メタバースの将来性は?市場規模から読み解く今後の可能性を解説
近年、多くの個人や企業がメタバースに参入し始めています。
今回は、メタバースの市場規模から将来性を読み解きながら、メタバースの今後の可能性やビジネスにおけるメタバースの活用方法を解説します。
実際にメタバース事業に参入している企業の事例も紹介するので、参考にしてください。
メタバースとは?
メタバースとは、meta(メタ・超越)とuniverse(ユニバース・宇宙)の2つの単語からなる造語で、インターネット上に存在する仮想空間や三次元世界を指します。
メタバースの特長は、仮想空間内で自由に行動できることです。たとえば、自身の分身となるアバターを作成し、仮想空間で友人とコミュニケーションをとったり、ショッピングを楽しんだりできます。
最近ではその特長からゲームの分野で活用され注目を集め、アニメや映画作品にもたびたび登場しています。
メタバースの市場規模と将来性
近年、多くの企業がメタバース事業への参入を表明するほか、個人やアーティストなどがメタバースを活用する事例も増えています。
メタバースの将来性はどのように予測されているのでしょうか。メタバースの現在の市場規模と将来予測をもとに、解説します。
総務省が発表した『情報通信白書令和4年版』によると、2021年のメタバースの世界市場規模は日本円で約4兆2,640億円でした。これが2030年には、78兆8,705億円まで拡大すると予想されています(※)。
総務省以外にも、多くの機関がメタバースの市場規模について調査していますが、いずれもメタバースの市場規模は拡大していくと予想しています。
現在は、メタバースと聞くとゲーム・アニメ・エンターテインメントなどの娯楽業界をイメージする方も多いでしょう。しかし、今後はオフィス空間の代替や、教育、医療、小売などでの活用も進むと予想されます。
※出典:情報通信白書令和4年版(総務省)
メタバースに将来性があるといわれている理由
メタバース市場規模の拡大に大きく関係している要素としては、世界情勢の変化や技術革新などが挙げられます。それらをもとに、メタバースに将来性があるといわれる、2つの理由を詳しく見ていきましょう。
コミュニケーション手段が変化している
メタバースに将来性があると予想されている理由の一つは、人々のコミュニケーション手段の変化です。
2020年、新型コロナウイルス感染症の猛威が世界中を襲いました。外出の自粛や接触機会の削減が求められ、他者とのコミュニケーション手段が大きく変化した方も多いでしょう。ビジネスシーンでもWeb会議やウェビナーなどが一気に広まり、オンライン上でコミュニケーションを取ることが当たり前になっていきました。
そうしたなか、オンライン上でより円滑にコミュニケーションを取るための方法として活用されているのがメタバースです。 実際に人が集まらなくても開催できるイベントや展示会、世界中のどこからでも自由に会話ができるプラットフォームとして、メタバースは活用されています。
VR・ARの技術が進化している
メタバースの将来性があるとされる背景には、VRやARの技術進化も欠かせません。 VRやARは、仮想空間であるメタバースに入り込むためのツールです。これらの技術が進化するほど、メタバースの市場規模も拡大すると考えられています。 VR・ARそれぞれの現状と将来性を説明します。
VRの現状と将来性
VR(Virtual Reality)とは、仮想現実とも呼ばれ、コンピューター上の仮想空間を現実世界のように知覚・体験できる技術です。VRの専用機器であるHMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着すると、仮想空間にいながら、まるで現実世界にいるかのような感覚を得られます。
近年、HMDは機能向上や低価格化が進み、関連コンテンツも増加。新型コロナウイルスの感染拡大も追い風となり、VRのユーザーは拡大し、市場規模も増大傾向にあると見られています。
一方、VRは記録されたデータを機器に映し出すという仕組みであるため、移動できる範囲に制限があったり、画像情報の内容が予測可能なため物足りなさを感じてしまったりといった課題もあります。それらが改善されれば、ますますVR市場は拡大していくでしょう。
ARの現状と将来性
AR(Augmented Reality)とは拡張現実とも呼ばれ、現実世界に仮想世界を重ねて拡張する技術を指します。
VRと混同されやすいですが、VRはバーチャルな世界で現実に近い体験ができるのに対し、ARは現実の世界を主体としてバーチャル世界に拡張します。たとえば、スマートフォンで撮影した画像にイラストやCG映像を重ね、現実世界に存在しているように見せるのがARです。
スマートフォンがあれば体験できるという気軽さもあり、観光領域をはじめ、幅広く活用されています。 ARはVRと比べて自由度が高いものの、その分、機器の小型化や軽量化、開発コストの削減といった課題もあります。それらが改善されれば、ARの市場はさらに拡大するでしょう。
メタバースの可能性
メタバースの市場拡大は、私たち消費者の生活はもちろん、企業やクリエイター、アーティストにも大きなチャンスをもたらす可能性があります。
場所や時間を超越して人々が交流できる
現在は、ゲームやエンターテインメントなどの業界を中心に、活用が広がるメタバース。今後は研修や会議といったビジネスシーンでの活用が予測されています。
さらにVR技術の進化により、言葉だけではなく身ぶり手ぶりでのコミュニケーションが可能になりました。世界中どこにいても同じ場所に集合し、場所や時間を越えた交流ができるようになるでしょう。
メタバースを活用すれば、物理的に遠く離れた友人や家族、同僚と、自分がまるで同じ部屋に存在しているかのような感覚を体験できるようになります。
ビジネスチャンスが広がる
メタバースの進化は、ゲーム企業やIT関連企業に限定されず、他業種のビジネスチャンスを広げる可能性も秘めています。
たとえば、医療分野での活用があります。外資系企業のA社はある医療系大学とタッグを組み、メタバース技術を活用した医療サービスの共同研究・開発を進めています。
他にも、自動車の試乗体験や未完成の不動産物件の内覧などに、メタバース技術を取り入れる企業も増えています。今後もロボットやAI技術と同じように、さまざまな業種でメタバースの活用が進むでしょう。
また、インターネットショップで洋服やアクセサリーを購入した際に、モニターで見た商品写真と実際の商品のイメージが違うと感じた経験がある方もいるでしょう。メタバースの進化にともない、実店舗に足を運ぶことなく、商品を実際に手に取ったような感覚を体験できるようになります。
ビジネスシーンにおけるメタバース活用方法
ここからは、ビジネスシーンにおけるメタバースの活用方法を詳しく解説します。
ワークスペース
新型コロナウイルスの感染拡大に伴いリモートワークが普及するなか、仮想空間でオフィスを再現したメタバースオフィスのサービスや、ミーティングに特化したメタバースサービスが次々誕生しています。
テレワークは、柔軟な働き方の一つとして定着しつつありますが、一方で雑談不足といったコミュニケーション面での課題も。こうした課題は、メタバースを活用すれば、改善できる可能性があります。
メタバースオフィスではアバターがオフィス内を自由に歩き回れ、相手が話しかけても良い状態か瞬時に判断がつきます。サービスによっては、近づくだけで会話を始められるものもあるので、現実世界のオフィスに出社していたときと同じように、コミュニケーションが図れるでしょう。
また、社員が働く場所としてだけではなく、顧客向けにショールームとして活用するケースもあります。物理的距離に捉われることなく自由にアクセスでき、商談が可能になるため、新規顧客獲得にも役立ちます。
研修・トレーニング
従業員などへの研修・トレーニングも、メタバースとの親和性が高いと考えられます。
座学の研修では、机上の範囲でしか教えられません。また、実地研修は時間や費用がかかりコスト面に懸念があります。対して仮想空間であれば、現場に近い環境を再現することも可能なため、より具体的に学ぶ機会を提供できます。
たとえば危険な場所での点検・保守業務などは、一般的な研修ではトレーニングが容易ではありません。しかし仮想空間であれば、安全を確保しながら、より現場に近い環境でトレーニングできるのです。
NFTとの連携
デジタルデータはコピーが簡単にできてしまうことから、複製品の横行が問題視されてきました。しかし、NFT(非代替性トークン)を利用することで、所有者の権利を証明できるようになり、デジタルデータの価値が担保可能になりました。
NFTによってメタバース内で売買が可能になったことで、独自の経済圏が誕生。特にメタバース内での不動産は急速に成長しており、多くの土地取引が行われています。
今後さまざまなものがNFT化され、販売されていくと予想されています。現実世界だけではなく仮想空間でも商品展開するなど、新たな機会創出のチャンスとして、企業のメタバース活用は進んでいきそうです。
メタバース事業に参入している企業事例
近年は、多くの企業がメタバース事業へ参入しています。メタバース事業を展開している企業の事例を2つ紹介します。
ゲーム業界/A社の事例
ソーシャルゲームプラットフォームを展開しているA社では、メタバース事業への本格参入を発表し、数年後には100億円規模の事業投資を実施するとしました。
現在は、個人ユーザーが気軽に楽しめるスマートフォン向けメタバースや、法人向けにメタバース構築プラットフォームの運用をはじめ、さまざまなメタバース事業を展開しています。
ソフトウェア業界/B社の事例
アメリカのソフトウェア企業B社では、すでに展開しているWeb会議ツールをメタバース向けに拡張したサービスを開発しています。
B社の新サービスでは、物理的に異なる場所にいても仮想空間内の1ヵ所に集まって仕事ができます。仮想会議への参加や共有ドキュメントの共同編集など、同じ場所で作業している感覚を味わえるでしょう。
B社はこのサービスで、個人の積極性を高め、チームでの作業が効率化することを目的としています。
まとめ
メタバースとは、meta(メタ・超越)とuniverse(ユニバース・宇宙)の2つの単語からなる造語で、インターネット上に存在する仮想空間や三次元世界のことです。
メタバースを活用すると、場所を問わず世界中の人とコミュニケーションが取りやすくなるため、企業のビジネスチャンスを広げる可能性があると期待されています。事実、ワークスペース利用や、NFTとの連携による活用シーンは広がりつつあります。
メタバースの市場規模は、2030年には78兆円を超えるとの予測も。メタバース事業に参入する企業は、今後もますます増えていくことでしょう。
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