今注目を集めるweb3(web3.0)とは?概要と事例、web2との違いを徹底解説
現在、「Web3」というワードが市場での注目を集めています。
しかし、Web3とは具体的にどのような概念であるのかに関し、理解されている方は少ないのではないでしょうか。
本コラムでは、現在トレンドのWeb3における定義をはじめ、実現によるメリットや課題などについて、国内外の事例と交えて解説します。
web3(web3.0)とは?
はじめに、web3の定義と由来について解説します。
web3の定義
次世代分散型のインターネットのこと
web3は後述するWeb1、Web2に続く、ウェブサイトやインターネットの潮流や特徴、構造を表す比較的新しい概念です。
web3の代表的な特徴は、ブロックチェーンをはじめとする分散型ネットワーク技術の活用により、特定の企業に個人情報を収集されることなく、Webサービスやアプリケーションを利用できる点にあります。
また、ブロックチェーン技術により個人情報が暗号化されることで、企業がサイバー攻撃を受けた際も、個人情報の流出リスクを未然に防げる強みもあります。いまやインターネットの利用が不可欠な現代社会において、web3は確かな安心感を与えてくれる新技術として定義することが可能でしょう。
これまで「プラットフォーマー」と呼ばれる企業が影響力を有する中央集権的なインターネット環境では、個人情報の漏洩やプライバシーの侵害リスクが高いといった問題点がありましたが、web3が登場したことで抜本的な問題解決が期待されています。web3は、「次世代分散型のインターネット」を支える概念として、現在市場で大きな注目を集めているのです。
英国人ギャビン・ウッド氏が提唱したもの
Web3は、イギリスのコンピューター科学者であるギャビン・ウッド氏の提唱によって生まれた概念となります。ギャビン・ウッド氏は、仮想通貨Polkadot(ポルカドット)の創業者としても有名です。また、ギャビン・ウッド氏の特徴的な取り組みとして、Web3関連プロジェクトへの投資および研究開発を行う非営利組織「Web3 Foundation」の設立が挙げられます。Web3 Foundationは現在、ブロックチェーンのスケーラビリティに関する問題解決をはじめ、「次世代分散型のインターネット」」の実現を目指す活動に注力しています。
これまでのインターネットの進化の歴史
Web3の理解に向け、web1 (web1.0)からはじまるインターネットの進化の歴史について、順を追ってご紹介します。
web1 (web1.0)とは
日本でインターネットが急速に普及したのは1990年代であり、当時のインターネット環境を支えたのがweb1になります。当時、情報の発信者と閲覧者との双方向のやり取りはできず、ユーザーができることは情報の閲覧のみでした。受動的に情報を収集することがインターネットの主目的であったことから、Web1は「一方向性の時代」だといわれています。
Web2(Web2.0)とは
2000年代になり、Web1に代わり登場したのが、Web2です。ビジネスシーンでも当たり前のようにインターネットが活用されるようになり、ユーザーのインターネット活用における自由度が増したことで、情報の発信者と閲覧者による双方向のコミュニケーションが可能になりました。
Web2の時代の大きな特徴として、SNS(TwitterやFacebook、Instagramなど)の爆発的な普及が挙げられます。SNSの普及により、情報の閲覧しかできなかったWeb1の時代と比べて、インターネットは自ら能動的に編集・発信できるものへと変容し、より簡単に多くの人と繋がれるメリットを享受できるようになった一方、Web2の時代におけるインターネットの進化は負の影響ももたらしました。それはサービスの提供者である、GoogleやAmazonなどのプラットフォーマーに、ページの閲覧履歴や商品の購入履歴などの個人情報が、一極集中してしまうことです。
このようにWeb2は、中央集権的なサービスで成立するという側面があることから、「プラットフォーム経済の時代」であるといわれています。情報の一極集中は、サイバー攻撃によるセキュリティリスクや情報漏洩リスクの増加へとつながり、Web2が抱える問題を解決するために登場したのがWeb3なのです。
web3に代表されるIT技術
Web3時代の最新IT技術は、さまざまな分野で導入されています。代表的な4つのトレンド技術について、以下にご紹介します。
Metaverse(メタバース)
Metaverseは、インターネット上の経済圏を持った仮想空間を指します。インターネット上の仮想空間で、不特定多数のユーザー同士がコミュニケーションを図りながら、商品購入や通貨取引を行えるなど、現実世界同様に、さまざまな行動を自由に取れる点がメタバースの特徴です。仮想空間上でのオンラインゲームの提供や、デジタルコンテンツを売買できる新たなビネスプラットフォームの提供など、現在多岐に渡る業種・領域でMetaverseの活用が進んでいます。
NFT(エヌエフティー)
NFTとは、デジタルデータの所有権など、デジタル世界での権利を記録できるデジタル資産です。これまでデジタルアートをはじめとするデジタル資産は、違法にコピー・複製されやすく、資産価値を得にくい状況にありました。しかしNFTの登場により、保有するデジタルデータの権利を証明できるようになり、資産価値を得られるようになった結果、近年NFTを利用したデジタルアートやデジタルコンテンツの販売が増加しています。
DeFi(ディーファイ)
DeFiとは、ブロックチェーン技術を用いて、金融機関を介さずに自動で金融取引を行える仕組みのことであり、「分散型金融」とも呼ばれています。DeFiの最大の特徴は、従来の金融サービスと比較し、中央管理者としての仲介者が存在しない点です。DeFiの登場により、利用前の信用情報の審査や本人確認なしにサービス利用を開始できるようになるなど、金融サービスへの利便性向上をもたらしています。
SocialToken(ソーシャルトークン)
SocialTokenとは、インターネット上でアートやコンテンツを制作する個人やコミュニティのために作られた、暗号化されたトークン(暗号資産、仮想通貨)を指します。SocialTokenの特徴は、個人やコミュニティへの報酬をデジタル通貨で支払うことができる点です。受け取ったデジタル通貨は他の仮想通貨への交換をはじめ、コミュニティ内の特別な権利との交換も可能であり、次世代のトレンド技術として注目を集めています。
web3によって生まれるメリット
web3の時代は、私達の生活にどのような効果をもたらすのでしょうか。web3によって生まれるメリットにつき、3つのポイントから解説します。
個人情報などのデータを自己管理できる
web3がもたらすメリットの一つは、個人情報や行動履歴のデータを自己管理できる点です。
企業による個人の行動履歴データの活用例として、リマーケティング広告があります。リマーケティング広告とは、商品・サービスに興味や購買意欲のある見込みユーザーに対し検索履歴や行動履歴から興味・関心領域を割り出し、関連する広告を表示させることでクリック率増加や売上増加につなげる広告手法です。
リマーケティング広告は、興味のある情報にすぐにリーチできる便利さを感じる一方、企業に自己データを収集・分析・管理されることに嫌悪感を抱くユーザーも一定数いるといわれています。
ブロックチェーン技術を用いるサービス活用の際には、ユーザーIDやパスワード登録が不要であり、匿名性が担保される仕組みが採用されている点が特徴です。これによりWeb3の時代では、個人情報や行動履歴のデータは自ら管理できるようになり、多くの人々がプライバシー保護の恩恵を享受できるようになると予見されています。
企業との直取引の実現およびセキュリティレベルの向上
ブロックチェーン技術が用いられた分散型ネットワークでは、仲介組織や仲介サーバーが不要になります。ユーザーは仲介組織を介さずに直接企業と取引ができるようになり、仲介組織への手数料をなくすることが可能です。
また、分散型ネットワークでは、取引内容や履歴などの情報が暗号化され、複数のユーザーの承認を得た後に取引が成立する仕組みが採用されています。Web2の時代では、特定のサーバーに情報が集約されていたため、ハッキングなどのサイバー攻撃を受けた場合、膨大な顧客情報が流出する恐れがありました。
しかし、Web3の時代ではハッカーは同時に複数の端末を攻撃しなければならず、ハッキングの成功は困難を極めます。分散型ネットワークによるセキュリティレベルの向上が見込まれる点も、web3がもたらすメリットの一つです。
人種・国境の制限なくサービス利用が可能
「DApps」と呼ばれる分散型アプリケーションにもブロックチェーン技術が活用されており、人種や国境の制限なく平等にサービスを利用できます。DAppsは非中央集権型のアプリケーションであるため、DAppsに参加したユーザーが国籍や人種などによってブロックされることはなく、世界中の誰もが自由に、望む情報やサービスにアクセスできるようになります。世界規模でのサービス利用のシームレス化により、真のグローバル化が訪れる日もそう遠い未来ではないでしょう。
web3の実現に向けた課題
web3の実現に向けた課題につき、以下に解説します。
法律やルールの整備に時間がかかる
Web3は生まれて間もない概念のため、関連する法律やルールの整備が追い付いていない状況です。法律・ルールの整備には時間を要することを念頭に入れ、Web3関連のサービス作りを進めていきましょう。
利用上のトラブルは自己責任であることを理解する
個人情報などのデータを自己管理できる点は、プライバシー保護の観点からメリットとなるのは前述の通りです。しかし、利用上のトラブルは自己責任となることを、ユーザーはあらかじめ理解する必要があります。この点は、データ管理の責任を対象企業に問うことができたWeb2との違いであり、Web3特有の課題だといえるでしょう。_
新規参入時のハードルが高い
Web3のサービスにおける取引は、仮想通貨が用いられるケースが大半です。しかし、仮想通貨を用いたサービスの仕組みづくりや運用には高いIT知識が求められるため、新規参入時のハードルが高い点もweb3の実現に向けた課題の一つだといわれています。
スケーラビリティ上の課題がある
Web3を支えるブロックチェーンの仕組みとして、ユーザー間でネットワークを構築し、すべての取引内容をユーザー間で共有できるメリットがある一方、サービス利用者が増える毎にネットワークにかかる負荷が増大してしまうといったデメリットがあります。
課題の解決なしにWeb3の普及は難しいといわれており、早急な対策が不可欠です。具体的な対策の一つに、ネットワークの負荷軽減に向け、ユーザー間の取引時の履歴は中間履歴を残さず、取引後の最終結果のみとするなど、新たな仕組みの導入が検討され始めています。こうしたスケーラビリティ上の課題を解決することで、Web3のサービスの急拡大が見込まれています。
web3の事例
web3の事例を3つご紹介します。
検索ブラウザの事例
A社が提供する検索プラットフォームでは、リマーケティング広告をはじめとする、あらゆる広告をブロックできる機能が搭載されています。また、シークレットウィンドウやプライベート検索など、ユーザーのオンライン上のプライバシーを保護する機能も搭載されており、次世代の検索ブラウザとして、web3の普及に貢献しています。
NFT(非代替トークン)マーケットプレイスの事例
B社が運営するNFT(非代替トークン)マーケットプレイスは、近未来のWeb3エコノミーを支える新部門を設立したことで有名です。B社の新部門では、NFTや分散型システム、ブロックチェーンを手掛ける関連企業などに投資を集中させることを表明しており、Web3エコノミーの急成長が期待されています。
ブロックチェーンゲームの事例
C社が提供するブロックチェーンゲームは、ゲームプレイを通じて収集したNFTを、ゲーム空間に留まらず現実世界においても、ブロックチェーン上で他のユーザーと取引できる資産として扱える点が特徴です。
また、ゲーム内の活動・取引履歴はブロックチェーン上に記録されることから、何らかの理由でゲームが停止した場合であっても、ゲーム記録が紛失する心配はありません。C社の事例は、Web3によるユーザー間の直取引およびセキュリティレベルの向上を実現している事例だといえるでしょう。
web3のまとめ
Web3が与える市場や社会への影響度は大きく、Web3を活用したサービスの急拡大が予見されています。
今後のビジネスの活用に向け、事業拡大が期待できるWeb3の知見について深めていくことをおススメします。
この記事が気に入ったら「シェア」