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企業成長を後押しするフリーランスの存在。モノづくりの進化と革新を支える、注目企業の開発チームとは

株式会社アダコテック

近年さまざまな業界でIT化が進んでいますが、その流れは日本の「お家芸」と言われる製造業にも訪れています。そんな日本の「モノづくり」を支えるIT企業の一つとして注目を集めるのが、今年15億円の資金調達を実施した株式会社アダコテックです。

アダコテックのプロダクトを率いる開発チームには、フリーランスエンジニアの姿も。IT人材不足が問題視され、外部人材の活用が進むなか、アダコテックではどのようにフリーランスエンジニアと共創しているのでしょうか。フリーランスエンジニアの活用に至った経緯や魅力を伺いました。

行き詰まる人員確保に、新たな選択肢を

――まずは事業内容について教えてください。

画像を使った異常検出技術を活用し、製造業の検査・検品工程の自動化に取り組んでいます。たとえば、今はほとんどの方がスマートフォンをお持ちですよね。そのスマートフォンも、工場から出荷される前に、液晶パネルに傷かないかなどを人の目で見て、異常の有無を確認しているのをご存知でしょうか。

検査・検品に対して「簡単そう」という印象を持たれる方もいるかもしれませんが、正常・異常を瞬時に判断するのには熟練の技が求められますし、もし不良を見落としてしまえば大きな損失につながりかねない。検査・検品の現場は、プレッシャーのかかる厳しい環境です。少子高齢化などで検査・検品を担当する人員の不足が問題視されるなか、当社では検査を自動化するソリューションの提供を通して、この課題と向き合っています。

これまでもさまざまな企業が検査・検品の自動化に挑戦してきましたが、世界が認めるジャパンクオリティを支えるような高精度の検査を実現するのは簡単なことではありません。当社では産総研(国立研究開発法人産業技術総合研究所)で開発された特許技術を用いて独自のAIを開発し、従来よりも効率的な異常検知を可能とするAIソフトウェアを提供しています。

――どのような業界・企業で導入されているのでしょうか。

たとえば自動車部品Tier1メーカーのプレス設備における異常検知やパワートレイン生産ラインで導入いただいています。現状は自動車業界や半導体業界などの企業様が中心ですね。

――異常検知のAIソフトウェアの開発にあたって、フリーランスのエンジニアを活用していると伺いました。活用に至った経緯を教えてください。

2019年にシリーズAで資金調達をさせていただいたことにより、急速に会社を成長させる必要がありました。成長のためには、これまでよりも技術領域を広げていかなければなりませんし、それに対応できる新たなエンジニアも必要になります。

その一方で、求める技術領域のすべてが、今後も恒常的に必要かどうかは判断が難しいところです。技術は日々進化し変わりますので、求める人物像の要件定義は容易ではありません。また、我々の事業方針が変わることもあるかもしれない。そうした先々を鑑みたときに、正社員採用に踏み切れない技術領域が一部ありました。

そんなとき、当社で採用や広報を担当してくれている出塚から、フリーランスエンジニアの業務委託の話を伺いました。フリーランスのエンジニアであれば、期間を決めて力を貸していただけます。人手が必要な一方で、採用活動に行き詰まっていた領域に対して、ご相談できるのではないかと思い、募集してみることにしました。

――現在フリーランスの方は何名いますか。

開発領域でいうと、フリーランスの方は4名在籍しています。そのほか、プロダクト設計やデザイン業務をご依頼している副業の方も3名ほどいます。

――全体の社員数が20名ほどと伺っています。それを考えるとフリーランス・副業の方の比率が高いですね。

開発領域はもちろん、他の部門でも外部のプロフェッショナルの力を借りてきました。広報のコンサルティングやカスタマーサクセス立ち上げ時のご支援、採用に関するコンサルティングなどさまざまです。やはり社員20名だけではカバーできる領域には限界がありますので、「社内のリソースで足りなければ、外部の専門家に依頼しよう」という志向性をもっている会社だと思います。

違和感ある採用を行わない勇気

伊藤桂一さん

――フリーランスエンジニアの方は、どのようにプロジェクトに参画されていますか。

まずエンジニアチームの全体像から話すと、大きく分けてAIの開発チームとWebの開発チームの2つに分かれており、チーム毎にさらに開発領域が細分化されています。たとえばAIチームでいうと、R&D(研究開発)領域、R&Dを踏まえてプロダクトをつくる領域、顧客のデータを分析・支援する領域、受託開発領域の4つですね。それぞれをスクラム開発で進めており、大体2週間を1つのスプリントとしています。

AI開発チームには2名のフリーランスエンジニアの方に参画いただいているのですが、「今回はこの部分で力を借りたい」「次はこちらで力を発揮してほしい」というように、状況に応じて4つの領域のいずれかにジョインいただいています。

――決められた領域で長く、ではなく、チーム全体にまんべんなくスキルを発揮されているのですね。

そうですね。ただ、それぞれに得意領域があるので、それを活かしていただきたいと考えています。たとえばAI開発チームに参画されている2人ですと、一人はWindowsアプリやユーザーインターフェースでモダンな開発ができる方。もう一人はデータ分析や画像処理などアカデミック寄りの実装が得意な方です。その専門性が発揮できるよう、業務をご依頼しています。

――フリーランスの方に参画いただくことで、どのようなメリットを感じていますか。

まずは、技術力が高く、希少価値のある人材に力を貸していただけるのが大きなメリットだと思います。時間をかければ、そうした人材を採用できることもあるかもしれませんが、採用に時間がかかれば、そのぶん開発スピードも鈍化してしまう。求める人材、特に絶対数の少ない希少スキルを備えた方に素早く出会える、その魅力がフリーランスの活用にはあると思います。

また、これはフリーランスエンジニアの存在に限った話ではありませんが、開発チームが大きくなるにつれ、開発体制が整ってきたという変化はあります。シリーズAで資金調達するまで、エンジニアは私ともう一人だけだったので、2人が理解できていれば良いというような状態でした。しかしフリーランスの方をはじめエンジニアが増えていくことで、開発体制を整える必要性を強く感じるようになりました。このためドキュメントの保存やコードのレビュー、先ほど話したスクラム体制による開発など、少しずつ形づくっていくきっかけになりました。

――開発体制の構築には、フリーランスの方の声も活かされているのでしょうか。

そうですね。さまざまな現場を見ていらっしゃるので、失敗例も良い例もお伺いできたのが助かりました。弊社の開発体制が他社と比べて良い・悪いといった感覚は、やはり現場を知っている方だからこそ分かるものだと思います。教えていただいた情報を総合して「では、アダコテックではどうしていこうか」ということを相談できたのは、とても良かったですね。

――フリーランスのエンジニアを迎え入れるにあたって、不安に感じていたことはありますか。

現在ご契約している方の勤務形態はフルリモートですが、当初はフルリモートという働き方に対し不安がありました。フリーランスの方をお迎えしたのは、コロナ禍でリモートワークが一般化し始めた頃。リモートワークが一般化しつつあるといっても、週1~2回程度はオフィスにお越しいただこうと考えていたので、面談で一度しかお会いしていない方とフルリモートで上手く連携がとれるだろうかと、気がかりでした。

――対面できない不安はありますよね。それも踏まえ、貴社にマッチする方と出会うために、面談時などに気を付けていることはありますか。

フルリモートが前提の場合、面談時に一つでも違和感をおぼえることがあれば、見送る勇気をもつことが必要だと考えるようにしています。リモートワークの場合、顔が見えないことでコミュニケーションの齟齬が生まれやすいと思います。もちろんそういったことが起きないよう、できる限りの工夫をしていますが、それでも対面できない課題はついてまわりますよね。それを踏まえたときに、対面の面談で違和感をおぼえることがあれば、その違和感が今後リモートワークを介して増幅してしまう可能性があると危惧しています。

違和感には、企業文化のアンマッチやコミュニケーションルールの違いなどさまざまありますが、契約してから「やっぱり合わなかった」となれば、お互いに不幸になります。もちろん、違和感をおぼえることは個人側にもありますので、だからこそ「せっかく応募してくれたのに」「せっかく応募したのに」と消極的に捉えることなく、お互いが納得した状態で契約したいと考えています。

――お互いが納得するために、面談時に意識していることはありますか。

ありきたりなことでありますが、面談の最後に必ず「何か質問はありますか」と伺うようにして、頂戴する質問の内容は重要視しています。アダコテックと契約するにあたって懸念を感じているのであれば伺いたいですし、それを解消できるならできる限り努めたい。また、質問を伺うなかで人となりが見えてくることもあるので、質問をお伺いするのは大切なことだと感じています。

利益をもたらす仕組みづくりを目指して

伊藤桂一さん

――以前と比べ、フリーランスを選択する方や活用する企業が増えるなど、IT人材の働く形は変化しています。この状況をどうご覧になっていますか。

良いことだと思います。個人でいうと働き方の幅が広がりますし、企業でいえば当社のように「正社員採用の要件定義に時間がかかるが、人手を求めている」という状況に陥っている企業はたくさんあるはずです。個人と企業、両者共に利益があるならば、その動きが広がるのは必然ではないでしょうか。

一方で、課題もいくつかあると感じています。たとえば、フリーランスは会社や団体に属していないため、自分で営業をして案件を獲得するのが基本形態ですよね。しかし、フリーランスで働きたい方すべてが、営業活動が得意かといえば決してそうではないと思います。たとえば、短期間で高いクオリティのコードを書ける方なのに、その強みを自分で伝えるのが苦手とか。能力はあるのに案件を獲得できないケースは往々にして存在するのではないでしょうか。フリーランスを選択する方が増えれば、そのぶん案件獲得に悩む方も増えると思いますので、エージェント企業もその一つですが、個人がスキル発揮しやすいような機会創出の場が広がっていってほしいですね。

――確かに、案件獲得はフリーランスの大きな課題とも言われていますね。

企業に勤めていれば案件獲得に悩むことはないでしょう。それが企業に勤めるメリットの一つだと思いますが、そのメリットを諦めてでも、自由に働きたいと考える方はたくさんいます。そのような方々が自分のペースで働ける環境が、今後さらに一般化すると良いですね。

――ありがとうございます。では最後に今後の展望を教えてください。

検査・検品が求められる場面は幅広く存在しますが、より深く顧客課題を解決していくために、まずは特定の領域に特化したプロダクトをつくっていきたいと考えています。選択と集中と言いますか、まずは一点を尖らせることで多くの顧客課題を解決する魅力的なプロダクトを生み出せると信じていますので、そこを起点に会社も大きく成長させていきたいですね。

そして、企業成長のためには多様なスキルをもった人材が必要です。正社員、フリーランスをはじめ、採用形態は複数あって良いと考えていますので、集まってくださった方と一緒に会社を育てていきたいと思っています。

また、企業が成長していくなかで、日々尽力くださる方に利益を還元する仕組みをつくりたいとも考えていて。正社員はそうした恩恵を受けやすい傾向にありますが、フリーランス・副業人材の方に関しては、まだ仕組みがありません。そこはぜひ、今後取り組んでいきたいことの一つですね。

取材後記
経営資源としてよく挙げられるのが「ヒト・モノ・カネ」です。近年はそこに「情報」が加えられるなど変容しつつありますが、人材は、今後も企業にとって欠かせない要素で在り続けていくでしょう。

その一方、さまざまな場面で人材不足が問題視されています。「今必要な人材」を確保するのに、正社員にこだわりすぎる必要はないのかもしれません。「今必要な人材」を冷静に見極めて、柔軟に行動することが大事だと感じました。
and HiPro編集部
パーソルキャリア株式会社
and HiPro(アンドハイプロ)は、「『はたらく』選択肢を増やし、多様な社会を目指す」メディアです。雇用によらないはたらき方、外部人材活用を実践している個人・企業のインタビューや、対談コンテンツなどを通じて、個人・企業が一歩踏み出すきっかけとなる情報を発信してまいります。

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