわかりやすく解説します

オンボーディング

時間と労力をかけて人材採用したのにも関わらず、企業や職場の雰囲気、仕事内容に馴染めずに早期離職してしまうといった問題に、現在多くの企業が悩まされています。

そのような企業課題に対して、近年市場で注目を集めている施策が「オンボーディング(オン・ボーディング)」です。

本コラムでは、オンボーディングの概要説明からはじまり、注目を集める背景やオンボーディングの目的・メリット、進め方などにつき、詳しく解説します。

オンボーディングの意味、新入研修/SaaSのオンボーディングとの違いとは

オンボーディング

オンボーディング(onboarding)の意味

オンボーディングは、もともと船や飛行機に乗り組むことを意味する「on-board(オンボード)」を語源としている言葉です。新しい乗組員が早く仕事に慣れるように育成・サポートするといった意味合いから派生し、現在は人事用語としても用いられています。

ビジネス用語としてのオンボーディングには、新たに採用した人材が即戦力として活躍できるよう、育成・サポートを行う取り組みを指します。また、オンボーディングは新規採用した人材が企業のルールや仕事の進め方などを早期に習得し、スムーズに職場に慣れることを目的に実施されます。

新人研修との違い

新人研修は、新卒社員向けに実施されることが一般的である一方、オンボーディングは幅広い社員が対象になります。具体的には、新卒社員や中途社員、エグゼクティブ人材も育成・サポート対象に該当します。

また、新人研修においては、会社や各部門の紹介といったオリエンテーションがメインとなり、短期的な取り組みとして実施されるケースが多い傾向にあります。一方、オンボーディングでは、新規採用人材の戦力化には継続的な育成・サポートが必要との観点から、中長期的な取り組みとして実施されることが多い点に、違いがあるといえます。

SaaSのオンボーディングとの違い

SaaSは「Software as a service」の略語であり、サブスクリプション型(利用期間に応じて利用料金を支払う仕組み)のクラウドサービスです。

SaaSのオンボーディングは、顧客に継続的に製品・サービスを利用してもらうことを目的とした、導入支援を指します。顧客に製品・サービスの操作方法や特徴を説明し長期利用を目指す「カスタマーサクセス」の要素を持つ取り組みである点において、人事領域におけるオンボーディングとの違いがあります。

オンボーディングが注目されている背景

オンボーディングが注目されるようになった背景には、なにが考えられるのでしょうか。

2021年10月に厚生労働省が公表したレポート(※1)によると、 就職後3年以内の離職率は新規高卒就職者で36.9%、新規大卒就職者で31.2%となることがわかりました。いずれの離職率も3割を超えていることから、多くの企業にとって新入社員の早期離職は大きな問題になっていることが読み取れます。当然のことながら早期離職が与える影響は、中途社員やエグゼクティブ人材であっても変わりはありません。

そこで効果的な社員定着率の向上施策として、オンボーディングに市場の注目が集まるようになったのです。

※1 出典:「新規学卒就職者の離職状況を公表します」(厚生労働省)

人事(HR)領域のオンボーディングの目的

人事(HR)領域のオンボーディングの主な目的につき、以下にご紹介します。

新入社員の離職防止

近年、新入社員の退職理由として、「仕事内容が合わない」や「職場の雰囲気に馴染めない」が数多く挙がる傾向にあります。オンボーディングにより、新入社員に対する育成やサポートを手厚く行うことで、仕事へのモチベーションが高まり、会社へのエンゲージメントの向上が期待できます。結果、新入社員の離職を防止できる点は、オンボーディングの目的の一つです。

中途社員の早期戦力化

企業の文化やルールなど、所属する組織への適応がスムーズに進むほど、いち早く仕事内容を理解でき、関連スキルの習得につながることから、オンボーディングは中途社員の早期戦力化にも効果を発揮するといわれています。

部署ごとの教育格差の削減

部署の違いにより、教育格差が発生しないように社内の仕組みを整備することも、オンボーディングの大切な目的です。教育格差の発生防止には、新規採用人材に対する、体系的かつ中長期的なオンボーディングのスケジュール構築が効果を発揮します。

オンボーディングのメリット

次に、企業視点におけるオンボーディング実施のメリットを4つ解説します。

採用・人材育成コストの削減

オンボーディングによる離職防止は、社員定着率の向上に直結します。定着率が向上する分、人材不足解消を目的にした新規採用や、採用人材に対する育成の必要がなくなり、大きなコスト削減を見込める点はオンボーディングの大きなメリットです。

生産性の向上に伴う業績拡大

オンボーディングの実施より、採用人材の早期戦力化が期待できます。採用した新卒・中途社員、エグゼクティブ人材が、それぞれ有するスキルを早期に発揮できることは、生産性の向上にダイレクトに寄与します。結果、業績拡大を図れる点は、企業にとってのメリットだといえます。

人材育成施策の改善

企業がオンボーディングを行う際、OJTや業務のサポートに限らず、定期MTGの開催、メンター制度の導入、相談窓口の設置など、幅広い施策を組み合わせながら実施するのが一般的です。オンボーディングを通して、新たな施策に取り組む機会も増えるため、既存の人材育成施策の改善が期待できます。

従業員満足度の向上

従業員満足度は、仕事のやりがいや職場の働きやすさ、福利厚生の充実などに関する従業員の満足度を指標化したものであり、ES(Employee Satisfaction)とも呼ばれることもあります。オンボーディングにより、仕事内容の理解が増し、他社員とのコミュニケーションが活発化することで、従業員満足度の向上にも一役立ちます。

オンボーディングのプロセス

実際に企業がオンボーディングを導入する際には、どのように進めれば良いのでしょうか。オンボーディングのプロセスにつき、順を追ってご紹介します。

目標設定

セカンドステップのオンボーディングプランを作成するには、目標設定が不可欠になります。また、目標設定時には、自社課題をクリアできる目標を設定するのが得策です。「職場に馴染めなかった」という退職理由が多い場合は短期間で周りの社員と馴染みやすくなる職場作りを、「仕事内容が自分のスキルを超えていた」という退職理由が多い場合は新規採用人材への教育機会を増やし、スキル習得を支援する体制を整備するなど、課題解決につながる目標を設定しましょう。

オンボーディングプランの作成

次に、設定した目標に沿うオンボーディングプランを作成します。プランは短期間ではなく、1年程度の中長期的な期間を目安に組むのが効果的だといわれています。将来的に導入効果の振り返りがしやすくなるよう、入社後1日、1週間、1か月、数カ月、半年、1年といった具合に期間を区切った上で、オンボーディングプランを設定しましょう。

また、新規採用した人材一人ひとりの職種や能力、経験に応じたプランを個別に作成することで、オンボーディングプランはより魅力的なものになり、実施によるメリットも獲得しやすくなります。

配属先や関係部署からのフィードバック

オンボーディングプランの実現には、人事部や教育担当だけでなく、配属先で業務を共にする上司や同僚、関係部署のメンバーの協力・理解が欠かせません。人事と現場では、想定している課題にギャップが生じている可能性があるため、オンボーディングプランを作成した際には、配属先や関係部署にもプランを共有し、フィードバックをもらうことが非常に大切です。フィードバックを通して、実施前にプランのブラッシュアップを図りましょう。

実施

オンボーディングの環境が充分に整った後に、プランを実施します。実施後に、新たな課題に直面することもあるでしょう。そのため、作成したプランに固執することなく、課題が発生した際には臨機応変に代替え施策を検討するなど、調整を図りながら進めることも大切です。

振り返り

さらなる生産性の向上や組織の一体化に向け、オンボーディング終了時には、振り返りを行います。「入社後1日、1週間、1か月、数カ月、半年、1年と期間毎に想定の効果を得られたのか」につき、人事や配属先、トレーナー、関係部署のメンバーなどからヒアリングを行いましょう。その際には、オンボーディングを受けた当事者である、新規採用人材の意見をヒアリングすることも大切です。実施者と当事者、双方の意見を収集・分析することで、改善点が明確になり、PDCAの最適化が図れるためです。また、オンボーディングの効果を最大限に向上するためにも、実施期間における離職率やエンゲージメントの数値を定期的に測定することをおすすめします。

まとめ

社員定着率の向上や採用人材の早期戦力化に、オンボーディングは非常に有効な施策となります。

また、近年ではオンボーディング実施による効果向上を目指し、各種ITツールの活用や外部機関によるオンライン研修を導入する企業も増えています。

ぜひ、貴社に適したオンボーディングの導入・実施を通して、更なる事業成長を目指してみてはいかがでしょうか。

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