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働き方改革とは?目的や具体的な変更点、生じる変化をわかりやすく解説

働き方改革とは?目的や具体的な変更点、生じる変化をわかりやすく解説
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政府が進める「働き方改革」では、長時間労働の抑制や待遇格差の解消などを目指し、様々な法改正が2019年から順次施行されています。働き方改革の推進により、企業や社員に変化がもたらされることから、法律の変更点や必要な対応を把握しておくことが大切です。

本記事では、働き方改革の概要や目的に加え、具体的な法改正の内容、社員や企業それぞれに生じる変化などをまとめて解説します。働き方改革への対応を検討している企業担当者の方、働き方改革による変化をうまく活用したい会社員の方は、ぜひ参考にしてみてください。

働き方改革とは?

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ここでは、働き方改革を推進する目的と具体的な内容を見ていきましょう。

働き方改革を推進する目的

政府が働き方改革を推進する目的は、「一億総活躍社会の実現」です。一億総活躍社会とは、一人ひとりが個性と多様性を尊重され、それぞれの能力を発揮し、生きがいを感じることのできる社会を指します。

政府が働き方改革を推進する背景としては、生産年齢人口の減少やはたらき方に対するニーズの多様化などが挙げられます。生産年齢人口とは、国全体の労働力を支える15歳以上65歳未満の人口を指す用語です。少子高齢化によって日本の生産年齢人口は1995年の8,716万人がピークとなっており、以降は減少に転じています。推計では2030年に6,875万人、2065年には4,529万人まで減少するとされており、今後も日本経済・日本企業にとって労働力不足が大きな課題となるでしょう。

参考:令和4年版高齢社会白書(全体版)(内閣府)

生産年齢人口が減少するなかでも、経済を維持し、発展させるためには就業機会の拡大や多様なはたらき方の実現を促す必要があります。労働力不足といっても、育児や介護などの理由ではたらけない人々や、副業などの機会に恵まれずに能力を十分に発揮できていない人々が一定数存在します。長時間労働によって非効率なはたらき方を強いられている人々も存在するかもしれません。

就業環境を整備し、適切な機会さえ提供できれば、労働力の底上げは可能と考えられています。また、共働き家庭が増えたことなどから、より自由度の高いはたらき方を求める人々も増えています。

長時間労働などの不適切な就業環境を是正し、個人の事情や能力に合わせたはたらき方を選べる社会にするため、働き方改革が推進されているのです。

働き方改革の内容

働き方改革を推進するうえでのポイントとして、厚生労働省は次の2点を挙げています。

  • 労働時間の見直し
  • 待遇格差の解消

上記2点について、順番に解説します。

労働時間の見直し

働きすぎを防ぎ、多様な「ワーク・ライフ・バランス」を実現するために、労働時間の見直しが進められました。具体的には、労働基準法の改正により、大企業は2019年4月から、中小企業は2020年4月から時間外労働の上限規制が設けられました。その結果、労使間の合意がある場合でも「時間外労働は年間720時間以内」「時間外労働と休日労働の合計は月に100時間未満」などの条件を守る必要が生じています。違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。

時間外労働の上限について、改正前は労使間の合意があれば上限を超えて時間外労働を行わせることが可能でした。長時間労働が常態化している職場では、育児や介護との両立が難しいなどのほか、社員が心身に不調をきたす可能性もあるでしょう。法律によって時間外労働の上限を明確に設けることで、多くの人にとってはたらきやすい環境の整備が進んだといえます。

また、時間外労働の上限規制以外にも、ワークライフバランスの適正化や多様なはたらき方の実現に向けて「年次有給休暇取得の義務づけ」「フレックスタイム制の制度拡充」といった見直しも行われています。

待遇格差の解消

どのような雇用形態を選択しても納得してはたらき続けられるよう、待遇格差の解消も進められています。職務内容や責任範囲などが同じであるにもかかわらず、雇用形態によって給与や福利厚生に差が出るケースは少なくありません。不合理な待遇格差を解消し、個人の事情に合わせた雇用形態を柔軟に選べる環境を作ることも働き方改革の重要な取り組みです。

具体的には、「不合理な待遇格差」の該当例を明記した「同一労働同一賃金ガイドライン」が提示されました。このガイドラインに則り、雇用形態のみを理由とした待遇差が生じないよう社内規定を整備することが企業には求められます。

そのほか、「パートタイム・有期雇用労働法」が2020年4月(中小企業への適用は2021年4月から)に施行されました。同法は、パートタイム労働者やその他の有期雇用労働者が能力を有効に発揮できる雇用環境の整備に加え、はたらきや貢献に応じた公正な待遇の提供を目指しています。

参考:働き方改革 〜 一億総活躍社会の実現に向けて 〜(厚生労働省)

働き方改革関連法による変更点

働き方改革の推進にあたり、労働基準法や雇用対策法、労働安全衛生法など複数の法律が改正されています。この改正を総称して「働き方改革関連法」と呼びます。

ここでは主な変更点として以下のポイントを解説します。

  • 残業などの時間外労働の規制
  • フレックスタイム制の拡充
  • 年次有給休暇の確実な取得
  • 高度プロフェッショナル制度の創設
  • 月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ
  • 労働条件の明示の方法
  • 過半数代表者の選任
  • 勤務間インターバル制度の導入
  • 産業医・産業保健機能の強化

順番に詳しく見ていきましょう。

残業など時間外労働の規制

労働基準法では、法改正以前から労働時間について上限が定められていました。しかし、労使間で合意があれば時間外労働が可能だったのです。時間外労働について上限はあったものの、違反をした場合でも行政指導が行われるのみでした。

働き方改革関連法(改正労働基準法)では、時間外労働の上限に加え、違反した場合の罰則・罰金についても規定されました。時間外労働の上限は原則月45時間・年360時間とされ、特別の事情によって労使間の合意がある場合でも以下の上限を超えてはならないとされています。

  • 年間720時間
  • 休日労働を含め、複数月の平均がすべて月80時間
  • 休日労働を含め、月100時間未満

また、時間外労働が月45時間を超えられるのは年間6ヶ月までです。前述の通り、違反した場合は6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金を科されるおそれがあります。時間外労働に対する明確な基準が設けられたことで、多くの職場で長時間労働が見直されるきっかけになりました。

フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制とは、一定期間内の労働時間をあらかじめ定めておき、それを満たす範囲内で社員が勤務時間を自由に選べる制度です。例えば、「今日は2時間早く退社し、明日は2時間分残業する」といったはたらき方が可能になります。フレックスタイム制によって調整できる期間が従来は1ヶ月であったところ、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって3ヶ月まで拡大されました。

フレックスタイム制を使えば、「育児や介護ではたらけない場合でも、ほかの勤務日で調整する」といったように、個人の事情に合わせて柔軟に勤務時間を調整できます。毎日決まった時間に勤務するのが難しい方でも、キャリアを諦めることなくはたらき続けられるでしょう。

従来は1ヶ月のなかで調整が必要だったなか、期間が3ヶ月に拡大されたことで、「子どもの夏休みに合わせて8月は労働時間を短くし、前後の月で調整する」といったように複数月にまたがる勤務スケジュールの調整が可能になりました。

年次有給休暇の確実な取得

年次有給休暇は、原則として社員の希望に基づいて任意の時期に取得できるものです。しかし、労働者自らが申し出る必要があることから、取得しづらいと感じる人が多いという問題がありました。その結果、日本における年休取得率は49.4%に留まっていたのです。

出典:働き方改革 〜 一億総活躍社会の実現に向けて 〜(厚生労働省)

、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、年5日の年次有給休暇の取得が企業に義務づけられました。使用者が労働者の希望を聞いたうえで取得の日程を指定し、年5日は年次有給休暇を取得させます。年次有給休暇取得の権利を持ちながら周囲に遠慮していた人も、企業の義務となったことで年5日は確実に取得できるようになりました。

高度プロフェッショナル制度の創設

働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、高度プロフェッショナル制度が創設されました。高度プロフェッショナル制度は、高度な専門知識をもとに高い収入を得る人々を対象とし、メリハリのあるはたらき方を可能にするための制度です。業務に従事する時間に関し、使用者から具体的な指示を受けて行うものではない業務を想定しており、具体例として金融商品の開発業務・ディーリング業務やアナリスト・コンサルタントの業務、研究開発業務などが挙げられています。また、年収は「基準年間平均給与額の3倍の額」を「相当程度上回る水準」以上とされており、具体的な想定年収額は1,075万円です。

高度プロフェッショナル制度には、年間104日以上かつ4週4日以上の休日確保が義務づけられるなど、長時間労働を防止する仕組みが設けられています。制度の対象者は限定的であるものの、高い専門性を持つ人材がより自由度の高いはたらき方を実現できる制度として重要な意味を持つといえます。

月60時間超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ

月60時間を超える残業について、中小企業の割増賃金率は25%でしたが、働き方改革関連法(改正労働基準法)によって、大企業と同じ50%に引き上げられました。

月60時間以下の時間外労働であれば、中小企業・大企業ともに割増賃金率は25%です。しかし、月60時間を超えた分については中小企業が25%、大企業が50%と差がありました。改正によって中小企業の割増賃金率が50%に引き上げられたことで、月60時間を超える労働が常態化していた企業には大きな影響が出たと考えられます。長時間労働を見直すきっかけになったことでしょう。

中小企業で月60時間を超える時間外労働が発生していた人にとっては、割増賃金の増加または時間外労働の削減につながったはずです。

労働条件の明示の方法

働き方改革関連法(改正労働基準法)では、労働条件の明示方法が追加となりました。労働者が希望すれば、ファクシミリや電子メールなどによる労働条件の明示が可能となっています。

また、2024年4月からは労働条件明示のルールも変更になります。明示すべき事項が追加されるため、企業は提示する労働条件に漏れがないか確認が必要です。

具体的には、すべての労働者に対して就業場所や業務の変更範囲の明示が求められます。また、有期契約労働者に対しては更新上限・無期転換申込機会・無期転換後の労働条件を明示する必要があります。

参考:2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省)

過半数代表者の選任

過半数代表者とは、労働者側の代表となる社員のことです。過半数代表者を選任する際、使用者側の意向が反映された人選になってしまえば、公平な労使交渉ができません。働き方改革関連法(改正労働基準法)では、「管理監督者でないこと」など選任時に留意すべきポイントが明確化されました。企業側が指名したり、自動的に選出される仕組みを採用したりするのは不適切とされています。

また、過半数代表者が必要な業務を円滑に遂行できるよう、企業側には事務スペースや事務機器の提供といった対応が求められます。

勤務間インターバル制度の導入

働き方改革関連法(労働時間等設定改善法の改正)により、勤務間インターバル制度の採用が努力義務となりました。勤務間インターバル制度とは、前日の勤務終了から翌日の出社までに一定時間以上空けることを求める制度です。例えば、休息時間を11時間とした場合、前日23時まで残業した社員は翌日の勤務開始時間を10時以降としなければなりません。

労働時間等設定改善法の改正では、取引先に対して極端に短い納期の設定や注文内容の頻繁な変更などを行わないよう配慮に努めることも定められました。自社だけでなく取引先の労働時間に対しても配慮が求められています。

産業医・産業保健機能の強化

働き方改革関連法(改正労働安全衛生法)により、産業医・産業保健機能の強化がされました。具体的には、産業医の活動環境の整備や健康相談の体制整備、健康情報の適切な取り扱いといった項目が盛り込まれ、健康リスクが高い状況にある労働者を見逃さないよう、健康管理の制度が強化されています。

労働安全衛生法の改正ではほかにも、労働時間の把握や労働時間に関する情報の通知、面接指導の対象となる要件などの観点で労働者の健康管理が強化されています。

働き方改革によって生じる変化

働き方改革の推進は、社員と企業の双方にさまざまな変化をもたらします。ここでは、社員側、企業側に生じる変化についてそれぞれ解説します。

社員側に生じる変化

働き方改革によって、長時間労働の抑制やフレックスタイム制の導入など社員にとってはたらきやすい環境が整いつつあります。育児や介護が必要な人でもスケジュールを調整しながら仕事を続けることができたり、長時間労働に悩まされていた人がプライベートの時間を確保できるようになったりするなど、ワークライフバランスの適正化が進むでしょう。

また、政府は働き方改革に関連して副業や兼業の後押しもしており、企業による副業解禁が進んでいます。社員にとって副業に挑戦しやすい環境が整ってきており、自身のスキルや経験を活かしながら新たな収入源を確保できたり、スキルアップが叶ったりする可能性があります。リモートワークの浸透により自宅で取り組める副業案件も多いため、本業を続けるなかでも空いた時間をうまく活用することも可能でしょう。副業でのスキルアップは本業にポジティブな影響をもたらすこともあります。

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企業側に生じる変化

働き方改革によって様々な法律が改正され、企業では自社の労働環境を見直す必要が生じています。例えば、時間外労働の多い職場では業務フローや人員配置を見直すなど、長時間労働を防ぐ取り組みが求められます。

もし、残業や休日出勤を削減する取り組みを行った場合、現在の人員だけでは予定通りに業務を遂行できないケースも出てくるでしょう。長時間労働を前提とした事業体制では、法的な規制の遵守が困難となるため、新たな対策を検討する必要があります。

自社の社員だけでは既存の業務をまかないきれない場合は、社外のプロフェッショナル人材を活用したりフリーランス人材に業務を委託したりするなど、柔軟な人材活用が求められます。

企業による働き方改革の取り組み事例

最後に、自主的に働き方改革に取り組んでいる企業の事例を3つご紹介します。社員のモチベーションを高めながら労働環境を改善するためのヒントとして、参考にしてみてください。

在宅勤務や直行直帰の活用推進

食品業界のA社では、フレックスタイム制度やモバイルワーク制度を採用して柔軟なはたらき方を実現しています。フレックスタイム制度ではコアタイムも廃止したことで、社員の都合に合わせた、より自由な勤務スケジュールの選択が可能となりました。また、営業職の社員には直行直帰の活用も推進しています。

勤務時間や勤務場所を柔軟に選択できることから「時短勤務からフルタイム勤務に戻す社員が増える」など、ポジティブな変化が見られています。

朝型勤務の推奨

商社業界のB社は、社員に対して朝型のはたらき方を推奨しています。深夜残業を禁止し、早朝勤務を推奨することで労働生産性やはたらきがいの向上を狙っています。意識改革を図るため、早朝勤務を実施した社員に対するインセンティブを設けるなど、制度の浸透に取り組みました。

導入当初は社員からの反発があったものの、数年間かけて地道に取り組みを進めた結果、残業時間の削減や業績アップを実現しています。

育児支援制度の拡充

日用品業界のC社は、女性の活躍を推進するため育児支援制度を拡充しました。具体的には、男女ともに10日間の育児休暇取得を必須としたり、子どもが1歳半になるまでは週3日・1日最大3時間の勤務時間短縮を可能にしたりといった制度が挙げられます。性別にかかわらず、育児をしながらでも多様なはたらき方を選択できる環境を整えています。

まとめ

本記事では、働き方改革の概要や働き方改革関連法による主な変更点、企業や社員にもたらす影響などを解説しました。生産年齢人口の減少が進む日本社会において、よりよいはたらき方の追求は経済発展のために不可欠だといえるでしょう。

企業にとっては、長時間労働の抑制や待遇格差の解消など、新たな法律や規制に基づいて社内制度を整備していく必要があります。また、はたらき方の多様化に伴い、企業としても外部のプロフェッショナル人材やフリーランスの活用といった柔軟な人材活用への取り組みが求められます。

社員にとっては、働き方改革の推進によってより適切なワークライフバランスを保てるようになるでしょう。空いた時間をうまく活用して副業・兼業にチャレンジすれば、収入の増加やスキルアップにもつなげられるはずです。

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