and HiPro [アンド ハイプロ]

副業解禁は企業にとってリスク?メリット・デメリットや他社の事例を紹介

副業解禁は企業にとってリスク?メリット・デメリットや他社の事例を紹介
バナー:本業があるから踏み出せる、次の一歩を。初めての副業ならHiPRO Direct

副業を禁止する企業が多いなか、2022年7月に厚生労働省は「副業・兼業の促進に関するガイドライン」を改訂しました。 こちらを受け副業解禁を検討する企業も多いのではないでしょうか。また、副業を検討する社員の方もいらっしゃるでしょう。

当記事では企業の副業解禁について、企業目線と社員目線でメリット・デメリットを解説します。また、企業が副業を解禁する際の注意点や、副業可能な他社の事例も合わせてご紹介します。

副業を解禁することで、社員のモチベーションが上がり、本業の効率もさらに上がることも期待できるでしょう。ぜひ、最後までご覧ください。

企業内の副業希望者は年々増加

副業希望者

総務省が2018年に公表した就業構造基本調査において、副業の希望者は増加傾向にあることが示されました。

※出典:平成29年就業構造基本調査(総務省)

さらに厚生労働省が2020年に公表した副業・兼業に関する労働者調査結果において、雇用形態に関係なく、収入の増加を目的に副業を始める方が多いという情報を開示しています。

※出典:副業・兼業に係る実態把握の内容等について(厚生労働省)

起点となった2018年は副業元年と呼ばれ、政府が働き方改革の一環として、これまでのモデル就業規則を改定し、副業を推奨する方向性を打ち出しました。年功序列や終身雇用、定年退職など、従来の働き方は大きな転換点を迎えています。

その後も、働き方改革に関連する政策や法改正が進み、2020年には「副業・兼業の促進に関するガイドライン」が変更され、副業への取り組みに関する方針や管理などのルールがさらに具体的になりました。

この流れを受け、企業も、社員の収入増加やモチベーション・スキルアップを目的に副業を解禁する動きが活発になっています。

しかし、副業を解禁する企業の割合はまだ多いとはいえず、足踏みしているのが現状です。その背景には、副業の解禁に対する懸念点が完全には解消されていないことが考えられるでしょう。

企業目線での副業のメリットとデメリット

まずは企業目線で副業解禁のメリットとデメリットを紹介します。

【企業目線】メリット

企業目線での副業のメリットは、主に以下の4つです。

  • 社員のスキルアップ
  • 優秀な人材の確保・流出防止
  • 社員の自主性を高める
  • 人材の多様化

それぞれ解説していきます。

社員のスキルアップ

社員が副業をすると、自社の仕事だけでは経験できない業務に携わることができます。自社では得られない新たな視点やスキルが身につくと、本業の業務で活かされることも多いでしょう。

優秀な人材の確保・流出防止

昨今では副業希望者が増加しており、就職者・転職者のなかには、副業ができることを条件に企業選択を進める人もいます。

また、給与が理由で転職を考える社員もいるため、副業によって収入問題の解決に貢献すれば、離職率の低下が期待できるでしょう。

社員の自主性が高まる

企業では上司の指示のもとに業務を割り振り、遂行するのが一般的ですが、この仕組みによる制限の度合いによっては、自主性に課題が生まれることもあります。

一方で副業をする際は、何をするか自分で考え行動することになるため、主体的に物事に取り組むマインドの醸成にもつながります。

人材の多様化

副業には、プログラミングやライティングから写真や物販に関わるもの、投資までさまざまな種類があります。

副業をする社員が増えるにつれて、通常の業務を進めるだけでは得られない体験ができます。これによって異なる価値観に触れる機会が増加することで、人材の多様化につながるでしょう。

人材の多様化が進むと、より多角的なアイデア創出ができるようになるため、新規事業の開発や既存事業の発展にも役立つでしょう。

【企業目線】デメリット

企業側のデメリットとしては、主に以下の3つがあげられます。

  • 情報流出のリスク
  • 長時間労働によるパフォーマンスの低下
  • 本業の満足度が低下する懸念

それぞれ解説していきます。

情報流出のリスク

社員の副業で懸念されるのは、企業の保有する機密情報をはじめ、独自のノウハウやメソッドが流出することです。例えば、社員が本業と同業種の企業で副業をした場合、企業内のノウハウや情報を流用されてしまうリスクがあります。

副業を解禁するうえで情報の流出を防ぐためには、社員が副業をする際のルールや注意事項など、規定事項を定めることが重要です。

具体的には同業他社での副業を禁止する、就業規則で情報漏洩を懲戒事由として定めるなど、徹底したリスク管理が必要です。ITセキュリティを強化し、情報の持ち出しを制限する対策の実行も有効でしょう。

長時間労働によるパフォーマンスの低下

副業をする時間は、本業の就業時間の前後、あるいは休日です。その性質上、副業は長時間労働の原因になりやすく、本業でのパフォーマンス低下につながる可能性があります。

企業は社員の副業状況を把握し、健康管理を怠らないよう伝えるなどして対策しましょう。

本業の満足度が低下する懸念

副業では基本的に自ら考え行動し、業務を進められるため、裁量の大きさから満足感や充実感を得られます。

一方で、本業では仕事の進め方に関する制約や、自身の希望と業務内容のミスマッチなどに不満を持つこともあるでしょう。社員と定期的にコミュニケーションを図り、会社が求めるスキルと本人のキャリア希望の適合性を確認したうえで、目標設定などを修正することが重要です。

社員目線での副業のメリットとデメリット

続いて、副業のメリットとデメリットを社員目線で紹介していきます。

【社員目線】メリット

社員目線で副業をするメリットは、主に以下の3つです。

  • 収入が増加する
  • 新たなスキルを取得できる
  • 自己実現欲求が満たされる

それぞれ解説していきしょう。

収入が増加する

正社員として働く本業での給与はある程度一定ですが、副業では自分が努力した分だけ収入を増やすことも可能です。

1つの企業に依存せず、複数の収入源を確保できることは副業の魅力です。

新たなスキルを取得できる

本業とは異なるジャンルの副業をすると、新たなスキルや知見を得られます。副業では、転職するのが難しい未経験職種にもチャレンジしやすいこともメリットです。

また、副業する際は本業で安定的な収入を得ながら新たなことに挑戦できます。収入が不安定となりうる起業と異なり、リスクを軽減可能です。

経験がなくても興味のある仕事に挑戦でき、新たなスキルを獲得する機会が得られるのは副業の魅力でしょう。

自己実現の欲求が満たされる

副業で新たな挑戦をすると、自己実現の欲求が満たされます。自己実現の欲求とは、何かを成し遂げたい、自分らしく生きていきたい欲求のことです。

自身が描く理想的な自己イメージを達成するために、副業を通してチャレンジできます。このように、本業では挑戦できなかったことが副業でできることで、精神的な満足感を得られます。

【社員目線】デメリット

社員にとっても副業をするメリットは多いですが、やはりデメリットもあります。

  • 長時間労働になる恐れ
  • まとまった収入を得ることは難しい
  • 確定申告の必要がある

それぞれ詳しく見ていきましょう。

長時間労働になる恐れ

副業は本業に加えて働くことになるため、長時間労働になる恐れがあります。

長時間労働による懸念は、集中力の低下や、仕事に対するモチベーション低下です。集中力が途切れると、ミスの頻度が高まりやすく、大きなミスを誘発する可能性も高まるでしょう。

長時間労働の参考として、36協定で定められた時間外労働の上限時間は、原則月45時間・年360時間以内です。これを超えるような業務量は、心理的負荷によるさまざまな弊害を起こす可能性を秘めています。

まとまった収入を得ることは難しい

副業で収入を増やせますが、まとまった収入を得るのは難しいでしょう。ある程度まとまった収入を得るためには、一定の作業時間や高度なスキルが必要です。

基本的に副業は本業の業務終了後、もしくは休日しかできません。

収入を増やすためには、作業量ではなく案件の単価を高くしましょう。副業を継続し、スキルを身に付ければ、自然と収入の増加を見込めるでしょう。

確定申告の必要がある

社員として得た給与とは違い、副業で得た収入が年間20万円を超える場合、確定申告が必要となります。

副業で得た収入はまとめて管理し、状況を把握できるようにしましょう。

企業が副業を許可する時の注意点

企業はデメリットも考慮し、副業解禁を慎重に考えることが必要です。ここでは、副業解禁時の注意点を解説します。

社員と話し合い、ルールを決める

副業解禁の前に、まずは社員と話し合い、副業に関するルールを決めましょう。あらかじめルールを定めておくことで、社員の長時間労働や情報漏洩のリスクを減らせます。

例えば、申告を義務付けることです。社員が副業をしているか明らかにし、労働時間の把握や健康管理をしやすくします。また、副業による情報漏洩リスクを防ぐためのルール作りも必要です。

ルールづくりにあたっては、厚生労働省が規定するモデル就業規則を参考にするのがおすすめです。モデル就業規則によると、企業が副業や兼業を制限できるのは以下の場合としています。

① 労務提供上の支障がある場合
② 企業秘密が漏洩する場合
③ 会社の名誉や信用を損なう行為や、信頼関係を破壊する行為がある場合
④ 競業により、企業の利益を害する場合

※引用:モデル就業規則(厚生労働省)

特に企業への影響が大きい事項は、副業を制限できるようにしています。副業による企業への影響を抑えるため、就業規則に記載しましょう。

また、副業を許可した場合でも、時間管理や健康を維持するためのルールを明確にすることをおすすめします。社員が不信感を持たないよう、会社と社員の双方がそれぞれの働き方を尊重し、ルールが守られるようにしましょう。

通算労働時間を把握

企業は社員の副業での労働時間も把握する必要があります。

社員が副業先でも雇用されている場合、労働時間は本業と合算して計算されます。本業と副業で合算された労働時間が、法定労働時間を超えた場合には残業代を払わなければいけない場合もあるためです。

厚生労働省が定める副業・兼業の促進に関するガイドラインでは、労働時間を通算した結果、法定労働時間を超える場合は割増賃金を支払う必要があると示しています。

※出典:「副業・兼業の促進に関するガイドライン」Q&A(厚生労働省)

つまり、本業と副業の労働時間は通算され、労働時間を通算した結果1日8時間、週40時間の法定労働時間超を超えて労働する場合は、時間外労働として割増賃金を支払う必要があるのです。

その他、長時間労働から健康被害が生じてないかなども把握する必要があるため、副業の労働時間を報告してもらう必要があります。

社員の健康管理

企業には、社員の健康管理義務があります。特に社員が副業をはじめると、労働時間の増加によって疲労が蓄積されやすいことや、慣れない業務でストレスを感じることもあるでしょう。

厚生労働省が定める労働契約法の第5条では、企業が社員の生命・身体等の安全を確保するために、必要な配慮を行うことを定めています。

※出典:労働契約法(厚生労働省)

つまり、企業が社員に対して安全配慮義務を負い、違反した場合には損害賠償責任を負うということです。

長時間労働などで社員の健康を害することがないよう、企業独自にルールを定め、健康管理をおこなうことも検討しましょう。

社員の副業を推進している企業の事例

副業を解禁している企業の事例を紹介します。副業を解禁するか迷っている経営者や担当者の方、副業してみたいと考えている社員の方も、紹介する他社の事例をぜひ参考にしてみてください。

書籍執筆やコンサルティングなどを推奨している事例A社

A社は、さまざまなジャンルの副業を推奨しています。推奨している副業は、書籍執筆、イベント登壇、コンサルティングなどです。副業を推奨する理由として、同社はスキルアップや市場価値の向上などを挙げています。

またA社の特徴は副業の推進と同時に、ガイドラインを作成し「なぜ副業を推奨するのか」「NGとなる基準」を定めていることです。

副業を推進し、A社の社員がアウトプットを通じて優秀だと認められれば、さらに優秀な人が集まります。結果的に採用ブランディングにもつながっていることにも注目です。

同社は副業解禁により、社内に優秀な人材が育ち、外からジョインする優秀な人材が増えていると成果の実感をあげています。

副業と生活を両軸で推奨している企業の事例/B社

B社では新しい働き方を目指す一環として副業も推奨しています。

働き方改革を通じてテレワークの環境整備を推し進めるB社では、仕事と生活を軸に働き方の最適化に取り組んでいます。

テレワークの推進によって、同社は通勤時間を月平均で約30時間も減少しました。この結果として空き時間が増え、副業の時間が確保できるようになりました。

このように、B社では働き方改革による社員の満足度向上とともに、副業の推進を実行した好事例となっています。

まとめ

本記事では、企業と社員それぞれから副業のメリットとデメリット、副業を解禁する際に企業が注意すべき点、他社の事例を紹介しました。

社員の個性や自由を尊重する風潮とともに、副業解禁の動きは広がっています。社員が新たなスキルや知見を得て成長することは、企業にとっても大きなメリットでしょう。

一方で、副業解禁の懸念は社員の自主性が高まり、スキルアップすると、自社への満足度やコミットメントを下げる可能性があることです。あらかじめ副業解禁の注意点を把握し、対策すればデメリットを軽減できます。社員としても満足度の高い働き方ができるでしょう。

他社の事例も参考にしながら、ぜひ副業解禁を検討してみてはいかがでしょうか。

バナー:本業があるから踏み出せる、次の一歩を。初めての副業ならHiPRO Direct

関連するタグ

この記事が気に入ったら「シェア」

RECOMMENDED