【その新規事業、本当に進めて大丈夫?】合理的評価設計に欠かせない「ステージゲート」実践組み込みガイド

多くの企業にとって、新規事業開発は将来の成長を支える重要な取り組みですが、すべてのアイデアが事業として成功するわけではありません。だからこそ重要なことは、「続けるべきか、断念するべきか」を適切なタイミングで適切に見極めることです。

たとえば、めぼしい進捗もないまま誰も「中止」を言い出せず、プロジェクトがずるずる長期化してしまう、という経験はありませんか?新規事業開発は「始める」こと以上に「やめる」ほうが難しい、そう感じているご担当者様も多いかもしれません。

本記事では、新規事業の継続/撤退判断を支える評価設計において、その実践に役立つフレームワーク「ステージゲート」の考え方を、新規事業における豊富な支援実績を持つプロ人材である白神 敬太氏の監修、解説をふまえながらご紹介します。

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<今回お話を伺ったプロ人材>

株式会社プリミス 代表取締役 新規事業・商品開発プロジェクトチームコーチ

白神 敬太氏

大手家電メーカーにて約25年商品企画、新規事業開発に携わる。その経験をもっと社会に役立てたいと在職中より企画コンサルタントを開始。その後コーチングを学び、支援スタイルをコーチング型に変更。2020年株式会社プリミスを設立。大手企業から中小企業まで、新規事業、商品開発チームをコーチングで伴走支援している。銀座コーチングスクール チームコーチング講座講師、国際コーチング連盟プロフェッショナル認定コーチ。

撤退判断を難しくする2大要因 とは?

思うように成果が見えないプロジェクトであっても、いざ撤退か否かの判断を迫られると簡単には決断できないものです。その要因は、「心理面」と「組織面」2つの側面から推察することができます。

●心理要因

・サンクコストバイアス

「サンクコスト」とは、すでに支払ってしまって、今後取り戻すことができないコストを指します。開発に費やした時間や予算、人員を無駄にしたくないという思いから、本来は撤退すべき状況でも判断を先送りしてしまいがちです。

・当事者バイアス

自ら企画、提案したプロジェクトには、誰でも思い入れがあります。その結果、客観的な視点を見失い、継続/撤退を冷静に判断することができなくなることがあります。

●組織要因

・社内政治

プロジェクトの中止によって、今後の予算の確保が難しくなったり、社内での影響力が低下したりすることを懸念し、合理的な判断ができなくなるケースがあります。

・評価への懸念

プロジェクトの撤退が担当者自身の「失敗」と受け止められることを恐れ、撤退を決断できないことも少なくありません。

こうしたさまざまなバイアスをできるだけ排除し、客観的な意思決定を支える仕組みとして、白神氏が推奨するのが「ステージゲート」の考え方です。

客観的、合理的判断を支えるステージゲートの考え方

ステージゲートとは、開発プロセスを複数のステージに分け、その節目(ゲート)ごとに評価を行いながら、継続/修正/撤退の判断をしていく考え方です。

「評価の仕組みがうまく機能しないのは、評価基準そのものが設定されていないという場合もありますが、設定されたものが曖昧で『何を満たせば継続なのか』『どの状態なら撤退なのか』が言語化できていないことも多いのです。ステージゲートを導入することで、中間ゴールが明確になり、プロジェクトが着実に進むだけでなく、活動自体がよりシャープになります」(白神氏)

まずは、このステージゲートの考え方を取り入れた評価設計のメリットを見てみましょう。

ステージゲートがもたらす3つのメリット

1.     ポジティブに軌道修正できる

初期段階ではまだ事業性が見えていないアイデアでも、検証と評価を重ねることで、課題や改善点が明確になり、より成功率の高い方向に軌道修正できます。

2.     撤退の判断がしやすくなる

あらかじめ明確な評価基準を設定しておけば、心理的、組織的なバイアスに左右されにくくなり、客観的な判断が可能になります。

3.     マネジメントの安心につながる

開発の進捗や現在地が可視化されるため、経営層も状況を把握しやすくなります。その結果、社内での共通認識が生まれ、協力体制も築きやすくなります。

ステージゲートは、開発を管理するためだけの手法ではなく、限られた経営資源を有望なテーマに集中させるための意思決定の仕組みです。評価を「ゴール」ではなく「次の一手を決めるための判断材料」と捉えることが、新規事業の成功につながります。

ステージゲートを用いた具体的な判断基準の定め方

開発フローにおける各ステージでのゲート設定

ここからは、ステージゲートを実際の新規開発にどのように取り入れるのかを見ていきましょう。

ステージの区切り方に決まった形はありませんが、一般的な新規開発工程に応用しやすいよう白神氏に下記のようなステージ構成例を解説してもらいました。

・ステージ0 背景明確化(可能性検討)

マネジメント方針や方向性、目標などを確認し、企画の可能性を検討するステージ

・ステージ1 仮説構築

具体的アイデアを立案し、仮説として事業構想をラフにまとめるステージ

・ステージ2 仮説検証

構築した仮説を検証し、事業化の実現性や市場性を評価するステージ

・ステージ3 導入準備

 検証結果を踏まえ、商品・サービスを具体化し、事業化判断に向けた準備を行うステージ

上記各ステージの間にゲートを設定し、ゲートを通過するためにその段階で確認すべき評価項目と判断基準を明確にします。

評価精度を高める2つのポイント

ここで重要なことは、「各ゲートでの評価基準をいかに的確に設計するか」です。白神氏は、特に重要なポイントとして次の2点を挙げています。

POINT1 定量的な基準を設ける

評価が曖昧だと、人の主観や思い込みが入り込みやすくなります。そのため、数値化できるものはできるだけ数値で評価し、数値化が難しい項目についても、「どのような状態になったら基準を満たしたと判断するのか」を具体的に定義しておくことが重要です。

「新規事業開発のステージゲートでは、とくに新規性が高い場合など、数値化できない項目も多くあります。そのようなときは『どうなったら基準を満たしたと言えるか、次のステージに移ることができるか』を定義しておくと判断しやすくなります」(白神氏)

POINT2 通過基準だけでなく、「撤退基準」も設定する

評価基準と言えば「通過基準」に意識が向きがちでが、それと同じくらいに「撤退基準」を決めておくことも重要です。くわえて、実際には通過基準にも撤退基準にも当てはまらないケースもあります。その場合は「条件付き継続」とし、期限を定めたうえで追加検証を行うなど、判断を保留するという選択肢もあります。

「撤退基準がないと、誰も撤退を言い出せなくなります。役員でさえも、よほど度胸のある人でないと、きっぱりと『やめよう』とは言えないものです。しかし、あらかじめ基準を決めておけば、迷いのない判断でリソースを次の活動に割けるようになるなど、撤退をポジティブに捉えることができます」(白神氏)

各ゲートで何を検証するのか

それでは、上記2つのポイントを押さえながら、各ゲートでの基準設計を具体的に検証してみましょう。

・Gate1 アイデアや仮説は構築できているか

まずは、解決すべき課題に対し有効な具体的アイデアや仮説が構築できているかを確認します。この段階では、事業計画を細かく作り込む必要はありませんが、売上や投資回収の概算だけは早い段階で見積もっておくことが重要です。

「承認者へのプレゼンでは事業性について問われることが多いので、まずPoCやPoBの前となる『プレPoB』を考えておきましょう。あくまで概算で結構なので」(白神氏)

 *PoC:Proof of Concept 仮説検証 コンセプトが市場や顧客に受け入れられるか 

 *PoB:Proof of Business ビジネス検証 ビジネスになりそうか、売上・利益・投資回収など

・Gate2 技術性/市場性を検証する

次のステージでは、技術的実現可能性に加え、顧客ニーズや価格需要性などを検証します。

例えば

・想定顧客へのヒアリングで一定以上の評価が得られるか

・実証実験に協力してもらえる企業を何社確保できるか

・想定価格でも購入意向が得られるか

などの項目を、あらかじめ基準として設定しておくとよいでしょう。

・Gate3 事業性を判断する

最後は、事業として成立するかどうかを見極めるゲートです。事業化や商品/サービスの導入を企業として決定するゲートになります。投資回収期間、売上規模、利益率などをもとに事業性を評価します。

たとえば、

・どの程度の収益を見込めるか

・何年で投資回収が可能か

などの基準が判断材料となるでしょう。

このように、ステージごとに検証項目と判断基準を整理しておけば、「今、何を確認すべきか」「次のステージへ進むためには何が不足しているか」が明確になります。

ステージゲートは、こうした検証を積み重ねることで意思決定の精度を高め、継続/撤退の適切な判断を実現する考え方といえるでしょう。

まとめ

 

本記事ではステージゲートの基本的な考え方と、実践に向けた評価設計のポイントを紹介してきました。

ただし、ここで紹介した内容はあくまで一般的なフレームワークです。「重要なのは、それをそのまま使うことではなく、自社の事業や組織に合わせて、自分たちの言葉で基準をつくること」だと白神氏は語ります。

「既存のフレームワークをそのまま当てはめても、現場やマネジメントが腹落ちしなければ、精度の高い判断にはつながりません。自分たちの言葉で評価基準を定め、それを現場とマネジメントが合意するというステップを必ず踏むということ。それがしっかりできている組織は強いと思います」(白神氏)

客観的、合理的判断をくだすために、自社以外の新しい視点を得てプロジェクトを進められないか?そうお考えのご担当者様も少なくないのではないでしょうか。

「HiPro Biz」には白神氏のような専門的知見や実績を豊富に有するプロ人材が多数登録されています。プロジェクト進行における明確な課題をお持ちの方も、また漠然としたお悩みを抱える方もまずはお気軽にご相談ください。

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