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プロ人材活用のリアルに迫る。~三浦工業におけるプロ人材活用とは~

三浦工業株式会社
ボイラ技術ブロック ボイラ技術統括部 統括部長 松矢 久美

少子高齢化に伴い日本全体で労働人口の減少が進む中、特に地域企業では必要なスキルを持つ人材の確保が難しい場面が少なくありません。そうした中、最近では、雇用という従来の手法に捉われない新たな解決策として、外部のプロ人材を活用する動きが生まれています。

「HiPro」では、個人が持つスキルがさまざまな企業で柔軟に活かされ、個人も企業も成長し続ける「スキル循環社会」の実現を目指しています。2023年6月にスタートした「スキルリターン」プロジェクトは、都市部で専門的な経験を積んだプロ人材と地域の企業をつなぎ、地域企業・地域経済の発展に貢献する取り組みです。鳥取・山形・福岡・広島・京都・秋田に続き、今回新たに愛媛でのプロジェクトをスタートしました。

2024年12月10日(火)には、愛媛でスキルリターン発表会を開催しました。今回は、当日実施されたトークセッションの様子をご紹介します。ゲストに三浦工業株式会社 ボイラ技術ブロック ボイラ技術統括部 統括部長の松矢氏を迎え、プロ人材活用について意見を交わしました。

海外進出に不可欠な事前調査において、プロ人材を活用

鏑木:最初に、三浦工業さんの事業内容についてご紹介をお願いします。

松矢:三浦工業は、65年前に愛媛県松山市で設立した会社です。小型貫流ボイラを中心に舶用補助ボイラ、排ガスボイラ、水処理機器、食品機械、メディカル機器、薬品製造販売、環境計量証明業、メンテナンスサービスなど多角的に事業を展開しており、貫流ボイラを始め日本国内でシェア1位(※三浦工業調べ)の製品をいくつか持っています。当社は国内だけでなく海外にも拠点を持ち、米州・アジアに生産拠点を構えています。また、2024年の3月にはアメリカ、5月にはドイツの企業が新たにミウラグループに加わり、グループ全体の社員数は約7,700名となりました。そのうち約半分は海外拠点の社員であり、会社として今後ますます海外展開に力を入れていく方針です。

鏑木:ありがとうございます。三浦工業さんの製品は本当に世界中で活用されているのですね。外部のプロ人材を活用するという選択肢が当たり前とは言えない中で、今回、プロ人材の活用に至った背景には、どのようなものがあるのでしょうか。

松矢:海外拠点の一覧を見ていただくと分かるのですが、まだまだ拠点のない地域があります。たとえば、ヨーロッパやインド、アフリカ、オセアニアなどです。アメリカ・韓国・中国などは、これまで30年以上取り組んできた歴史があり、その中でルールや法規制がそれぞれの国にあることが分かっています。同じように、新しい国や地域に進出する際には、各地域のルールや法規制に合わせた設計・製造をする必要があり、まずはそれらの調査からスタートします。ただ当然ながら、ルールや法規制は読み解く難しさがありますし、他にも、たとえばEU圏では、EU加盟国のルールに加えて各国のルールや法規制があるなど、かなり複雑です。

そうした状況の中で、自社ですべての調査を行うには時間と費用が多くかかります。また、調査の結果、進出が難しいという結論に至った場合、調査にかかった時間や費用は無駄になってしまいます。それらを踏まえたときに、やはりスピーディーに対応可能な人材が外部にいるならば、調査を依頼するメリットは大きいと考え、プロ人材の活用に踏み切りました。

鏑木:プロ人材の活用という結論に至るまでに、その他の選択肢は検討されたのでしょうか。

松矢:最初は自社で何とかしようと考えていました。しかし、各国にはさまざまな種類の複雑なルールがあり、そう簡単に調査が進められないことを、以前担当した事業で痛感していました。「自分たちで調べたらどうか」という声も社内にはありましたが、実際にやってみるとやはり難しいケースが多いことを知っていたため、外部にお願いするのがよいだろうと判断した次第です。

外部人材マーケットだからこそ、スピーディーに適任者を見つけられた

鏑木:プロ人材の活用にあたり、どのようなスキルや経験をお持ちの方を希望していたのか、お聞かせいただけますか。

松矢:適切な人材を探す上で重視したのは、やはり各国のルールや法規制に対する理解度、それからボイラに対する知識の部分です。それらに加え、調査対象となる国や地域の商習慣の知識、語学力も当然必要になってきます。さらに、実績として過去に同様の調査や参入支援を行った経験を持っているかという点も確認して依頼したいと考えていました。ルールや法規制はもちろんですが、全体像を理解し適切に判断し事業を進めたいと考えていましたので、そのあたりを念頭に置いた上で整理いただける方を希望していました。

鏑木:実際にプロ人材を探すという段階では、体感的に「時間がかかった」と感じられましたか。それとも、「思ったより早く見つかった」という印象でしたか。

松矢:人選をお願いしてからは、比較的スムーズにご紹介いただけたという印象です。探していただいている間の待ち時間はあまりなかったと思います。

鏑木:同様の支援実績があり、語学ができて、専門的な知見もある方を探そうとすると、なかなか見つからないというのが一般的な印象だと思います。一方、外部人材活用というマーケットの特長として、スキル・経験が豊富な方をスピーディーに見つけられるという点が挙げられます。このマーケットの強みとも言える部分が、今回は特に発揮されたようにお見受けしました。

松矢:まさしくその通りだと思います。

製品開発などの場面でも、プロ人材を活用する機会は増えていく

鏑木:プロ人材に実際に業務を依頼され、さまざまな取り組みをされたと思います。プロ人材の方との協業を通してどのような成果を得られたのか、さらにこの先どのような未来を描かれているのか今後の展望についてもお聞かせください。

松矢:今回の具体的な成果としては、大体4~5ヶ月で我々が求めるレポートを提出いただきました。想定通り、かなり複雑な法体系であり、非常に難しい認証があることも判明するなど、事業を開始するにあたっての難易度の高さが見えてきました。そのあたりは経営層にダイレクトに報告し、結果として、自社だけで取り組むという選択肢に加え、他社との協業という案も出てきています。そのような経営判断をするための材料として、提出いただいたレポートは非常に有用だったと感じています。

今後については、今回のような海外進出に伴う技術部門の調査以外にも、たとえば新製品開発の場面でのニーズがあります。今後さまざまな製品を増やしていくという方針の中で、スキルや開発の実績をお持ちの方をプロ人材として活用する機会は増えていくと思います。

鏑木:実際にプロ人材を活用される前と今では、印象などに変化はありましたか。

松矢:プロジェクトの推進のほか、プロ人材の活用は社内人材の成長にも効果があったと感じています。今回のプロジェクトに携わった主力社員は2名です。社内の人材のみでプロジェクトに取り組む場合は、同じ組織文化の中ではたらいていることもあり、良くも悪くも何となく進められてしまうところがあると思います。プロ人材とのやりとりでは、文化などの違いからこれまでのやり方が通用しない場面もあったようで、タスクやスケジュールなどを明確に出す重要性を改めて実感し、実行に移すスキルを身に付ける機会になったと思います。

鏑木:ありがとうございます。プロ人材の活用については、今後も有効な選択肢だと捉えられそうでしょうか。

松矢:そうですね。また機会や依頼したいテーマがあればお願いしようと思っています。

鏑木:地域の企業を支援したいと考えている個人の方は、本当にたくさんいらっしゃいます。企業がお願いしたいと考えている業務に対して、実績を持っている方が多いと思います。今後機会があればご活用いただければと思います。本日はありがとうございました。

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