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ダイナミック ケイパビリティとは?新時代に求められる経営戦略理論を解説します

ダイナミック ケイパビリティ

近年トレンドの経営戦略理論の一つに、「ダイナミックケイパビリティ」があります。

経営環境が激しく変化する現代に適した理論として、注目を集めるダイナミックケイパビリティについての理解が深まるよう、本コラムでは用語の意味や注目される背景、構成要素、成功実例などについて詳しく解説します。

ダイナミックケイパビリティ(ダイナミック・ケイパビリティ)とは?

ダイナミック ケイパビリティ

ダイナミックケイパビリティとは、環境の変化に対応するために、企業が自己変革していく能力であり、「企業変革力」とも呼ばれています。企業におけるダイナミックケイパビリティは、外部環境の変化に応じて自社が保有する経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)を適切に組み合わせながら、自社の競争優位を確保する手法を指しています。

ダイナミックケイパビリティは、不確実性が高まり、変化の激しいビジネス環境を生き抜くために必要な経営戦略として、市場の注目を集めています。

ダイナミックケイパビリティとオーディナリーケイパビリティの違い

ダイナミックケイパビリティと混同されやすい用語に、オーディナリーケイパビリティがあるため、違いを説明します。

オーディナリーケイパビリティとは、自社の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)を効率的に活用し、利益の最大化を図る能力を指します。一方オーディナリーケイパビリティは、あくまで自社の経営資源の効率化にのみ視点が置かれており、外部環境の変化に対応する観点が盛り込まれていない点において、ダイナミックケイパビリティとの違いがあります。

不確実性が高まり、市場ニーズが著しいスピードで変化する現代では、内部環境への対応だけで企業競争力を維持していくことは困難です。そのため、外部環境の変化に対する観点を盛り込んだダイナミックケイパビリティは、時代が求める経営戦略として多くの企業に取り入れています。

ダイナミックケイパビリティ理論が生まれる背景となる理論

ダイナミックケイパビリティが生まれる背景となる2つの理論につき、以下にご紹介します。

競争戦略論

競争戦略論は、企業が自社の置かれている市場を分析し、自社の最適なポジションを発見するための理論を指します。自社の最適なポジションとは、競争優位性を確立できるポジションのことです。そのポジションの見極めに際し、企業は市場の競争要因となるファイブフォース(新規参入企業の脅威/売り手の交渉力/買い手の交渉力/代替品の脅威/既存企業同士の競争)分析を行います。

競争戦略論は、「自社の戦略はその時の市場の状況に左右される」といった考えに立脚しています。しかし、同じ業界内でも異なる経営戦略で成功を実現している企業が存在していることから、理論が脆弱だとして競争戦略論に批判の声が寄せられました。競争戦略論の批判を受けて誕生したのが、次にご紹介する資源ベース理論です。

資源ベース理論

資源ベース理論とは、同じ業界に属する企業ごとの競争力の違いは、保有する経営資源の異質性によって生じるという考え方を指します。つまり、持続的な競争優位性の獲得には、企業が保有する経営資源が影響していることを主張する理論です。資源ベース論では企業ごとの経営資源に関する強みや弱みを分析する際に、VRIOと呼ばれるフレームワークを用います。

VRIOとは、Value(経済的価値)、Rarity(希少性)、Imitability(模倣困難性)、Organization(組織)からなる略称であり、市場優位性を確かめる際に役立つフレームワークですが、資源ベース理論が100%正しいかというと、そうではありません。なぜなら、固有の経営資源に注視するあまり、市場の変化に対応できなかった企業も一定数存在しているからです。

資源ベース理論にも批判の声が上がった結果、市場の実態に即した最適な経営戦略の実現に向け、競争戦略論と資源ベース理論の二つの理論を組み合わせて考える、ダイナミックケイパビリティが誕生したのです。

ダイナミックケイパビリティが注目を集める理由

ダイナミックケイパビリティが注目を集める主な理由につき、以下に解説します。

不確実性が高まる時代

昨今、政治・経済における不確実性が高まる中、世界経済全体にも大きな影響を与えています。そのような時代においては、世界の変化に合わせ自己を変革させていく能力が不可欠となり、多くの企業がダイナミックケイパビリティの向上に取り組むようになりました。

技術革新

デジタル技術やIoT・AI技術をはじめとする技術革新は、人々の生活を豊かにし、社会に大きな影響を与えています。企業の持続的な成長を左右する技術革新を、上手に事業や組織運営に活用するためにも、ダイナミックケイパビリティの向上は欠かせません。

グローバル化

グローバル化の進行により、多くの国内企業が激しい国際競争に直面するようになりました。企業がグローバル市場で生き残るためには、新しい技術の活用や新規人材の採用と併せて、既存の経営資源の再利用・再構築が重要です。そこで企業に求められるのが、ダイナミックケイパビリティの向上であることも、注目を集める理由の一つに考えられています。

顧客ニーズの変化

顧客ニーズが絶えず変化し、多様化している現代において、顧客から常に求められる企業でなければ、市場で長く生き残ることは難しいでしょう。日々変化し多様化する顧客ニーズに柔軟に対応するためにも、ダイナミックケイパビリティの向上は、企業にとって重要な経営ファクターです。

ダイナミックケイパビリティを構成する3つの要素

ダイナミックケイパビリティを構成する3つの要素について、以下に解説します。

Sensing(感知)

1つ目の要素は、センシング(感知)です。センシングとは、顧客ニーズや同業他社の動向、社会情勢など、企業を取り巻く経営環境の変化をいち早く感じ取る能力を指します。日々変化する経営環境を的確に把握・分析し、最適な経営戦略を立てる上で、センシングは不可欠な要素です。

Seizing(捕捉)

2つ目の要素は、サイジング(捕捉)です。サイジングとは、企業が保有する経営資源を、状況に応じて再構成・再利用する能力を指します。サイジングも企業の競争力を高めるために、欠かせない要素になります。

Transforming(変革)

3つ目の要素は、トランスフォーミング(変革)です。トランスフォーミングは、企業が競争優位性を確立するために、経営資源を再構築・変容させる能力を指します。市場の変化に対し、組織体制の再構築や社内ルールの変更などを迅速に変革していくことで、持続的な競争優位性を確立できるため、トランスフォーミングも重要な要素になります。

ダイナミックケイパビリティとDXの関連性

ダイナミックケイパビリティを向上させるために必要なDXについて、以下に解説します。

そもそもDXとは

DXとは、デジタルトランスフォーメーション(Digital Transformation)の略称であり、デジタル技術を活用してビジネスモデルを変革し、市場における競争優位性を確立することを指します。また、2020年5月に経済産業省・厚生労働省・文部科学省が公表した「2020年版ものづくり白書『概要』」(※1)の第1章では、ダイナミックケイパビリティの向上には、DX(デジタル化)が有効であることが指摘されています。

DXとダイナミックケイパビリティの関連性

前述したダイナミックケイパビリティの3つの要素(感知・捕捉・変革)の力は、DXの活用を通して最大限に発揮されます。感知や捕捉は、効率化にデータを収集・分析できるデジタル技術の活用により、スムーズに実現できるようになります。また、変革に必要な組織体制の再構築や社内ルールの変更などにも、デジタル技術の活用が欠かせません。今後ダイナミックケイパビリティの向上を望む場合、DXの推進により更なる効果が期待できるため、前向きに検討されることをおすすめします。

※1出典:「2020年版 ものづくり白書 『概要』 」(経済産業省)

ダイナミックケイパビリティの成功事例

ダイナミックケイパビリティの成功事例について、3つご紹介します。

フィルムメーカーの事例

A社はフィルム事業で有していた高度なコア技術を、化粧品や医薬品といった他の産業向けに転用し、新規事業の立ち上げに成功したことで有名です。将来的なフィルム需要の減少を見据え、外部環境の変化に応えるために新たな事業展開を図った結果、A社の業績は好調を維持しています。A社の事例は、ダイナミックケイパビリティの高い推進効果を示す、代表的な成功事例の一つです。

空調機メーカーの事例

業界に先駆け、海外事業の展開に注力してきたのが、空調機メーカーのB社です。B社は近年、環境意識が高まる欧州市場のニーズに応える新商品をリリースし、市場の注目を集めました。また、生産拠点を市場の近くに設置する方針を掲げている点は、B社の事業の大きな特徴です。ダイナミックケイパビリティの向上を通して、それぞれの国・地域のニーズに合った製品を短いリードタイムで供給できる体制を整えた結果、B社の事業は安定成長を実現しています。

インテリア販売企業の事例

C社は変化を続ける市場ニーズに応えるために、顧客がオンライン上で商品の相談を行える、新たなカスタマーサポート体制を構築しました。オンライン通話を通して、顧客は離れた場所にいながら相談や問い合わせができるようになり、顧客体験の向上につながりました。早期に市場ニーズを感知・捕捉し、組織体制の変革を通して他社との差別化に成功したC社の事例も、ダイナミックケイパビリティの成功事例だといえるでしょう。

ダイナミックケイパビリティ推進時の課題

ダイナミックケイパビリティを企業経営に活かすには、乗り越えなければならない課題もあります。課題を予め認識した上で、ダイナミックケイパビリティの推進に備えましょう。

経営者の能力が問われる

不確実性が高まる現代において、外部と内部環境を正しく把握し、持続的に市場競争を勝ち抜くための経営戦略を考える必要があります。そこで問われるのが、経営者の能力です。将来を見据えた抜本的な改革を断行できる経営者の存在なくして、ダイナミックケイパビリティの推進は難しいといわれています。

時代の流れを把握するのが困難

経営環境が激しく変化する現在では、時代の流れやトレンドを的確に把握することは困難を極めます。市場の変化を読み取れず、経営戦略の立案・構築に苦慮している企業も少なくありません。消費者動向や時代のニーズといったビジネス環境を的確に把握・分析できるかが、ダイナミックケイパビリティ推進時の課題になります。

経営資源は限られている

ダイナミックケイパビリティでは、既存の経営資源(ヒト・モノ・カネ・情報・時間)を適切に組み合わせながら、自社の競争優位の確保を目指しますが、経営目標の実現に向け、資源が不足するケースもあります。特にさまざまな業種で人材不足が深刻化している日本では、求める人材の確保は容易なことではありません。限られた経営資源からダイナミックケイパビリティの向上を図る必要がある点も、企業が乗り越えなければならない課題の一つです。

ダイナミックケイパビリティのまとめ

市場の変化が激しく、将来の予測が困難な昨今、ダイナミックケイパビリティの推進は不可欠です。

今後、持続的な競争優位性を確立するためにも、DXをはじめとするデジタル技術を活用しながら、積極的にダイナミックケイパビリティを経営に取り入れていきましょう。

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