ITの特異点「シンギュラリティ」とは?意味やいつ起こるのか解説
近年ではAI(人工知能)が急速に進化し、活用の範囲が広がっています。便利に思う一方、「AIに人間の仕事が奪われるでは」と懸念を感じる方も多いのではないでしょうか。
そうしたなかで、よく耳にするようになった言葉が“シンギュラリティ”です。シンギュラリティとは、IT分野で技術的特異点と訳され、AIが人間の知能を超える転換点を指します。
本コラムでは、シンギュラリティの詳しい意味や、いつシンギュラリティが起きるのか、否定論を含めて解説します。これからの時代AIとどのように付き合っていくか、ぜひ参考にしてください。
シンギュラリティ(技術的特異点)の意味
シンギュラリティ(Singularity)は、日本語で“特異点”という意味を持ち、社会のあり方に大きな変化をもたらす転換期を指します。
近年では、AI(人工知能)が人間の知能を超える時点、AIの発展の先にある技術的特異点という意味合いで使われることが多くなりました。
シンギュラリティに到達すると、AI(人工知能)は自立的なバージョンアップを繰り返し、人間のサポートを必要としなくなるといわれています。
シンギュラリティはいつ起きるか、有力説は2045年
シンギュラリティが起こる時期として、もっともよく知られている説が、2045年説です。この背景には、人工知能研究の世界的権威であるレイ・カーツワイル氏が、自著で2045年説を唱えたことがあります。
このことから、シンギュラリティの到達点を2045年問題と呼ぶようになり、2010年代にディープラーニングが飛躍的に発達したことで、さらに注目されるようになりました。
収穫加速の法則との関係性
シンギュラリティの到達時期が2045年と予測された前提には、収穫加速の法則があります。
これは発明が次の発明を生むという連鎖の歴史から、技術の進歩は指数関数的に進むという考えに基づく法則です。
特にインターネットの普及以降、技術の進歩は目覚ましいものがあります。この前提をもとにAI(人工知能)の進歩を計算した際、2045年にシンギュラリティに到達するという予測が導き出されたのです。
シンギュラリティが起きたあとの世界の変化予測
シンギュラリティに到達したあと、私たちの日常にはどのような変化が生まれるのでしょうか。ここでは、シンギュラリティ後の世界の変化予測を紹介します。
多くの職業がなくなり、新たな仕事が生まれる
AIの進化によって、人間の仕事はなくなるといわれて久しい昨今ですが、これにも諸説があります。しかし、多くの職業がAIによって代替可能になっているのも事実です。
総務省によると、日本の職業(就労者)の49%は将来AIに代替される可能性があると触れています。
現時点でAIが得意とするのは、業務効率化や生産性向上などの分野であり、主にルーティンワークが業務割合の多くを占める職業がAIの影響を受けやすいと言えます。
このようにシンギュラリティが起きなくとも、AIの発達によって多くの職業がなくなる可能性は否定できません。
一方、AI導入をサポートする仕事やAIを使った新しい仕事の創出が予想され、仕事の総量が増えることも期待されます。
労働がなくなり、ベーシックインカムが導入される
シンギュラリティが起きてAIで代替できる仕事が増えると、ベーシックインカムの導入が進むのではないかという説もあります。
ベーシックインカムとは、国民の生活を最低限保障するために年齢や性別を考慮せず、すべての人に無条件で毎月一定のお金を支給する制度です。日本に導入しようとする動きがあるなど、ここ数年、国会でも話題になっています。
AIによって代替される可能性がある仕事は、AIの得意領域である業務手順が明確なものであることが多いです。一方、AIが代替しにくい仕事の特徴としては、コミュニケーションが複雑なものが挙げられています。この場合、AIでの仕事の代替可否によって、経済格差が生まれて貧困が激化しやすくなることが懸念されています。
このような背景から、世間ではベーシックインカムの導入が問題の解消に役立つのではないかと論じられています。もちろん、ベーシックインカムの導入は、財源的にも簡単ではありません。また、仮にベーシックインカムが導入されても、根本的な解決にはならないでしょう。
シンギュラリティ・AIとの付き合い方
シンギュラリティが起きても起きなくても、人間の仕事をAIが少しずつ代替していくことに代わりはないでしょう。
それでは、今後私たちはどのようにAIと付き合っていけばいいのでしょうか。ここでは、シンギュラリティやAIとの付き合い方を解説します。
AIが苦手な分野でスキルアップする
AIとの分業を実現するためには、AIが苦手とする分野でスキルアップを積み重ね、自分の市場価値を高めていくことが大切です。
創造性や協調性が必要な業務はどの国でも代替可能性が低いと言われています。
AIの苦手とする分野でスキルアップを積み重ねることで、AIとの分業が実現しやすくなるでしょう。
特に、今でもあらゆる仕事で重要とされているコミュニケーション能力は、今後さらに重要度が上がると考えられます。
AIを使う側に立つ
AIが進化することは、悪いことばかりではありません。今まで、人間が時間をかけて作業していたことをAIが一瞬で終わらせられれば、人間はより本質的な仕事を進められるようになります。
そのため、AIは少子高齢化による労働力不足の問題解決にも、重要な働きをするとみられています。
今後、社会の発展にAIは欠かせないものになっていくことは必至です。AIを使う側に立ち、ツールとしてAIを活用してビジネスを進めていくことも、ひとつの方策です。
そのためには、AIを作るプログラミングやディープラーニングの知識を身につけなければなりません。
AIの技術的な知識をもっていなくてもAIは利用でき、AIを手軽に利用できるサービスを提供する企業も増えています。とはいえ、技術面の理解を深めておくに越したことはありません。
AIに何ができて、何ができないかを知ることでトラブルに対応でき、新たなビジネスチャンスの気付きを得られるはずです。
まとめ
シンギュラリティとは、AIが人間よりも高度な知能を手に入れる特異点のことを示す言葉です。
シンギュラリティが起きたあとは、AIによって人間の仕事が代替されていくため、その解決策としてベーシックインカムが導入されるなど、さまざまな変化が予測されます。
AIが人間の仕事に食い込んでくることは止められないでしょう。私たち人間は、AIにはできない領域でスキルアップを重ね、より本質的な仕事を進めていく必要があると考えられます。
この記事が気に入ったら「シェア」